新型コロナウイルスについてわかってきたこと その2:症状と後遺症

新型コロナウイルスの特徴として感染後、症状が出るまでの潜伏期間は1から17日とかなりばらつきがあります(平均は5~6日程度)。
また、感染しても30~50%の人では症状が出ない(ダイアモンドプリンセス号では55%(N=378人)が無症候性感染者)ため、症状がないからといって安心はできません。
感染して発症した場合でも、多く(約80%の人)は発熱や咳などの軽症(ふだんの風邪と同様)で治癒するとされます。
発症から1週間ほど経過する頃に一部(約20%)の人が呼吸困難などを訴えるようになり入院を要するようになります。
そしてさらに重症化(全体の約5%)すると、人工呼吸器やECMO(人工肺)などの集中治療が必要となります。
致死率は年齢や基礎疾患の有無にも寄りますが、3~5%とされています(重症化リスクについては別に記載します)。

国立国際医療研究センター 国際感染症センター 
感染症専門医 忽那先生の記事より


新型コロナウイルス感染症の症状ですが、基本的には風邪やインフルエンザと同じです。
ただし、発熱は高熱であることが多く、通常の風邪よりも長引きやすいようです。
特に「息切れ」や「嗅覚障害・味覚障害」の症状は、風邪やインフルエンザでは稀な症状ですので、新型コロナの可能性を疑うきっかけになりますが出現頻度はそれほど高くなく、イタリアのデータでは嗅覚障害・味覚障害は30%程度と報告されているようです。

国立国際医療研究センター 国際感染症センター 
感染症専門医 忽那先生の記事より

特に重症化するケース(発症者全体の約20%)では、発症してから1週間程度は風邪のような軽微な症状が続いたのち、そこから徐々に肺炎の症状が悪化(重症化)して入院に至ります。
さらに約5%の症例で集中治療が必要になり、約2%の事例で致命的になりうるとされています。
発症後の症状や経過については、国立国際医療研究センター 国際感染症センター感染症専門医の忽那賢志先生の記事をご参照いただくことをお勧めいたします。

『なんだ、感染しても無症状の人がたくさんいるし、発症しても80%以上は軽症で済むならそんなに心配しなくていいんじゃないか・・・』
そう思われた方もいらっしゃるかもしれません。

新型コロナウイルスの恐ろしさはこれだけではないんです。

新型コロナウイルス感染症から回復した後も何らかの後遺症の症状が続く方がいることが分かっています。
海外からの報告では、特に倦怠感や呼吸苦、関節痛、胸痛などの症状が続いている方が多いようです。
その他、咳、嗅覚障害、目や口の乾燥、鼻炎、結膜充血、味覚障害、頭痛、痰、食欲不振、ノドの痛み、めまい、筋肉痛、下痢など様々な症状がみられるようです。
そして4割の人が生活の質が低下していると答えており、新型コロナから回復した後も苦しんでいる方が多いことが分かります。

さらに悪いことには、脱毛(日本国内のデータでは24%に認めたという報告もあります)、記憶障害、睡眠障害、集中力低下といった急性期にはみられなかった症状も後遺症として認められたと報告されています。
米国の患者データからも、COVID-19診断後14〜90日における何らかの精神疾患の発症率は18.1%と高率であることが報告されました。
特に不安障害や鬱病、不眠症などの精神疾患、さらには認知症の発症リスクを高めるそうです。

これらの後遺症に対する治療法はないため、やはり新型コロナウイルスに感染しないように注意して生活する以外にありません。

国立国際医療研究センター 国際感染症センター 
感染症専門医 忽那先生の記事より

では、なぜ新型コロナウイルスに感染すると精神疾患をきたしてしまうのでしょうか?
もともとはただの風邪のウイルスだったはずなのに、不思議ですよね。
そのカギは、ウイルスの臓器親和性という特徴にあります。
ウイルスが体内に侵入・増殖する場所は、ウイルスの種類によって決まっていて、そのためウイルス種ごとに特徴的な症状が引き起こされるのです。
最近、新型コロナウイルス感染症COVID-19の臓器親和性について新たな発見がありました。

新型コロナウイルスが人体に感染するには、ヒト細胞表面に存在する受容体タンパク質(ACE2受容体)が関与しているそうです。
ACE2はふだん血管拡張(血圧調整)、心臓保護、心不全予防、腎の繊維化障害抑制、糖尿病性血管障害抑制などを調整しています。
ですからACE2は主に肺(気道にも若干発現)や胃腸、腎臓、心臓、睾丸、胎盤上皮、眼、舌、血管で発現し、脳でも若干発現していて、新型コロナウイルスは、このACE2を発現している細胞を標的として感染するとされています。
そのため、新型コロナウイルスは真っ先に侵入経路である肺を標的にし、腎臓、肝臓、血管さらには脳をも犯して重症化や後遺症を引き起こすのです。
味覚障害をきたすのもこの新型コロナウイルスの臓器特異性によるものと考えられます。

ACE2受容体
ウイルスの侵入経路(加藤医院ホームページより)

いかがでしたでしょうか?

死亡率3~5%というのも恐ろしいですが、それ以上に治癒後の後遺障害に苦しむ人が4割以上いるというのも、最近の研究でわかってきた驚愕の事実です。

第3回目は、新型コロナウイルスの検査法について一緒に考えてみましょう。

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この記事を書いた人

たけしのアバター たけし アラフォー外科医

40歳を過ぎ、人生に焦りを感じ始める
自分がすべきことを探求した結果、健康に関する情報発信を始める
妻の経営する弁当屋のホームページも担当

将来の夢は自分のクリニックをひらき元気な高齢者を増やすこと

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