在宅診療の目的
命はただ長いだけでは意味がない、大切なのはその中身
最期の最期まで根本的治療を継続する従来の医療から自分らしい『生き方・死に方』を選択する医療への転換期
病気をかかえながらも自宅で生活をしたいという本人と家族の意向のもと、身体的・精神的苦痛を軽減するサポートを行い、自宅での生活の質を向上すること
→そもそも在宅の希望がなければ始まらない医療である、そこを常に意識・確認することが必要
ACP
ACPを行うタイミング
軽い認知機能低下が診断された時、高齢期やフレイル期、病状が悪くなる兆しが見られ要介護状態が進むと予想される時、75歳以上での検診時や外来通院時
意識調査(5年ごとに実施、最新は令和4年)
老年症候群
- 加齢に伴って病気または心や体の状態の問題が複雑に関連しあうことにより生じる、高齢者に多くみられる症状のことを老年症候群といいます。たとえば、ふらつく、つまずいてこけそうになる、だるい、眠れない、やせてくるなどの症状がそうですが、最初はたいした問題ではないけれど、だんだん生活の質や活動度が落ちてしまいます。老年症候群を放置していると、最悪の場合、要介護など寝たきりの状態になることもあります。
健康に気を遣っている方はなりにくいですが、新型コロナウイルスの影響などで家にひきこもりがちになり、おでかけやおしゃべりをする機会が少なくなった方や、すでに慢性の病気をお持ちの方で普段は調子が良かったのに何かをきっかけに病状が悪くなった方のことを「フレイル」といいますが、フレイルの方は老年症候群になりやすいと言われています。
ふらつく、と言っても、高齢者の場合はいくつかの原因が重なっていることが考えられるため、総合機能評価(問診や検査など)をして原因を特定し、1つ1つの原因に対処していくことが必要です。
当院では「フレイル、ポリファーマシー外来」を設置しています。この外来ではフレイルや老年症候群の原因を明らかにして対処や治療法を提供します。
老年症候群の予防のためには、規則正しい生活を基本とし、筋肉が落ちないようにタンパク質を3食とも入れた食事、外に出て散歩をするなどの定期的な運動、十分な睡眠などを心がけることが大切です。
高齢者に関するガイドライン
- 高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015
終末期医療
日本老年医学会の指針
- 本人の人生において最善の方法をみんなで相談して決めることが大前提、家族のためでも医療者の都合でもなく、本人のための医療を選択する。本人のために胃瘻がいいなら胃瘻造設するし、見取りがいいと思えばBSCとする。
→本人に意思決定能力がない場合でも、家族に「長く生かすことだけがすべてではない。本人にとって一番いい方法はなんでしょうね」と決めてもらう。元気なころにどんな死生観だったか、価値観だったかを家族から聴取する。 - 患者の家族もケアの対象=グリーフケア(grief=悲嘆)
在宅診療の極意
- WクリニックM理事長
- 患者さんを安易に入院させない、紹介もとに返さない→信用がなくなる、急性期紹介元へのバックベッドという考えはない
- 患者さんの受け入れ相談は即OKのみ、待たせてもだめ!
- WクリニックF先生
- 見習うべき先生
- 週2回以上抜くならアスピレーションキットを留置する
- クロザリル(クロザピン)は専門医かつ登録医療機関しか処方できない(適応:治療抵抗性統合失調症)→在宅ではリスパダール4㎎分2で開始し6㎎分2で維持できたと(家族が食事にまぜて投与した)
- がん終末期緩和のテープ3種類:
①フェントス→鎮痛
➁ロナセン→制吐、(鎮静効果は弱い)
③ジクトル→解熱 - ナルサス4㎎スタート+ナルラピド1㎎がよい
- オキシコドンは採用切った→コドンは8時間しか効果ないので分2ではレスキュー必須、高用量では使いづらい
- ナルサス4㎎413.2円、6㎎540円(後発品なし)に対してオキシコンチン徐放錠20㎎433.7円 1日100円しか変わらない
- オピオイドは早めに導入開始する、高齢者の場合、ナルサスは2㎎くらいから導入するとよい
- ナルベインは25㎎(2mL、6457円)注射の超高濃度高用量がある→換算量はナルサスの1/5
- 痛いところは触診する、圧痛があればオピオイド増量する
- 静注薬のゴールデンスタンダードはモルヒネ、良くも悪くも蓄積性でレベルが自然に低下→自然な終末期を迎えられる、最後の最後まで意識を保つならナルベインの方が意識を保ちやすい
- 作用はナルベイン=フェンタニル
- エドルミズは化学療法で粘りたいときに使う薬、緩和領域でも使ってもいいだろうが、あまり使わない
- ICI投与していた人は緩和になっても1年生存したりする
- がん医総は全部取りに行く、断られたら仕方ない
- Y在宅クリニックK院長
- 家族と本人の希望さえあれば、重症でも在宅でがんばれる
- 独居者でも在宅での見取りが可能→訪看が重要な役割
- 採血、採尿、抗生剤、酸素、CV、腹水穿刺などで粘ることもできる
- 重症の場合は訪看は毎日来てもらえる
- 訪問診療も手厚めに訪問する、もしくは訪看と交互に行く
- 家族または本人が入院を希望すればいつでも紹介する→自宅での介護力がない場合にはそのまま施設入所をお勧めすることもあるが、紹介先の病院からは患者受けが悪いと嫌われる恐れがある
- 自宅での介護力には多分に訪看の意欲や能力も影響する
- 入院可能な紹介先の選定は基本的にクリニックで行うが、どうしても見つからない場合は救急隊選定とすることもある
- 重症患者が多く、診療コストが濃厚となるため儲けは薄くなる
- 在宅の場合、院内処方はすべてマルメとなる→極力院外処方を利用する
- ALSも多い、3割が胃瘻なし気切なし、3割が胃瘻あり気切あり呼吸器なし、3割が胃瘻あり気切あり呼吸器ありとなることが多い
- 球症状で発症するALSもある→しゃべれない、誤嚥、するけど運動系は保たれるので歩ける、動ける、呼吸できる
- 腹水穿刺する場合は1回/週以下なら留置せず毎回穿刺、それ以上の頻度なら留置してヘパロック
- 胸水穿刺は腹水穿刺ほど症状改善効果に乏しく適応となることは少ない
- 入院中にナースコールするように在宅でも訪看や訪問診療を呼んでよい
- 本人だけでなく家族が楽に介護できることが我々の目標の一つ
- 初回訪問時には訪問薬局にも事前連絡し、臨時処方があるかもしれないことを伝えておく
- 訪問薬局の選定には土日祝日夜間も対応可能なところを優先する
- 訪問看護ステーションにもレベルは様々
- あまりにひどい訪看STからの紹介患者さん(とくに良性疾患だったり変性疾患などの長期予後が予想される場合)はお断りすることもある
- 最初から入っている訪看STを自分の希望通りにチェンジすることは難しい
- 費用の話(医療保険2割なら自己負担の上限は18000円まで)
- 2か所以上の医療機関受診時は上限18000円×受診機関数をいったん収めるがのちに還付される
- 訪問薬局の出張料は全額自己負担で1回600円程度
- 物品:
- 電子カルテはモバカル
- MCS、スラックで多職種コミュニケーション
- 車3台→購入
- CADDポンプ4台→CADD-Solis® PIB、 CADD-Legacy®というモデルもある
- クリニックで管理している麻薬:モルヒネ、ナルベイン、オキファスト?
- モルヒネは非癌性の緩和治療に用いる
- 緊急導入用の酸素ボンベ
- 心電図
- VSCAN(GE社製)70万円→解像度◎、腹水穿刺にも利用できる
- シリンジポンプ、CV用ポンプ、TPN→すぐに開始できるようにクリニックで保管あり
- 吸引器→レンタルまでのつなぎ用で4-5台、1台2万円
- 麻薬管理者の申請が必要→保管庫の管理が必要
- 置き薬として最初から屯用薬を処方しておく場合もある(制吐剤、便秘時、不眠時、疼痛時、発熱時、呼吸苦時など)
- 家族と本人の希望さえあれば、重症でも在宅でがんばれる
在宅救急診療に利用できるもの
- 簡易血糖測定器
- ◎ニプロスタットストリップ XP3→たったの19,000円
血中ケトン(ヒドロキシ酪酸)と血糖が迅速定量可能 - △呼気ケトン体簡易測定器→アセトンしか測定できない!ダイエット効果しか見れない
血中ケトン体と尿中ケトン体は必ずしも平行しない→尿ケトン陰性でもケトアシドーシスは否定できない
従来の尿中ケトン測定では、測定対象がアセト酢酸であり、臨床の状態と一致しないことが多い - エコー
sonosite→ノートパソコン型
VSCAN→visualEFモードはBモードのみで簡易式にEF計算できる、VSANAIRコンベックスで心臓も見える - △テステープ(尿糖、ケトン体(アセト酢酸)、)
- ポータブル血ガス測定器
- ETCO2モニタ→換気不全の診断や、在宅酸素の流量調整、人工呼吸器の条件設定に有用
臨床検査が多様化する中でPOCT(Point Of Care Testing)が注目されるようになってきた。
POCTとは、小型分析器や迅速診断キットを用いて医療現場で行うリアルタイム検査であり、病院の検査室あるいは外注センター以外の場所で実施されるすべての臨床検査を包含している。
典型症状は口渇・多飲・多尿+呼吸数増加(苦しそう!)+嘔吐+ぐったり(最後は意識障害)
意識障害や腹痛、悪心・嘔吐では必ずDKAの鑑別(急性腹症と間違えることもある)→POCTで血糖+ケトン測定
感染(UTI)+DKAはよくある組み合わせ!!!
→尿糖+だからUTI起こしやすい→UTIが感染をさらに増悪させる→糖尿病悪化→→→
★★★重要★★★
DKAを引き起こした誘因を検索し再発予防を!
特に1型糖尿病以外の患者がDKAを発症した場合はその誘因を調べ、再発を防ぐことが重要
主な誘因:DKAの誘因「5つのI」
・Insuin:インスリン欠乏、インスリンの中断
・Infection or Inflammation:感染症や炎症
・Ischemia or Infarction:虚血や梗塞
・Intra-abdominal disease:膵炎、胆嚢炎
・Iatrogenic:医原性(IVH[中心静脈栄養]、ステロイド、薬剤性)
疫学:
DKAを発症する患者の多くが1型糖尿病患者→抗GAD抗体などはスクリーニング必要
SGLT2阻害薬使用中の患者は血糖<200mg/dLでもDKA発症例あり→SGLT2阻害薬は脱水助長する
高齢者や合併症が存在する場合には5%以上の致死率
症状:
口渇、多飲、多尿(多尿があっても脱水!!!)、倦怠感が出現→脱水増悪+代謝性アシドーシス→クスマウル呼吸+呼気アセトン臭、口腔粘膜皮膚乾燥→意識障害
病態:
脱水+インスリン不足+高血糖+代謝性ケトアシドーシス
検査:
ケトン体(POCTがベスト、尿でもOK)、血糖(尿糖でもOK)、pH、Lac、BE、HCO3-、Na、K、UN、Creなどを測定する
エコーでIVC評価
診断基準:
血糖値250mg/dL以上、重炭酸塩の低下(15mEq/L以下)、血中・尿中ケトン体の上昇を伴うアシドーシス(PH7.3以下)を認めればDKAと診断
重症度判定基準→血液pHとHCO3-と意識レベル(血糖値やケトン体ではない!)
治療:
POCTでケトン高値→DKAとして救急搬送、ケトン低値ならただの高血糖→翌日外来受診でOK
とにかく脱水補正(4~5Lほど必要とされる)+インスリン静注+持続皮下注→入院が必要
Na補正(DKAでは低Na血症になりやすい)
K補正(インスリン療法で低下しやすいため途中から補充)
①脱水(+Na)補正:
生理食塩水の点滴を1000mL/時間(14~20mL/kg/時間)の速度で開始(高齢者は点滴速度は7~10mL/kg/時間と半分程度に減量)
②インスリン:
血糖値が50~70mg/dL/時で低下するよう、0.1単位/kg/時間の少量からシリンジポンプで持続静注(→浸透圧変化による脳浮腫予防のため)
③電解質異常+アシドーシス補正:
重炭酸塩での補正はpH<7.0の高度なアシドーシスの場合のみ行う(急激なpH補正は危険な場合があるので重症時のみ行う)
参考:
血清浸透圧(pOSM)=2(Na)+血糖/18+尿素窒素/2.8(Osm/L、正常値280~290)
DKAは高血糖+脱水+インスリン枯渇+ケトアシドーシス、HHSは高血糖+脱水+脱水+脱水→腎不全に注意!
酸素療法
酸素療法の適応
PaO2 が 60 Torr 以下の急性呼吸不全や,長期酸素療法 (long term oxygen therapy;LTOT)による生命予後改善が示されている安静時低酸素血症(PaO2 55 ~ 60 Torr以 下)を伴う慢性呼吸不全である。
低酸素血症に至らない慢性呼吸不全においては,LTOTによる予後の改善効果は証明されておらず ,本邦を含む多くの国で LTOT の適応から外されている。
経鼻カヌラは最大5L程度まで
点滴
メインの点滴
ソリタT3 500mL皮下注1秒1滴→180mL/hrの計算になり3時間後に終了するので家族に抜針してもらう
成人用は20滴で約1mlであることから、1分間に3ml滴下→1時間では180ml/hrの計算
点滴台は自宅にあるハンガー等を利用する
高齢者に多い感染症と起因微生物、推奨抗生剤
高齢者に多い主訴・検査異常
朝から意識が悪い
糖尿病治療歴や睡眠薬の内服がないかチェック→DKAや低血糖は高頻度!!!
- 90歳、JCS3-100で搬送→ソラナックス(半減期14時間)を内服していた!!!
不定愁訴や執着気質
- プラセボを処方
- 少ない㎎の錠剤を数多く飲ませる
嚥下に関する訴え
歩くスピードが遅くなるのと同じで、飲み込みもうまくできなくなって当然
→加齢に伴う脳の機能低下、筋力の低下、意欲の低下などによって起こる老化現象のひとつの表現型
- むせる、飲み込みづらい、口が乾く
- むせる原因は加齢(咀嚼筋、嚥下、唾液の減少、神経反射の加齢変化、歯の問題)
- 唾液減少すると、食べ物をうまくまとめて食道に流せません。歯には噛んでちぎる・小さくすりつぶす役割がありますが、虫歯や歯周病による歯の本数の変化により衰えてしまいます。滑舌が悪くなり、食べこぼしが増え、僅かなものでむせる状態が続く時、その原因が加齢によるものならばオーラルフレイルと呼ぶケースもあります。
- お口の機能が低下しているオーラルフレイルになると、噛みづらい食品が増えてしまい、食事の幅が狭まります。また、反射神経が衰えると気道に蓋をする役割の喉頭蓋の反応も遅くなり、筋力が低下すると、ごっくんと飲み込みにくく、タイミングがわからなくなります。
- その他には認知症や脳卒中、薬の副作用などでむせる場合があります。
- 入れ歯が合わなかったりそもそも使用していない場合は、食べ物をしっかり咬まずに大きいまま慌てて飲み込むことが多いのもむせにつながる
- 意欲の低下も原因になる
- 嚥下困難の診断
- フードテスト
- ティースプン1杯(3~4g)のプリンやゼリーなどの食品を摂取します。
- 嚥下後に空嚥下を2回行いその時嚥下状態や口腔内の状態を調べるものです。
- 状態を5段階評価で評価します。4以上の場合は更に2回行います。
- 反復唾液嚥下テスト
- 30秒間でどのくらい唾液が飲み込めるか、そして飲み込んだ時の状態などを調べるものです。
- こういった飲み込みの時の、のどの動きや状態をテストすることで嚥下状態を判断します。
- スクリーニングテスト以外の方法としては、嚥下造影検査といって、バリュウムの含まれた食品を食べてのどの動きをレントゲンで撮影や、嚥下内視鏡検査といったものがあります。
- フードテスト
通常、むせて咳が出る行為は年月を経過し、加齢により起こりうるものという捉え方でしたが、最近では、年齢の若い方にも症状が起こっています。
スマホの普及、デスクワークによる姿勢の悪さ(ストレートネック)が主な原因です。
肩が前に出て背中が丸まり、首が前に出ている状態は、喉頭蓋の働きを鈍くさせる角度になり、舌の動きも悪い状態です。
画面を覗き込むような姿勢はやめる
ストレッチ、運動、筋トレ、正しい姿勢の保持、も当然重要
急に元気がなくなった、なんとなくいつもと違う
→意識障害=意識レベル(清明度)の障害または意識内容の障害(意識変容)があるかを確認
→その原因として感染症、発熱、脳血管障害、脱水、熱中症、食思不振、基礎疾患関連症状の存在を検討
→頻度が多いのは肺炎(すでに低酸素血症やCO2ナルコーシスの恐れもある)と尿路感染症、胆道感染、蜂窩織炎(手足まで診察する)、脳梗塞、基礎疾患(糖尿病など)の関連症状
- 観察項目:バイタルサイン→qSOFA、SIRS?SPO2、呼吸音、高齢者は発熱が乏しい重症感染症もある
心不全症状
心不全症状のほとんどがうっ血に伴う症状
安静時には症状出にくい、就寝時や労作時に症状が出やすい
エコーで診断→胸水、カーリーBライン、IVC怒張、心拡大、見た目のEF
- 症状
- 肺うっ血症状
- 息切れ(労作時>>就寝時>>安静時)→最も多い症状
- 動悸(胸がドキドキ)
- 胸痛・胸部不快感→意外と多い
- 左室拡張末期圧が上昇すると内膜下虚血が生じ胸痛をきたすがPCIは不要
- Bendopnea(体を曲げると静脈還流量増加→肺うっ血症状が出現)
- 夜間咳嗽・起坐呼吸(特異度高い)・夜間発作性呼吸困難
- 心臓喘息
- 心不全がある患者の喘息様発作は心臓喘息として対処することが多い
- 心不全+COPDの併存患者(心不全全体の2割くらい)に起きやすい
- 体うっ血症状
- 夜間尿良増加
- 1回尿量が多いことが特徴(OABでは1回量が少ない)
- 体重増加
- 手足や顔の浮腫
- 夜間尿良増加
- 低心拍出量症状
- 手指冷感、慢性疲労、意識消失
- 肺うっ血症状
認知機能低下・認知症
→医学memo書き→認知症 へ移行
便秘
- MgOが使用しづらいケースでは新規便秘薬(リンゼス、グーフィス、モビコールHD/LD、アミティーザ)を使用するが値段は10~15倍もする
- グーフィスの初回自発排便発現までの時間の中央値は5.2時間。用法は「1日1回食前」であるが、夕食前に飲んだ場合、夜間に排便したくなる可能性もあるので、飲み始めは朝食前のほうがいい
- グーフィスは、便を柔らかくする、腸の動きを良くするデュアルアクションの下剤
下痢
- 急性下痢は感染症
- 慢性下痢は
- 非薬物療法:
- 食事量を減量または一時中断、牛乳などの乳製品の中止、食物アレルギーの再考
- 薬物療法:
- 第1段階→整腸剤、アドソルビン(なければタンナルビン)
- 第2段階→コロネル、トランコロン、ポリフルなど、下痢型過敏性腸症候群治療薬(=5HT3受容体遮断薬:イリボー)→男女で初回投与量が異なる、高齢者でも使用可、認知機能への影響なし、投与開始3カ月を目処に継続/終了を検討する
- 第3段階→ロペミンなど
- 漢方:
- 下痢に効く漢方薬は「五苓散」「半夏瀉心湯」「桂枝加芍薬湯」など。
- 五苓散は水っぽい下痢
- 半夏瀉心湯はストレスをともなう下痢
- 桂枝加芍薬湯は腹痛持ちの方や胃腸が弱い方の下痢
- 対症療法:
- 電解質異常、脱水、低栄養が生じる→絶食、補液(低K血症)、栄養剤、採血でのfollow
- 高齢者の場合、腸結核は否定しておく必要がある→培養は感度低いので、T-SPOTと画像(CTやCS)でスクリーニング
- 診断法:
- 糞便・生検組織での培養検査(小川培地,Mycobacteria growth indicator tube:MGIT 法)や核酸増幅法(polymerase chainreaction:PCR 法)で行われる.しかし,これらの検査法で診断確定できる症例は決して多くない
- 小川培地による培養検査では判定までに 4 ~ 8週間を要する上に,糞便での陽性率は 10%以下,生検組織でも 17-46%にとどまる
- PCR 法の感度は 66.7%と高いが,死菌であっても陽性となるため特異度が低く,陽性率も 30%程度にとどまる
- インターフェロンγ遊離試験(interferon-gamma release assay:IGRA)
BCG 接種やほとんどの非結核性抗酸菌感染の影響を受けない
結核菌感染に対する感度,特異度は89%,98%と高い
感染後 8 ~10 週で陽転化するため,IGRA は結核初期の診断には不向き
基礎疾患や免疫抑制療法によって免疫能が低下した結核患者では陰性となる- ×クオンティフェロン(QFT)
- T 細胞から遊離する IFN-γの産生量を測定する
- 採血方法が特殊でめんどくさい
- ◎T-SPOT
- IFN-γの産生細胞数を測定する
- QFTよりもずっと簡単でストレスレス
- ×クオンティフェロン(QFT)
QFTのデメリットは主に採血現場におけるものであり,T–スポットのデメリットは主に検査現場におけるものであるため,検査を依頼する医療機関では当然のことながらT–スポットが好まれる
風邪症候群
主訴によって病型分類『鼻炎型』→くしゃみ、鼻水、『咽頭炎型』→咽頭痛、『気管支炎型』→咳と痰、それらの『混合型』
- 風邪症状であっても肺炎、胆嚢炎、尿路感染などもありうる
- 総合感冒薬に含まれる抗ヒスタミン薬は、高齢者に傾眠、せん妄、尿閉などをきたしうるため処方しない
- 症状ごとに最小限の処方を行う
食思不振
- 鑑別疾患:
- 感染症、味覚障害(亜鉛欠乏)、貧血、抑うつ、薬剤性(高Ca血症、などの電解質異常、ジギ中)、嚥下障害、認知症の悪化
- 観察項目:
- 体重減少、
めまい・ふらつき
高齢者のめまい・ふらつきでは脳梗塞の除外が重要!!
- 高齢者では頭位変換性めまい・ふらつきであっても脳梗塞を否定できない
- 若年者→Dix-Hallpikeテストや頭位変換でBPPVと診断できる
- めまい・ふらつきの診療手順:
①耳の疾患を鑑別→難聴、耳鳴、耳閉塞感の出現や増悪を聴取
メニエール病、突発性難聴の発症または再燃を疑う
②前失神(pre-syncope、一過性意識消失)を除外する
意識が遠くなる感じ、目の前が真っ暗になる感じ、があったか聴取
Adams-Stokes症候群、大動脈狭窄症などを除外する→心電図、脈拍、聴診
突発性難聴は小児から高齢者までどの年代でも発症しうるが、好発年齢は30〜60歳代で、特 に50歳代が多いといわれている。80歳以上の高齢者発症は非常に少ないとされている。 男女差や左右差はない。 通常は一側性であるが、ごく稀に両 側罹患例もある。
不整脈により心拍出量の急激な低下をきたし,それにともなう脳血流減少によりめまい,意識消失(失神),痙攣などの一過性の脳虚血症状を引きおこした病態をさす。病名は1800年代前半にAdams RとStokes Wがそれぞれ徐脈にともなう失神発作の症例を報告したことに由来しており,古くは完全房室ブロックにともなう失神や痙攣発作に対してのみ使われていた。しかし現在では,洞房ブロックなど他の徐脈性不整脈によるものに加えて,心室頻拍などの頻脈性不整脈によるもの,洞機能不全症候群(sick sinus syndrome)など徐脈・頻脈混合型不整脈による場合も含めている。
甲状腺機能低下
- TSH 0.75~1.5μU/mLくらいが最も高頻度で,約90%の健常人が<3.0μU/mL(20~60歳の基準範囲はおおよそ0.2~4.5μU/mL)が、TSHの基準範囲は年齢によって異なり,高齢者では基準値上限が上昇する
- 高齢者ではTSHの目標を3~6くらいに設定する
- 日本人の高齢者ではTSH高値(>8μIU/mL)で顕性甲状腺機能低下症になる可能性が高いとされる
- 合成甲状腺ホルモン(チラージンS)の補充治療治療をおこなった方がいいケース:
- TSH≧10μIU/mL(TSH>10では心血管イベントが増加する)
- TSH<10μIU/mLでは、臨床所見、大きな甲状腺腫、脂質異常、自己抗体の有無、などから判断する
- 補充療法開始からTSHが安定するまでは6週間~2カ月必要
- チラーヂンSの吸収は,食事中の食物繊維,コーヒーなどによって阻害されるので就寝前または空腹時がよい(起床時で朝食前30分,または就寝時で食後3~4時間以降)
- 補充療法のゴール設定は高齢者(70歳以上) の場合、TSH<6.0-7.0 mU/L ※80歳以上はTSH<8
- 65歳以上の潜在性甲状腺機能低下症への補充治療がQOLの改善につながらないとの報告や、85歳以上の潜在性甲状腺機能低下症ではむしろ致死率が低下しているとの報告もある
日本では甲状腺機能低下の診断基準も明確な数値なし、治療の基準なし
日本甲状腺学会で潜在性甲状腺機能低下症のガイドラインを作成中
夜間頻尿(>2回)
→1回尿量で鑑別する
1回尿量が多い・・・心不全、夜間高血圧
1回量が少ない・・・前立腺肥大・過活動膀胱
頻尿
中枢性神経因性膀胱(脳血管障害、パーキンソン病、アルツハイマー病など)に多い症状
- 中枢性神経因性膀胱(脳血管障害、パーキンソン病、アルツハイマー病など):
- 排尿筋過活動(=松かさ様膀胱)となり、頻尿、切迫性尿失禁などの症状が出る
- 治療:膀胱の収縮を抑える
- 抗コリン薬
- β作動薬
排尿困難(末梢型神経因性膀胱)
末梢型神経因性膀胱(糖尿病、ヘルニア、脊柱管狭窄症など)では尿閉となる
薬物療法の有効性は低く、清潔間歇導尿による尿排出が標準的治療
- 薬物療法:
排尿を促す薬=α1遮断薬(エブランチル)、コリンエステラーゼ阻害薬(ウブレチド)
尿の色が変
- 尿が青い
- 山梔子を含有する漢方(加味逍遥散、黄連解毒湯)
- 尿がピンク~赤
- センノシド(大黄)内服中の人がアルカリ尿になるとピンク色に着色する
- セフゾン、アスベリン、セスデン
尿中に含まれている『インジカン』という物質が、尿中の「ある細菌」によってインジゴブルーとインジルピンという色素に分解され、これらの色素が尿バックやカテーテルに沈着することで藍色~紫色に見えるのが原因
紫色蓄尿バッグ症候群は便秘と尿路感染により生じる事が分かっており、発熱等の症状が無ければ原則抗菌薬を投与する必要はありません。尿路カテーテル長期間留置の必要性を再検討(可能なら抜去),排便のコントロール,飲水を促して尿量の確保を行う等で対処します。
目ヤニが多い
原因の区別なく結膜が充血したり眼脂が増えたりするものはすべて結膜炎
急性結膜炎としては感染性結膜炎が多い
慢性結膜炎としてはアレルギー性結膜炎が最多
高齢者の慢性結膜炎の原因として多いのは結膜弛緩症
結膜弛緩症
- 結膜弛緩症は結膜がたるんでしまう事によって様々な症状を引き起こす病気
- たるみの原因は老化現象と考えられ、加齢とともに頻度が増える
- 症状:
眼球の壁に密着していた結膜がゆるんでダブついた状態になるため、異物感の原因になったり、常時こすれる事による充血や眼脂の増加、涙の排水経路を邪魔するためにいつも涙目になる、といった症状 - 治療:
- 軽症のうちは抗アレルギー点眼薬や非ステロイド性抗炎症点眼薬で経過観察
- ステロイド点眼は使用すべきでない→長期投与では緑内障や白内障もきたす
- 抗生剤点眼も効果なし→鼻腔の奥で耐性菌が徐々に増殖→誤嚥性肺炎の起炎菌となりかねない
- 根本的な治療としては余っている結膜を焼灼したり、切除したりといった手術が必要
→痛みもほとんどなく、15分程度の簡単な日帰り手術なので眼科紹介も考慮
発熱
鑑別疾患
- 膀胱炎では発熱しないが、膀胱膿症まで進展すれば発熱しうる→膀胱洗浄+抗生剤
尿路感染症
単純性膀胱炎/腎盂腎炎
- 起炎菌は大腸菌が80%
- 抗生剤:
- 第一選択:ケフラール、オーグメンチン(NQ耐性大腸菌も増加傾向のため第一選択としない)
- 第二選択:ファロム
大腸菌におけるCTX(第3世代セフェム)耐性率は2008年には9.0%→耐性率がここ10年では耐性率は25%を超える
カテーテル関連尿路感染(catheter-associated urinary tract infection:CAUTI)
膀胱留置カテーテル使用中に細菌尿が発生するリスクは30 日目には100%に至る
細菌尿を起こした患者の 10~25% に尿路感染の症状を認め、 0.4~4% が二次的血流感染を起こす
- CAUTI の主要な原因微生物
- Escherichia coli
- Pseudomonas aeruginosa
- Klebsiella spp.
- Enterococcus faecalis とその他の Enterococcus spp.
- Proteus spp.
- Enterobacter spp.など
- カンジダ尿を見ることがあるがほとんどが無症候性で治療を要さない
- 無症候性細菌尿の高齢者:
自宅在住の女性で 10.8~16%,男性で 3.6~19%
長期間施設に入所している女性で 25~50%,男性で 15~50%
カテーテル留置中は100%
→発熱があって細菌尿を認めても=尿路感染とは即決できない→急性腎盂腎炎は除外診断と言われる所以 - 急性腎盂腎炎を疑ったら抗菌薬投与前に必ず血液培養と尿培養を提出することが重要で,血液培養と尿培養で同一の細菌が検出されて初めて急性腎盂腎炎と診断できる
- 挿入困難の原因の大部分は括約筋の緊張によるものである
- 前立腺が大きいことは挿入困難の原因とはならない
- 男性の尿道は通常の状態で海綿体部尿道と球部尿道の 2 か所で屈曲している
- 海綿体部尿道の屈曲は陰茎を垂直に引っ張り上げることで直線化できる
- 球部尿道の屈曲は硬性膀胱鏡を挿入しない限り直線にはならない.したがって挿入した尿道カテーテルは球部尿道で曲がるのだが,そのすぐ先には括約筋があり,多くの意識のある男性は力が入って括約筋が緊張し閉じているため尿道カテーテルが通過しづらい
- 留置する尿道カテーテルは尿流を妨げない程度になるべく細い方がよいとされ成人の場合は通常 12~ 16 Fr のカテーテルを使用するが,細いとカテーテルが屈曲しやすくなり挿入が困難になることがある
経管栄養のトラブル
嘔気・逆流
- 流速調整
- ゲル化製剤に変更
- 薬剤投与
誤嚥・誤嚥性肺炎
- https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/107/6/107_1035/_pdf
高齢者の肺炎予防
高齢者肺炎の予防戦略は「肺炎球菌ワクチン+インフルエンザワクチン」と「口腔ケア」が2本柱
肺炎の予防に口腔ケアを推奨する→ケアだけでなく、齲歯治療も重要
不顕性誤嚥予防の薬剤(シロスタゾール・ACE阻害剤・塩酸アマンタジン・半夏厚朴湯)
→処方しやすいのはレニベースと半夏厚朴湯のセット
- 口腔内の常在菌は嫌気性菌が主で好気性菌はその1/10 から1/100 に過ぎない→誤嚥性肺炎の原因菌は喀痰培養では困難である
- 誤嚥性肺炎を起こす細菌:
嫌気性菌はPeptostreptococcus, Prevotella, Fusobacterium などが多い
好気性菌では黄色ブドウ球菌が多く、次いでクレブジエラ、エンテロバクター、肺炎球菌、緑膿菌の順
→明らかな誤嚥性肺炎の場合は嫌気性カバーのファロムも選択肢(NQは嫌気無効で使いにくい) - 高齢者の肺炎予防において、インフルエンザ(ウイルス)ワクチンと肺炎球菌ワクチンの併用接種は推奨される
→インフルエンザウイルスに感染すると、気道や全身に変化が起こり、肺炎球菌などへの2次感染が生じやすくなる。実際に、本邦においてインフルエンザウイルス感染により入院した患者の合併症として肺炎が最も多く、36.4%を占めていた。また、インフルエンザ関連肺炎の原因微生物として、肺炎球菌が多く、死亡例の80%が肺炎を合併し、インフルエンザ関連肺炎の死亡率は9.5%であった。 - 不顕性誤嚥予防の薬剤(シロスタゾール・ACE阻害剤・塩酸アマンタジン・半夏厚朴湯)
- 現時点では、肺膿瘍や膿胸を伴わない症例では、誤嚥性肺炎であるからといって、嫌気性菌をカバーしなければならないという根拠は乏しい→エンピリック治療としてはCTRXの使用がスマート!
※論文ではACEIとしてイミダプリル、エナラプリル、カプトプリルが用いられている
(旧版)脳卒中治療ガイドライン2009(抜粋)
脳卒中患者における肺炎は、ACE阻害薬8),9),10)(IIb)、抗血小板薬シロスタゾール11)(IIb)、アマンタジン12)(III)により減少することが報告されているが、日本人あるいはアジア人種のみの報告である。
★★★誤嚥性肺炎を繰り返す終末期の相談★★★
蜂窩織炎
- 体幹,四肢,腋窩,または頭頸部の膿瘍で最も頻度の高い原因菌:
- 黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)
→米国ではMRSAの頻度が最も高い - 化膿性レンサ球菌(Streptococcus pyogenes)
→A群レンサ球菌や、A群β溶血性レンサ球菌とも呼ばれる
- 黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)
- 会陰(すなわち,鼠径部,腟,殿部,直腸周囲)の膿瘍:
- 糞便中に存在する菌が含まれ,通常それらの菌は嫌気性菌であるか,好気性菌と嫌気性菌が混在する
高血圧
高齢者の治療適応と降圧目標→3年以上生きれる人は治療適応
- 高齢者高血圧治療の目的は心血管イベント、脳血管イベントの減少
- 余命3年以上が降圧治療の対象
- 降圧療法に伴う脱水、血圧低下、転倒、急性腎不全などのリスクが増加しないよう薬剤および患者選択する
- 75歳以上の降圧目標は診察室血圧を指標として140mmHg未満(並存疾患などで130mmHgの場合も)
- 米国のSPRINT試験では基礎疾患のほぼない健康な75歳以上の高齢者に限れば、120mmHg未満に厳重管理した方が心血管イベントによる死亡が少なかったが、日本人のデータはない
- フレイルや要介助状態の場合には、降圧治療の管理目標はケースバイケース
- 日本の高血圧治療ガイドライン2019ではすべての75歳以上の降圧目標は,基礎疾患に関わらず140/90mmHg未満に引き下げられ、さらに忍容性があれば(若い人と変わらず元気であれば140mmHgを達成できたのちに)130/80mmHgを目指すことがもりこまれた(2014年版よりも目標血圧が-10mmHg引き下げられた)
- JSHのガイドラインにおいて高齢者高血圧の第一選択薬は,少量利尿剤,長時間作用型Ca拮抗薬,ACE阻害薬/ARBで高齢者でも非高齢者でも治療選択薬は同じ
- ACE阻害薬は,サブスタンスPの分解を阻害することによって嚥下反射・咳反射を改善させることが期待されるので,積極的に使用を検討できる
- サイアザイド系利尿薬には,他の降圧薬と比較して骨折頻度が低下したという報告がいくつかある
なんでもいいならCa拮抗薬が無難!
誤嚥や骨粗しょう症のリスクがあるならACE阻害薬やサイアザイドがおすすめ!
加齢性難聴
加齢性難聴の特徴:①語音明瞭度の低下、②高音域の低下が強い、③会話以外の音があると聞き取りにくい
- 難聴の高齢者への対応
①静かな環境の準備
②声のトーンは低く
③必要によっては筆談、補聴器、耳垢塞栓の除外
サルコペニア
総論
- 一般的に 70 歳までに 20 歳代に比較すると骨格筋面積は 25~30%,筋力は 30~40% 減少し,50 歳以降毎年 1~2% 程度筋肉量は減少する
- サルコペニアの存在は,高齢者では「ふらつき」「転倒」 , ,さらには「フレイル」に密接に関連し,その先には要介護状態が待ち受けている
- サルコペニアには加齢によるもの(一次性サルコペニア、原発性とも)と二次性サルコペニア(明らかな原因のあるもの、炎症、腫瘍、神経疾患、内分泌疾患など)に分類される
加齢→サルコペニア→フレイル→要介護という流れ
サルコペニアを予防すれば、フレイルや寝たきり、要介護状態の高齢者の減少につながる
定義
- AWGS2019に基づいたサルコペニア診断が推奨されている
- サルコペニアを筋肉の力(=握力)、機能(=下肢の機能)、量(=四肢の筋肉量)という3つの指標によって判定
- 筋肉の機能は、歩行速度、5回椅子立ち上がりテスト、Short physical Performance Battery(SPPB)のいずれかで判定
- 筋肉の量は生体電気インピーダンス法(BIA法)もしくは二重エネルギーX線吸収法(DXA法)という2種類の方法によって計測
- 筋肉量の減少は必須項目で、機能低下または筋力低下のいずれかがあればサルコペニア、3つそろうと重症サルコぺニア
- 筋肉量の測定ができない施設では、サルコペニアの疑いで予防開始する、または専門施設に紹介する
- 指輪っかテスト→親指と示指で作った輪っかでふくらはぎを1周できる場合はサルコペニアの疑い
転倒→骨折→寝たきり→肺炎、認知症
筋力低下だけでなく、低血糖、低Na血症、脱水、不眠(と不眠症治療薬)、にも注意
介入方法
- 運動に関しては,特にレジスタンス運動の効果がメタ解析でも明らかにされており筋肉量への効果は一定しないが,筋力,身体能力に関しては効果があるとの報告が多い
- 栄養に関しては栄養単独または運動との併用効果の介入研究があるが,いずれも参加対象者が少なく小規模な介入研究が多い
- 日本での RCT 研究もいくつか実施されており,運動とアミノ酸投与の併用に効果があると報告されている
フレイル
定義
- frailty(フレイルティー)の日本語訳
- 病気ではないけれど、年齢とともに、筋力や心身の活力が低下し、介護が必要になりやすい、健康と要介護の間の虚弱な状態
- わかりやすく言えば「加齢により心身が老い衰えた状態」
- フレイルは、早く介入して対策を行えば元の健常な状態に戻る可能性がある
フレイルの基準には、さまざまなものがあるがFriedが提唱したものが採用されていることが多い。Friedの基準には5項目あり、3項目以上該当するとフレイル、1または2項目だけの場合にはフレイルの前段階であるプレフレイルと判断する。
- 体重減少:意図しない年間4.5kgまたは5%以上の体重減少
- 疲れやすい:何をするのも面倒だと週に3-4日以上感じる
- 歩行速度の低下
- 握力の低下
- 身体活動量の低下
- 加味帰脾湯
- 効能:虚弱体質で血色の悪い人の次の諸症。貧血、不眠症、精神不安、神経症。
- 体力中等度以下で、血色のわるい人が貧血や心身の過労によって、気分がイライラしたり、落ち着きがなくなったり、元気がなく口数が少なくなったりして精神不安や神経症、不眠症をおこした時に効果があります。
- 長期服用時に腸間膜静脈硬化症が報告されているようです。万一のことですが、腹痛、腹部膨満、下痢または便秘が続く といった症状に注意し、そのような場合は医師に報告してください
悪液質
癌に限らず、慢性炎症に伴った体重減少,筋肉減少症(サルコペニア)をきた す病態であり,COPD でも 20 ~ 40% に認められる とされている
呼吸音
呼気時も吸気時もラ音が聞かれたら(=スクウォーク)肺炎の可能性大!!!
正常呼吸音は吸気時に聞こえる、聴診部位ごとに音が異なる(3種類)
誤嚥性肺炎、間質性肺炎は肺下葉に好発する→前面だけでは肺下葉の聴診は困難→側面や背面も聴く
呼吸音の音源はYoutube(英語)でたくさん動画が利用できる
- 胸聴診を行う際も解剖学的な理解をする。
- 正常呼吸音を知り、正常からの逸脱を意識した聴診を行う。
- 聴診部位により聴取される音の高さ、長さが異なる。
- 肺胞は高音を吸収する音響フィルターの役割→下肺野では低音しか聴取されない。
- 水泡音(course crackle):
- 水をストローでブクブクしたとき→空気が肺に入る、吸気時全体に聞こえる
- 捻髪音(fine crackle):
- 紙風船に空気を入れるとき→空気が肺に入る、吸気時後半にむかい強く聞こえる
- 連続性雑音(やや高音のWheeze、やや低音のRhonchi):本質的には同じ病態(=気道の狭窄)で生じる
- 末梢気道が狭窄することによる→喘息、心不全、COPD、笛が鳴る=胸腔内が陽圧となる呼気時に聞こえる
- さらに狭窄が強くなればいずれは吸気時にも聴取される
→吸気時に聴取される病態としては、胸腔内が陰圧になり、通常は胸腔内の気管支が拡張する訳だが、それでも狭窄が解除されないほど進行している状態であるということ
- 発作が重症であればあるほど狭窄している気管支も、より太い気管支まで障害されるためwheezesとrhonchiが混在したような音が聴取されるようになる
- 最重症の状態になるとラ音が聴取されなくなる=狭窄が非常に強い場合は十分な空気の流速が確保できないのでラ音が消失する
- Jónsson分類:Wheezesの重症度を評価(0~IV度)
- Wheeze=気管支喘息ではない、心不全のこともある→治療がま逆(β刺激がアダとなりうる)なので注意!
- 心不全・肺水腫でのWheezes発生機序:
左室ないしは左房圧の上昇により、肺毛細血管圧が上昇→血症浸透圧を越えて肺毛細血管圧が上昇すると肺の間質に水が溜まります→その水が末梢気道を圧迫することで気管支狭窄が起き、wheezesが聴取されます
- 心不全・肺水腫でのWheezes発生機序:
- Rhonchi=COPDが多いが、単純に痰詰まりによる狭窄でも聴取される
- COPDで肺が過膨張になると、①肺胞が絶えず外側に膨れ上がろうとするので、②その分空気が気管支側から引き込まれます。それに伴い③比較的太い気管支が引っ張られて狭窄するためrhonchiが聴取されるという事です。
- さらには慢性の気道炎症と気管支壁の肥厚、分泌物の増加などもrhonchiの原因の一助となっています。
- ちなみに気道の分泌物(痰)のみでもrhonchiを聴取しますが、咳をしてもらうと音が変化したり、痰の場合は単音性(monophonic)になる事が多く、閉塞性肺疾患の病態とは分けることが可能です。
- ストライダー(Stridor):一番緊急性が高い!!!!!
- 上気道の閉塞(首を絞められている人がウウウウーーーって言っている)→窒息、上気道狭窄=吸気時に強い
- 頸部>胸部で強く聞かれる
- 聴診器あてる前にゼイゼイ言ってる人もいる
- 鑑別は急性喉頭蓋炎、喉頭浮腫、気道異物、小児ならクループなど
- Youtube音源→https://www.youtube.com/watch?v=vDdJo0RPKa8
- 胸膜摩擦音(Pleural Friction Rub):
- Youtube音源→https://www.youtube.com/watch?v=xxVvxdoAUPk
- Squawk→吸気も呼気も聞こえたらSquawkの可能性=一般診療では肺炎>気管支拡張症
- 吸気時のcrackleに続くshort wheezes
- 気管支拡張症で聴取される頻度の高い所見がsquawkだが、Squawkは気管支拡張症に特異的な所見ではなく、むしろ一般的には肺炎で聴取されることが多い
- Crackleの分類(タイミングによる分類)
- Late inspiratory Crackles:
- 吸気の終末に向けてCrescendoパターン(音が徐々に大きくなるパターン)のCrackles
- 間質性肺炎、軽症心不全(間質の浮腫)、非定型肺炎(マイコプラズマ肺炎・クラミジア肺炎・レジオネラ肺炎・ウイルス肺炎・Q熱など)など
- Holo-inspiratory Crackles (Pan-inspiratory crackle)
- 吸気の全フェーズにおいて等しい大きさで聴かれるCrackles
- 肺水腫、重症心不全(肺胞の浮腫)、細菌性肺炎(肺炎球菌性肺炎・クレブシエラ菌肺炎など)
- Late inspiratory Crackles:
心音
弁の閉鎖音 A→P→T→Mの順に聴診する、聴診部位によりS1>S2(T弁M弁領域)、S1<S2(A弁P弁領域)となる
S1(I音):T弁、M弁の閉鎖音、ドッ Lub
S2(II音):A弁、P弁の閉鎖音、クン Dub
心雑音→高齢者の場合は病的意義あり
S3(拡張早期に心房から心室へ血液が急速に流れ込む時の音)ナッ・ト・ク、 1 23、1 23
S4 (拡張後期に起こる心房収縮音)、ワ・カッ・タ 41 2、41 2
- S3、S4の特徴
- S3、S4ともに心尖部のみで聴取される
- 低音で聴取しにくい音、左側臥位で聴かれやすい
- S3やS4 は、まったく健康な若い人にも聴かれる
- 特にスポーツマンや、妊娠中の女性、貧血、甲状腺機能亢進症の場合は、全身の循環血流が増加しているからで、生理的な現象であると考えられ、30歳代までは30%聴かれる
- S3(III音)の病的意義
- 心尖部にベル型聴診器を軽く当てる
- 左室充満圧が上昇すると左房圧も上昇するため,拡張早期に左房から左室へ急速に流入しIII音が発生する
- I音・II音の高調な音と異なり,III音は低調なため聴き逃しやすい
- 心室のコンプライアンス減少(リモデリングで硬くなった)で発生しやすい
- 僧帽弁閉鎖不全症、大動脈弁閉鎖不全症、心室中隔欠損症、心筋梗塞、虚血性心疾患、心筋症、心筋炎などで聴取され、心不全の徴候として重要
- S4(IV音)の病的意義
- 左房負荷所見
- 肺高血圧症、大動脈弁狭窄症、虚血性心疾患、心筋炎、心筋症で聴取
- 奔馬調律(gallop rhythm)
- 4種類ある
- Ⅲ音が聴取されるS3 gallop
- Ⅳ音が聴取されるS4 gallop
- Ⅲ音もⅣ音も聴取される四部調律
- 頻脈などでⅡ+IIIが同時に聞えるSummation gallop
- 4種類ある
心エコー
心室壁が厚くて壁運動低下→AMI
心室壁が薄くて壁運動低下→OMI
はじめに
(1) 前準備
- 完全左側臥位で、 左腕を拳上させ肋間を広げる→肺が左方に偏位し、適当な走査点が得られるため
- 患者さんの腰の高さに座る
(2) 基本走査の方法例
- まずは傍胸骨長軸像
- まずは走査点(肋間)を探す→右肩にプローブのマーカーを向ける
- 定まった走査点を固定したまま、 Tilt(傾斜)やRotation(回旋)などを用いて目的の傍胸骨長軸像を描出
- 時計回り90°回転させて、 傍胸骨短軸像
- 大動脈弁、僧帽弁、乳頭筋、心尖部レベル
- 再び傍胸骨長軸像に戻す
- 長軸心尖部方向にスライドさせ心尖部3腔像
- 心尖部像の描出については、 直接心尖部に当てる手段もあるが、 初学者には難しい場合もあるため、 今回は上記方法を推奨
- 時計回り60°回転し、心尖部2腔像
- 時計回り60°回転し、心尖部4腔像
- 時計回り10°回転し、胸壁側を見上げるようプローブを背側に傾け、 心尖部5腔像
(3) プローブの当て方と持ち方のコツ
- 力まず軽く胸壁に当てる程度
- 小指球から手首を胸壁に接し、ブレ防止
1.傍胸骨長軸像の走査と正常像
【断層法】僧帽弁逸脱 (MVP)、左室壁運動
【Mモード】左房径、左室径、中隔厚、EF、%FS
【カラー】僧帽弁逆流(MR)、大動脈弁逆流(AR)
を評価する
- 左側臥位で、 左腕を拳上させ肋間を広げる、プローベを左傍胸骨におき、 右肩に向ける、高さの目安は、乳頭間または1個上の肋間
- 左室が最大に描出され、 大動脈前壁と心室中隔の高さを合わせる (もしくは大動脈前壁のほうかがやや高くなる断面)→左室が一番長く見え、A弁とM弁が1スライスで表示される
- 断層法の計測は内側から内側→trailing edge to leading edge
▼このビューで計測する項目
- ◎IVSth:thickness of interventricular septum (心室中隔厚拡張期) 7-11mm
IVSthは12mm超えていたら、 「左室肥大あり」と覚える。 左室拡大の鑑別は、 拡張型心筋症、 二次性心筋症 (心臓サルコイドーシスなど)、 虚血性心筋症、 弁膜症性心筋症 (AR、 MR)、 先天性心疾患など - ◎LVDd :left ventricular end-diastolic diameter(左室内径拡張期) 36-52mm
LVDdは男性で55mm、 女性で50mm超えていたら、「左室拡大あり」 と覚える。 左室拡大の鑑別は、 拡張型心筋症、 二次性心筋症(心臓サルコイドーシスなど)、 虚血性心筋症、 弁膜症性心筋症 (AR、 MR)、 先天性心疾患など - LVDs (左室内径収縮期) 22-39mm
- LVPWth (左室下壁厚拡張期) 8-12mm
- AoD (大動脈径) 20-32mm
- ◎LAD (左房径) 27-38mm
LADは40mm超えていたら、 「左房拡大あり」 と覚える。 左房拡大の鑑別は、 心房細動、 MRなど - ◎EF (左室駆出分画) 50-65%→意外と簡単に計測可能!!!
Mモードエコー図による求め方は, 傍胸骨長軸像あるいは短軸像で, 左室最大短径を通るビーム方向での心室中隔左室側心内膜面から, 左室後壁心内膜面までの垂直 (直線) 距離を拡張末期と収縮末期で計測する。
なんと、LVDdとLVDsさえ、わかればすなわちEFが計算できてしまう。
理論式LVEF[%] = ( LVEDV – LVESV ) / LVEDV * 100
計算式として Teichholz 法が一般的である(計算式の詳細は難しいので省略).
この式は拡大し, 球形に近づいた左室にも応用でき, 左室造影で求めた容積と相関がよいとされている. ただし,
心室瘤など左室の形態が回転楕円体から大きくはずれる症例には適応できない. また, 心室壁運動が局所的収縮異
常 (asynergy) を伴う症例にも不適である.
2.傍胸骨短軸像の走査と正常像
(1) 大動脈弁レベル
観察すること
【断層法】大動脈弁、冠動脈起始部
【カラー】三尖弁逆流 (TR)
- 傍胸骨長軸像から90°時計回りに回転
- 画面中央に3枚の大動脈弁が描出され、 右側に肺動脈弁 (PV)、 左側に三尖弁 (TV) が描出される断面を描出する
- この時、 プローベから垂直に降りる線上の中央に大動脈弁の中心が来るように描出する。 そうすればこの後の僧帽弁レベル、 乳頭筋レベル、 心尖部レベルの軸がずれない
▼正常所見
- 大動脈弁は 「三尖弁」 である
- 大動脈弁の 「開放」が保たれている
- 通常大動脈弁尖の石灰化はみられない
(2) 僧帽弁レベル
観察すること
【断層法】MVPの局在検索
- 大動脈弁レベルから心尖部を少し見下ろすように傾ける
- 僧帽弁前尖と後尖が描出され、 僧帽弁交連部の開放が左右均等になる断面を描出する
▼正常所見
- 僧帽弁は 「二尖弁」 である
- 僧帽弁の 「開放」が保たれている
- 僧帽弁の「逸脱」はみられない (MR)
- 下壁後壁は僧帽弁により、動きが悪く見えることがある(二腔像、 三腔像で評価)
(3) 乳頭筋レベル
観察すること
【断層法】左室壁運動
- 僧帽弁レベルからさらに心臓尖部を少し見下ろすように傾ける
- 左室が正円に描出され、 左室内に前乳頭筋と後乳頭筋が観察される断面を描出する
- 肋骨により描出できない場合、 左室長軸に沿って一肋間下げてやや外側に移動させる
▼正常所見
- 局所壁運動異常がないか確認する (後述)
- EF (左室駆出分画) 50-65%
- 右室圧排所見がないか確認する
(4) 心尖部レベル
観察すること
【断層法】左室壁運動、心嚢液貯留
- 乳頭筋レベルからさらに心臓尖部を少し見下ろすように傾ける
- 肋骨により描出できない場合、 左室の長軸に沿い1肋間下げてやや外側に移動させる
- 左室が正円に描出され、 左室内に前乳頭筋と後乳頭筋が観察されない断面を描出
- 体位と呼吸を調節し、 画面の中央に左室が描出されるように設定する
- 呼吸の調節は、プローベが上位肋間にある場合には呼気位、 下位肋間にある場合には吸気位にて息止めをして観察するとよい
▼正常所見
- 局所壁運動異常がないか確認する (後述)
- EF (左室駆出分画) 50-65%
- 右室圧排所見がないか確認する
3.心尖部像の走査と正常像
(1) 心尖部4腔像
観察すること
【断層法】左室壁運動、LVEFの測定
【カラー】MR、e’
- 傍胸骨短軸像の心尖部レベルを指標に、 プローベを心尖部に固定し、 そこから胸壁側を見上げるようプローベを背側に倒すように傾ける。 あるいは傍胸骨長軸像から長軸方向にプローブを滑らせて、 心尖部三腔断面を描出、 そこから120°時計回りに回転させる
- 2つの手段があるが、 前者が難しい場合もあるため、 今回は後者を推奨する。
- 右房や左房が十分に観察できない場合は、 超音波ビームが、 より胸壁側に向かうようプローベを背側に傾ける. 逆に、 傾斜角度が強すぎた場合には、 右房や左房に加え大動脈弁も観察される
- 必ず心尖部の頂点にプローベが位置するように固定する。 そうすればその後の2腔像と3腔像の軸はぶれない。
- もしこの時点で描出不良の場合は、 体の傾きの角度をさらに倒すか、 緩めるかだけで、 心臓の位置が変わり描出できる場合がある。
- また、 呼吸の指示も重要で、 吸気ののちに呼気を指示し、 吐き切ったところで呼気止めをしてもらうと肺が被らずに描出できる場合がある。 人によっては吸気の終わりのほうが見やすこともあり、 横隔膜を上下させて心臓の位置を変え、 一番描出がしやすいところで息止めしてもらうのもよい。
▼確認事項
- 局所壁運動異常がないか確認する (後述)
- LVEF 50-65%
- ベッドサイドであれば見た目の判断 (visual LVEF)
- 心不全の場合、 LVEF 40%未満をHFrEF (heart failure with reduced ejection fraction)、 40%以上50%未満をHFmrEF (heart failure with mid-range ejectionfraction: HFmrEF) という
- LVEFの測定法にはいくつかあるが、 ベッドサイドですぐに計測は難しいため、 日頃からLVEFが計測されたエコー像と自身のVisual LVEFのズレがないかを確認しておくことが重要である。
(2) 心尖部2腔像
観察すること
【断層法】左室壁運動 (下壁 *RCA領域)
- 心尖部四腔断面から、 プローベをゆっくりと反時計方向に60°回転させる
- 僧帽弁の腱索が左右対称に描出されれば軸がずれていないことが確認できる
- 左室左房が最大に描出され、 かつ右室や右房、 大動脈弁が描出されないよう、 回転角度と傾斜角度を調節する
(3) 心尖部3腔像
観察すること
【断層法】左室壁運動 (後壁 *LCX領域)
【カラー】AS、AR
- 心尖部二腔断面から、 プローベをゆっくりと更に60°反時計方向に回転させる
- もしくは傍胸骨長軸像から長軸方向にプローブを滑らせて、 心尖部三腔断面を描出する
- これは前述したように、 傍胸骨長軸像を心尖部から描出した像である。
- もしも大動脈弁の流速を測定する場合は、 この心尖部3腔像、 また後述する心尖部5腔像で計測する。
▼確認事項
- 局所壁運動異常がないか確認する (後述)
(4) 心尖部5腔像
観察すること
【断層法】左室壁運動
【カラー】E/e’、 左室-大動脈弁圧較差
- 心尖部四腔断面から、 プローベをゆっくりと10°反時計方向に回転、 さらに胸壁側を見上げるようプローベを背側に傾ける
- もしも大動脈弁の流速を測定する場合は、 前述の心尖部3腔像、 またこの心尖部5腔像で計測する
▼確認事項
- 局所壁運動異常がないか確認する (後述)
心筋梗塞を疑った時のアプローチ
大前提として、 短軸像を理解する。
その上で4腔像、 2腔像、 3腔像が短軸のどの断面で輪切りにしたものかを理解すれば、 冠動脈支配域を理解しやすい。 その上で以下の項目に注意する。
1. 傍胸骨長軸像で心尖部の動き↓
LAD 左前下行枝領域の心筋梗塞疑う (初期は心尖部から壁運動低下するため)。 その上で、 前壁~前壁中隔領域を確認する。
2. 心尖部二腔像で下壁基部の動き↓
RCA 右冠動脈領域の心筋梗塞疑う。 その上で、 その他の下壁領域を確認する。
3. 心尖部長軸像で後壁中部~基部の動き↓
LCX 左回旋枝領域の心筋梗塞疑う (後壁から壁運動低下するため)。 その上で、 その他の後壁~側壁領域を確認する。
- 心臓のサイズ、壁の厚さ、収縮率の3つ
- 拡張末期の中隔圧、左室サイズ、左室後壁
- 壁厚(へきこう):>1cmで肥大、拡張末期Dd>45㎜で拡大
- 短軸像:
- 傍胸骨長軸から90度時計回りにまわす
- 同じ肋間から大動脈弁から心尖部までチルトですべて見える
乳頭筋レベルの短軸像で左室の動き、サイズ、肥大をチェック
がん総論
- がんと診断されるのは年間100万人
- がんで死亡するのは年間37万人
緩和治療総論
人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン
「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」(厚労省、2018年改訂)
慢性心不全の緩和治療
慢性心不全の緩和治療総論
2021年改訂版循環器疾患における緩和ケアについての提言を参照
心不全終末期の身体的・精神的苦痛はがんの終末期と同等
最も多い症状は①呼吸困難、②倦怠感、③痛み
心不全緩和治療の手順→まずは患者の苦痛を包括的に評価する。既存の患者報告アウトカム尺度(NRSやVASなど)や代理評価(本人が意思表示できない場合)を用いて主観的な評価を客観的に把握する
心不全終末期の緩和治療の基本方針
治癒的治療は最後まで継続しつつ(=症状緩和にも有効)、緩和的治療を徐々に強化していく
非癌性の緩和治療に保険適応があるのはモルヒネ塩酸塩(とコデインリン酸)のみ(心不全での保険適応はない)
呼吸苦に対するモルヒネは鎮痛に用いるよりも少量で有効→5~10㎎/日からスタートする
カテコラミン持続静注(ドブタミン等)もHFrEFの症状緩和に有効
心不全の緩和ケアプログラム(HEPT)→末期心不全の緩和ケア診療加算の算定要件
慢性心不全(心不全増悪後一時回復時の長期予後予測モデル)
SHFM(Seattle Heart Failure Model)
◎MAGGIC 予後モデル
MAGGIC(Meta-analysis Global Group in ChronicHeart Failure)予後モデルは,ランダム化比較試験または大規模レジストリ 30 試験に登録された慢性心不全約 4 万人のデータをメタ解析することにより構築された予後モデルである.3 年後までの予後予測が可能であり,ウェブサイト上で計算できる(http://www.heartfailurerisk.org/).SHFM と比べ比較的シンプルなモデルであるが,死亡率がやや高く算出される.長期予後モデルは急性期モデルと比較するとモデル間のばらつきがやや大きくなるため,ある程度幅をもって解釈する必要がある.
◎サプライズ・クエスチョン
慢性心不全の身体的苦痛:呼吸困難(薬物療法)
非癌性の終末期緩和治療に使用できるのはモルヒネ塩酸塩(経口or注射剤)のみ
×MSコンチン(モルヒネ硫酸塩):錠剤 ※塩酸塩はレスキュー、硫酸塩は徐放錠に使用される
激しい疼痛を伴う各種癌における鎮痛 のみ
×オプソ:液体
中等度から高度の疼痛を伴う各種癌における鎮痛 のみ
×アンペック:座薬
激しい疼痛を伴う各種癌における鎮痛 のみ
◎モルヒネ塩酸塩:注射製剤
激しい疼痛時における鎮痛・鎮静
激しい咳嗽発作における鎮咳
激しい下痢症状の改善及び手術後等の腸管蠕動運動の抑制
麻酔前投薬、麻酔の補助
中等度から高度の疼痛を伴う各種癌における鎮痛
◎モルヒネ塩酸塩:錠剤
激しい疼痛時における鎮痛・鎮静
激しい咳嗽発作における鎮咳
激しい下痢症状の改善及び手術後等の腸管蠕動運動の抑制
※ヒドロモルフォン系はすべて非癌性の緩和治療には使用できない
→保険適応は 中等度から高度の疼痛を伴う各種癌における鎮痛 のみ
慢性心不全の身体的苦痛:呼吸困難(非薬物療法)
慢性心不全の身体的苦痛:倦怠感
※安静にしていると起こる「デコンディショニング」という症状
これは、身体を動かさないことによって起こる異変の総称を指します。 筋肉の萎縮や筋力・肺活量の低下、立ちくらみやふらつきなどが代表的な症状です。 運動能力が低下することによって自分自身で身体の調節ができなくなり、このような体調の変化が起こります
慢性心不全の身体的苦痛:痛み
NSAIDS、三環系抗うつ薬は心不全増悪させるので使用しない
耐え難い苦痛(呼吸困難や疼痛)の場合には、鎮静薬を使用する
耐え難い苦痛に対する鎮静薬
持続的鎮静を開始する場合は、家族および多職種チームで協議のうえ、適応を判断する
鎮静の深さはRASSを用いて評価する
鎮静開始してからの生存期間中央値は4日間
慢性心不全の精神的苦痛
心不全にうつ病やせん妄が合併すると生命予後に影響する
不安とは
『対象のない不安』のことで日常生活に支障をきたす場合を不安障害と呼ぶ
不安の評価法としてHADS(ハッズ)がある
抑うつ状態/うつ病とは
抑うつ状態とは、気分の落ち込みのこと
うつ病は、うつ病診断基準(DSM-5)を満たす強い抑うつ症状のこと
心不全における有病率:うつ病は19%、抑うつ状態は33%
心不全合併のうつ病に対しては薬物治療の明確なエビデンスなし
→SSRIが使用されることが多い
少なくとも三環系抗うつ薬は心不全増悪をきたすため避けた方がよい
抑うつのスクリーニング→必須!
心不全の緩和治療においては、以下の質問票で抑うつのスクリーニングを繰り返し行う必要がある
YESの場合は以下の質問票↓へすすむ
Patient Health Questionnaire depression module(PHQ-9)は、うつ病の検出と重症度の評価に使用される9項目の自己記入式検査である
Patient Health Questionnaire-2(PHQ-2)はPHQ-9の最初の2項目(抑うつ気分と無気力の頻度を評価する)で構成されており、PHQ-9の評価を受ける患者を特定する最初のステップとして使用することができる
心不全合併うつ病の薬物療法→明確なエビデンスのある薬剤はない
心不全合併のせん妄
せん妄対策では予防が最も重要!!!
慢性呼吸不全の緩和的非薬物療法
- 在宅酸素の適応:
- SPO2:88%以下でHOTの適応
- 0.5~1L/minから開始
- 安静時呼吸苦が少なければ労作時や夜間のみ使用する方法もある
- 薬物療法:
- ステロイドの内服や吸入
- デバイス:
- 酸素濃縮器
- 2~7L/minの酸素量、電源で動く、チューブは十メートル以上
- 7Lを2台併用で14L/minとする方法もなくはないらしい
- 携帯型酸素ボンベ
- 外出時に使用する
- 停電時にも使用できる
- 呼吸同調器(酸素ボンベに接続)
- 吸気時にのみ酸素が流れるため約3倍ほどボンベが長持ちする
- 吸気の力が弱いとサポートが入らないので高齢者には不向き
- 在宅用NPPV→下記参照
- 酸素濃縮器
在宅用NPPV
適応:拘束性換気障害、2型呼吸不全(COPDや間質性肺炎、神経筋疾患など)
導入時は入院にて血液ガスやSPO2モニタリングのうえで有効性を評価する
入院で使用するNPPVよりも使用感がよいらしい
酸素投与も可能だが、調整できるのは酸素流速のみ
- 在宅でのNPPV使用件数は増加傾向、2万件/年を超えている
- 在宅NPPVの場合、酸素投与は基本行わないでよい病態に使用する(慢性疾患)
- 急性期や緩和療法の場合には酸素投与NPPVも使用(心不全の急性増悪時や終末期緩和治療など)
- 在宅NPPV疾患別患者数はCOPD、肺結核、神経筋疾患(ALSなど)の順
- NPPVに期待される効果
- 1回換気量の増加=CO2のガス交換促進
- 自覚症状の改善
- 急性増悪の回避(入院回数の減少)
- 生存率の向上
- QOLの改善
- NPPVの合併症
- 皮膚障害:マスクやベルトの圧迫による
- 目の結膜の乾燥:NPPVからのエアリークによる
- 気道の乾燥
- 消化管へのガスの流入
- 睡眠障害
- 適応:
- 使い方:
- 診療報酬
- NPPV単独で9万/月、HOT併用で14万/月
- NPPV:Noninvasive Positive Pressure Ventilation
-
吸気と呼気の圧が違う
COPDや神経筋疾患、心不全の急性増悪などで使用 - CPAP
-
睡眠時無呼吸症候群の治療
マスクは鼻にだけあてるタイプと口鼻すべてを覆うマスクがある
常時一定の圧をかける
一定の陽圧を気道内にかけることによって、膨らみにくくなっている病的肺を広げる
慢性呼吸不全の緩和的薬物療法
オピオイドで呼吸困難が改善する COPD 患者の70%が10 mg/日以下(経口モルヒネ換算)の少量のモルヒネで改善しているとし、非がん性呼吸器疾患の呼吸困難に対するオピオイドの初期投与量は、屯用の場合 経口モルヒネ 2.5㎎、徐放剤では 10mg/ 日から開始すること、注射の場合は複数の(弱 い)エビデンスを挙げた上でモルヒネ注射剤持続注射 0.25mg/ 時以下(6㎎ / 日)から開 始すること、増量については、呼吸困難や副作用を十分評価した上で 1.3 ~ 1.5 倍に増量する。
- 認知症→末期認知症の緩和治療も参照
死前喘鳴(death rattle)
臨死期の死前喘鳴(death rattle)は「死期が迫った患者において聞かれる呼吸に伴 う不快な音」で、気道内分泌物貯留の原因から 2 つに分類される。終末期の喘鳴は、真性死前喘鳴(Ⅰ型)といい、終末期における意識障害や嚥下障害により唾液をうまく排 出できず、上気道(主に咽頭部)内に唾液などの分泌物が貯留することによって引き起 こされる。一方、偽性死前喘鳴(Ⅱ型)は気道や肺の病変(腫瘍、感染、肺水腫や出血 など)からの分泌物が増加することで引き起こされる喘鳴であり、時期を問わず出現する。 死前喘鳴の抗コリン薬の有効性については、末期がん患者を対象とした 2 つの無作為 化比較試験とがん以外を対象とした 3 件の系統的レビューの結果から、死前喘鳴の抗コリン薬の有効性を示唆する明確な根拠は認められなかった。
真性死前喘鳴(意識がない状態)
この時期には、喘鳴は患者にとって苦痛になっていないことが多いものの、家族など周囲の人々にとっては苦
痛となることが多い。
真の死前喘鳴は唾液の嚥下ができず、のどの奥で溜まるための声帯部の音であり患者さんは苦しくないと言われている。点滴などしている(水分過多)と終末期の時期には体が水分吸収できず、痰が増え、むくみ、胸腹水がたまり、それによる喘鳴は、患者さんは水でおぼれた状態になり苦しめることが多いので、後述するように、このことを説明し輸液を中止する、あるいは減量することも説明する。
死前教育の中の旅立つ過程であり、患者は苦しくないことを家族に十分に説明し、その次に下顎呼吸が来て旅立つことを説明することが、家族が安心して旅立ちに寄り添うために大切なことである。
がん終末期の緩和治療(総論)
ナルベイン、モルヒネ塩酸塩(注射剤)には濃度の異なる2規格があるためオーダー時注意
院内規格は1種類に統一する
経口摂取困難時の緩和→フェントス+ロナセン(せん妄治療・制吐)+ジクトルテープ
ロナセンの鎮静作用は強くない→ダイアップ坐薬など
モルヒネ投与時の注意
モルヒネ硫酸塩(MSコンチン)とモルヒネ塩酸塩は別の薬剤!
がん終末期の緩和治療(各論)
呼吸困難感・呼吸苦
がん患者において呼吸困難の発生する頻度は 46~59%
もちろん◎モルヒネ→呼吸困難にも咳嗽にも有効
呼吸困難→ベンゾジアゼピンやステロイド(長時間型のベタメタゾンやデキサメタゾン)
咳嗽→◎メジコン、△プレガバリン・ガバペンチン、△リドカイン吸入(エビデンス乏しい)
麦門冬湯、
がん患者の呼吸器症状の緩和に関するガイドライン(2016年版)
低酸素血症がある場合のみ酸素投与が有効
モルヒネが最も使用されるが、腎不全時にはヒドロモルフォンが使用しやすい
エンドステージの場合には、少量モルヒネを投与してもよい(→呼吸苦に使用するモルヒネは10-20㎎程度で効果頭打ちとなるので、鎮痛効果を求める場合にはモルヒネ高用量投与よりも呼吸苦対策に少量モルヒネ+鎮痛対策のヒドロモルフォンの併用という方法もある)
在宅緩和では経口剤が困難な場合はモルヒネ座薬(アンペック)も使いやすい
非薬物療法として、送風機によるかぜが効果的な場合もある
オピオイドによる嘔気やせん妄が強い場合には、モルヒネ塩酸塩(またはヒドロモルフォン塩酸塩注射液)とハロペリドール2.5~5㎎の混合液を持続皮下注してもよい(皮下硬結が出る場合(約4割に出現)にはハロペリドール中止する)
ただし、タイトレーション中(用量調整中)に混注するとフラッシュ等でハロペリドール過剰投与となる恐れがあるため、混注量は少量から開始する方がよい
※気道分泌物が多い場合には、①点滴をやめる、➁抗コリン薬をモルヒネ持続皮下注に混ぜる(ハイスコ)
→https://www.seirei.or.jp/mikatahara/doc_kanwa/contents6/33.html#anchor541
死前喘鳴の緩和治療のoverview
再膨張性肺水腫のメカニズムは,気胸が発症すると肺換気血流比の是正が起こり大きく虚脱した肺には血流の分布が少なくなる
そうした肺を勢いよく膨張させると一気に血流の再分布が起こり,膨 張させた肺の血流が多くなる
それに加え虚脱していた肺内の微小血管が肺の膨張とともに引き伸ばされることによりダメージを受ける
肺虚脱時間が長く虚脱率が大きいほど発生しやすい
肺毛細血管から肺胞へ血液成分の漏出がおこり多量の泡沫状血性痰を認め,喘鳴を聴取する
肺水腫が高度な場合,呼吸困難や低酸素血症に陥り,また,血漿漏出による低容量性ショックをきたし死亡する場合もある
人工呼吸器による適切な呼吸管理が必要であり,片側性肺水腫がみられる場合は左右分離肺換気を考慮する
咳嗽
鎮咳作用はモルヒネ>コデイン(らしい)
鎮咳効果については,コデイン自体が延髄の咳中枢を抑制すると想定されており,鎮咳薬として使用される理由となっている。
しかしながら,コデインの鎮咳作用は,十分量投与されたモルヒネと比較すると弱いと考えられている。 ジヒドロコデインは,コデインの誘導体であり,鎮咳効果はコデインに比べ強い (力価はコデインの 2 倍)。
疼痛
WHO方式三段階鎮痛法
「WHOがん性疼痛に関するガイドライン」の2018年改訂によりWHO方式三段階除痛(鎮痛)ラダーは本文から削除されたが、現行のガイドラインにおいても「三段階除痛ラダーは疼痛マネジメントにおける一つの目安である」とされANNEX(付録)に残っている。
オピオイド選択のアルゴリズム
単純に痛みをとりたい→オキシコドン(錠剤)+オキノーム(散剤) ※剤形が異なるメリットあり
ただし、後発品はオキシコンチン徐放錠、オキシコンチン即放錠で見分けが困難
呼吸苦をとるならモルヒネ(MSコンチン、オプソ、アンペック、注射)またはナルサス
- 癌緩和治療の置き薬(初回訪問時に自宅に置いておく、Y先生)
- アンペック5㎎…5回分
- ボルタレン座薬25㎎…5回分
- ナウゼリン座薬30㎎…5回分
- ノバミン5㎎2T分2は初回から併用
- オキノーム2.5㎎?…5回分
- 初回から便秘薬も出した方がよいだろう
- レスキュー薬の使用注意事項(Y先生)
- オキノームよりアンペック10㎎の方がよく効く→用量の違いによる
- アンペックの規格は10㎎、20㎎、30㎎だが、10㎎を使用する→20㎎なら2個、5㎎なら半分に切って使用
- オピオイドレスキューの基本原則
- 経口投与
- 1 回量はベースであるオピオイドの 1 日投与量の 10~20%→4~6回使用で1日量となることが目安
- 投与間隔は 1時間あけること
- 経静脈・皮下投与
- 1時間量、30分毎に追加
- 経口投与
各種オピオイド
- オキノームについて
- オキシコドンは肝代謝のため腎不全にも減量不要で慎重投与可能
- 服用後効果が出るまでに 15~30 分時間がかかる
- 60 分しても効果の無いときには再度オキノーム散を内服
- 1 日に服用できる回数の制限なし→代謝産物の蓄積がないため
- 服用しても症状が緩和されないとき、1 日 6 回以上服用しても症状が続くときはベースアップ
- モルヒネ全般について
- モルヒネの分類:
硫酸塩と塩酸塩の違いは合成方法であり,鎮痛効果や副作用,薬物動態に差はない(併用可)
塩酸塩:徐放製剤に利用→オプソ、アンペック、注射製剤
硫酸塩:即効性製剤に利用→MSコンチン、モルぺス細粒 - モルヒネ塩酸塩注には1%製剤(1A=10㎎/1mL、50㎎/5mLの2規格)と4%製剤(1A=200㎎=5mL)がある
- 腎不全下ではモルヒネは有害な代謝産物(Morphine-3-gluclonides)が蓄積するので、せん妄やミオクローヌス(痙攀)などを起こしやすくなるため、eGFR30以下の場合使用は原則禁忌
- モルヒネの代謝産物M6Gには鎮静・鎮痛効果があるため、腎不全者は作用が増強される
- アンペック:規格は10㎎、20㎎、30㎎
- 服用後効果が出るまでに 30 分程度時間がかかる
- 1時間しても効果がない場合はもう一度使用可
- 作用時間は 6~8 時間程度
- アンペック10㎎=オプソ15㎎=オキノーム10㎎相当なのでかなり高用量!
- オプソ:規格は5㎎、10㎎
- モルペス細粒:
錠剤やカプセルを飲み込めない患者に有用
また粒子径は小さく,8 Fr以上の経管チューブであれば経管投与が可能
- モルヒネの分類:
- ヒドロモルフォンについて
- ヒドロモルフォンはモルヒネと構造が似ていることから、呼吸困難や咳嗽による苦痛が緩和できる可能性がある
- 欧州臨床腫瘍学会のガイドラインでは、がんによる呼吸困難の治療薬としてモルヒネ、ヒドロモルフォンを挙げている
- 持続皮下注で用いた場合、モルヒネと比較して皮下硬結が生じにくいという報告がある
→モルヒネ皮下注では1%製剤で10.6%,4%製剤で23.5%と報告されている - ヒドロモルフォンの注射薬:ナルベイン→2種類の濃度があるため注意!
- 成人にはヒドロモルフォンとして1日0.5〜25mgを持続静脈内又は持続皮下投与
- オピオイド投与がない場合:
1日0.5〜1.0mgから開始し、鎮痛効果及び副作用の発現状況を観察しながら用量調節を行う - オピオイドローテーションの場合:
前治療薬の投与量等を考慮し、投与量を決めること。本剤の1日用量は、ヒドロモルフォンとして、モルヒネ注射剤1日用量の1/8量を目安とすること。
ヒドロモルフォン経口剤から本剤に変更する場合には、ヒドロモルフォン経口剤1日用量の1/5量を本剤の1日用量の目安とすること。
- フェンタニル
- 高度な腎機能障害を有する患者では第一選択
- フェンタニルの1日1回貼付製剤は,定常状態に達するまでに約4~5日間を必要とするため,短期間での増量による過量投与に注意する
- 経粘膜性フェンタニル:ROO
- モルヒネやオキシコドンの速放性製剤(short-acting opioid;SAO)に対して、口腔粘膜や鼻粘膜を介して迅速に吸収されることから、即効性オピオイド(rapid-onset opioid;ROO)と呼ばれ、効果発現時間は 10~15 分と速く、持続時間は 1~2 時間
- 使用条件:
①持続痛がしっかりとコントロールされていることを確認する
➁ベースの経口モルヒネ換算量(バッカル錠は30mg/日以上、舌下錠は60mg/日以上)の目安がある - 使用方法・制限:
- 投与30分後に痛みが残存する場合は同一用量以下を1回のみ追加できる
- 両剤ともに 1 日 4 回まで使用回数制限がある
- 投与間隔はイーフェン®は 4 時間以上、アブストラル®は 2 時間以上→イーフェンの方が安全域が広い
- 飲み込んでしまった場合の吸収率は両剤ともおよそ30%程度とされている
- 後発品はまだない(2023年12月)
- 定時投与薬によるコントロールが良好であることが条件
- 超即効性の薬理作用(すぐ効いて作用時間も短い)を期待する場合に選択→鋭い突出痛に有効!
- オピオイド換算表はなく、常に最小量から使用する
突出痛の治療に必要なオピオイドの量は、ベースのオピオイド量とは相関がない→必要量が少ないことも多いこともある
- ◎イーフェンバッカル:頬粘膜吸収錠
- 大鵬製薬が作成した患者向けパンフレットあり
https://www.taiho.co.jp/medical/brand/e-fen/pdf/78DS10J.pdf - メリット:
イーフェンの方が安全域が広い(4時間間隔投与)
超即効が期待できる
置き薬として使用できる - 突出痛の治療に使用される場合、イーフェン200μg≒オキノーム15㎎、が目安
- 最小規格50μgから最高規格800μgまで6規格とラインナップが幅広い
×アブストラルは最小規格100μgで3規格しかない - 薬価:
イーフェンバッカル50μg491円 100μg685円
アブストラル100μg549円 - 投与間隔:
4時間以上のインターバルが必要、1日投与回数の制限(4回まで)もある - 追加投与:
30分後に同量まで1回まで追加投与可能
追加投与は1日の総投与回数にカウントしない
4時間間隔の計測にも追加投与は関与しない→初回投与の間隔で4時間以上あればよい - タイトレーション期には50μgで処方しておく方が便利
50→追加50(合計100)→100→追加50(合計150)→150→追加50~100(合計200~300)のように漸増可能
1回あたりの投与錠数は4錠(左右の上顎臼歯の歯茎と頬との間に2錠ずつ)まで
- 大鵬製薬が作成した患者向けパンフレットあり
- ◎タペンタドール(タペンタ)
CKDにも安全で、副作用も少なく神経障害性疼痛にも有効→オピオイド導入時に最適- タペンタドールはトラマドールの改良版で、中等度から重度の痛みに用いられる強オピオイド
- 経口オキシコドン 20mg = 経口タペンタドール 100mg=トラマドール150㎎=フェントス1㎎
- 規格が25mg, 50mg, 100mg(サイズは統一で17×7×5㎜→デカい!)
- 適応症:
中等度から高度の疼痛を伴う各種癌における鎮痛 - 禁忌:
喘息発作中、重篤なCOPD・呼吸不全、モノアミン酸化酵素(MAO)阻害剤内服中・中止後14日以内 - 開始量:
タペンタ25mg2T2×で開始→用量が増え内服負担が出てきたら(max400㎎まで可)スイッチング
粒がでかいため、実臨床では1回1錠で50㎎/日→100㎎→200㎎の投与が限界だろう - 作用機序:
オピオイドμ受容体作動作用+ノルアドレナリン再取り込み阻害作用→神経障害性疼痛にも有効 - トラマドールの鎮痛効果を高め、副作用を軽減するために開発された製剤
- 腎機能に応じた投与量調節が不要
- 同じ強オピオイドのオキシコドンに比較して眠気や嘔気、便秘の副作用のリスクが低い
- デメリット:
①錠剤がやや大きく飲みにくい
➁レスキューがない
腎不全時のオピオイド
モルヒネ、コデイン、トラマドールは腎不全・透析患者には使用しない方がよい
CKDに推奨されるのは
経口剤:オキシコドン、タペンタ、ナルサス
注射剤:フェンタニル、ナルベイン
貼付剤:フェンタニル、△ノルスパンテープ(ブプレノルフィン)
レスキュー:オキノーム、ナルラピド、レペタン座薬
在宅診療ではCKDでもアンペック坐剤も使用する場合がある→半分に切って(→5㎎)使用も検討
※すでにオピオイド投与中の患者に部分作動薬であるペンタゾシンやブプレノルフィンを使用すると離脱症状や鎮痛効果低下を引き起こす可能性があり
※レペタン(注射、坐薬ともに)の適応症は各種癌・術後鎮痛のみ
※ノルスパンテープは変形性膝関節症・腰痛症に適応があるが癌性疼痛には適応なし
レミッチ®(ナルフラフィン)は透析患者、慢性肝疾患患者のそう痒症治療薬
オピオイドκ受容体に選択的に結合しκ受容体を活性化させることにより、μ受容体に起因する痒みを抑制
直腸癌でMiles術式(直腸部から肛門管、肛門部を切除して人工肛門を造設する術式)による人工肛門の患者に、ジクロフェナクナトリウム坐剤25㎎を単回投与後のCmaxおよびAUCは、健常人の肛門内投与に比べ、いずれも約50%であり、投与後1時間の血漿中濃度は約30%であった報告がある
非オピオイド性鎮痛薬
- ジクトルテープ75㎎/枚
- 特徴:
- NSAIDsの副作用である胃粘膜障害のリスクが低い
→COX-2の阻害活性が高いことや、血中濃度が急激に上がらず安定していることが理由 - 血中濃度が安定しており薬の切れ目がなく、安定して薬効が持続する
- 即効性がないので急な痛みには使えない
- 皮膚障害(あまりない印象)
- 薬価が高い(1枚155.8円)
- 終末期の解熱剤として使用することもある(ナイキサン使用困難例)
- NSAIDsの副作用である胃粘膜障害のリスクが低い
- 特徴:
鎮静
→国がん式緩和療法を参照(下記)
症状緩和目的に終末期持続鎮静を考慮する際は、必ず多職種でのカンファレンスを開く
- 混注による強度の鎮静+鎮痛+呼吸困難の改善
- ◎モルヒネ+ドルミカム持続皮下注
- モルヒネ注2A(2mL)+生食8mL+ドルミカム注5A(10mL)=20mL
- 0.5mL/hrで持続皮下注開始
- ドルミカムの院外処方はできない→在宅クリニックで保管が必要
- セレネース
- ブスコパン
- リンデロン(デカドロン)
- ブロマゼパム坐薬3mg(セニラン):
- 適応症:麻酔前投薬のみ
- Cmaxは投与後3時間
- 鎮静効果は同薬坐薬3㎎=同薬経口5㎎
- ダイアップ座薬4、6、10mg(ジアゼパム):
皮膚浸潤性腫瘍の出血・悪臭
出血→圧迫+ボスミンガーゼ+アルギン酸ドレッシング剤(カルトスタット)+トロンビン+Mohs軟膏
悪臭には洗浄+ロゼックス軟膏(メトロニダゾール)
胸水・腹水
- 利尿作用は持続時間からアゾセミド60㎎1T>フロセミド20㎎
- 低アルブミン血症→RAA系亢進→腎不全なければスピロノラクトン併用がベター
- 栄養状態が良好ならCARTしなくてもよい→穿刺排液のみ
腸閉塞
腫瘍熱
ナイキサン+カロナール+デカドロン
内服が難しい場合は座薬(ボルタレン、)、ジクトルテープ75㎎/枚→癌性疼痛は最大3枚(非癌性疼痛は最大2枚)まで同時使用可能
がん患者の腫瘍熱は 5-27%と報告され、転移巣が多いほど腫瘍熱をきたしやすい。
診断基準(明確なものではない):
1)37.8℃以上の発熱が 1 日 1 回以上ある。
2)発熱の期間が 長期間である(おおよそ 2 週間以上)。
3)身体診察・検査所見 (培養検査を含む)・画像検査などにおいて感染症の根拠を認めない。
4)アレルギーによる発熱は否定的である。
5)感染が疑わしい場合、7 日以上の経験的な抗菌薬治療に対する解熱反応がない。
6)ナプロキセンテストによって速やかに完全に解熱し, ナプロキセンを使用中平熱が持続する。
対症療法:
●ナプロキセン(ナイキサン🄬)400~600mg 分 2~3 を定期投与することが勧められている。これで 12~24 時間後から丸 1 日を通して解熱すれば腫瘍熱と診断する。ナプロキセンが有効でない場合、他の解熱作用のあるNSAIDs(フルルビプロフェンアキセチル(ロピオン🄬)、ジクロフェナクナトリウム(ボルタレン🄬)、ロキソプロフェン(ロキソニン🄬))に変更することが有効な時がある。セレコキシブ(セレコックス🄬)といった COX-2 選択阻害薬は解熱効果が弱いため使用しない。またアセトアミノフェン 2.4~4.0g 分 3~4 を使用・併用することも可能である。
●上記の対応で症状緩和が困難である場合や食思不振・倦怠感など悪液質による症状がある場合は、少量のステロイド(デキサメサゾン・ベタメタゾン 2~4mg/回、ハイドロコルチゾン 100mg/回)を投与する事も検討できる。しかし、感染が完全に否定できない場合や 1 カ月以上の投与になる場合には、消化性潰瘍、血糖異常、ムーンフェイス、精神症状(不眠、せん妄、抑うつ)、易感染、ミオパチーなどの合併症を生じるリスクがある。またステロイド投与中に発熱が再発した場合、不顕性の感染が顕性化した可能性が高いので、感染の再検索が必要と思われる。
出典:http://www.kanwa.med.tohoku.ac.jp/student/pdf/manual/2019/04.pdf
悪心(嘔気)・嘔吐
制吐剤の持続皮下注について
ハロペリドールが皮下組織への障害性も少なく第一選択(それでも4割で皮下硬結でる)
メトクロプラミドもよいが消化管閉塞では禁忌
クロルプロマジン,プロクロロペラジン,レボメプロマジンについては皮下組織の障害が起こるので持続皮下注では使うべきでない
- ドパミン受容体阻害薬
- メトクロプラミド◎ がん患者の嘔気に対するエビデンスあり
- ドンペリドン○ エビデンス少ないがメトクロ=ドンペリドンと考えられる
- 抗精神病薬◎→ブチロフェノン系を主に用いる
- フェノチアジン系〇
- クロルプロマジン(ウインタミン、コントミン) 眠気強い
- レボメプロマジン(ヒルナミン) エビデンス少ない 眠気強い
- プロクロルペラジン(ノバミン) エビデンス少ない
- ブチロフェノン系(ハロペリドール◎◎)
- フェノチアジン系〇
- 非定型抗精神病薬△ エビデンスには乏しい
- オランザピン
- リスペリドン
- 5-HT3受容体阻害薬◎
- コルチコステロイド△ 意外とエビデンスに乏しい
- H1受容体阻害薬△ エビデンスは少ないが体動時の前庭系が原因の嘔気に有効な可能性がある
- ヒベルナ
- クロルフェニラミン
- ジフェンヒドラミン
- ヒドロキシジン塩酸塩
- 抗コリン薬△ エビデンスは少ないが体動時の前庭系が原因の嘔気に有効な可能性がある
抗精神病薬について
ブチロフェノン系抗精神病薬はフェノチアジン系と比較すると、アドレナリンα1受容体阻害作用や抗コリン作用、抗ヒスタミン作用は弱い一方で、錐体外路症状(錐体外路障害)が出やすいことや、長期服用で遅発性ジスキネジアの問題もある。
オピオイドの嘔気にはトラベルミンが第一選択
がん終末期の精神症状
緩和ケア病棟に入院した終末期がん患者 93 名(平均年齢 67±12 歳,がん罹病期間20.2±34.5 カ月)では,53.7%に精神医学的診断が認められた
せん妄(28%),適応障害(7.5%),うつ病(3.2%)の順
- がん患者に おけるPHQ-9を用いた大うつ病性障害のスクリーニングに関する研究:
- Thekkumpurathらが 4264 人のを施行し,カットオフ8 点以上とした場合→感度 93%,特異度 81%
- Hartung らは,2141 人のがん患者に施行しカットオフ7 点以上とした場合→感度 83%,特異度 61%
せん妄
興奮が少ない過活動型せん妄
ベッド上でゴソゴソ→トラゾドン(レスリン、デジレル):1回25mg、30分あけて2~3回まで
トラゾドンでは不十分→ミアンセリン(テトラミド):より長時間、かつ強力に作用、1回10~20mg
興奮が強い過活動型せん妄
セロクエル(クエチアピン)が有効、パーキンソン病に対する投与も許容されている
糖尿病の患者ではリスペリドン(リスパダール)内用液を使用する
リスパダールは茶葉系(お茶、紅茶)やコーラと混ぜると効果減弱する→みそ汁はOK。
糖尿病+腎不全ではペロスピロン(ルーラン)を使用する
オランザピンはOD錠があるため、溶かして飲ませることができる
持続皮下注における注意事項
皮下硬結
- 皮下硬結が発生すると薬剤の吸収性が不安定となると報告されている
- 硬結発生の原因としては穿刺針の針先の位置の影響も報告されている
配合変化(ハロペリドール)
- ヒドロモルフォンの医薬品インタビューフォーム
ヒドロモルフォン 2mg+ハロペリドール 5 mg+生理食塩水 50 ml の混合では配合変化はおきなかった - ハロペリドールの医薬品インタビューフォーム
ハロペリドール 5 mg を 5%ブドウ糖液 0.5~2 mlと混じた場合は時間が経過しても外観に変化はなかったが,生理食塩水 2~3 ml と混じた場合は 24 時間後に結晶析出があった - Storey らもハロペリドールを 5%ブドウ糖液で 1~3 mg/ml としても混濁は生じなかったが,生理食塩水に混ぜると混濁を生じる場合があるとしている