アンチエイジング医学

目次

2023年アンチエイジング学会総会

会頭講演 東大産婦人科

  • rejuvenation=若返りは可能
  • 学会の方針は『老化は病気』というスタンスで治療の対象と考える
  • しかし現状ではICD-11には老化という疾患枠組みがない→ICD-12(2050年)には記載されるか?

前理事長講演

  • 野菜の栄養価は品種改良によって大幅に減っているらしい→甘くおいしくなった
  • リブレ→アマゾンで購入できる持続血糖測定器
  • ファスティング1週間するとアッカーマンシア菌が大幅に増え悪玉菌が減った
  • 先進国で日本のやせの女性が最も多い、若年女性の体力が低下している
  • 痩せの若年女性→基礎代謝も低下、身体活動量や体力も低下→耐糖能異常起きやすく、将来的なフレイル・サルコペニアのハイリスク
  • 認知症の遺伝子がある→APOE4遺伝子のへテロ(日本人の10%)は3倍、ホモ(日本人の2%)は15倍くらい認知症になりやすい
  • 長寿のためにはブドウ糖/インスリン系は少なく、カロリー制限とサーチュイン系の深津が必要
  • サーチュイン増やすもの
    • メトホルミン、ワイン、運動、にんじんえいようとう
  • 動物実験レベルではカロリー制限による長寿は明らか
  • カロリーリストリクションはメタボリックシンドロームと真逆の反応が生じる
  • もともと人類は穀物は食べていない、農耕が始まったのは人類が増加し始めた数千年前
  • 緩やかな糖質制限130g/日以下=ごはんで1.5杯
  • 過敏性腸症候群下痢型→牛乳と小麦を抜くと5-6割はよくなる→だめならFODMAP療法に切り替える
  • 小麦グルテンは遺伝子組み換え小麦で4倍ほど多く、アレルギーなどの異常をきたす

人生100年時代のアンチエイジングサイエンス 尾池雄一(熊本大学)→来年の総会会頭

  • 細胞の老化=ミトコンドリアの老化と減少→ほぼすべての臓器で確認された

老化細胞を標的として加齢性疾患を制御する 中西真(東京大学医科学研究所 癌防御シグナル分野)


骨粗鬆症→サルコペニア、フレイルのリスク因子となる

自由診療=グレーな部分がある、法律に準拠する必要があるし業者を信用してもいけない、健康食品などでは悪徳業者がある、5000万以上の請求例もある
①国が承認したものを適応外で使用する
②国が未承認のものを個人輸入して使用する
 →第3者から購入すると違法?

メラトニンは医薬品扱い
NMN
タウリン:含硫アミノ酸様化合物の一つ

アンチエイジングと漢方

  • 女性更年期障害→「興奮性・過敏性スコア変化」において、プラセボと比較して加味逍遙散は有意な改善効果を認めた
  • フレイルにおける人参養栄湯

その他

  • 本人の問題意識がないと問題解決につながらない
  • 男性は孤食3年でうつ病になる、女性はならない
  • 難聴は認知症の独立危険因子→治療の適応疾患→補聴器処方外来へ紹介

アンチエイジング総論

アンチエイジングとは

意義・目的

  • アンチエイジング=アンチ病的エイジングの意味

老化

  • POA(pace of aging):0.4歳/年の人もいれば2.44歳/年の人までいる(最大6倍の差!!)
  • POAが早い人の特徴(2021年の論文)
    • 遅い歩行速度
    • 弱い握力
    • 低いバランス能力
    • 視力・聴力の低下
    • 外見が老けた人
    • IQ値の低い人
    • 老化について否定的な人
    • 75歳まで生きられないと考える人
    • 脳表面積の増加
  • 今後は暦年齢よりも生物学的年齢が重要となる→新たなバイオマーカーが必要
    バイオマーカーの候補として
    DNAメチル化
    腸内細菌叢
  • セノリティクスのトップランナーはフィセチン(ベリーに多い)

言葉の定義

  • 高齢者:WHOの定義で65歳以上とされた(世界共通)。74歳までを前期高齢者、75歳以上を後期高齢者とする。
  • 後期高齢者:満75歳以上、健康保険は脱退し後期高齢者医療保険に加入し直すことになる。自己負担は1割(所得に応じて2~3割負担)。
  • 定年:定年延長の義務化と延長の年齢については、2013年に「高年齢者雇用安定法」が改正され、定年延長の移行期間が2025年と設定され、2025年4月からは、すべての企業で65歳定年制が義務となる。2021年4月に改正された高年齢者雇用安定法により、70歳までの就業機会の確保が企業の努力義務となった。
  • 年金:受給開始は65歳から。納税義務は20歳以上60歳未満の全国民。
  • 後期高齢者医療制度:75歳(一定の障害がある方は65歳)の誕生日になったときは国民健康保険から脱退(資格喪失)し、「後期高齢者医療保険」で医療を受ける。 医療費の自己負担割合は、原則1割負担だが、一定以上の所得のある被保険者及びその被保険者と同一世帯にいる被保険者は、現役並み所得者(3割負担)を除き、2割負担。ちなみに70歳から74歳の方の窓口負担は、平成18年の法改正により平成20年4月から2割負担。
  • 介護保険:2000年からスタート、40歳から死ぬまで強制加入(40歳~64歳→第2号被保険者、65歳以上→第1号被保険者、アラフォー外科医たけしの場合は保険料約15万/年間)、保険者は全国の市区町村。介護保険の財源は介護保険料だけではなく国からの公費も。利用者は基本1割負担(収入により自己負担変化)で利用できる。
  • 老年病
  • 老化病
  • 健康寿命:本人の主観的評価で評価していることが多い→参考程度にしたほうがよい、客観的評価法が必要
  • フレイル:日本版の定義=J-CHS基準
  • 社会的フレイル
  • オーラルフレイル、認知フレイル、アイフレイル
  • ロコモティブシンドローム:運動器の障害によって移動機能が低下した状態、2007年に日本整形外科学会が提唱
  • 肥満と肥満症:日本肥満学会
  • メタボリックシンドローム
  • 生活習慣病:
  • ブルーゾーン:沖縄県大宜味村など、世界に5か所
  • 老化時計Aging clock:
  • 超過死亡:平年の死者数をもとにした予想死者数より多い死亡数のこと
  • 低体重:BMIが18.5未満
  • 普通体重:BMIが18.5~25未満
  • オーソモレキュラー:オーソ=正しい 
健康長寿ネットHPより
ブルーゾーン

日本の人口統計

  • 10年ごとに+2~3歳寿命が延長、日本では2007年生まれの平均寿命は107歳
  • 現在死因の3位は老衰になった
  • 平成元年(1989年)の百寿者は3078人→令和元年(2019年)71238人(30年間で23倍)、2040年には40万人に達する
  • 出生率低下が深刻(1974年の208万人/年間をピークに2020年は84万人まで低下)
  • 低出生体重児の割合が9.2%(2020年)→10人に1人は低出生体重児(<2500g未満)
  • 日本人男性の3割、女性の2割が生涯独身(2015年)
  • 2025年問題:団塊世代(S22~24年生まれの800万人)が75歳を迎える年で日本人1/5が後期高齢者となる本格的超高齢化社会
  • 寝たきり高齢者(bedridden)となる原因:あたま(認知症+脳血管疾患)が全体の1/3、整形疾患(転倒・骨折、関節疾患)が1/4で半数以上を占める→あたまと骨+筋肉を守ることで半分の寝たきり高齢者を予防できる

日本人の肥満 

  • 関連学会/書籍:日本肥満学会、日本肥満症治療学会、肥満症診療ガイドライン2022
  • 肥満の定義:BMIが25以上の状態
  • 肥満度分類:25~30未満→肥満度1、30~35未満→肥満度2、35~40未満→肥満度3、40以上→肥満度4
  • 高度肥満:肥満度3以上
  • 肥満症の定義:肥満に起因ないし関連する健康障害を合併するか、その合併が予測され医学的に減量を必要とする状態
  • 内臓脂肪型肥満:内臓脂肪面積が100㎠以上で診断され、肥満症として扱う
  • 日本人の脂肪摂取量は50g/日で横ばい~わずかに減弱傾向
  • 1日の総摂取カロリーは1970年代をピークに減少傾向
  • にもかかわらず日本人の肥満は右肩上がりに増加傾向(特に中年男性)

世界のブルーゾーン

  • 傾斜地に多い(沖縄大宜味村、イタリアサルディーニャ地域)

アンチエイジングと最新脳科学

  • 加齢によって記憶力は低下しないが、使わなければやはり衰える
  • 大人になっても高齢になっても脳を鍛えることは可能(筋トレと同じ)
  • ただし、大人の脳にはただしいやり方がある
  • 脳はたくさん使った部分が成長する
  • 脳のピークは30-50代、このときに最大限脳を使うべき
  • 丸暗記は大人脳には不向き
  • 即断即決即実行できる=思考系脳番地が活性化している証拠
  • 言葉が出てこない=思考系トレーニングが必要
  • ストレスは記憶系である海馬の働きを低下させる
  • 感情系と伝達系をうまく働かせることで記憶力がアップする
  • 大人脳が成長するとMRIでも変化がわかる
  • 脳の成長に必要なこと
    • 好奇心
    • コミュニケーション
    • アウトプット
  • 大人脳には意味記憶が重要、覚えようではなく理解しよう!が重要
  • 脳の記憶量は1ペタバイト=1000TBと言われている
  • 脳は効率よく働くために覚えるよりも忘れたがる性質を持つ
  • 海馬の役割は短期記憶(2~4週間程度)→感情系の偏桃体と協働すると長期記憶となりやすい
  • 楽しんで勉強することが重要、イヤイヤやるとストレスで海馬が委縮し記憶力が低下する
  • ご褒美、音楽、コーヒーなど好きなもので勉強自体を楽しむ
  • なるほど、そうだったのか!=理解系が最大限機能している状態で記憶に定着する
  • 2-4週間以内に繰り返し学習すると長期記憶になる
  • 人は1時間で56%忘れ、1日で74%忘れるようにできている
  • 1日以内、1週間後、1か月後に復習することが重要
  • 覚えたいことはその日のうちに復習すること!!!!
  • 翌日には覚えたことでスピーチの練習するといろいろな部署の連携ができて脳が発達する
  • 記憶に定着しやすいのは最初と最後、真ん中は抜け落ちやすい
  • 覚えた直後にスマホを見るのは最悪の行為
  • 記憶に定着させるには、短期間に何回もその情報に接することが必要→外科のことは忘れない
  • まとめて勉強するより毎日少しずつ(10分でよい)の方が記憶に残る
  • 記憶に残したいことは復習ノートにまとめて常に見返すこと
  • 脳が新しい情報に触れて効率的に働きだすまでの時間は75時間程度→逆算して期限設定、スケジューリングするとより効果的
  • インプットの時点からアウトプットする前提でインプットしないと無駄な努力に終わる
  • いまインプットしていることを明日誰かに説明するつもりでインプットする
  • インプットの時の記憶付けよりもアウトプットの時に思い起こす作業の方が効果大
  • 黙読=視覚系のみ、音読=視覚+運動+聴覚+伝達+理解でより効果的
  • 本を読んだら感想や要約をまとめる
  • 男性は視覚系、女性は聴覚系の情報収集が優勢→女性の方が会話の内容を覚えている
  • 聴覚系の情報の方が本来、海馬にアプローチしやすい
  • 記憶は寝ている間に定着する→寝る前に耳から情報収集すると効果的
  • 脳の健康のためにも運動は重要、1日60分以上(理想は80~90分)のウォーキングがおすすめ
  • レム睡眠(浅い睡眠)→記憶を再生・整理する
  • ノンレム睡眠(深い睡眠)→長期記憶を形成する
  • 覚えたいことのあとに余計な情報を入れない→最後の記憶に上書きされてしまう
  • アメリカ睡眠財団の推奨睡眠時間:7~9時間(26~64歳)
  • 脳はデッドラインや区切りをつけて課題に取り組む方が効率的に働く(20~50分)
  • 朝少しだけ勉強→休憩時間などで復習、寝る前に再チェックするのが一番効果的
  • 目標達成したときの自分へのご褒美は脳科学的にも重要(わくわく→ドーパミン増加し記憶力UP)
  • 仕事終わりの運動は脳科学的にもおすすめ
  • 仕事や勉強で疲れた脳を休ませるには、新しい情報を入れないこと
  • ルーティーンは脳に刺激がない→通勤路や通勤方法をこまめに変えるのがよい、早めにでかけて遠回りすると◎
  • 非優位側の手で歯磨きなどをするのも両側の脳を刺激しよい効果
  • 脳の衰えに関して、年齢は言い訳で実際には使わない脳の機能が損なわれている→自分次第で鍛えることができる
  • 人生100年時代を楽しく過ごすには体の健康ももちろん重要だが、脳の健康もさらに重要
  • 若いころは無意味記憶が得意だが理解系脳番地が未発達→大人脳は理解系を働かせ意味付けしないと覚えられない(意味記憶)→覚えるためにはなにかと関連付ける必要がある
  • 40代は脳のピーク期(特に理解系)、社会のために自分の知識をアウトプットをすることで自分の知識向上をはかる
  • 50代は脳の加齢が始まるので、睡眠時間と運動時間の確保で脳をいたわる

出展:一生頭がよくなり続けるすごい脳の使い方 加藤俊徳著

アンチエイジングドック

  • 目的:老化の弱点を早期に診断し、全体の調和を図ることで病的な老化を自然の老化へと是正すること
  • 方法:老化度老化危険因子の全10項目について評価することで老化の状況を判断する
  • 血管年齢の評価
    • 血圧脈波検査装置 フクダ電子の血圧脈波検査装置 HBP-8000 138万円
               フクダ電子のSDP-100
  • 神経年齢の評価
    • 脳ドックではMRI、SPECTなどで萎縮や微小梗塞などを評価する
  • 骨年齢の評価
    • 骨は単なる支持組織ではなく、全身の代謝に影響しているし骨以外の臓器が骨代謝にも影響している

アンチエイジングと睡眠

睡眠のメカニズム→睡眠圧と概日リズムの相互作用で決まる

  • 「アデノシン」と呼ばれる化学物質が脳内に蓄積されアデノシンが増えると、眠りたいという欲求が高まる→この現象が「睡眠圧」。脳内に蓄積された睡眠圧(アデノシンの量)は、大人の場合、8時間ほどぐっすり眠れば一掃されるが、残っていると睡眠負債の原因となる
  • 徹夜をすると脳内のアデノシンが増え続けるが、概日リズム(=メラトニン分泌)は睡眠に関係なく24時間のリズムで動いているため、時間によって睡眠圧が強くなった弱くなったりする
  • カフェインによって眠気物質(アデノシン)はブロックされる(=眠気が覚める)が、その間も増え続け、カフェインの効果が切れると今まで蓄積された睡眠圧に襲われる。カフェインのピークは摂取後30分ですが、半減期はおよそ5~7時間後
  • カフェインは就寝の6時間前に摂取した場合でも睡眠に悪影響を及ぼすというデータもある(総合診療2022No6.p769)
  • 飲酒はアデノシンを増加させ睡眠圧を前倒しさせる→眠気が前倒しされ早朝覚醒、浅い睡眠につながりやすい
  • 朝型人間、夜型人間(→クロノタイプという)は遺伝的に決まっている(遺伝>>環境因子)
    10%が強い夜型、20%が夜型、40%が中間型、30%弱が朝型
https://www.genmaikoso.co.jp/cultivate/web/detail.asp?id=177
  • 睡眠不足で仕事するのはアルコール酩酊状態で仕事するのと同じ
    24時間起き続けた医師の集中力は酩酊初期状態(アルコール3単位=純アルコール60g=ビール1200mL)

メラトニン

  • メラトニンの作用
    • 睡眠を改善する
    • メラトニンの多い食品をとると死亡率が下がる(米、スプラウトなど)
    • 抗酸化作用を有する→脳内フリーラジカルを除去
    • 睡眠時の記憶の固定に作用する
    • 免疫増強・抗がん作用
  • メラトニン分泌は加齢とともに減少する→成人は睡眠が浅くなる
  • メラトニン受容体は全身の臓器に分布している
  • 臨床試験ではメラトニンにより睡眠潜時が7分短縮し、睡眠効率も有意に改善した
  • 夜間のブルーライト照射により分泌が低下する
  • ブルーライトカットメガネはメラトニンを抑制しない→使用した方が良い!!
  • ブルーライトカットメガネは睡眠の質を改善する
  • メラトニン分泌が低下する高齢者の癌患者にとって、より効果的であると推測される
メラトニンの作用について

メラトニンはトリプトファン(必須アミノ酸)からセロトニンを経て体内で合成されるホルモンで抗酸化作用、神経保護作用により認知症の予防治療、がんの予防、がんの進行抑制、眼圧降下作用、概日リズム調整作用が報告されている。海外ではメラトニンはドラッグストアで簡便に買うことができるが、2020年にアメリカ睡眠学会は、睡眠に関しては効果不詳のため治療薬として使用しないことを推奨するとしている。日本の厚労省はメラトベルという商品名で小児の神経発達症に伴う入眠困難治療薬としてメラトニン顆粒を承認し、2020年6月から処方可能となっている。メラトニンには炎症促進性作用、免疫活性化作用などがあるため炎症性疾患、自己免疫疾患に罹患している人は内服しないよう注意が必要。現時点では、日本国内で安心して購入できる推奨品はないのが現状。
がんの予防には1~3mg/日、進行・転移には10~30mg/日がよさそう(エビデンスに乏しい)。

REM睡眠とnon-REM睡眠について(Wikipediaより)

レム睡眠は睡眠中の状態のひとつで、身体は骨格筋が弛緩して休息状態にあるが、が活動して覚醒状態にある。レム睡眠時には視床での情報伝達が遮断され、脊髄のレベルで筋肉への情報伝達が遮断されて、運動機能が制止されている。大脳皮質は覚醒時よりもむしろ強く活動しており、運動機能を遮断しておかないと身体が寝ながらにして激しく動いてしまうことになる。ただし眼球だけが急速に運動している。レム睡眠時には脳の強い活動の反映としてを見る。このとき脳波は 4 Hz から 7 Hz のシータ波が優勢で覚醒時と同様の振幅を示す。外見的には寝ているのに、脳は覚醒状態にあるため、逆説睡眠(ぎゃくせつすいみん)とも呼ばれる。REM睡眠は、新生児期に多く睡眠時間のおよそ半分を占めるが、加齢に従って徐々に減少し、小児期で 20%、大人では睡眠時間の約20 – 25% にまで減少する。を見るのはレム睡眠中であることが多いとされている。この期間を経た直後に覚醒した場合、直前の夢の内容を覚えていたり、その記憶による事実錯誤の状態になっていたりすることがあり、問題行動はこのタイプが多い(RBD:レム睡眠行動障害)。ナルコレプシーに罹患または極端な睡眠不足により急速にレム睡眠となった場合、大脳が未だ覚醒状態にあることにより入眠時幻覚と呼ばれる現実感に富んだ夢を見ることがあり、同時に運動機能が遮断されるため金縛り状態となり現実感に富んだ夢と相まって非常な恐怖を感じる場合がある。

ノンレム睡眠はステージ1(N1)からステージ4(N4)までの4段階に分けられ、N4が睡眠の最も深いレベルである。このとき、周波数が 1Hz から 4Hz のデルタ波と呼ばれる低周波、高振幅の脳波が高頻度で観測される。睡眠時間の50-60%はN1-N2睡眠が占めている。いわゆるぐっすり寝ている状態で、多少の物音がしたり、軽くゆさぶられても目が覚めることはない。もしノンレム睡眠の最中に強制的に起こされると、人体はすぐさま活動を開始することができない。大脳が休止状態から活動を開始するまではしばらくの時間が必要とされ、この状態に起こされてもしばらく次の行動に自覚的に移ることができない「寝惚け」の状態になる。

眠りは、まずノンレム睡眠から始まり、一気に深い眠りに入る。眠りについてから1時間ほどたつと、徐々に眠りが浅くなり、レム睡眠へと移行する。その後、またノンレム睡眠に移行して深い眠りに入った後、眠りが浅くなってレム睡眠に移行する。個人差がありますが、このような約90分の周期が、一晩に3~5回繰り返され睡眠の前半は、ノンレム睡眠の深い眠りであるN3が多く、後半になるにつれてレム睡眠が増え、そして目覚める。

エスエス製薬ホームページより
ブルーライトとは?

ブルーライト(青色光 / 短波長光)は、波長が380~500nm(ナノメートル)の可視光線であり紫外線の次に波長の短い光で、目の奥まで届く非常にエネルギーの強い光で角膜や水晶体で吸収されずに網膜まで到達する。太陽光はもちろんのこと、LEDを使用したパソコンやテレビ、スマートフォンなどの液晶画面からもブルーライトが多く放射されている。最近の研究では、ブルーライトを長時間目に入れると、視界のちらつきや目の疲れに加え、体内リズムを崩し睡眠障害を引き起こす。

ブルーライト研究会ホームページより

睡眠と疲労 梶本修身先生

  • エネルギー不足、乳酸は疲労の原因ではない
  • 疲労とは、骨格筋や脳で酸素を大量消費した際に出る活性酸素が主原因=からだが錆びていく
  • 疲労は一時的な機能・パフォーマンスの低下で老化は不可逆的な低下をきたした状態
  • 人の体でもっとも活性酸素で錆びやすく披露しやすいのは自律神経中枢=前帯状回と視床下部
  • 疲労で起こる症状は自律神経失調症、これ以上自律神経を酷使するなというサイン
  • 60代の自律神経機能(心拍数や血圧、呼吸などの調節能)は20代の25%にまで低下している
  • 風呂は危険、入浴中の死亡は交通事故死よりも多い、ヒートショックではなく熱中症が最大の原因
  • 風呂に入るなら露天風呂が安全、室内なら外気を取り込み脳を冷やす
  • 入浴後に疲労物質はむしろ増加したという実験データもある
  • 栄養ドリンクに疲労回復効果なし→カフェインやアルコールがそう感じさせるだけ
  • イミダゾールペプチド(渡り鳥の胸筋)が優れた抗酸化作用を有する→抗疲労効果あり
  • イミダゾールペプチドは鳥の胸肉に豊富→胸肉は抗疲労食、50~100gを目安に摂取するとよい
  • 疲労回復の方法は睡眠のみ、睡眠により自律神経を回復させている
  • 睡眠は量よりも質が重要
  • いびきは気道狭小化により横隔膜に負荷がかかり、さらには低酸素状態となり心拍や血圧を上昇させ、自律神経を疲弊させる→睡眠の質を大きく損なわせ、疲労や老化の原因→簡易型PSG検査がおすすめ
  • いびきをかく人は2000万人(SASは400万人、CPAP療法適応150万人、実際のCPAP利用者45万人)と推定されている
    重症者はCPAP(保険適応)、軽症者は横向きで寝る(→明らかにいびきや無呼吸が減少する)

アンチエイジングと栄養

アンチエイジングと小児

  • DOHaD(Development Originals of Health and Disease):将来の健康や特定の病気へのかかりやすさは,胎児期や生後早期の環境の影響を強く受けて決定される(高血圧、冠動脈疾患、DM、脳梗塞、脂質異常症、CKD、成長障害、COPD、メタボ、思春期早発・閉経の早期化、うつ病・統合失調症、免疫不全)
  • 低出生体重児(全出生の9.2%)→将来の肥満症が有意に多い(DM↑、BMI↑)、糸球体数も少なく生存に不利
  • やせ妊婦の子どもは節約型代謝プログラムを持つ→成人早期に生活習慣病を発症する
  • 日本の子どもの7人に1人が貧困状態(特に教育分野と心理に影響する)
  • 国際的に日本の子どもは孤独を感じている割合が異常に高い
  • 子どもの貧困は親から子へと連鎖する

アンチエイジングと男性性機能(テストステロン)

  • テストステロンはマルチファンクショナルなホルモン
    皮膚、毛髪、頭髪、筋肉、生殖器、タンパク合成(肝臓)、記憶(海馬)や感情、認知機能に影響する
  • テストステロン値は個体間差が大きい(とくにばらつきの大きくなる40歳代では最大4倍程度の差が出る)
  • テストステロン分泌には日内変動があり夜間~午前中に最も高くなり、午後の活動期間に低値となる
  • テストステロンを低下させる原因
    飲酒、ストレス、不眠
  • テストステロン低値ほど、心血管イベントが多く早死にする
  • テストステロンと加齢の関係
    認知症、衰弱、転倒・骨折、がん、心疾患、糖尿病との関連が指摘されている
  • テストステロン高値の方が有意であることが論文化されている
    年収が多い
    子どもを作る能力が高い
    イケメンが多い
    運動能力が高い
    健康寿命が長い
  • 環指が長い男性はテストステロンが多い(2D:4D比)
    女性は人差し指と薬指が同じ長さのことが多いが、男性ははっきり長さが異なることが多い

日本人の恋愛

  • 生涯未婚率は男性が28.25%、女性が17.85%(国勢調査の統計を基に生涯未婚率を試算した結果)
  • 日本人男性の4人に1人、女性の6人に1人が、生涯独身でいる→増加傾向
  • 20代男性の4割は一度も交際経験がない(そのデータ自体には大きな変化はなさそう)

健康と住宅

  • 日本の家屋全体の断熱性をあげることが重要→高断熱の家は快適性、健康的、経済的に有利!
  • 住宅が健康に及ぼす影響は大きい(特に冬季の室温が重要)
  • 建築物環境衛生管理基準にクリアすべき目標値が設定されている(建築物における衛生的環境の確保に関する法律
  • 居室における温度の目標は18度以上28度以下→断熱化が最重要(経済的にも!)
  • 欧米では断熱材20~30㎝というのが一般、日本ではせいぜい10㎝
  • 断熱等級4(10㎝の断熱材相当)は全体のわずか5%しかない(国交省の推定データ、2015年)
  • 2025年には、日本でも断熱等級4に達しないと建築できないように法律が改正する
  • 断熱等級は2022年10月に等級5~7が新設された→長期優良住宅の基準も変化(断熱4等級→5等級にアップ)
  • ZEH+の断熱基準も5等級(=HEAT20 G1相当)
〈 HEAT20とは? 〉

「2020年を見据えた住宅の高断熱化技術開発委員会」の団体名。団体は、室内温熱環境のあるべき姿や住宅の省エネルギー基準とは少し異なる観点から「G1~G3」という独自の断熱基準「外皮性能グレード」を提案している。断熱性の高い住宅は表面温度を高い状態に保つことができるため、結露やカビ、ダニの防止が可能。さらに断熱を高めることにより健康改善効果もあります。例えば、ぜんそくや喉の痛み、アトピー性皮膚炎などが改善したケースもある。

日本人の運動習慣

統計

  • 日本人の運動習慣者の割合はここ10年は横ばいから減少傾向(後期高齢者のみ増加傾向)
  • 座りすぎで不健康になることが証明された→心臓病、DM、ガンなど
  • 日本人の座っている時間は世界最長の7時間(スポーツ庁のWebより)
  • 座っている時間を減らすだけでメタボの改善が期待できる
  • 日本人の歩数の現状では、1日平均で、男性8,202歩、女性7,282歩
  • 日本人で1日1万歩以上歩いている者は男性29.2%、女性21.8%である(平成9年度国民栄養調査)
最近では座りすぎも加えられる・・・特にコロナ後

対策

  • 日常生活における歩数の増加(身体活動量を増やす簡単で具体的な手段は、歩行時間を増やすこと)
  • 歩数計を実際に使用している者は20歳以上の16.7%を占め、特に中高年者では3~4人に1人が使用しており(平成8年度健康づくりに関する意識調査)、個人が取り組む目安としても、歩数の目標値を設定することは有用である 
  • 最近10年間の歩数の増加傾向を考慮して、当面10年間の目標として、男女とも歩数の1,000歩増加を目指し、1日平均歩数を男性9,200歩、女性8,300歩程度を目標とする(+10プラステン)
  • 1,000歩は約10分の歩行で得られる歩数であり、距離としては600~700mに相当する
  • 歩くことを中心とした身体活動を増加させることにより、生活習慣病の発症の数%減少が期待できる
よく言われる「1日1万歩」の根拠は?

海外の文献から週当たり2000kcal(1日当たり約300kcal)以上のエネルギー消費に相当する身体活動が推奨されている1)。歩行時のエネルギー消費量を求めるためのアメリカスポーツ医学協会が提示する式を用いて、体重60kgの者が、時速4km(分速70m)、歩幅70cm、で10分歩く(700m、1000歩)場合を計算すると、消費エネルギーは30kcalとなる。つまり1日当たり300kcalのエネルギー消費は、1万歩に相当する。

歩行時のエネルギー消費量を求めるためのアメリカスポーツ医学協会が提示する式2)
水平歩行時の推定酸素摂取量(ml/kg/分)=安静時酸素摂取量(3.5ml/kg/分)+0.1×分速(m/分)
この式によれば、体重60kgの者が、分速70mで10分間歩くと、6300mlの酸素を摂取することとなる。これに「酸素1リットル当たりのエネルギー消費量=5kcal」の関係を当てはめると、約30kcalのエネルギー消費量に相当することが求められる。 <厚労省ホームページより抜粋>

アンチエイジング各論

フレイル

診断

予防

  • 栄養
    まずは総カロリー、そしてタンパク質が重要
    ビタミンDが重要→骨折、転倒、免疫に関与
  • 身体活動
  • 社会参加

アンチエイジングのための食生活

食べた方がいい食品/栄養素と効果

  • 納豆:
    ビタミンKが豊富で骨粗鬆症予防に有用(西日本に骨折が多い原因は納豆消費の差とされている)
    亜鉛も摂れる
    ひきわり納豆の方がビタミンK含有量が多いらしい
  • そば:
    マグネシウムも豊富
  • カルシウム:
    小魚、豆類、小松菜、(乳製品→賛否両論あり)
  • マグネシウム:
    骨のしなやかさを保つ
    Mg不足すると骨粗鬆症、便秘、こむら返り、心筋梗塞、不整脈、精神疾患、動脈硬化
  • 亜鉛:
    Zn欠乏すると全身老化が早まる(ハゲ、しわ、骨粗鬆症、が進行する)
    カキ、牛肉、納豆に豊富
    ビーフジャーキーに多い(100gに8.8mg=1日摂取量が含まれる)
    銅、鉄、Caを過剰摂取すると亜鉛は欠乏する、逆に亜鉛過剰摂取では銅、鉄、Ca欠乏もある
    食物繊維の過剰摂取でもZn欠乏する
  • ビタミンD:
    干しシイタケ、鮭
  • ビタミンK:
    納豆(とくにひきわり納豆)、ブロッコリー、ホウレンソウ
  • 骨粗しょう症予防のための栄養素
    カルシウム、ビタミンD、ビタミンK、亜鉛、鉄、マグネシウム、銅、タンパク質
  • タンパク質:
    1日推奨量は男性60g、女性50g
    50g=鶏肉150g+卵1個+豆腐半丁
  • 肉の焼き方
    高齢者はウェルダンの方が必須アミノ酸吸収がよかった(若者では差なし)

避けた方がいい食品

アンチエイジングドックで測定するべきもの

血液検査所見

  • 血清アルブミン
    高齢者(>70歳)では明らかな予後因子となる(<3.5g/dLのmOSは3.5年程度)
    目標値は>4.5
  • オーソモレキュラー栄養療法
    • AST/ALT
      単なる肝機能ではなくアミノ酸代謝の最初に関与する酵素(アミノ基転移酵素)で、AST・ALTが低すぎるのはよくない(20以下は異常低値を考える=ビタミンB6欠乏かもしれない)
      ともにビタミンB6が補酵素となり、B6欠乏ではAST・ALTがともに低下する(特にALT)
      若年女性の健診では軒並みAST、ALTが低値らしい
    • BUN
      アミノ酸代謝の代謝産物で腎機能評価だけでなくBUN低値はタンパク合成や異化低下を示す
      10以下では低すぎる
    • CK
      筋肉量と比例する
    • LDL、HDL
      タンパク合成力と比例して増加する
AST/ALTについて

トランスアミナーゼは肝細胞中に圧倒的に多く存在しているため、主に肝細胞傷害で血中に逸脱し、酵素活性が上昇する。このため肝機能検査と呼ばれ、広く使用されています。しかし正確には肝臓の機能ではなく肝細胞の傷害の有無を推定する検査である。
異常低値となる原因は以下の通り
10U/l以下:腎不全,透析患者,ビタミンB6欠乏症(→アルコール多飲など),妊娠,d-ペニシラミンやイソニアジド(INH)の服用

  • ビタミンD
    血清25(OH)D>30ng/mLを目標(免疫強化のためには>55ng/mL)
    サプリメントの投与量については一定の見解はまだない2000がいいという人も5000がいいという人もいる
    高用量サプリメントではビタミンD過剰症にはならないというする人、高用量の場合は頻回の採血followが必要という人がいる
  • 男性のテストステロン
  • DNAメチル化で生物学的年齢が評価可能

画像検査・生理機能検査

  • 握力測定:
    簡単な全身の筋肉量評価に握力がよい
    女性は18㎏以上、男性は28㎏以上が理想的

創薬

  • Senolytics

略語

  • AGEs:advanced glycation end products 終末糖化産物、 しわ、たるみ、しみなど外見上の老化兆候にかかわる
  • KPI

疫学研究

  • 高血圧の集団の血圧が2ポイント下がると日本人全体の死亡が20000人減ると言われている

バイオマーカー

  • カルボキシメチルリジン(CML):AGEsの一つで血中CMLがDM患者の予後予測因子となる
  • CMLと骨粗鬆症:AGEsの蓄積により骨も脆くなり骨折が有意に増える(CMLと骨量には相関性なし)
  • AGE READER:皮膚で計測するAGEs値、DMの予後と相関

AGEs

  • 癌との相関性あり
  • 骨粗鬆症との相関性あり(膵癌、乳癌、直腸癌)
  • 動物実験ではAGEs制限食で寿命が延長した
  • AGEsは肉や脂肪に富む食材を高温で揚げたり焼いた際に大量に生成される
  • 多めの水分で調理する(蒸したり茹でたり)と出にくい
  • 茶色い食材は高AGEs(メイラード反応)なので摂取しないようにする(=ファストフードすべて)
  • ブドウ糖に比べ果糖(フルクトース)はアミノ酸と10倍反応しやすい→果糖は極力避けるべき
  • レモンや酢に含まれるクエン酸は料理の過程で発生するAGEsを抑制する
  • 酢は食後高血糖を是正する
  • キチン・キトサン(マイタケや甲殻類)にはAGEsの吸収を阻害する効果がある
http://www.touyouigaku.org/blog/2018/03/-3031-1427424.html

歯科の問題→医療費抑制効果大

  • 日本の高齢者の葉の本数は年々増加傾向で2016年には50%以上が20本以上の歯を保っている
  • 小児の齲歯も減少しているが、被虐待児では齲歯が15~18倍多い
  • 一方で成人の齲歯は増加傾向(残存歯数が増えたことも一因か)
  • 世界で最も罹患数が多い疾患は『未処置の永久歯の齲蝕』・・・全世界の35%が罹患
  • 歯科治療の費用は全世界で約30兆円(世界の医療費全体の4.6%)
  • 日本においても悪性新生物の医療費3兆9546億円に次いで2位(2兆7900億円)
  • 齲歯は低所得者に有意に多い
齲歯予防のためには?
  • 齲歯の原因は齲原性細菌(ミュータンス連鎖球菌など)
  • 細菌のバイオフィルム(=デンタルプラーク)が長期間停留すると齲歯が発生する
  • 歯磨きのみでデンタルプラークを100%除去することは不可能
  • フッ化物の局所応用(=歯磨剤、高濃度のものがよい、1500ppm)
  • 成人の場合、2㎝の長さで洗浄後のうがいも1回のみにとどめると効果的にフッ化物が残留する

中枢神経系

脳の老化

  • 80歳代の30%に、90歳代の50%に無症候性脳梗塞が発見されるらしい
  • 2025年には65歳以上の5人に1人が認知症となる見込み
  • タクシードライバーの脳のしわが多い→瞬時の判断が求められる職業だから
  • アミロイドβ:睡眠中に分解される、睡眠不足は認知症のリスク?
  • 加齢、遺伝性のもの、高血圧、糖尿病、喫煙、頭部外傷、難聴等が認知症の危険因子
  • 運動、食事、余暇活動、社会的参加、認知訓練、活発な精神活動等が認知症の防御因子

認知症

  • 運動習慣は認知症リスクを下げる
    毎日3.2㎞歩く人は400m以下の人に比べADの発症リスクが2.2倍低下した

内分泌機能

テストステロンとLOH症候群

テストステロンについて

  • 男性では精巣で、女性では副腎皮質や卵巣由来の性ステロイドからの変換で産生される
  • テストステロンは、最も活性の強い男性ホルモンであり、その大部分(97 %以上)が性ホルモン結合タンパク(SHBG)と結合している。また、親和性は弱く、アルブミンとも結合しているが、いずれにしてもタンパク質結合型には活性はない
  • 精巣や肝臓などでは5α-還元酵素により5α-ジヒドロテストステロン(DHT)に変換されてさらに強い男性ホルモン活性を発揮し、 脂肪組織などではアロマターゼによりエストラジオール(E2)に変換される。
  • 血中濃度は、男性では30歳ごろから減少しはじめテストステロンの減少は男性更年期と呼ばれ、ストレスなどで急激な減少を起こすと、 男性更年期障害を起こす。
  • テストステロンの減少率は個人差が大きく、また、近年、2型糖尿病、メタボリック症候群との関連性が報告されている
  • 生理活性を有するのは遊離型TTのみ
  • 測定系としてはRIA法による遊離型TT(=FT)測定が有用であったが、現在は販売中止となり、総テストステロン値(=TT、遊離型+結合型)が用いられている
  • テストステロンは日内変動があるため、早朝すぐの採血が望ましい
  • 加齢とともにTTは緩徐に減少傾向、FTは急激に減少、LHはフィードバックで高値となりSHBGも加齢とともに高値となる
  • SHBGが高値となるとFTが減ってしまい、LOH症候群に影響を与える要因のひとつ
  • SHBGは加齢、抗けいれん薬、により増加し、肥満、糖尿病、などで減少する

LOH症候群(late onset hypogonadism)

  • 日本泌尿器科学会、日本メンズヘルス医学会が加齢性腺機能低下症診療の手引きを作成
  • テストステロン、遊離テストステロンの年齢別の基準値についての報告をLOH症候群(加齢男性性機能低下症候群)→保険病名登録がない
  • AMS(aging male’s symptoms)スコアやIIEF5でスクリーニングを行う
  • TRT(Testosterone replacement therapy、テストステロン補充療法)の適応:TT低値(<250ng/dL)およびLOH症状を有する40代以上の男性
  • TRTの実際:
    エナルモンデポー125~250mgを2~4週ごとに投与する
    代謝の向上により性機能、メタボ、耐糖能、体重、筋肉量の改善が得られる
    一方で骨量や抑うつ症状の改善効果は乏しい
  • テストステロンはアルコール多飲、加齢、肥満、糖尿病、肝硬変、薬剤などで減少する
  • TRTの有害事象
    心血管イベント増加→あまり影響はないと考えられている(高齢者では若干増加)
    多血症
    SAS
    にきび、脂肪肌
    女性化乳房
    肝障害
  • TRTは前立腺がんのリスクにはならないが、すでに前立腺癌治療中には投与できない
  • TRTはPSA値に影響を与えないが、治療開始前にはPSAを測定しておき、PSA<2ng/mLの場合にTRT開始し、TRT治療期間中はPSAをfollowする。PSA高値の場合はTRT開始前に前立腺癌の精査をしておく→専門医に紹介
  • 薬剤性LOH症候群
    スルピリドなどの抗うつ薬
    前立腺癌治療、抗がん剤

運動器疾患

運動器総論

  • 20歳代を過ぎると運動機能は-5~10%/10年低下する
    →運動を継続すると、機能低下を遅らせることができる
  • 30歳以降、筋肉量は-1%/年のペースで減少し70歳から加速する
痛みと運動について
  • ゆっくり行う方が痛みが出にくい
  • 運動中に痛みが出ても、運動後にすぐに収まるようであれば続けて構わない
  • 痛みが翌日まで続く場合は、3~7日間の休養後に半分くらいの運動量から再開する
  • 毎日続ける、最低でも週2回以上 (信州大学整形外科中村先生の講義より)

転倒・骨折、骨粗しょう症

  • 大腿骨近位部骨折は西日本に多い→納豆の消費量と比例する
  • 日本の骨粗しょう症検診率は最高で14%(大分、山梨)、全国平均では6%(北欧では80%以上)
  • 閉経後のやせ型女性で運動習慣がなく家族歴があり、DMや甲状腺疾患、喫煙者、飲酒、サルコペニア肥満などが骨粗しょう症リスク
  • 骨粗しょう症による圧迫骨折の6割は無症状(=いつのまにか骨折)
  • 圧迫骨折=ドミノ骨折、骨折した近くの骨がどんどん骨折していく
  • DXA法:腰椎と左右大腿骨近位部の両方の骨密度を測定し、一番低い数字がその人の骨密度とする
  • 骨粗しょう症は80歳からでも治療効果あり
  • 治療開始年齢が何歳であっても、骨粗しょう症薬物治療を1年間すれば半分の骨折が防げる
参考文献

1))Paffenbarger RS Jr et al: Physical activity, all-cause mortality and longevity of college alumni. N Engl J Med 1986;314:605-613.

2)American college of Sports Medicine: ACSM’s Guide lines for Excercise Testing and Prescription 5th Ed. williams & wilkins, 1995.

血管年齢

ABI(またはTBI)は血管のつまり具合、AWVとCAVIは動脈の硬さを評価する指標

  • 動脈硬化性疾患予防ガイドライン
    今回のガイドラインでは「潜在性動脈硬化指標」として、①脳MRI、②頸動脈エコー、③冠CT特に冠動脈石灰化、④脈波伝播速度(Pulse Wave VelocityPWV)、⑤心臓足首血管指数(Cardio Ankle Vascular Index:CAVI)、⑥足関節上腕血圧比(ABI)があげられています。④~⑥は血管年齢検査としてオプション検査で実施されていることが多い検査法です。これらの指標が、動脈硬化の危険因子が多い方々の治療や生活習慣の改善への動機付けに有用であるとされています。
  • CAVI 正常範囲はCAVI<8.0(>9.0で動脈硬化の疑い)
    • 大動脈の起始部から下肢・足首までの動脈全体の弾性を表す指標です。腕と足首の脈波から得られ、血管の硬さによって動脈硬化度を調べることができます。
    • PWV(脈波伝播速度)も血管の硬さを調べる検査ですが、PWVは血圧の変動に影響されるため、血圧の上下が激しいと動脈硬化指数としての正確性に課題がありました。そこで、血圧の影響を受けない測定方法として、血管の弾性係数そのものを表すCAVIが提唱されました。動脈は血液を全身に送り出すポンプの役目を果たしており、ポンプの圧力(血圧)が変化したときの血管の膨らみ方によって、動脈の硬さがわかります。
    • 脈硬化が進行するほど高い値になるため、早期診断と管理に役立つ。心臓から出て動脈を伝わっていく脈波(拍動)のスピードを測定したもので、正常な柔らかい血管では、拍動は血管壁に吸収されながら波のように動脈を伝わり、硬くなってしまった血管では速く伝わるため、動脈硬化が進行するほどCAVI値は高くなる
    • 検査は、仰向けに寝た状態で両腕・両足首の血圧と脈波を測定します。所要時間は5~10程度です。
  • △PWV
    • 手と足への脈波の伝わり方を、動脈硬化の程度として数値で表したもので、この値をもとに血管年齢を推計したり、早期血管障害を見つけることができます。
    • PWV検査では、心臓の拍動(脈波)が動脈を通じて手足に届く速度を測ります。動脈硬化によって血管の壁が厚くなったり、硬くなったりしていると、血管の弾力がなくなり、脈波が伝わる速度が速くなります。現在、腕と足首の脈波から簡単に計測できる診断機器が市販され、国内で大きく普及しています。また、近年では、高血圧やメタボリックシンドロームの診断・治療においても、有用な情報として注目を集めています。
    • 血管狭窄(血管が細い)が高度になると、脈波が伝播されにくくなり、PWVは誤って低くなる
  • TBI
    • 脈狭窄や閉塞を疑うとき第1選択としてABIを行いますが、罹患期間の長い糖尿病や透析患者様では足関節より中枢(心臓に近い血管)の動脈は石灰化が著しいため、ABIが本来より高値となり、実際には狭窄や動脈閉塞があるにもかかわらずABIが基準値の範囲内となり、病変を見逃す可能性があります。
      そこで、TBI(Toe Brachial Index,足趾上腕血圧比)検査では足趾血管石灰化の進行している患者様でも、閉塞性病変の存在を測定することが可能です。

美容

AGEと肌年齢

  • 細胞外マトリックスの中心的存在であるコラーゲン繊維は老化と深い関わりを持っている。若い時期のコラー ゲン繊維には、分子と分子の間に酵素反応に基づいて形成される善玉架橋が存在する。これは分子間の特定の場所にのみ存在しており、繊維の安定化に寄与している。 善玉架橋とは別に、加齢と共に分子間に非生理的かつランダムに形成される悪玉架橋がある。これによりコラーゲン繊維は固くなり、伸展性、柔軟性を失っていき、こ の変化が皮膚のしわ、関節の硬直、心肺機能の低下、血圧の上昇などにつながる。フルクトースの摂取により起こるメイラード反応やその反応によって生じたFruAGEはコラーゲンのさらなる悪玉架橋形成を引き起こすことが分かっている。Boaz Levi and Moshe J. Wermanらは、グルコースまたはスクロースと比較した フルクトースの老化への影響を調査するために離乳期の雄のラットを用いた実験を行っている。

AGA:Androgenetic Alopecia(男性型脱毛症)

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