プライマリケア マイナー診療科編 

目次

泌尿器疾患・婦人科疾患

尿路感染症

  • 亜硝酸塩還元試験
    • 膀胱炎や腎盂腎炎などの尿路感染症のスクリーニング検査として用いられています
    • 尿路感染症では亜硝酸塩が尿検査で陽性となります。
    • ただし、尿路感染症を発症してすぐの場合には陽性とならない場合があります
    • 亜硝酸を還元できる大腸菌をはじめとする腸内細菌群の存在を示唆
    • 腸球菌や緑膿菌は亜硝酸を還元出来ないため陰性

前立腺癌

  • 前立腺癌は外腺から発生し、尿道閉塞をきたしづらいため検診が重要

前立腺肥大症

α1ブロッカーの使用順序(作用弱いが安全域広い→症状改善作用強いが副作用も強い)
初回治療α1Aブロッカー:タムスロシン(ハルナール)
→α1Dブロッカー:ナフトピジル(フリバス)
→α1Aブロッカー:シロドシン(ユリーフ)

の順に使用、副作用強ければ1段階ずつ戻していく

  • 男性下部尿路症状・前立腺肥大症診療ガイドライン
  • 病態
    前立腺肥大症は内腺から発生するため、①早期に排尿障害が出現する。閉塞→膀胱壁が肥厚し、柔軟性が失われ②頻尿、尿意切迫感、夜間頻尿などの刺激症状も現れる。なお、夜間頻尿は尿量が多いことも要因の一つとなることに留意すべきである。過活動膀胱(OAB)を合併(男性の場合、OABの最大の原因がBPH)する場合もある。
  • 疫学
    東洋人、学歴が高く年収も中程度以上の者の危険因子が高いとされている。性生活や結婚に関する調査では、独身者にやや低い傾向や、結婚生活が長く高年齢まで性的にアクティブな者に多いことが示唆されているが、性欲や性行為の多寡を危険因子とするのに否定的な見解もある。この分野における系統的な研究は乏しく、結論は今後の研究を待つ必要がある。
  • 前立腺容積の重症度判定
    前立腺肥大症が疑われる患者においては、まず初期評価項目である直腸指診で前立腺の大きさや形態とともに神経学的な所見を評価する。前立腺の大きさと臨床症状とは必ずしも相関しないが、前立腺の腫大の状態の客観的評価には、経直腸的前立腺断層診断法は前立腺の容積測定と詳細な内部構造の観察に優れている。経直腸的超音波断層診断は専用機器が必要であるが、一般に広く用いられている経腹壁的超音波断層法でも、膀胱に尿がたまっている状態であれば、前立腺の容積測定と膀胱・前立腺の形態の観察は可能である。容積は一般的に1/2(縦径×横径×上下径)で算出される
    前立腺の形態上の重症度はその容積で表現し、軽症 ; 20ml 未満、中等症 ; 50ml 未満、重症 ; 50ml 以上に区分する。

薬物療法

薬物治療の要点は
①前立腺により圧迫された尿道の抵抗を改善させる(排尿困難を改善)
②膀胱の柔軟性を回復させる(過活動膀胱を改善)

①の目的で使用するのはα1遮断薬>>PDE5阻害薬>5α還元酵素阻害薬
②の目的で使用するのは①併用の上でβ3受容体作動薬>>抗コリン薬(抗コリン薬は最終手段!!尿閉の危険大!!)

  • α1アドレナリン遮断薬:
    • 前立腺平滑筋に対する交感神経緊張状態を抑え前立腺を弛緩させ、前立腺の尿道に対する圧迫を軽減する
    • 前立腺肥大症に伴う過活動膀胱の改善にも効果があり、排尿困難だけでなく、頻尿、夜間頻尿、尿意切迫感などの蓄尿症状の改善にも有効である
    • 内服後1週間以内で症状改善効果と満足度が得られる
    • 前立腺を小さくする効果はないが、継続投与における長期的な改善効果も示されている
    • α1受容体遮断薬は血管を拡張させるため、起立性低血圧によるたちくらみなどが懸念される
    • その他の副作用として、めまい、下痢、射精障害などがみられることがある
    • α1受容体遮断薬を服用していると、白内障の手術に影響することがあるので、眼科の医師に服用していることを伝えることが必要→術中虹彩緊張低下症候群があらわれる
    • ◎ハルナール(タムスロシン)導入用
      • α1ブロッカーの初回選択薬→効果不十分な場合、増量できないためフリバスやユリーフに切り替える
      • タムスロシン0.2mg1日1回、必ず食後
      • 空腹時だと血中濃度が上昇=効きすぎる可能性あり
      • 0.2mgで開始(高齢者はめまい、ふらつきに注意)
      • CKDガイドライン上、推定Ccrによる減量の必要なし
    • ナフトピジル(フリバス):
      • タムスロシン0.2mg=ナフトピジル50mg
      • 1日1回25mgより投与を始め、効果が不十分な場合は1~2週間の間隔をおいて50~75mgに漸増し、1日1回食後経口投与する
      • 症状により適宜増減するが、1日最高投与量は75mgまで
      • めまい、ふらつき、たちくらみ、失神が生じうると記載されている
      • 海外ガイドラインには未掲載:日本・韓国のみのローカルドラッグ
      • ◎シロドシン(ユリーフ):最強だが副作用も最強
        • タムスロシン塩酸塩0.2mg=ユリーフ錠2mg×2
        • シロドシン1回4mgを1日2回朝夕食後に経口投与→ハルナールの2倍量に相当
        • めまい、ふらつき、たちくらみ、失神が生じうると記載されている
        • シロドシンでも効果不十分な場合はアボルブの併用を考慮する→事前にPSA測定が必要
https://gifu-min.jp/midori/document/576/zennritusenn.pdf
  • PDE5(ホスホジエステラーゼ5)阻害薬ザルティア(タダラフィル)
    • 硝酸薬との併用禁忌!
    • ホスホジエステラーゼ5とは、前立腺や膀胱、尿道に多く存在して、血管や筋肉を収縮させる働きのある酵素
    • ザルティアは、この酵素の働きを阻害することにより、血管を拡げ筋肉を緩めることで、排尿障害を改善する
    • タダラフィルは、シアリスという商品名でED(勃起不全)治療薬としても用いられるため6時間以上持続する持続勃起が起こる可能性がある→速やかな対処が必要となり、4時間以上持続する状態がみられたら、直ちに医師の診察を受ける必要がある
  • 5α還元酵素阻害薬アボルブ(デュタステリド)0.5㎎1カプセル116.2円
    • 5α還元酵素はテストステロンを、より強力なジヒドロテストステロンに変える酵素
    • アボルブは男性ホルモンの働きを弱め、前立腺縮小効果が期待できる
    • 効果が見られるまでに6ヶ月程度かかる
    • デュタステリドは、ザガーロという商品名でAGA(男性型脱毛症)の治療薬でもある
    • 男性ホルモンの働きを弱めるため、勃起不全や性欲減退、女性化乳房といった性機能障害が起こることがあるが、血液中テストステロン値を低下させることはないため、その発生頻度は比較的少ない
    • 前立腺癌の存在下であっても投与6ヶ月後にPSA値を約50%減少させるので注意
      ダブルスコア・ルール:アボルブ服薬中はPSA値の2倍の値が真のPSA値
  • 抗アンドロゲン薬
  • その他の薬剤
    • エビプロスタット1錠32.9円:
      非常に古い薬剤で、治療効果はα1遮断薬に劣るがα1遮断薬だけで効果が不十分な場合にに上乗せ効果が期待される。植物由来成分で、有害事象はほぼない。
    • セルニルトン:
      プラセボやパラプロストと比較し夜間頻尿への効果が示唆されているが、尿流量,残尿量への改善効果はない。
    • 漢方薬(八味地黄丸,牛車腎気丸):
      前立腺肥大症に対して有効性を支持する根拠は十分でない。牛車腎気丸は他剤との併用にて過活動膀胱症状に有用とする非盲検 RCT がある。八味地黄丸は前立腺肥大症に保険適用があるが,これまでその有効性に関する RCTは日本語論文を含めて報告がない。牛車腎気丸は八味地黄丸に牛膝と車前子を加え,附子を増量した漢方製剤で,頻尿に保険適用がある。タムスロシン使用後も OAB 症状が続く前立腺肥大症に対して牛車腎気丸を追加投与するクロスオーバー非盲検 RCT では,追加投与群で有意な QOL の改善があった。
  • 食事療法・サプリメント
    • 亜鉛:
      亜鉛は前立腺組織内に高濃度に存在し 5α還元酵素活性抑制作用などを有することから,前立腺肥大症や前立腺癌の発症,進行を抑制する可能性が報告されているがその効果は二相性であり,一定の摂取量(組織内濃度)を超えるとむしろ促進的に作用する可能性が示唆されている。
    • リコピン、ビタミンC、ビタミンD、イソフラボン:いずれもエビデンスに乏しい
    • ノコギリヤシ:
      最も広く使用される前立腺肥大症のサプリメントの一つである。その薬理効果として,5α還元酵素阻害作用,ジヒドロテストステロン(DHT)のアンドロゲン受容体結合阻害作用,前立腺組織内エストロゲン受容体への作用などが報告されているがRCTの結果,ノコギリヤシの前立腺肥大症の進行抑制ならびに随伴する LUTS を改善させる効果は現時点では明らかでないとされている。
  • α1遮断薬または PDE5 阻害薬を基本とする。前立腺腫大が 30mL 以上の場合は 5α還元酵素阻害薬の併用・変更を,OAB 症状が明らかな場合(OABSS 6 点以上を目安)は抗コリン薬またはβ3作動薬の併用を考慮する。これらの治療でも効果が不十分な場合は,手術療法を前提に手術適応に関する評価を考慮する。

手術適応

不十分な症状の改善のほかに,尿閉・血尿・膀胱結石・腎機能障害・尿路感染症などの合併がある。不十分な症状の改善のみが問題の際は,患者希望や全身的評価と併せて,膀胱出口部閉塞の評価を行う。閉塞の判定は内圧尿流検査所見が基準であるが,他の検査所見を組み合わせることで代用可能な場合もある。適応がないとされた場合は,薬物療法や他の治療が勧められる。

  • 標準術式:ホルミウムレーザーを用いた経尿道的レーザー前立腺核出術(HoLEP)
PSA前立腺特異抗原、prostate-specific antigenについて

PSAは精液の液状化に関与する蛋白で、前立腺の上皮細胞から分泌されるタンパク。多くは精液中に分泌され、ごく微量が血液中に取り込まれる。PSA値と前立腺癌の陽性率は比例関係にある。PSAの異常値は4以上だが、4-10ng/mLのいわゆるグレーゾーンでは2-3割の陽性率に留まり、偽陽性が存在する。偽陽性の原因としては前立腺肥大症、前立腺炎、尿閉症、尿道カテーテル挿入射精や長時間の車の運転のような前立腺への機械的な刺激でも軽度上昇する場合がある。他方,PSAは5α還元酵素阻害薬や抗アンドロゲン薬で低下し、本邦で承認されている薬剤では,フィナステリド(男性型脱毛症用薬),デュタステリド(前立腺肥大症治療薬),クロルマジノン(前立腺肥大症治療薬)の投与中は,約 1 年以降では PSA 値が概ね 50% に減少すると報告されている。前立腺肥大の影響を受けない体積依存性パラメーター(体積の影響を無くすためにPSAを体積(cc)で除するPSA density(PSAD)を用いる)が有用である。PSADのカットオフ値は0.15と定義されている。同様に時間依存性パラメーターもPSAの感度を高くする工夫の一つでPSA velocity(PSAV)PSA倍加時間(PSA doubling time, PSADT)がある(癌ではPSA値が上昇し続けるのに対して肥大症では高ばいといった違いを利用)。PSA velocityは1年間におけるPSAの上昇度で表わされ0.75ng/ml/yearが正常値と言われ、PSA倍加時間は2-3年以内であれば臨床的に意義のある癌である可能性が高い。

日本泌尿器科学会HPより

過活動膀胱(OAB)

  • 過活動膀胱診療ガイドライン[第3版]2022年、日本排尿機能学会/日本泌尿器科学会
  • 疫学
    • 40歳以上では、8人に1人、70歳以上では4人に1人が該当すると言われている
    • 男女比は若干男性に多い
    • 国内推計患者810万人で、このうち尿失禁を伴うWet typeが約半数とされている
  • 原因
    • 脳血管障害などの神経障害を伴うOABと加齢、前立腺肥大症などによる神経障害を伴わないOABがある
    • 前立腺肥大症の約6割にOABが合併すると言われている
  • 症状
    • 尿意切迫感(急におこる抑えがたい尿意)を必須症状とし通常、頻尿および夜間頻尿を伴う症状症候群のこと
    • 尿失禁の有無は問わないが、UUI=切迫性尿失禁、急性の尿意と失禁でOABの70%以上で経験がある
    • 特に、寒さや、トイレのドアノブに触れた時などをきっかけに尿意切迫感を生じやすいと言われている
  • 鑑別疾患

薬物療法:

最も処方されるのはβ3作動薬
ベタニス>ベオーバ>ベシケア>トビエースの順

第一選択はβ3作動薬

効果不十分なら
 女性→抗コリン薬を上乗せする
 男性→前立腺肥大合併例が多いため初回は前立腺治療先行(α1ブロッカーとPDE5阻害薬)が推奨



禁忌について
 「重篤な心疾患」
  →ベオーバ(ビベグロン)が慎重投与である以外、他の抗コリン・β3受容体作動薬はすべて禁忌

  • 抗コリン薬
    抗コリン作用に関する禁忌がある(緑内障、尿閉、腸閉塞、重症筋無力症、重度の心疾患)
    抗コリン作用により、口渇や便秘、認知症/認知機能障害の症状を悪化させるおそれがある
    • 〇トビエース:
    • デトルシトール
    • ◎ベシケア(ソリフェナシン):
      膀胱選択性が高いため従来の同類薬に比べ口の渇きなどの副作用が比較的少ない。
      血中濃度半減期が長く(約50時間)1日1回の服用でよい。
    • ウリトス
    • ×ポラキス(オキシブチニン):
      認知症を悪化させるため発売中止
    • バップフォー
    • ステーブラ
  • β3受容体agonist:
    膀胱を広げ尿道を縮めることで、尿を蓄えやすくし過活動膀胱による尿意の切迫感や頻尿などを改善する
    ベタニスとベオーバの直接比較試験はないが、副作用が多いのはベタニス>ベオーバ、併用禁忌が多いのもベタニス>ベオーバ、相互作用が多いのもベタニス>ベオーバ
    • △ベタニス(ミラベグロン):2011年発売
      ファーストインクラス
      ベオーバと比べβ3選択性は低く、薬理試験ではβ1、β2、M2刺激作用もみられているため注意
    • ◎ベオーバ(ビベグロン):2018年発売
      処方量が増加傾向
女性下部尿路症状ガイドライン
  • 漢方薬
過活動膀胱質問票:OABSS
夜間頻尿
  • 定義
    • 臨床的には夜間就寝中に2回以上排尿のために起き、患者あるいは介護者が治療を希望するものを指す
    • 本年、約10年ぶりに夜間頻尿診療ガイドラインが改訂され、注目を集めている

膀胱癌

  • 尿細胞診検査は,尿中に排出される尿路上皮剥離細胞の異型度を病理学的に診断する方法である。その感度は40〜60%,特異度は90〜100%と報告されているが,高分化な筋層非浸潤癌の検出能の低さがその低感度の要因となっている。

男性下部尿路症(MLUTS)

  • 症状
    頻尿,夜間頻尿,尿意切迫感,尿失禁,排尿困難,膀胱痛など
  • 鑑別疾患は多い
    前立腺肥大症,前立腺炎,前立腺癌,過活動膀胱,低活動膀胱,膀胱炎,間質性膀胱炎,膀胱癌,膀胱結石,尿道炎,尿道狭窄,神経疾患,多尿,夜間多尿など
  • 多くの薬剤が男性下部尿路症状を悪化させる可能性があり,特に抗コリン作用を有する薬剤には注意が必要である。また,肥満,高血圧,高血糖,脂質異常症などの生活習慣病と男性下部尿路症状との関係が指摘されている。前立腺部尿道・尿道括約筋の収縮あるいは排尿筋の弛緩に作用する薬剤は排尿困難・尿閉の原因に,逆に前立腺部尿道・尿道括約筋の弛緩あるいは排尿筋の収縮に作用する薬剤は頻尿・尿失禁の原因となる。抗うつ薬,抗不整脈薬 , 鎮痙薬など抗コリン作用を有する薬剤は多く,使用に当たっては添付文書の確認が必要である。
  • 診断
    排尿記録により,排尿回数,尿失禁回数,機能的膀胱容量,尿量を,昼間,夜間別に知ることができるため、3~7日程度の記録を行うことが望ましい
男性下部尿路症状・前立腺肥大症診療ガイドライン
  • 夜間頻尿が主症状の場合は,まず 24 時間の排尿記録を検査し,夜間多尿があれば適切な生活指導を考慮する。それで改善しない場合,もしくは夜間多尿がない場合は夜間頻尿診療ガイドラインを参照する。下部尿路と直接関係のない要因としては,飲水過多,高血圧,心不全,睡眠障害(睡眠時無呼吸症候群)などがある。

女性下部尿路症

男性更年期障害(加齢性腺機能低下症、LOH症候群)

LOH症候群→加齢+ストレスで発症する症候群

  • 日本内分泌学会、日本泌尿器科学会、日本メンズヘルス医学会 2022年12月に診療手引き改定
  • 定義(2022年版):加齢あるいはストレスに伴うテストステロン値の低下による症候群
  • 発症時期:特に定まっていない
  • 症状:精神症状+身体症状+性機能関連症状からなる(図参照)
  • ED(勃起障害)
    60歳代の日本人の60%以上にみられる。女性は閉経によって生殖機能の終わりを迎えますが、男性はその終わりがなく、80歳、90歳になっても勃起する。EDは勃起のメカニズムである血管の機能と深く関係があり、血管の健康が失われる(動脈硬化が進み、血流が悪くなる)と起こりやすくなる。陰茎動脈は非常に細いため初期の動脈硬化でも影響が現れやすく、EDは”最初に自覚できる生活習慣病”と考えられ、性欲のあるなしに関わらず、EDは男性の健康の”見張り役”になる。
  • 加齢男性で男性ホルモン(テストステロン)値が低い場合、抑うつ状態、性機能・認知機能の低下だけでなく、糖尿病や肥満、メタボリックシンドローム、骨粗しょう症、心血管疾患(動脈硬化・血管内皮機能の低下)などに関係するとの研究結果や、男性ホルモン(テストステロン)値の高い人のほうが長寿という報告もある。また、男性ホルモンの減少は認知症やサルコペニア(筋肉減少症)とも関連する。
  • 男性ホルモンは多くの病気のリスクから身を守ってくれる、健康長寿のための大事な相棒といえる。
  • 診断
    日本のLOH診断基準:TT値<250ng/dL(>250のときはFT値を測定し<7.5pg/mLで診断される)
     テストステロン値の測定は最も高くなる午前8-11時が望ましい
    ②他の性腺機能低下を呈する疾患との鑑別→LH、FSHの測定を追加
    質問票(AMS、ADAM)があるが、スコアとTT値の相関性が低いとされる→臨床使用にはさらなる改良が必要
    血液検査(肝機能・腎機能・脂質・糖・前立腺特異抗原(PSA)・テストステロン・フリーテストステロン・プロラクチン)、男性更年期チェック表にて判断。(→ホルモン検査の組み合わせは保険適応外となるので自費診療でやることが多い)男性ホルモンの値は日内変動し、午前中にピークを迎える。
  • 治療
    職場などのストレスチェックや睡眠、運動や食事などの生活習慣の改善。
    漢方薬やED治療薬、抗うつ薬などが処方されることもある。
    ホルモン補充療法(ART)
    著しく男性ホルモンの値が低く、症状が強いときには、テストステロン補充療法を行う。保険治療としてはテストステロンの筋肉注射を2~4週間おきに症状が改善するまで行う。
    漢方薬
    男性更年期障害の症状が軽い場合は、補中益気湯が処方される
    勃起障害には八味地黄丸牛車腎気丸が、精神的要素の強い勃起障害には柴胡加竜骨牡蛎湯や桂枝加竜骨牡蛎湯を用いる
ホルモン補充療法と前立腺疾患について

前立腺肥大症と前立腺癌はともにアンドロゲンにより増殖を受けるが、アンドロゲン補充療法(ART)によりこれらの発生リスクが増すかどうかについての結論は出ていない。これまでARTについての22の臨床試験(45~89歳までの583例を対象)があり、うち16試験ではARTに伴うPSAの上昇を認めなかったが、これら前立腺疾患の自然史は長いため、長期的影響には注意が必要である。本邦におけるARTの適応除外基準および、ART開始後のPSA監視基準がある。

女性更年期障害

  • 女性の更年期障害に対しては、
  • 当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)→冷え性タイプ
  • 加味逍遙散(かみしょうようさん)
  • 桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
  • による加療が行われており、男性にも同様の漢方薬の効果が期待できます。
  • 漢方薬の使い分けは本来「証」を考慮して行うべきで、当帰芍薬散は虚証、加味逍遙散は中間証、桂枝茯苓丸は実証に適しています。

月経前症候群(premenstrual syndrome : PMS)

  • PMSとは、月経前症候群と呼ばれるもので、月経が開始する3~10日ほど前から身体的、精神的に現れる不快なさまざまな症状のこと
  • これらの症状は月経が開始すると同時に改善するのが特徴
  • 月経のある女性の70~80%は月経前に何らかの不快症状を感じるといわれる
  • 生活に困難を感じるほど強いPMSを示す女性の割合は5.4%程度
  • 原因ははっきりとはわかっていませんが、女性ホルモンの変動が関わっていると考えられている
  • 精神神経症状として情緒不安定、イライラ、抑うつ、不安、眠気、集中力の低下、睡眠障害、自律神経症状としてのぼせ、食欲不振・過食、めまい、倦怠感、身体的症状として腹痛、頭痛、腰痛、むくみ、お腹の張り、乳房の張りなどがあります。とくに精神状態が強い場合には、月経前不快気分障害(premenstrual dyspholic disorder : PMDD)の場合もあります。
  • カルシウムやマグネシウムを積極的に摂取し、カフェイン、アルコール、喫煙は控えたほうがよいと言われている
  • 漢方療法
    個人の証(症状や体質)に合わせて、漢方薬を使用します。当帰芍薬散、桂枝茯苓丸、加味逍遥散、桃核承気湯、女神散、抑肝散などがよく選択されている(以上、日本産婦人科学会ホームページより)

神経因性膀胱

脳・脊髄の中枢神経、あるいは脊髄から膀胱に至るまでの末梢神経の様々な病気により、膀胱や尿道の働きが障害され、排尿障害をきたす病気の総称

  • 分類とそれぞれの症状:
    • 大きく上位型(仙髄より中枢の神経)と下位型(仙髄より抹消の神経)の2つに分ける
    • 上位型:痙性神経因性膀胱といい、膀胱が過敏な状態(過活動膀胱)となる
      病態:排尿の反射の抑制が効かなくなり、排尿反射が過敏になって膀胱が勝手に収縮してしまう状態
      症状:頻尿や尿意切迫、尿失禁など(主に蓄尿障害)
    • 下位型:弛緩性神経因性膀胱といい、膀胱が伸びきった状態になり縮む事が出来なくなる
      排尿反射がうまく起こらなくなり、膀胱の収縮が障害されて、排尿困難(排尿の勢いがない、排尿時にりきむ、尿線が細い、残尿が残るなど)の症状が出現
      尿意を自覚出来ない事が多い
https://www.med.nagoya-u.ac.jp/uro08/sick/neurogenic-bladder/index.html#:~:text=%E7%A5%9E%E7%B5%8C%E5%9B%A0%E6%80%A7%E8%86%80%E8%83%B1%E3%81%A8,%E3%81%8D%E3%81%9F%E3%81%99%E7%97%85%E6%B0%97%E3%81%AE%E7%B7%8F%E7%A7%B0%E3%81%A7%E3%81%99%E3%80%82
  • 治療→病態に応じて使い分ける
    • 蓄尿障害の治療
      • 薬物療法:
        膀胱を弛緩させる薬剤=抗コリン薬、β3作動薬
      • 非薬物療法:
        膀胱訓練、骨盤底筋訓練、干渉低周波治療(電気刺激治療)、仙骨神経刺激治療などが行われ、経尿道的膀胱壁ボツリヌス毒素注入治療を行うこともある。また、尿道を締める筋肉(尿道括約筋)の機能障害により、腹圧性尿失禁のある場合には、外科的治療として、尿道スリング手術(女性)、人工尿道括約筋埋め込み術を行う。また、膀胱が小さくなってしまった場合には、腸管を使った膀胱拡大術という手術を行う。
    • 排尿障害の治療:
      • 薬物療法:排尿を促す薬=α1遮断薬(エブランチル)、コリンエステラーゼ阻害薬(ウブレチド)
        • まずエブランチル、だめならウブレチド併用
          • α1受容体遮断薬
            • エブランチルα1受容体遮断薬で唯一、神経因性膀胱に適応がある→女性にも処方できる
          • コリンエステラーゼ阻害薬→コリン作動性クリーゼに注意(下痢、腹痛、嘔吐で発症)
            • ウブレチド(ジスチグミン)
          • コリン作動薬
            • ベサコリン(ベタネコール):
              ウブレチドより禁忌が多く使用しづらい
              術後腸管麻痺にも適応症あり
      • 非薬物療法:
        薬物療法の有効性は低く、清潔間歇導尿による尿排出が標準的治療
低活動膀胱(UAB)について
  • 定義
    • 国際禁制学会によるUAB症候群の定義は、「尿勢低下、遷延性排尿(排尿遅延)および腹圧排尿で特徴づけられ、残尿感はある場合とない場合があり、ときに蓄尿症状を伴う」というものである。一方、低活動膀胱が、主として膀胱の収縮障害(排尿筋低活動)に起因するとの考えから、排尿機能学会のワーキンググループから表2のような診断基準も提唱されている
  • 比較的最近の概念であり、まだ治療法など確立したものがない

精巣上体炎

  • 尿路 感染症の原因菌、クラミジア、淋菌などが尿道から精管 を上行し、精巣上体に到達することによる
  • 比較的急な発症、片側のみの陰嚢内容の腫張と疼痛があり、発熱を伴うことがある。
  • 陰嚢を挙上すると、疼痛は軽減する(プレーン徴候陰性)

精巣捻転

  • 学童期から青年期に多い。
  • 陰嚢内で精巣が精索を軸にして捻じれ、精巣の血行障害をきたすもの。
  • 急性精巣上体炎より突然の発症。早期では陰嚢内容の腫張はないが、時間とともに腫張が出現。
  • 陰嚢を挙上すると、疼痛は増大する(プレーン徴候陽性)。検尿は正常。
  • 発症後 3時間以上経過すると、精巣は不可逆的な壊死に陥ることから、早期の手術(精巣固定術)を行う必要がある。
  • 急性精巣上体炎との鑑別困難であることが少なくなく、疑わしいときには、まず鑑別のための手術を行うべき。

STD

日本性感染症学会ガイドライン2016→写真付きでわかりやすい
STDには10数種類もの原因菌が同定されている

最も多いのはクラミジア
男性は尿検査、女性は尿検査と帯下の検査が必要
女性のSTDは基本的に婦人科疾患(培養も治療も婦人科)、尿路感染症を併発したときのみ泌尿器科
症状がなくなった時点で再び尿検査、帯下検査を行い消失したことを確認して治癒判定とする

尿道炎症状→尿道炎として泌尿器科で治療

  • 淋菌性、クラミジア性、それ以外の原因による尿道炎に分類
  • 淋菌→CTRX
  • クラミジア→マクロライド

帯下→膣炎/子宮頸管炎/PIDとして婦人科で治療

  • 帯下の種類
    • 腟帯下は、腟トリコモナス症、腟カンジダ症、細菌性腟症
    • 子宮頸管帯下は、クラミジア・トラコマチスと淋菌による子宮頸管炎
    • 骨盤内感染症(クラミジアや淋菌、好気性菌、嫌気性菌による子宮内膜炎や子宮付属器炎)による子宮帯下は、頸管帯下のようにはっきりとしたものはなく、通常、頸管帯下、腟帯下と混在して現れる
  • 帯下の鏡顕/培養が必要→婦人科受診
STD各論

クラミジア・トラコマチス

男性女性とも自覚・他覚されず長期感染が持続して、感染源となる場合が多い
抗原検査がスタンダード→男性は尿検査、女性は婦人科で精査
抗体検査は過去数年以内の感染と現感染を鑑別できないため、STD急性期診断には用いるべきではない
抗体検査は抗原検出が困難な骨盤内感染症、卵管炎、副睾丸炎、新生児肺炎などの深部感染症の補助診断として利用するにとどめる(IgA陰転化まで6か月~3年かかるらしい)

  • 症状は男女ともに軽微~無症状、時に重症で精巣上体炎やPIDや肝周囲炎、卵管不妊に至ることもある
  • 女性性器のクラミジア感染症の半数以上が、全く自覚症状を感じない
  • 性器クラミジア感染症は、約9割が10才代から30才代で、その6割以上が女性(C県)
  • 20歳代の無症状の若年男性における初尿スクリーニング検査で、クラミジアの陽性率は4~5%という報告もある
  • 男性尿道炎の診断方法→初尿による抗原検出法、PCR法などの高感度検査を行う(抗体検査は行わない!!!)
  • 女性の診断法→子宮頸管の分泌物か、擦過検体からクラミジア検出を行い、分離同定法、核酸検出法、核酸増幅法、酵素抗体法が推奨される(核酸増幅法(TMA法、PCR法、SDA法)の感度が高い)
  • 淋菌同様、パートナーの検査も重要
  • セックスパートナーが複数あるような女性、特にティーンエイジャーにおいては、感染率が 25%
    →米国CDCでは25歳以下のすべての女性とピル服用者、25~ 30歳でパートナーが変わった人、複数のパートナーのある人は、すべて検査対象としているほど、ありふれた感染症とされている
  • 治療:
    • 抗生剤はクラミジアに対して「時間依存的効果」に効く→有効血中濃度を2週間維持する必要がある
    • マクロライド系またはキノロン系、テトラサイクリン系の抗生剤
    • 最もよく使用されるものはジスロマック1000mg1日間投与→ただし淋菌には不向き
    • NQ、テトラサイクリンは2週間内服する
    • 2〜3週間後に治癒判定を行う

淋菌:グラム陰性双球菌

淋菌は耐性菌が多く、培養検査と同時に薬剤感受性検査が必須

  • 主に男性の尿道炎→精巣上体炎、女性の子宮頸管炎→尿道炎やPIDを起こす
  • 1回の性行為による感染伝達率は 30%程度
  • 検査:
    • 淋菌性尿道炎の検出法には、グラム染色標本の検鏡、分離培養法、核酸増幅法がある
    • 淋菌性子宮頸管炎の検鏡検出感度は高くないので、分離培養法、核酸増幅法が推奨される
    • 男性尿道炎→淋菌・クラミジアのスクリーニング→陽性ならパートナー(無症状でも!)の検査も必須
  • 症状:
    • 尿道炎では2〜9日の潜伏期を経て排尿時にしみるような痛みの症状が現れる
    • 男子尿道炎では約 20~ 30%の症例でクラミジアが重複感染している
    • 女性は感染しても無症状例が多いので、無治療のまま、男性の淋菌感染症の主たる感染源となる
  • 治療:
    • 抗生物質は淋菌に対して「血中濃度依存的」に働く→CTRXの点滴が第一選択
    • 経口セフェム、ビブラマイシン、NQはすでに耐性淋菌が増えて無効なことが多いため使用しない
    • 難治例ではミノマイシン、エリスロマイシンが有効だがある程度の副作用は覚悟の上で大量投与する
    • クラミジアとの合併例では早期にロセフィン点滴静注を使い、すみやかにクラミジアの治療に移行する
    • 使用できる抗生剤:
      • オーグメンチン
      • トロビシン(スペクチノマイシン)2g筋注
        アミノグリコシド系の淋菌専門治療薬
        咽頭への移行が悪いため咽頭感染では使用されず、セフトリアキソンが主に使用される
      • 第一選択薬はセフトリアキソンの単回投与

梅毒

鼠径リンパ節腫脹では梅毒も疑い、問診とスクリーニング

整形外科/運動器疾患

骨粗鬆症

転倒→骨折→寝たきり→肺炎 の流れを絶つには骨粗鬆症予防・治療が重要

  • 疫学:1280万人(推定)、60代女性の3人に1人、70代女性の2人に1人
  • 医療面接:過去の骨折、既往歴、服薬状況、OPの家族歴、に脊柱後弯の増強と身長の低下(25 歳時の身長より 4cm 以上の身長低下がある場合には椎体骨折を罹患している可能性が高い)、体重減少、閉経時期、運動習慣、偏食、喫煙歴/過度の飲酒(いずれもリスクファクター)、CKD、DM、COPD、甲状腺機能亢進症、関節リウマチ、ステロイド、ワルファリンなど
  • 血清Caに影響する薬剤
    • 血清Ca低下:フロセミド、骨粗鬆症治療薬(ミノドロン、デノスマブ、ロモソズマブ)
    • 血清Ca上昇:サイアザイド(骨折減少効果もある)
  • 検査:骨量測定、骨代謝マーカー、亜鉛、カルシウム、ビタミンD、ビタミンK
  • 診断:DEXA法による骨密度測定(YAM<70%で確定診断、骨折歴があれば<80%)
       既存椎体骨折があれば、骨密度測定なしで骨粗鬆症と診断する(既存椎体骨折のある場合、新規椎体骨折リスクは4倍で大腿骨近位部骨折リスクは3~5倍となる)
原発性骨粗鬆症の薬物治療開始基準
「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015年版」
  • 治療
    非薬物療法(禁煙+禁酒+運動+栄養(亜鉛も測定する))でだめなら投薬
    • 薬物療法
      アレンドロネート+活性型ビタミンD製剤の併用、3~5年間がスタンダード
      製剤一覧→https://www.jpof.or.jp/Portals/0/images/medical/document/osteomedicine2021.pdf

    • ビスホスホネート製剤:
      アレンドロネート(フォサマック=ボナロン),リセドロネート(ベネット=アクトネル)1回/4週
      • 骨吸収時にBPが破骨細胞に特異的に取り込まれると、ファルネシルピロリン酸(FPP)合成酵素活性を阻害し、破骨細胞のアポトーシスを誘導する
      • 高用量製剤(月一回製剤等)に共通して見られる副作用としてインフルエンザ様症状があり服用後3日以内に発生し7日程度で回復していく
      • 4年以上継続すると顎骨壊死などの副作用が増加する
      • 寝たきりの人には内服は処方しない→使うなら注射製剤だがそもそも必要ないだろう
      • 腎機能を悪化させることがあるので、腎機能モニタリング必要
      • 注射剤:
        • リクラスト(ゾレドロン酸水和物):2016年~国内販売、年1回の静脈内投与でOK。35000円/回
          • 治療効果は他のビスフォスフォネート製剤と非劣性
          • 投与禁忌:腎不全(CCr<35)
          • 副作用:発熱39%、関節痛10%、頭痛、消化器症状
          • ゾメタ(4㎎:ノバルティスファーマ)と同成分(リクラストは5㎎:旭化成ファーマ)
        • ボンビバ静注シリンジ:1回/月
        • ボナロン点滴静注バッグ:1回/月
      • 内服薬:
        4種類、第2世代以上(→骨吸収抑制効果が第1世代の1000倍以上)を用いる
        • 朝起床時に服用する,服用後30分は横にならないなど,使用に当たってはいくつか注意点がある
        • 食道狭窄やアカラシアといった食道通過を遅延させる障害を持つ患者や,服薬後に立位または座位を30分以上保てない患者には使用を控える
        • 服用の際には、CaやMgを含むミネラルウォーターは避ける必要がある
        • 腎排泄型のため,腎不全のある患者への使用には注意が必要となる
        • 顎骨壊死は侵襲的な歯科治療後に生じることが多く,経口ビスホスホネートによる発生率は1万分の1/人年以下と推定されている。口腔ケアの状態を評価するとともに,抜歯などの歯科的処置を予定している場合には,投与の延期を検討する。
        • 第2世代のアレンドロン酸(フォサマック=ボナロン、同一薬剤)、第3世代のミノドロネート(ボノテオ=リカルボン)、リセドロネート(アクトネル=ベネット)は4週間に1回の高用量投与が可能
        • リセドロネートは腎不全禁忌→ビスホスホネート製剤の比較一覧
        • 治療開始後にいつ効果を判定すべきかに関する明確なコンセンサスはないが,開始1~2年後に骨密度を測定するという推奨がある
        • 投与期間に関する明確な基準も定められておらず,リスク・ベネフィットの評価と患者の希望に基づき個別に決定する必要がある→目安としては,低リスク群(例:比較的若く骨折歴がなく,治療によって骨密度が改善している患者)では5年間(静注では3年)で一旦中止を検討する。一方,高リスク群(例:高齢で骨折歴がある,治療にもかかわらず骨密度の改善が見られない,あるいは治療中に骨折した患者)では治療を延長し,計10年間(静注では6年)の投与を検討する。3~5年で一旦中断する根拠としては,中断後も骨折の抑制効果が残存することを示唆する過去の研究が挙げられる。
    • ヒト化抗スクレロスチンモノクローナル抗体:ロモソズマブ(イベニティ)2019年~ 1回5万円、1年で60万
      • 作用機序:スクレロスチン(骨細胞から分泌される糖タンパク質で骨芽細胞による骨形成を低下させると同時に破骨細胞による骨吸収を増加させる)を阻害することで、骨吸収抑制+骨形成の両作用を示す、初めての骨粗鬆症治療薬
      • 股関節に最も有効な治療→初回治療イベニティ+終了後にプラリアで後治療が最も効果的(形成→吸収抑制の順が重要)
      • イベニティは、腰椎と同様に大腿骨においても、骨密度を急速に上昇させることが可能
      • 治療効果:1年間の治療後、骨密度で腰椎+16.2%、大腿骨近位部+5.1%(N=21)
      • ビスフォスフォネート製剤とのRCTで有意に骨折減少したものの、海外試験で心血管イベントが増加した
        →血管の石灰化にもスクレロスチン発現が確認され血管の石灰化を促進している恐れがあるが、結論は出ていない。頻度としては対照群1.9%に対してイベニティ群2.5%のイベント率(ARCH試験)。少なくとも過去1年以内に心血管イベント(虚血性心疾患または脳血管障害)の既往がある患者には使用しないことが明記されている
      • 投与は1回(2本を皮下注)/月、基本12ヶ月で終了(終了したあとも再投与可能)
      • 低Ca血症をきたす恐れがあるのでビタミンD製剤を併用し、カルシウムモニタリングが必要、特に腎不全患者の場合はPやPTHもモニタリングが必要
    • 抗RANKLモノクローナル抗体製剤:デノスマブ(プラリア)
      • 破骨細胞分化因子(recepter activator of nuclear factor-κB ligand:RANKL)に対する完全ヒト型モノクローナル抗体IgG2抗体
      • ランマークと同じ薬品(適応症の違い)
      • RANKLとその受容体であるRANKの結合を阻害→破骨細胞の活性を阻害し骨吸収を著明に抑制する
      • 6か月に1回投与でよい。副作用も少ない。
      • 低Ca血症を予防するため、デノタス(→腎不全の場合には、活性型ビタミンDやカルシウム製剤)を併用する。
      • デノスマブは投与中止後、反跳性に骨吸収が亢進して中止6~18か月後に多発椎体骨折のリスクが増加する。
    • エストロゲン補充療法(エビスタ)
      骨粗しょう症は閉経によって女性ホルモンが減少して骨代謝のバランスが崩れることが原因の1つであるため、少し前まではエストロゲン(女性ホルモン)補充療法がおこなわれてきた。しかしながら、エストロゲンは乳がんや子宮がんのリスクを増やし、血栓症を引き起こすことから、近年ではあまり行われない。その代わりに、骨だけに特異的に作用する選択的エストロゲン受容体修飾薬エビスタ(ラロキシフェン)やビビアント(バゼドキシフェン)が使用されるようになった。副作用の問題点は改善されたものの、これらの薬剤は椎体(背骨のこと)には効果を示すが、大腿骨近位部などへの効果は限定的で、軽症の患者さんに使用されることが多い。静脈血栓症の有害事象がある。
    • 活性型ビタミンD(エディロール>ロカルトロール>ワンアルファ)
      エディロールが最強、エディロールは骨粗鬆症の適応のみ。
      エディロール(エルデカルシトール)0.75μgでは高カルシウム血症→腎不全をきたすのでアルファロール0.5μgくらいがちょうどいい(腎臓内科医の見解)
      ステロイド処方の際に骨粗鬆症予防にアルファロールを併用している
      ※血清カルシウム上昇を伴った急性腎障害があらわれることがあるので、血清カルシウム値及び腎機能を定期的に観察すること!!!!高カルシウム血症を起こした場合には、直ちに休薬する。休薬により血清カルシウム値が正常域に達したら、減量して投薬を再開する。
  • 大腿骨近位部骨折に有効な薬は少ししかない
  • 食事指導:カルシウム、亜鉛、ビタミンD、ビタミンKをとる、リン(加工食品)やカフェインを避ける
骨粗鬆治療薬が年1回投与でも治療効果が期待できる理由

→骨に吸収され長時間生体内にとどまり、作用を発揮するため年1回投与が可能となった

例:ビスフォスフォネート製剤は投与後、骨に吸収され破骨細胞に取り込まれることで破骨細胞をアポトーシスさせる。

エビデンスが多いのはアレンドロン酸
BIS製剤は椎体骨折や大腿骨骨折を約半分に減量し、骨密度を腰椎で+8%、大腿骨で+4%程度改善する
  • リスク予測式:FOSTA(簡便)やFRAX(専門医向け)
  • 骨代謝マーカーには形成マーカーと吸収マーカー、骨マトリクス関連マーカーがある
    マーカーの数値により治療薬の選択が変わってくる(骨形成を促進するのか、破骨を抑制するのか)
    骨代謝マーカーは肝腎機能の影響を受ける
    骨代謝マーカーは薬物治療開始前と開始後6か月以内の算定が可能(CaやビタミンD投与時は不要)
    骨代謝マーカーは早朝空腹時の採取の方が治療効果判定感度は高い
    骨代謝マーカーは治療効果も評価可能(治療開始後3~6か月を目安に再検する)
    健康増進法の検診対象疾患→40歳から5年ごとに骨粗鬆症検診がある(努力義務)
    TRACP-5b:骨吸収マーカ―
    食事摂取の影響を受けないため、空腹で検体を採取する必要はありません。また、腎機能低下の影響を受けず、クレアチニン補正の必要もないことから、高齢者に多い慢性腎臓病(CKD)併発患者さんにも有用なマーカー
    P1NP:骨形成マーカー
    腎機能の影響を受けない

    ※健康増進事業第19条の2の対象疾患は(1)歯周病疾患検診、(2)骨粗しょう症検診、(3)肝炎ウイルス検診、(4)特定健康診査非対象者等に対する健康診査、(5)特定健康診査非対象者に対する保健指導、(6)がん検診

納豆はカルシウムとビタミンKが同時に取れる優れもの

頚肩腕症候群

首(頸部)から肩・腕・背部などにかけての痛み・異常感覚(しびれ感など)を訴える全ての症例の中で、整形外科的疾患(変形性頸椎症、頸椎椎間板ヘルニア、胸郭出口症候群など)を除外し、検査などで病因が確定できないものを頸肩腕症候群と呼ぶ

症状

肩~腕にかけて痛みやしびれが生じます
腕や手指のシビレが出ることも多く、痛みは軽いものから耐えられないような痛みまで程度はそれぞれです
一般に、頚椎を後ろへ反ると痛みが強くなるので、上を見ることやうがいをすることが不自由になります
上肢の筋力低下や感覚の障害が生じることも少なくありません

診断

腕や手のしびれ・痛みがあり、頚椎を後方へそらせると症状が増強し、X線(レントゲン)で頚椎症性変化を認めることで診断します。MRIで神経根の圧迫を確認しにくい場合もありますが、骨棘による椎間孔(神経根が出ていく孔)の狭窄がわかる場合もあります。

治療

消炎鎮痛剤や筋弛緩剤を使います。
理学療法(温熱療法、電気刺激療法、関節可動域改善訓練、肩のストレッチング、筋力強化訓練、肩の体操)も有効です。症状が強い場合、痛みの原因になっている神経の働きを抑える局所注射療法(肩甲上神経ブロック・トリガーポイントなど)や点滴治療を行います。

薬物治療

ミオナール、ノイロトロピン、など

ロコモティブシンドローム(ロコモ)

  • 定義:2007年に日本整形外科学会が提唱した概念で、「運動器の障害によって移動機能が低下した状態」
  • 運動器は、①身体を支える骨、②衝撃を吸収する関節や脊柱の椎間板、③身体を動かす筋肉や神経によって構成
    ①骨の病気:骨粗鬆症、骨粗鬆症性骨折
    ②間接の病気:変形性関節症、変形性脊椎症
    ③筋肉や神経の病気:脊柱管狭窄症、サルコペニア(筋肉減少症)
  • ロコモは運動器の病気が発症していない、いわゆる未病の状態から医学的な治療が必要な状態までを指す
  • 診断:3つのテストで行う(日本整形外科学会が推奨)
    ①立ち上がりテスト
    ②2ステップテスト:2ステップ値=最大2歩幅(cm)÷身長(cm)
    ③ロコモ25:身体の状態や生活状況を主観的に評価する  
①②のテストによるロコモ度判定

【ロコモ度1】
下記の一つでも該当。移動機能の低下が始まっている状態です。
・立ち上がりテスト:左右どちらか一方でも片脚で40cmの高さの台から立ち上がれない
・2ステップ値   :1.3未満

【ロコモ度2】
下記の一つでも該当。移動機能の低下が進行している状態です。
・立ち上がりテスト:両脚で20cmの高さの台から立ち上がれない
・2ステップ値   :1.1未満

【ロコモ度3】
下記の一つでも該当。移動機能の低下が進行し社会参加に支障をきたしている状態です。
・立ち上がりテスト:両脚で30cmの高さの台から立ち上がれない
・2ステップ値   :0.9未満

  • 治療:
    • 「ロコモ度1」:ロコモーショントレーニング(ロコトレ)をはじめとする運動習慣を身につけましょう。「予防の基礎知識」で紹介しています。
    • 「ロコモ度2」:現在は生活に支障を感じていなくても、近い将来支障が出てくる可能性が高くなっています。特に、背骨や四肢の痛み、しびれなどの症状がある場合は運動器の病気を起こしている可能性がありますので、医療機関の受診をお勧めします。
    • 「ロコモ度3」:自立した生活ができなくなるリスクが非常に高くなっています。運動器の病気の治療が必要となっている可能性が高いため、医療機関の受診が必要です。

腰痛の鑑別

重篤な脊椎疾患を見逃さないように,危険信号(red flags:RFs)を念頭に置いた問診・診察を行い, 複数の RFs がある場合は特に注意を払う

  • 腰痛診療ガイドライン2019(日本整形外科学会)
  • 腰痛の原因の内訳:75%以上で診断が可能であり,診断不明の “ 非特異的腰痛 ” は22%(→従来の報告とかなり異なる)
    • 椎間関節性 22%
    • 筋・筋膜性 18%
    • 椎間板性 13%
    • 狭窄症 11%
    • 椎間板ヘルニア 7%
    • 仙腸関節性 6%など
  • 整形外科医でも、腰痛はあまり細かい診断というのはなかなか難しく、椎間板性の腰痛とか、筋筋膜性の腰痛という言葉をよく使用する
  • 高齢者の場合は、画像検査ではほぼ確実に異常があるが、それが現在の症状と関連しているかは別の問題
  • 安静時痛か、体動時痛か
  • ある姿勢で痛いとか、もしくは姿勢が変わったときに痛いというような腰痛は、脊椎由来の痛みの方が比較的多い
  • 筋肉性の痛み→貼付剤が比較的効くがシップは最大63枚までしか外来処方できない(2022年度診療報酬改定)
  • 腰部脊柱管狭窄症(推定600万人):
    • 好発:高齢者で比較的慢性の経過、激痛は少なく安静時痛もない、歩行時に痛みが出やすい(間欠性跛行)
    • 症状:必ず下肢の症状を伴うが、腰痛は必発ではない
      典型的には間欠性跛行(=歩行で増悪するしびれ、お尻のほうから下腿の後面、大腿から下腿の後面から、典型的には、足の裏、足底部までしびれが走る)
      血管性の間欠性跛行(ASO)との鑑別は、腰椎から来る間欠性跛行は姿勢による影響がある(脊椎性では前かがみで痛みなし)
    • 治療:基本的には症状の変化乏しい症例が多く経過観察でよい
  • 椎間板ヘルニア:
    • 症状:
    • 診断:下肢伸展挙上試験(膝を伸ばしたまま下肢を挙上し坐骨神経痛の出現を見る)

急性腰痛症(ぎっくり腰)

急性発症の腰痛で、下肢神経痛を伴わないもの、X線で骨折が否定されたもの

  • 腰痛の定義:一般的には「一番下のあばら骨とお尻の間に起きる痛み」
  • 発症してから4週間未満のものが急性腰痛、3か月以上続くものは慢性腰痛
  • 腰痛の原因は椎間関節性、筋・筋膜性、椎間板性、腰部脊柱管狭窄症、椎間板ヘルニア、仙腸関節性の順に多い
  • 一般的にはレントゲンやCT検査は不要(下記の場合は要精査)
  • 腰痛の多くは1カ月程度で急速に改善するといわれているが、約6割は1年経っても腰痛が残り、さらにそのうちの約6割の人は腰痛の再発を経験する→放っておいては治らない、再発予防(運動と減量)が重要
  • 安静は必ずしも有効な治療法ではないとされている
  • 痛みに応じた活動性の維持は、疼痛を軽減し機能を回復させるのに有効
  • 薬物療法は、非ステロイド性抗炎症薬・筋弛緩薬、アセトアミノフェン(解熱・鎮痛剤)、弱オピオイド(鎮痛剤)、ワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液(鎮痛剤)の順で推奨されている
  • 温熱療法、経皮的電気刺激療法(TENS=電極を貼って電流を流す治療法)、牽引療法、コルセット、超音波療法は推奨するには十分な証拠がない
  • 運動療法は慢性腰痛には効果が高いといわれているが、急性腰痛には効果がないとされている
  • 急性腰痛に対して、椎間関節への注射や、脊髄後枝内側枝ブロックが有効
  • 腰痛の予防:運動療法が有効であるとされ、コルセットについては予防効果はないとされる
  • 腰痛の危険因子:運動不足や喫煙、痩せや肥満も腰痛の弱いリスクになっており、体重コントロールが重要
  • 腰痛は職種との相関性があり、具体的には運輸、清掃、介護、看護などの職業で腰痛を持つ人が多い

腰椎椎間板ヘルニア

→腰椎椎間板ヘルニア=線維輪の断裂を通った髄核の脱出
 働く世代の若者の病気

  • 典型症状:若年者で、比較的急性発症の片側性下肢神経痛(下位腰椎:L4/5、L5/Sに多い)
  • 原因:
    • 後方あるいは後側方に突出・脱出したヘルニアは馬尾や神経根を機械的に圧迫するとともに、化学的刺激によって同部に炎症を引き起こす
    • 発症の要因として、もともと脊柱管が狭いと痛みが生じやすく治りにくい
    • 遺伝的要因:椎間板変性発症に関する遺伝子が複数判明している
  • 好発年齢:30~40歳代に多く発症し、10歳代や60歳以上でも発症することがある
  • 痛みの原因:
    • ヘルニアが出す起炎物質による化学的刺激ヘルニアそのものの圧迫による機械的刺激の両者に由来する
    • とび出たばかりの急性期のヘルニアは化学的刺激による激しい痛みを発するが、これは次第にヘルニア自体の機械的刺激による鈍い痛みに変化する
    • ヘルニアは靭帯を突き上げて膨隆し、大きくなると靭帯を破り脱出するが脱出したヘルニアは異物とみなされ、自己免疫機構が働いて白血球が貧食、消化され縮小し手術なしで改善する(早い場合で1か月程度)
  • 治療:
    • 薬物治療:
      • NSAIDS、プレガバリン、デュロキセチン、トラマドール(NSAIDSと併用)、ワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液
    • 神経ブロック:
      急性期に行うと軽度のヘルニアの場合は非常に有効だが、重篤な場合は無効か短時間の効果しか示さない
      • 硬膜外ブロック
      • 仙骨ブロック
      • 神経根ブロック
    • リハビリ・運動療法:
      • リハビリ腰痛体操は有効だが急性期には殆ど意味がないとされる
      • ヘルニアは急性期に腰痛体操、例えば腹筋動作などを行うと椎間板内圧を上昇させヘルニア増大を来たし症状憎悪を起こすことがあるため、急性期におこなうことはほどんど意味がない
      • 慢性期で、椎間板内圧が高くなく中等度の膨隆で安定化し、腰痛が慢性的に持続するような場合に腰痛体操の出番で、その種目はヘルニアの状態に応じて適用される
    • 椎間板内薬物注入治療
      • 整形外科医はいろいろなものを注射して試している
    • 手術療法:
https://www.watanabeseikei.com/page/shikkan_herunia03
https://www.watanabeseikei.com/page/shikkan_herunia03

脊柱管狭窄症

ほどんどの脊柱管狭窄症は、体質的な脊柱管狭窄症に加えて、 退行変性による変化が加わり中年以降に発症する高齢者の病気

  • 病態:
    加齢、労働、あるいは背骨の病気による影響で変形した椎間板と、背骨や椎間関節から突出した骨などにより、神経が圧迫されることで発症する
  • 原因:
    • 黄色靭帯の肥厚
    • 椎間関節の肥厚
    • 椎間板の膨隆
    • 椎体の変形、骨棘
    • 脊柱管は背骨、椎間板、関節、黄色靱帯などで囲まれた脊髄の神経が通るトンネルです。年をとると背骨が変形したり、椎間板が膨らんだり、黄色靱帯が厚くなって神経の通る脊柱管が狭くなって(狭窄)、それによって神経が圧迫を受け、神経の血流が低下して脊柱管狭窄症が発症します。
  • 椎間板ヘルニアに比べ中高年に発症することが多いようです。また背骨を後ろに反らすと脊柱管が狭くなり、前に曲げると広がるので、間歇性跛行が起こる
  • 年齢や構造的な変化などで、脊柱管が狭くなり、その中を通過している神経が圧迫されることで、痛みや痺れなどの症状が出現する
  • 原因:変形した骨や椎間板、肥厚した靭帯(黄色靭帯)であることが多い
  • 症状:
    • 安静にしていると神経への血流は保たれるため無症状
    • 数分間歩行や運動をすると神経へ血流が不十分になり、痛みなどの症状が出現するのが特徴
    • 代表的な症状:
      • 坐骨神経痛→腰やお尻から太ももの裏、足首にかけて痛みと痺れのこと
      • 間欠性跛行→60~80%の患者さんに出現する。間欠性跛行とは、一定の時間歩いていると痛みが出てきて歩けなくなりますが、数分間休んでいると痛みが落ち着いてきて再度歩行できる症状
  • 診断:
    • 診断にはMRI検査が必須だが、狭窄の強さと症状の強さは一致しないこともある
    • MRIでも診断が難しい場合は造影剤を使った検査や、診断の目的でブロック注射などを行う場合もある
  • 治療:
    • 基本的には手術で圧迫を解除するが、保存治療で4割ほどの患者さんで症状が改善する
    • 脊椎低侵襲手術(内視鏡手術など)が普及してきている
https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/lumbar_spinal_stenosis.html
腰痛と痛み止め

トラマール無効の場合、デュロテップパッチを使用していた
→適応症:中等度から高度の慢性疼痛における鎮痛を有する

腰椎変性すべり症

  • 病態:
    すべり症では腰椎がずれることによって脊柱管が狭くなり、馬尾神経や神経根が圧迫されて症状が出る
    この病気では腰部脊柱管狭窄症と同じような症状が出る
  • 好発部位・後発年齢:
    • 第4腰椎→L3/4、L4/5のすべり症と表現する
    • 前方すべり症>後方すべり症が多い(下位の腰椎に対して上位腰椎が前方、後方のいずれかにより診断)
    • 閉経後の女性に多く、女性ホルモンの減少による骨粗しょう症によって骨が体重を支えきれなくなり、引き起こされるといわれている
  • 症状:
    • 間欠性跛行
    • 腰痛(腰のベルトが当たるあたり)は比較的少なく、全く腰痛がない患者さんもいる
  • 治療:
    • 手術が必要となることも多い

関節リウマチ

2010年に米国および欧州リウマチ学会が合同で新しい分類基準を発表した
この基準では、少なくとも1つ以上の関節で腫れを伴う炎症(滑膜炎)がみられ、その原因として関節リウマチ以外の病気が認められない場合に、
症状がある関節の数  —–罹患関節数
リウマトイド因子(RF)または抗CCP抗体 ——血清学的検査
CRPまたは赤沈値 —–急性期反応物質
症状が続いている期間 —–症状の持続期間

の4項目についてのそれぞれの点数を合計し、6点以上であれば関節リウマチと診断、抗リウマチ薬による治療を開始する

リウマチの治療薬:

疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD:Disease modified anti rheumatic drug)
→免疫抑制薬、免疫調節剤、分⼦標的薬(⽣物学的製剤と JAK 阻害薬)に分類される


DMARD (海外の分類)
 合成型(sDMARD)
  従来型(csDMARD)→MTX、タクロリムス、サラゾスルファピリジンなど
  分⼦標的型(tsDMARD)→JAK阻害薬
 ⽣物学的製剤(bDMARD)
  オリジナルのもの(boDMARD)→要は先発品
  バイオシミラー(bsDMARD)→要は後発品だがオリジナルと完全に同一成分とはならない

※DMARDではないが、ステロイド、NSAIDSもリウマチ治療では使用されることがある

  • メトトレキサート(MTX):リウマトレックス
    • 世界中で最も広く使用されている関節リウマチの薬
    • レミケードはMTX併用が必須、その他のTNFα抗体薬では併用必須ではない
    • 高い有効性、継続率、骨破壊進行抑制効果や、QOL、生命予後の改善効果が示され、RA治療の第一選択薬、アンカー薬剤である
    • メトトレキサート(MTX)は、世界中で最も広く使用されている関節リウマチ
    • 服用方法:
      1週間単位の投与量をMTXとして6mg(最大16mg)とし、1週間単位の投与量を1回又は2〜3回に分割投与
    • 禁忌:
      妊娠、胸・腹水を認める患者、重大な感染症や結核、血液・リンパ系・肝・腎・呼吸器障害を有する患者
    • 8㎎/週以上では副作用予防目的にMTX内服最終日の翌日または翌々日に葉酸の内服を併用する
生物学的抗リウマチ薬(TNFα阻害薬、IL-6阻害薬、CTLA4阻害薬)

関節リウマチ(RA)に対する TNF 阻害薬使用の手引き(日本リウマチ学会2023年)
現在9種類まで増加している
JAK阻害薬よりもまず生物学的抗リウマチ薬を優先的に検討するのが良いとされている
TNF阻害薬には関節リウマチのみならず、血管の炎症を抑えることによって、関節リウマチ患者さんの狭心症や心筋梗塞などの心血管イベントを減少させる効果があることが知られている

  • エタネルセプト(エンブレル®)
    • 完全ヒト型TNF受容体を利用した製剤でアレルギーなどが起きにくい
    • 長期にわたって有効性が持続し、安全性が高い
    • TEMPO試験で関節破壊の抑制が示されている
    • 本剤を日本薬局方注射用水1mLで溶解し、通常、成人にはエタネルセプト(遺伝子組換え)[エタネルセプト後続1]として10〜25mgを1日1回、週に2回、又は25〜50mgを1日1回、週に1回、皮下注射する
    • 週1回もしくは週2回の皮下注射製剤で、半減期が短く、中止したら比較的短い期間で血中からなくなることから、安全性を重視しなければならない高齢の患者さんなどに多く使用される傾向がある
  • アダリムマブ(ヒュミュラ)
    • 世界で最も売れているくすり
    • 40mgを2週に1回皮下注射する、効果不十分な場合、1回80mgまで増量できる
生物学的抗リウマチ薬とJAK阻害薬はどう違うか

生物学的抗リウマチ薬:
例えばエンブレル(エタネルセプト)はTNF、アクテムラ(トシリズマブ)はIL-6といったように、それぞれの薬剤が1種類の特定のサイトカインを細胞の外でブロックすることにより、細胞に炎症を起こす刺激が入らないようにする
抗体製剤であり分子量が大きく注射製剤しか製造できない

JAK阻害薬:
日本では2016年から使用可能

複数の種類のサイトカインに対して、サイトカイン受容体からの刺激を細胞のなかで遮断して炎症を抑える
JAK阻害薬は分子量が小さく、毎日内服する経口薬
関節リウマチに用いるJAK阻害薬は、5種類

日本で使用できる生物学的製剤は現在9種類

痛風

痛風の臨床経過
無症候性高尿酸血症、急性痛風性関節炎、間欠期痛風、慢性結節性痛風の4つに分類される

総論

  • 痛風患者は90%以上が男性(もともと尿酸値は男性>女性)で、夜間に発症しやすく(日中の2.4倍)、年々増加傾向で2016年には100万人を超えた
  • 入院患者では痛風発作は4倍増加する
  • 高尿酸血症は遺伝要因と環境要因がさまざまに積み重なって発症する
  • 高尿酸血症の80%に高血圧、肥満、耐糖能異常、脂質異常が合併する
  • 痛風発作の好発年齢:30歳代がピーク(以前は50歳代)
  • 痛風の原因:プリン体(プリン塩基)を摂取すると、代謝の過程でピポキサンチンとなり、ピポキサンチンはキサンチンオキシダーゼによってキサンチン、尿酸へと分解される。プリン体の過剰摂取による産生亢進または排泄低下により血液中尿酸値が上昇し飽和溶解度を超えると、関節内に尿酸塩結晶が生じる。
  • 鑑別疾患:偽痛風(膝関節が再好発部位)、関節リウマチ

他覚所見と診断

  • 痛風の診断:発作中の関節液検査にて尿酸の結晶を証明すること(痛風発作中の尿酸値は半数で正常値)
  • 痛風では通常、発症から約10年ほど経過して結節を形成する
  • 結節好発部位は体温の低い部分に発生しやすい
    • 関節滑膜や耳介軟骨、軟骨下骨、肘頭滑液包、アキレス腱や膝蓋下など
    • 耳介が56.5%、母趾が32.8%、足関節が8.8%、手指の腱・関節が6.2%、アキレス腱が4.4%、膝関節が3.1%
      血症尿酸値を6.0㎎/dL以下(理想は5.0以下)にすると、痛風結節が縮小する
  • レントゲン所見:
    • 膝関節における痛風性関節炎
      尿酸ナトリウム結晶の沈着でありX線所見上、石灰画像は認めない→偽痛風との鑑別点
    • 慢性結節性痛風の関節
      急性痛風性関節炎では認められないスリガラス様軟部陰影overhanging edegeといった特徴的な骨破壊像を確認する
  • 確定診断:
    • 痛風発作中の関節液中に尿酸ナトリウムの針状結晶があることを証明すること

痛風発作の治療

  • 早期治療が重要(治療開始が遅れると数週間の抗炎症治療を要する)
  • 痛風発作の前兆期にはコルヒチン、発作の極期にはNSAIDS(禁忌症例にはステロイド)が推奨される
  • 低用量コルヒチン:発症12時間以内に1.0㎎、その1時間後に0.5㎎を投与する方法、翌日以降0.5~1.0㎎/日を継続してもよい(NSAIDSに切り替えも可)、コルヒチン高容量投与は行わない、コルヒチンは副作用が多い
  • NSAIDS:痛風に保険適応のものを使用する(少ない、ナイキサン)、またはCOX2阻害薬
  • ステロイド:ステロイドも有効
  • 上記3剤による症状改善効果は優劣が定まっていない
  • 発作時には、尿酸降下薬を処方しない方がよい(すでに内服している場合は継続してよい)
  • 尿酸降下薬の適応:痛風発作に対して尿酸降下薬を新規開始直後は予防的コルヒチンの併用が推奨される
    • 発作の頻度が多い(年2回以上) ※初回発作だけで即座に開始する必要はない
    • 痛風結節あり
    • レントゲンで関節破壊像あり
  • 尿酸降下薬の選択:
    • アロプリノール
    • フェブキソスタット
  • 食事・生活指導
    • プリン体制限が痛風発作を抑制するかどうかは結論が出ていない

痛風性関節炎(gouty arthritis)

尿酸が関節内で結晶化し、関節内で白血球に貪食されて引き起こされる関節炎
単純X線より超音波検査の方が感度および特異度が高い
関節軟骨への尿酸の沈着(double-contour sign)と臨床的に明らかでない痛風結節が特徴的な変化

  • 痛風患者は90%以上が男性(もともと尿酸値は男性>女性)で、夜間に発症しやすく(日中の2.4倍)、年々増加傾向で2016年には100万人を超えた
  • 入院患者では痛風発作は4倍増加する
  • 高尿酸血症は遺伝要因と環境要因がさまざまに積み重なって発症する
  • 高尿酸血症の80%に高血圧、肥満、耐糖能異常、脂質異常が合併する
  • 痛風発作の好発年齢:30歳代がピーク(以前は50歳代)
  • 痛風の診断:発作中の関節液検査にて尿酸の結晶を証明すること(痛風発作中の尿酸値は半数で正常値)
  • 痛風の原因:プリン体(プリン塩基)を摂取すると、代謝の過程でピポキサンチンとなり、ピポキサンチンはキサンチンオキシダーゼによってキサンチン、尿酸へと分解される。プリン体の過剰摂取による産生亢進または排泄低下により血液中尿酸値が上昇し飽和溶解度を超えると、関節内に尿酸塩結晶が生じる。
  • 痛風の好発部位:足の親ゆびのつけ根以外に、足関節、足の甲、アキレス腱のつけ根、膝関節、手関節にも激痛発作が起こることがある
  • 痛風結節:痛風患者の5-7%に認められ、そのうち約半数は骨破壊と関連している
    耳の軟骨部分、肘、足首、足の親指の付け根、手足指関節、アキレス腱など血流が遅く体温が低い場所に生じやすい
    血症尿酸値を6.0㎎/dL以下(理想は5.0以下)にすると、痛風結節が縮小する
  • 鑑別疾患:偽痛風(膝関節が再好発部位)、関節リウマチ
  • 痛風発作の治療
    • 早期治療が重要(治療開始が遅れると数週間の抗炎症治療を要する)
    • 痛風発作の前兆期にはコルヒチン、発作の極期にはNSAIDS(禁忌症例にはステロイド)が推奨される
    • 低用量コルヒチン:発症12時間以内に1.0㎎、その1時間後に0.5㎎を投与する方法、翌日以降0.5~1.0㎎/日を継続してもよい(NSAIDSに切り替えも可)、コルヒチン高容量投与は行わない、コルヒチンは副作用が多い
    • NSAIDS:痛風に保険適応のものを使用する(少ない、ナイキサン)、またはCOX2阻害薬
    • ステロイド:ステロイドも有効
    • 上記3剤による症状改善効果は優劣が定まっていない
    • 発作時には、尿酸降下薬を処方しない方がよい(すでに内服している場合は継続してよい)
    • 尿酸降下薬の適応:痛風発作に対して尿酸降下薬を新規開始直後は予防的コルヒチンの併用が推奨される
      • 発作の頻度が多い(年2回以上) ※初回発作だけで即座に開始する必要はない
      • 痛風結節あり
      • レントゲンで関節破壊像あり
    • 尿酸降下薬の選択:
      • アロプリノール
      • フェブキソスタット
    • 食事・生活指導
      • プリン体制限が痛風発作を抑制するかどうかは結論が出ていない

慢性結節性痛風

慢性痛風性関節炎では多関節炎を示すことが多く,足以外にも脊椎や膝に炎症が起こることが多い
炎症が関節を越えて周囲の皮下組織に及ぶことも稀ではなく,蜂窩織炎と間違われることもある
痛風治療ガイドラインにおいては,非ステロイド抗炎症薬(NSAID)が使用できない,または無効の場合,多発性に関節炎を生じている場合,経口副腎皮質ホルモン投与が推奨されている

偽痛風(CPPD結晶沈着症)

ピロリン酸カルシウム(calcium pyrophosphate dehydrate :CPPD)の結晶が関節腔内に沈着し、その結晶に対して炎症反応を起こす疾患である。比較的高齢者の単関節炎(ときに多関節炎)・発熱・炎症反応上昇を見たときは本疾患を疑うべきである。痛風、感染性関節炎、関節リウマチ、変形性関節症等が鑑別疾患として挙げられる。変形性関節症との合併がしばしば認められる。

http://goto-naika.c.ooco.jp/elderly/cppd.html
http://goto-naika.c.ooco.jp/elderly/cppd.html

化膿性脊椎炎

  • 好発:血液を介した感染が大多数とされており、易感染性(糖尿病や免疫抑制剤の内服、透析や高齢者など)で発症しやすい
  • 原因:黄色ブドウ球菌、大腸菌、緑膿菌などの血行性感染が多いがMRSAなども
  • 病型:
    • 急性発症型: 高熱と激しい痛みで発症
    • 亜急性発症型: 微熱と痛みで発症
    • 慢性(潜行性)発症型: 発熱等ははっきりせず、軽微な難治性の痛みで発症
  • 検査:
    • 血液培養でおよそ半数で検出可能に多い
    • まれに、尿路感染や虫歯などから化膿性脊椎炎を生じることもある
    • 好発部位は、腰椎が最多で(50%以上)、胸椎が30%強、頸椎が10%程度
    • 脊椎の感染は椎体軟骨下骨部(=椎体終板)から椎間板、その後に隣の椎体に波及する

化膿性筋炎・筋膿瘍

腸腰筋膿瘍

  • 原発性腸腰筋膿瘍では潜在的な感染巣から血行性またはリンパ行性に炎症が波及し膿瘍が形成される
  • 平均年齢は 76.5 歳

その他の腰痛

腰椎椎間板症

  • 退行性腰痛の原因のひとつ

変形性腰椎症(腰椎症)

  • 加齢性変化の成れの果て

ばね指(弾発指)/腱鞘炎

  • 原因と病態:指の付け根で屈筋腱と靱帯性腱鞘の間で炎症が起こると、“腱鞘炎”になり腱鞘の部分で腱の動きがスムーズでなくなり、指の付け根に痛み、腫れ、熱感が生じます。
  • 症状: 朝方に症状が強く、日中は使っていると症状が軽減することも少なくありません。 進行するとばね現象が生じて“ばね指”となり、さらに悪化すると指が動かない状態になります。
  • 好発年齢:更年期の女性に多く、妊娠出産期の女性にも多く生じる。糖尿病、リウマチ、透析患者、手の使いすぎやスポーツや指を良く使う仕事の人にも多い。母指(親指)、中指に多い。
  • 治療:保存的療法としては、局所の安静(シーネ固定も含む)や投薬、腱鞘内ステロイド注射(特にトリアムシノロンは有効)などがある。注射は有効で、おおむね3ヵ月以上は無症状なことが多いが、再発することも少なくない。改善しないときや再発を繰り返す場合は、腱鞘の鞘を開く手術(腱鞘切開)を行う。
日本整形外科学会ホームページより

へバーデン結節

  • DIP関節が変形し曲がってしまう原因不明の疾患。第1関節の背側の中央の伸筋腱付着部を挟んで2つのコブ(結節)ができるのが特徴。一般に40歳代以降の女性に多く発生する。手を良く使う人にはなりやすい傾向がある。PIP関節に生じる類似疾患にブシャール結節がある。治療法はテーピングによる安静(下図)。
まえだ整形外科・手のクリニックホームページより

ガングリオン

  • ガングリオンはなかにゼリー状の物質の詰まった腫瘤。好発部位は手関節背側、手首の母指側の掌側の関節包やばね指の生じる指の付け根の掌側の腱鞘のあるところ。関節の周辺や腱鞘のある場所に米粒大からピンポン玉大の腫瘤ができ軟らかいものから硬いものまである。通常は無症状なことが多いが、神経を圧迫して、しびれや痛み、運動麻痺などを起こす。
    手を使いすぎると腫瘤は大きくなることがある。ガングリオンは身体中の至る所に生じ骨や筋肉、神経に出来るガングリオンもある。これらは粘液変性したものが融合して生じると考えられている。

手根管症候群=正中神経領域のしびれ

  • 病態:手指や手首の屈曲などを担う正中神経が、手首の手根管の中で圧迫されることで、しびれや痛みが生じる。
  • 原因:多くは原因不明。妊娠・出産期や更年期の女性が多く生じるのが特徴。そのほか、骨折などのケガ、仕事やスポーツでの手の使いすぎ、透析患者に多い。
  • 解剖:手根管は手関節部にある手根骨と横手根靱帯(屈筋支帯)で囲まれた伸び縮みのできないトンネルで、その中を1本の正中神経と指を動かす9本の腱が滑膜性の腱鞘を伴って走行している。
  • 症状:初期には示指、中指しびれや痛み、最終的には母指(親指)から環指の母指側の3本半の指がしびれる(正中神経の支配領域)。急性期には症状は明け方に強く、目を覚ますと手がしびれ、痛む。手のこわばり感もあります。ひどくなると母指の付け根(母指球)がやせて母指と示指できれいな丸(OKサイン)ができなくなります。縫い物がしづらくなり、細かいものがつまめなくなる
  • 緩解因子:手を振ったり、指を曲げ伸ばしすると楽になる
  • 診断:ティネル様サイン陽性、ファレンテスト陽性など
  • 治療:消炎鎮痛剤やビタミンB12など、塗布薬、運動や仕事の軽減などやシーネ固定などの局所の安静、腱鞘炎を治めるための手根管内腱鞘内注射などの保存的療法が行われるが、難治性のものや母指球筋のやせたもの、腫瘤のあるものなどは手術が必要。
日本整形外科学会ホームページより

肘部管症候群

  • 小指と環指の小指側半分の掌背側がしびれたら、尺骨神経の障害で肘部管症候群を疑う
  • 肘の内側に軽くたたくと小指に放散する痛みやしびれを感じる

橈骨神経麻痺

  • 母指・示指・中指の手の甲(手背)側がしびれて手首が背屈しにくくなったら、橈骨神経麻痺
  • 橈骨神経麻痺では、手首や指が背屈できなくなる

胸郭出口症候群

  • 手背・前腕・上腕がしびれている場合や両手がしびれる場合は、頚椎の疾患や胸郭出口症候群

ベーカー嚢胞

  • ベーカー嚢腫とは膝の裏にある関節液(滑液)という液体を含んだ滑液包が炎症を起こし膨らむことです。 膝の裏側には小さい滑液包が複数あり、過剰な摩擦や圧迫が加わると炎症が起こり痛みを生じます。 関節液の分泌量が多くなると、滑液包に過剰な関節液が溜ります

肉離れ(筋挫傷)

  • 定義:急に無理な動作をした場合に発生する筋膜や筋繊維の部分的損傷・断裂
  • 筋断裂とは、スポーツなどで急に強い力や、無理な力がかかった際に、筋肉が耐えられなくなって筋線維が損傷、避けたり、破れたりして断裂すること
  • 筋線維のうち、一部など範囲が限定的な断裂の場合は部分断裂といい「肉離れ」とも言う
  • 好発部位:ハムストリングス(太もも裏にある筋肉の総称)や大腿四頭筋(太もも前面の筋肉)、内転筋(内ももの筋肉)、腓腹筋(ふくらはぎにある筋肉)など、下半身の筋肉に起こることが多い
  • 保存的な治療が適応となるが、断裂筋肉の修復・回復や血腫の吸収には約4週間かかる
  • 完全断裂の場合は手術療法が適応になる場合がある

腱断裂

  • 早急な縫合が必要→曲げ伸ばしできなければ転院搬送
  • 救急外来で縫合するのはよくない

寝違え

  • 原因と病態:何が起こって痛みが出ているかについては、いろいろな意見がありますが検査や画像でとらえられるような変化がないのが一般的なので、正確な原因であるという証拠はありません。睡眠中不自然な姿勢が続いたために一部の筋肉が阻血(血液の供給が不足)におちいり時にしこりとなっている、前日などにいつもはしないスポーツや労働をして一部の筋肉が痙攣している(こむら返り)、頸椎の後ろの関節(椎間関節)の袋(関節包)に炎症がおこる、などの原因が考えられています。筋肉の阻血・疲労や関節包の炎症を引き起こすのは、上肢の使い過ぎ(手で重いものを持つ動作は頸の後ろの筋肉に負担がでます)、同じ姿勢の持続(飲酒後の睡眠や疲れ果てての睡眠などでは寝返りが少なくなる・パソコンや事務作業が長時間に及ぶと頭を一定位置に保持するために頸部の筋肉に負担が生じる)、が原因の場合が多いと思われます。いずれにしても、「外傷(けが)」ではなく、軽い病気です。
  • 鑑別疾患:痛みが治らず診察で異常がある場合には、頚椎椎間板ヘルニア頚椎症性神経根症頚椎症性脊髄症転移性脊椎腫瘍脊髄腫瘍強直性脊椎炎関節リウマチなどの本格的な病気の可能性もありますし、肩こりの症状が強いだけの場合もあります。要は、寝違えが治らない場合には、整形外科を受診して調べてもらう必要があるということです。

心療内科

意識障害とは

  • 意識清明:覚醒している状態で、さらに自分自身と周り(周囲・外界)を認識できていること
  • 意識障害:覚醒度あるいは自分自身と周りの認識のいずれかが障害されていること
  • 原因:脳自体の障害によって生じる(一次的な)ものと、脳以外の原因によって脳血流や代謝異常が発生し、二次的に脳の機能が低下するものがある

アパシー

  • 認知症
  • 脳梗塞
  • パーキンソン病
  • 頭部外傷

アパシーは、基底核、前頭葉の内側部、前帯状回などの障害が原因だと言われています。アパシーでは、これらの部位の血流低下を認めると報告されています。認知症に多いがそれ以外でも見られる。

うつは気分の低下で苦痛を伴う
アパシーは無関心で苦痛を伴わない
という違いがある

うつ病

せん妄delirium

①せん妄予防対策が重要、算定も可能→ハイリスク患者の選定とリスク因子の排除、非薬物療法を中心とした予防的ケア
病態はいまだ不明だが、脳内炎症やコリン系やセロトニン系に代表される神経伝達物質の伝達障害などが複合的に作用しあうことで生じると考えられている
③せん妄の発症要因は、準備因子、直接因子、促進因子の3つに分けて対策する
過活動型と低活動型、混合型に分類する

  • まずは鑑別が必要、アカシジアやレストレス・レッグズ症候群の鑑別が必要
  • せん妄の評価・診断ツール:CAMまたは3D-CAM、Nu-DESC、SQiDがあるが日本語訳がなく日本では認知されていない
  • せん妄の原因を考える→身体的要因と薬剤性要因
  • 薬剤性はパーキンソン病の治療薬,抗コリン作用を持つ薬剤,、抗ヒスタミン薬,H2 ブロッカー,Benzodiazepine 系薬剤,ステロイド製剤など
  • 治療:抗精神病薬、抗うつ薬(トラゾドン)などが使用される
     クエチアピン:半減期が短く、パーキンソニズムは少ない、糖尿病患者では禁忌
     ハロペリドール:注射薬もある、パーキンソン病では禁忌
     興奮が強いせん妄→リスペリドンやクエチアピンを用いる
     興奮が強くないせん妄→トラゾドンを用いる
  • それ以外の薬剤としては,メラトニンの予防投与が注目される(RCTでせん妄の出現頻度は,ラメルテオン(ロゼレム)群で 3%,プラセボ群で 32%)
  • せん妄予防および治療としてアセチルコリンエステラーゼ阻害薬を使用することは推奨されない(RCTで効果否定された)
  • 2011年 9月に厚生労働省から,Quetiapine・Haloperidol・Perospirone・Risperidone について,「器質性疾患に伴うせん妄・精神運動興奮状態・易怒性」に対しては適応外使用認めるとの通知が出ている
  • 睡眠覚醒リズムを整えるという意味で,抑肝散(2.5~5g)を夕食後から眠前に,あるいはロゼレム(ラメルテオン)4~8 mgを眠前に内服するのも有り得る(高齢者は血中メラトニン濃度が低下している)
  • https://www.jpn-geriat-soc.or.jp/publications/other/pdf/clinical_practice_51_5_428.pdf
  • せん妄は突然に発現し, 持続期間は1週間以内から2ヶ月以上と報告されている。 典型例では10~12日程度で消退するが, 1ヶ月以上も持続する例が15%に達する。せん妄の回復は、発現後2週間目までは比較的良好だが, それ以後になると10%に低下し, 認知症へと移行する例もある
  • がん終末期領域では低活動型せん妄が多く、見過ごされていることも多い
  • アルコール離脱せん妄→ベンゾジアゼピンを使用する(その他のせん妄には禁忌)
  • アルコール離脱の場合には,離脱せん妄が出現する可能性が高いと判断された場合には,予防的に Benzadiazepine 系薬剤を使用することが必須であり,Diazepam15 mg日やLorazepam3 mg日などを投与し,眠前にも睡眠導入剤を投与する.また,Wernicke 脳症が少しでも疑われる場合には,ビタミン B1 の非経口的な投与を急いで行う.
  • せん妄の非薬物療法

せん妄予防と治療

過活動型せん妄

低活動型せん妄

高齢者の不眠にロゼレムはよい適応
  • ジェネリックが安くて使いやすい ロゼレム8㎎=81.3円(ジェネリックなら26.5円)
  • 高齢者は血中メラトニンレベルが低下している
  • ロゼレムは認知機能やせん妄への影響が少ない
  • 自然な眠気をもたらす
  • 効果が強すぎる場合は4㎎に減量する
  • 併用禁忌:抗うつ剤のデプロメール/ルボックス(一般名:フルボキサミン)
  • 併用注意:
    • CYP1A2阻害:抗菌薬(ニューキノロン系)
    • CYP2C9阻害:抗真菌薬(フルコナゾールなど)
    • CYP3A4阻害:抗菌薬(マクロライド系)・抗真菌薬(ケトコナゾールなど)
    • CYP3A4誘導:抗結核薬(リファンピシンなど)
せん妄と認知症
  • 老年期の実臨床では、せん妄と認知症との併存例が少なくない

発達障害

  • 小中学生の調査では、8.8%の有病率(クラスに3人程度)の発達障害がいる=全国に80万人
  • 診断基準は存在する者の、最終的には主治医の主観で診断がなされる
  • 診断するのが適切か否か、社会生活に支障ない場合は、あえて診断しなくてもいいかもしれない
  • 精神科医のなかでもとくに発達障害の専門医を受診する必要がある

レストレスレッグス症候群RLS

  • 頻度:患者数は人口の2%~4%で、200万~400万人と推定され、このうち治療が必要なのは70万人ほど、女性にやや多い
  • 症状:夕方から深夜にかけて、下肢を中心として、「ムズムズする」「痛がゆい」「じっとしていると非常に不快」といった異常な感覚が出現してくる病気で足を動かすとこの異常感覚はすぐに消えるが、じっとしていると再び出現してくる。7~8割程度の患者に周期性四肢運動障害という別の病気を合併する頻度がとても高い。
  • 原因:特発性(遺伝や体質など、80%と主流)と二次性(鉄欠乏性貧血、透析(末期腎不全)、糖尿病、リウマチ、パーキンソン病などほかの病気や妊娠などが原因で起こるもの)がある
  • 治療:睡眠薬は無効で、パーキンソン病に使う薬(ドパミンアゴニスト)が有効
    • 増悪因子:アルコール、喫煙、カフェインをやめる
    • 鉄欠乏の補正(フェリチン値が50ng/mL未満の場合)
    • 薬物療法
      • ガバペンエナカルビル(商品名レグテクト)
        中等度から重症例に使用される。抗けいれん薬のガバペンチンのプロドラッグで、欧米でも用いられている。
      • ロチゴチン(商品名ニュープロ、ニュープロパッチ)
        ドパミン作動性の経皮吸収型製剤であり、中等度から重症の本症候群に用いられる。同様の機序の経口の別のお薬も用いられることがある。

周期性四肢運動障害PLMD

  • 睡眠中に四肢の異常運動が生じて睡眠が妨げられる病気
  • 睡眠中に片足あるいは両足の不随意運動(ピクピク)が周期的に起こるため、頻回に脳波上の覚醒反応を生じ、夜間の不眠や日中の過度の眠気が生じる
  • 治療はレストレスレッグ症候群と同様

身体表現性障害(→身体症状症に改定)

  • めまい、腹痛、しびれなど、体に何かの症状があるのに、内科などを受診して検査しても「異常はない」「精神的なものだ」などと言われる。身体症状症とは大雑把にいってこのような状態のことです。また、大した不調はないのに自分は重大な病気ではないかと思い悩む、従来、心気症といわれた病態や、身体的欠陥について過剰に悩む、従来、醜形恐怖といわれた病態もここに含まれます。つまり訴えは身体のことなのに、その原因は心理的なものと考えられる状態をこの病名のもとにひとくくりにしているわけです。精神的悩みが体の症状として表れたものだとしても、精神的悩みと体の症状との関係を客観的に確実に証明する手段がないのが現状です。よって診断は症状のわりに身体的な所見がないということから推測するしかありません。診断する医師のほうも確実なことをいえないこともあって、しばしば患者本人は身体症状が精神的な原因によるものと認めることができず、あちこちの医者で診察を受け、検査を受けることになります。
  • 症状は何でもあり:立てない、歩けない、目が見えないなど体の機能が麻痺する症状から、身体各所の痛みや、だるいとかクラクラするとか漠然とした身体的な訴えまで、考え得る身体的訴えはどのようなものであれ、精神的原因から生ずる可能性があるといっていいでしょう。他方、明らかな精神的原因があって、内視鏡検査で胃潰瘍があったとか、高血圧が認められたとか、身体に病的な変化が客観的に確認されるような場合は心身症と診断されます。数年にわたっていくつかの身体症状を訴えるもの(身体化障害)、運動や感覚の麻痺を訴えるもの(転換性障害、変換症、機能性神経症状症)、慢性的な痛みを訴えるもの(疼痛性障害)、重大な病気ではないかと強い不安を抱くもの(心気症、病気不安症)、外見上の欠陥にとらわれるもの(身体醜形性障害)などと分類されます。
DSM-5とは?

DSMとは、アメリカ精神医学会が作成する精神疾患の診断基準・診断分類の1つで、正式には「精神疾患の診断・統計マニュアル(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders)」という。DSMの初版(DSM-I)は1952年に出版され、その後、数回にわたって改訂され最新のDSM-Vは、2013年に公開された。DSMは、もともとアメリカで使用されることを想定されて作られたが、現在は国際的な診断マニュアルとして、日本でも多くの病院で使われている。
DSM-IVまではローマ数字だったが、5版からアラビア数字となった。

不安障害(DSM-IV)→不安症群/不安障害群(DSM-5)

  • 不安障害は精神疾患のなかでももっとも一般的であり,発症年齢が10代と若く,その後の他の精神疾患の発症にも影響が大きい
  • DSM-5の構成上の大きな変更点として不安障害(DSM-IV)を“不安症群” “強迫症および関連症群” “心的外傷およびストレス因関連障害群”の3つの診断群に細分類した

不安症群いわゆる自律神経失調症

  • 「検査をしても異常がないのに、自律神経系のさまざまな症状を訴える状態」
  • この病名の欠点は、今のところ自律神経機能を正確に計測する方法がまだ無く診断基準もない
  • DSMにも記載されておらず、正しい診断名とは言えないが患者に説明するにはイメージしやすく便利な病名
  • DSM分類においても自律神経失調症に該当する診断名はあります。たとえば身体表現性障害の一部に分類される「身体化障害」という病名がありますが、この診断を下すためには「30歳未満にはじまり、痛み、胃腸症状、性的症状などが数年間続く」などの条件を満たす必要があります。30歳を過ぎて症状が始まった人にはこの病名が付けられないし、いくつかの症状が揃わないと除外されるため、自律神経失調症の患者さんで身体化障害の診断基準を満たす人は少数にとどまります。ではDSM分類で診断すると大半の自律神経失調症の患者さんはどんな病名に当てはまるかというと「鑑別不能型身体表現性障害」「その他の身体表現性障害」といったものになります。「あなたは鑑別不能型身体表現性障害です」とか「その他の身体表現性障害です」と言われたら、患者さんも困ると思います。こうした事情も自律神経失調症という病名を捨て難くさせているのでしょう。

以下に自律神経失調症の症状とされるものを挙げておきます。

〔頭〕 頭痛、頭重感、のぼせ
〔目、耳、口〕 疲れ目、耳鳴り、口渇 
〔喉〕 詰まり感、違和感
〔呼吸〕 息苦しさ、酸欠感
〔心臓・血管系〕 胸痛、胸部違和感、動悸、立ちくらみ
〔消化器〕 食思不振、吐き気、腹部膨満感、便秘、下痢
〔泌尿、生殖器〕 頻尿、残尿感、生理不順、陰部の痒み、インポテンツ
〔筋肉、関節、皮膚〕 肩こり、脱力感、多汗、無汗、皮膚の乾燥
〔手足〕 しびれ、冷え、だるさ
〔全身症状〕 不眠、疲労感、めまい、微熱、フラフラ感、ほてり
〔精神症状〕 不安感、イライラ、集中力低下、意欲低下、記憶力減退

認知症

→老年医学のページ参照

耳鼻科

めまいの処方

抗めまい薬+制吐薬(±抗不安薬や抗ヒスタミン薬)

耳鼻科医の処方例
メリスロン14日分、屯用で2番手ドラマミン、3番手ドンペリドン

  • ◎アデノシン三リン酸二ナトリウム水和物(アデホス)
    • メニエール病及び内耳障害に基づくめまい
    • 禁忌:妊産婦、ジピリダモールとの併用禁忌
    • 作用機序:ATPはその血行力学的並びに生化学的作用により各組織の代謝を賦活する。???
  • ◎ベタヒスチンメシル(メリスロン)
    • メニエール病、メニエール症候群、眩暈症
    • ヒスタミン類似作用を有する→喘息、消化性潰瘍、褐色細胞腫で注意
    • 作用機序:本剤の有効成分であるベタヒスチンの作用機序は不明である。
  • ジフェニドール(セファドール)
    • 内耳障害にもとづくめまい
    • 抗コリン作用あり
    • 禁忌:重篤な腎機能障害のある患者
    • 作用機序:本剤は、前庭系機能障害側の椎骨動脈の血管攣縮を緩解し、その血流を増加させることによって椎骨動脈血流の左右差を是正し、左右前庭系の興奮性の不均衡に由来するめまいを改善すると考えられる。また、めまいの原因となる末梢前庭からの異常なインパルスを前庭神経核及び視床下部のレベルで遮断し、平衡系のアンバランスを是正すると考えられる。
  • ?メコバラミン(メチコバール):ビタミンB12製剤
    • 末梢神経を回復させる作用がある
    • 末梢神経細胞の代謝を改善し、神経障害の回復に有効
    • 前庭神経炎、メニエール病、突発性難聴、内耳炎、頸性めまいなど←添付文書上は適応外
  • ◎ジメンヒドリナート錠ドラマミン
    • 動揺病(乗り物酔い)、メニエール症候群、放射線宿酔
    • 実験で眼振、めまいや嘔気を誘発し、ドラマミンは有意にそれらを抑制した
    • 眠気を催すため、自動車の運転等危険を伴う機械の操作には従事させない
    • 禁忌:モノアミン酸化酵素阻害剤(抗パ薬)との併用禁
  • ドンペリドン
  • 五苓散
  • △ジフェンヒドラミンサリチル酸塩・ジプロフィリン配合錠(トラベルミン配合錠)
    • 適応症:動揺病、メニエール症候群
    • ジフェンヒドラミンサリチル酸塩→抗ヒスタミン薬、抗コリン作用あり
    • ジプロフィリン配合錠→強心・喘息治療剤
    • 禁忌:緑内障、尿閉
    • OTC薬も同一成分

突発性難聴

メニエール病

中耳炎

  • 様々な中耳炎があり子供と高齢者の両方に多い
    • 発熱や耳の痛くなる急性中耳炎(子供に多い)
    • 痛みはなくて難聴を起こす滲出性中耳炎
    • 中耳炎が慢性化した状態である慢性中耳炎
    • 中耳の癌ともいわれ手術加療が必要な真珠性中耳炎
  • 急性中耳炎
    • 小児急性中耳炎ガイドライン2018
      →症状・所見による重症度スコアリングと治療アルゴリズム
    • 急性中耳炎では耳の詰まった感じや難聴に加えて、耳の痛みや発熱といった急性炎症特有の症状が現れる
      →滲出性中耳炎では耳の詰まった感じや難聴は現れるが、痛みや発熱など他の症状を伴うことはまれ
    • 起炎菌:肺炎球菌、インフルエンザ桿菌、モラクセラ・カタラーリスが原因菌となることが多い
    • 治療:
      • 第一選択はアモキシシリン(AMPC)→商品名:「サワシリン」「ワイドシリン」「パセトシン」
      • 小児急性中耳炎ガイドラインでは重症度に応じてメイアクト(セフジトレン)、クラバモックス(クラブラン酸アモキシシリン)、オゼックス(トスフロキサシン、キノロン系)、オラペネム(経口ペネム)などが推奨
      • 急性中耳炎を起こす細菌は薬剤耐性が進んでおり、上記の抗生剤も通常の2倍量などで処方することがしばしばある
http://koshii-c.sakura.ne.jp/aom_gl.html
!!!!!小児に禁忌の抗生剤に注意

小児の禁忌薬で一番多いのは、ニューキノロン系抗菌薬で、11種類あります。主な禁忌の理由は、安全性試験で報告されている幼弱動物の関節障害です。ニューキノロン系抗菌薬のうち、小児で使用が認められているのは、ノルフロキサシン(商品名バクシダール他)とトスフロキサシントシル酸塩水和物(オゼックス他)となります。ただし、ノルフロキサシンの剤形は錠剤であり、小児用バクシダール錠50mgは乳児には使えないので、乳児に対して使えるのはトスフロキサシンだけとなります。ただし、この2剤以外のニューキノロン系抗菌薬でも、添付文書に「ただし、複雑性膀胱炎、腎盂腎炎、囊胞性繊維症、炭疽の患児を除く」と書かれているシプロフロキサシン注(シプロキサン他)などに関しては、他に治療法がない重症感染症に限って小児にも使用できるようです。

クラビット、ジェニナックなど(ニューキノロン系抗菌剤)のほとんど :動物実験で幼若動物に関節異常が認められたことから、小児(医薬品の年齢区分では「15歳未満」)は禁忌

  • 滲出性中耳炎
    • 滲出性中耳炎診療ガイドライン(日本耳科学会、日本小児耳鼻咽喉科学会)
    • 急性中耳炎の後、治りきらずに滲出性中耳炎になる場合や、はじめから滲出性中耳炎になる場合がある
    • 滲出性中耳炎には耳管という中耳と鼻腔内をつなぐ管の機能が非常に重要で耳管は中耳に液が溜まっても鼻腔内へと排出する役割をしている
    • 小児ではこの耳管が短く鼻汁中の細菌が耳へと逆に侵入しやすいため、急性中耳炎や滲出性中耳炎になりやすい
    • 高齢者では開け閉めの機能が悪くなるために滲出性中耳炎になりやすい治りの悪い滲出性中耳炎では耳管の出入り口(耳管咽頭口)に腫瘍ができていることがある
    • 治療:
      鼓膜切開術鼓膜チューブ挿入術
      鼻炎や副鼻腔炎、咽頭炎など、鼻の奥にある耳管開口部周囲に炎症を起こし、その炎症で耳管の働きを低下させることや、子どもに多いアデノイド肥大によって、耳管が塞がれて機能しなくなることで、滲出性中耳炎を発症しやすい→鼻の診察・治療が重要
耳管咽頭口の開口場所(口腔内からは直視できない)
https://www.kameyama-cl.com/column/bspot.html
耳漏(耳だれ)について

「耳だれ」の原因→外耳道や中耳の病気の可能性がある
発生する原因によって漿液性、膿性、粘液性、粘膿性、水様性、血性などと性質が異なる
外耳道から発生する「耳だれ」→外耳道湿疹や耳かきのしすぎによるものは漿液性で、細菌感染で膿性になる(外耳炎
中耳から発生する「耳だれ」→中耳粘膜から生じる粘液性のもので、細菌感染で粘膿性になる(中耳炎
慢性中耳炎では鼓膜穿孔を通って中耳から外耳道に流れ出る

オーグメンチンとクラバモックスの違い

いずれもクラブラン酸アモキシシリン合剤(CVA/AMPC)だが、配合比率が異なる
クラバモックスは小児の適応のみ

副鼻腔炎

眼科

ドライアイ

高齢者の増加に伴ってドライアイの患者さんも増えており、日本では2000万人以上いる
年齢が高くなるにつれ涙の分泌量や質が低下する

  • 症状:
    • 眼が重い感じ、眼がゴロゴロ、眼脂、眼痛、眼がかゆい、眼がかすむ、まぶしい、充血する、眼が疲れやすい
    • 上記のうち、5つ以上の症状があると要注意
    • 「10秒以上眼を開けていられない」、「まばたきの回数が多い」(40回/分以上)場合は、 可能性が高い
  • 病型分類:
    • 涙液分泌減少型
      シェーグレン症候群のような自己免疫疾患(膠原病)が基礎にある場合と、病的な要因がなく涙が減ってしまうドライアイがあり、 ストレスやホルモンバランスなどの関与が疑われています。
    • 涙液蒸発亢進型
      眼の縁にはマイボーム腺という皮脂腺があり、そこから油が分泌されています。この油は涙の表面を覆い涙の蒸発を防ぎます。 この油が少ないと、涙がすぐに蒸発してしまい、目の表面に傷がついてしまいます。 パソコン、エアコン、コンタクトレンズ(3コン)などの環境要因も涙液蒸発亢進型に分類されます。
  • 点眼薬
    人工涙液、ヒアルロン酸ナトリウム、ジクアホソルナトリウムなどの点眼薬
    • 人工涙液
      人工涙液は1日5回位の点眼では効果は少なく、最低1日10回以上が効果的
      防腐剤無添加のOTC薬で十分
      マイティア点眼液(R)
      ◎ソフトサンティア点眼液(R)
       1回2~3滴、1日5~6回点眼する必要がある
       ソフトサンティアは防腐剤無添加で開栓後、約10日間以上すぎた場合は使用しない
    • ヒアルロン酸ナトリウム点眼
      ヒアルロン酸は水分を保つ作用と角膜上皮修復作用がある
      ヒアルロン酸は3時間まで角膜上の涙液を保つ作用がある
      防腐剤にて障害を生じやすい方には防腐剤の種類の変更や、防腐剤無添加のヒアルロン酸の点眼を使用する
      ヒアレイン点眼液(R)
      ティアバランス点眼液(R)
    • その他の点眼薬:ジクアホソルナトリウム、レバミピド
  • 涙点プラグ
    涙の排出口である「涙点」を栓(涙点プラグ)でふさいで、少ない涙を眼の表面に溜める治療法です。 点眼でドライアイの自覚症状や眼の表面の傷が改善しない場合に行います。涙には細胞成長因子であるタンパク質やビタミンなどの重要な成分を含んでいます。 これは人工涙液では補うことはできません。涙点プラグを挿入することで、栄養を含んだ自分の涙で眼を潤すことができるのです。
なぜ感情が動くと涙が出るの?

涙を流す前には必ず、額のほぼ中央部にあたる「正中前頭前野」と呼ぶ場所の活動が急激に高まったという。
この場所は、高度な精神活動をつかさどる前頭前野の中でも特に共感に関係している。涙腺を刺激するのは神経の興奮を抑える副交感神経で、日中働く交感神経とは違う。有田教授は「正中前頭前野は、起きながらにして副交感神経を働かせる引き金の役割を担っている」と考えている。その効果は一晩の睡眠に相当するほど大きいらしい。

喜びも悲しみも一種のストレスといえる。有田教授は「社会生活を送るなかで人間は、涙を流すというストレスの解消法を身につけたのではないか」と推測している。

加齢性眼瞼下垂

加齢性眼瞼下垂症とは、腱膜(+皮膚)が加齢によりたるんだ状態

  • 眼瞼の開閉のしくみ:
    上眼瞼挙筋やミュラー筋と呼ばれる筋肉が、瞼板と呼ばれるまぶたの芯となる構造を引っ張り上げることで開く
    筋肉と瞼板は、腱膜という組織で繋がっている→腱膜が伸びきってしまうと眼瞼が上がらなくなる
日本形成外科学会HPより

手術

  • 余剰皮膚切除術
    • 余剰(弛緩)して垂れさがったした上眼瞼皮膚を切除する方法です。上眼瞼皮膚を切除する場合と、眉毛下で皮膚を切除する場合があります。立った、あるいは座った状態で余っている皮膚を取り除く量を決めて切除します。同じ部位の眼輪筋も切除することがあります。その後は細い糸できれいに縫合閉鎖します。睫毛を押し下げる余った皮膚がなくなるので目をひらくのが楽になります。
  • 挙筋前転術
    • 腱膜を瞼板に縫い付ける手術です。上まぶたの皮膚を切開し、たるんだ腱膜や筋肉を前方に引っ張り、糸で瞼板に縫い付けます。この手術により腱膜のたるみが改善し、上眼瞼挙筋肉の力がしっかりと瞼板に伝わり、十分にまぶたが開くようになります。
  • 前頭筋吊り上げ術
    • 上眼瞼挙筋の機能低下が強く、挙筋前転術では改善できない重度の眼瞼下垂症に対して主に行われます。太ももの筋膜や糸などを用いて瞼板とおでこの筋肉を繋ぎ合わせる手術です。これにより、おでこの筋肉を利用した眉毛を上げる動作で、まぶたを開くことができるようになります。

白内障

緑内障

加齢性黄斑変性

視野の異常

目で感じた光や景色は、網膜を刺激し、その情報は、「視神経」を通って、「大脳」に入り、「後頭葉」で処理されます。この信号の通り道を「視覚路」と呼び、頭の病気でどこかが障害されると、見えなくなったり、見える範囲が狭くなったり(視野障害)します。

ものもらい(麦粒腫)

  • 原因:細菌感染症(黄色ブドウ球菌が多い)、ストレスや疲労と関連あり、夏に多い
  • 症状:眼痛、目がコロコロする、目に小さなふくらみができている
  • 分類:外麦粒腫 : まぶたの外側の汗を出す腺や、まつげの毛根の感染
       内麦粒腫 : まぶたの内側のマイボーム腺(まつ毛の生え際にある油分を分泌する穴)
  • 抗生物質の点眼で7-10日で治る

網膜中心動脈閉塞症

  • 網膜中心動脈閉塞症は、眼の奥(眼底)で光を感じる組織である網膜に栄養を届ける動脈が詰まることで起こります。血管が詰まることで網膜の視細胞が機能しなくなってしまう病気です。視細胞が働かなくなった部分は光を感じとれず、映像になりません。
  • 片眼に突然おこることが多く、痛みは感じませんがものが見えにくくなります。
  • 時間の経過とともに、強い度数の眼鏡を掛けても視力は0.1以下にまで低下することがあります。
  • 米国での調査によれば10万人に対して年間1.9人の割合で起こり、男性は女性の2倍
  • 網膜が壊死しないうちに、発症から24時間以内(1~2時間が望ましい)で治療を行う必要があります。まぶたの上から眼球マッサージを行い、血栓溶解薬、網膜循環改善薬などの投与し、目への血流を増やすために頚部交感神経節ブロックなどが試みられることがあります。眼圧を下げるために房水を抜いたり高圧酸素療法を行うこともあります。
  • しかし、網膜の血流が改善されず、視力も戻らないケースが多いのが現状です。
  • つまり、発症後24時間以内に行われる標準的な治療法、及び発症後24時間以上経過し、視力低下が固定した患者に対しての標準的な治療法はまだ確立されていません。

眼部帯状疱疹

三叉神経第一枝領域の帯状疱疹では眼症状を伴うことがある
Huchinson兆候(第一枝の領域)、Adie瞳孔(散瞳)など→失明のリスクがあるので、眼科コンサルト!

  • 目の症状としては、結膜炎による充血(赤目)、角膜炎(黒目のキズ)や虹彩炎(茶目の炎症)などがあります。
    また、虹彩炎に伴い眼圧が上昇して緑内障になったり、まれに神経まひ麻痺や目の奥の網膜や視神経に炎症を起こしたり、視力が低下する場合もある為、眼科で精密検査を受ける必要があります。
  • 帯状疱疹の治療は抗ヘルペスウイルス薬の全身投与(内服)を行います。初期のうちに治療を始めると、比較的治りが早く、特に皮膚症状が出て72時間以内に治療を開始すれば後遺症が出にくいといわれています。
  • 眼部の場合、抗ヘルペス薬の軟膏を1日5回、まぶたに塗ります。軟膏は目の中に入っても特に問題はありません。混合感染予防のため、抗菌剤の点眼や炎症を抑える為にステロイドなどの点眼を行うこともあります。
  • 眼部も含め、帯状疱疹は、免疫力や体力が低下したときにかかりやすい病気なので、まずは安静にしてしっかりと休養することが大切です。また、初期治療が大事なので、目の周囲に違和感があれば、早めに眼科の診察を受ける事が重要です。

小児科

子供医療電話相談事業
こどもの救急(日本小児科学会) http://kodomo-qq.jp/

感染症

ヒトメタニューモニアウイルス

循環器(備忘録)

  • 抗血栓薬を服用中は、血圧を130/80mmHg未満にすべき!
  • 脳出血を含む出血リスクは、欧米人に比べて日本人で高いことが知られています。抗血栓薬を服用している場合、脳出血を予防するためには、血圧をしっかり下げておくことが重要です。日本人における臨床研究において、抗血栓薬(抗凝固薬または抗血小板薬)を服用中の患者さんでは、血圧が130/80mmHg未満であると脳出血の発生が少ないことが示されました。ガイドライン*2 では、抗血栓薬を服用している患者さんでは、130/80mmHg(家庭血圧では125/75mmHg)未満の血圧が推奨されています。
  • さらに、ACSを起こした場合や、家族性高コレステロール血症・糖尿病の場合は、LDL-コレステロールの管理目標値を70mg/dl未満にすることが推奨されています。スタチン系の薬だけではLDL-コレステロールの目標値をクリアできない場合には、小腸からのコレステロール吸収を阻害する薬(エゼチミブ、ゼチーア®️)を併用します。スタチン系の薬とエゼチミブを併用すれば、ほとんどの患者さんでLDL-コレステロール70mg/dl未満を達成することができます。
  • https://maruyamahosp.jp/column/1116/#:~:text=DAPT%E3%81%A7%E3%81%AF%E3%80%81%E3%82%A2%E3%82%B9%E3%83%94%E3%83%AA%E3%83%B3%E3%81%A8P2Y12,%E3%81%8C%E3%82%88%E3%81%8F%E4%BD%BF%E3%82%8F%E3%82%8C%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82
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