総論
鑑別疾患のアプローチ法→①②が基本
鑑別疾患の想起のためにも、十分かつ正確な情報収集が重要!
一般内科外来→診断貢献度は病歴76%、身体診察が12%、検査が11%
救急外来→緊急・重症疾患の瞬時の診断が重要なので検査ウェイトが大きくなるのは必然
病歴聴取から、検査前確率が十分に高いと判断された場合(→そのために各種診断スコアリングがある)には診察をせずに即確定的な検査をする
例)術後初回歩行時の胸痛・呼吸苦、コロナ濃厚接触者の咽頭痛・発熱など
検査前確率を高めなければ検査陽性であっても偽陽性を否定できない
→腫瘍マーカーでのスクリーニングが標準化できない理由(偽陽性が多すぎる)
仮に感度99%特異度99%であっても検査前確率が1/10000なら真の陽性率は1%未満(逆に1/10なら92%)
- 主訴→OPQRSTにて詳細に問診する
- O:onset
- P:
- Q:
- R:
- S:
- T:
- 発作性の症状→VAPEで絞り込み
①解剖学的
→CTをイメージして臓器を想起する
②病態的アプローチ=VINDICATE!!!+P
- 病態的アプローチ
- V:Vascular (血管系)
- I:Infection (感染症)
- N:Neoplasm (良性・悪性新生物)
- D:Degenerative (変性疾患)
- I:Intoxication (薬物・毒物中毒)
- C:Congenital (先天性)
- A:Auto-immune (自己免疫・膠原病)
- T:Trauma (外傷)
- E:Endocrinopathy (内分泌系)
- !:Iatrogenic (医原性)
- !:Idiopathic (特発性)
- !:Inheritance (遺伝性)
- P:Psychogenic (精神・心因性)
③文献検索によるアプローチ→おもに希少疾患の想起
各論
発熱 -外来編-
熱源の特定とともに全身状態の評価(bacteremia、sepsis、shockなどがあるか)を行う
救急外来で鑑別すべき致死性感染症
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- 発熱の確定診断ができなくても、ひとまず致死性疾患を除外できれば、診断までの時間が確保できる
- 血液検査が参考になるのは『胆管炎』のみ
- 悪寒戦慄=菌血症のサインとして重要
- 敗血症=「感染症による全身的な臓器不全状態」の診断基準
- qSOFAの3項目のうち2項目以上満たす場合を敗血症と診断する
・意識状態の変化(GCS<15)
・呼吸回数≧22回/分
・収縮期血圧≦100mmHg - 組織還流不全の徴候をとらえることが出来る臓器は3つ
- 「中枢神経(意識変容・意識障害)」
- 「腎臓(尿量減少)」
- 「皮膚(冷感・網状皮斑)」→交感神経亢進による皮膚の血流低下=livedo reticularisとして表出される
- 乳酸値も参考になる
- qSOFAの3項目のうち2項目以上満たす場合を敗血症と診断する
皮膚末梢循環障害に起因する網目状の潮紅を呈する病変をlivedoと呼ぶ
真皮-皮膚境界部の血管の閉塞性循環障害によって生じる
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- Decubitus(褥瘡)
- Debris(胆嚢炎)
- Drug(薬剤性)
- Device(デバイス関連感染)
- DVT(深部静脈血栓症)
- CPPD(偽痛風)
- CDI(Clostridium difficile infection)
意識障害
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意識清明とは
「周囲と自己を正しく認識している状態」であり,意識障害(disturbance of consciousness)は「外部からの刺激に対する反応が低下ないし失われた状態」
意識障害の分類
「意識清明度(意識レベル)の低下」と「意識内容の変化」に分けられる
「意識清明度の低下」→外的な刺激に対する反応の低下で4つに分類される
昏睡(deep coma)
半昏睡(semico-ma)
昏迷(stupor)
傾眠(somnolence)
- 覚醒状態を保つには,大脳半球の正常機能と網様体賦活系(RAS―上行性覚醒系とも呼ばれ,橋上部,中脳,および後部間脳に分布する神経核と連絡線維から構成される広範なネットワーク)の維持を必要とする。
→したがって,意識障害の機序には,両側大脳半球またはRASの機能障害が関与しているはずである。 - 意識障害が生じるには,脳機能障害は両側性である必要があり,片側大脳半球の障害のみでは,重度の神経脱落症状を引き起こす可能性はあるものの,意識障害を引き起こすには不十分である。しかしながら,まれに,片側大脳半球の大きな局所病変(例,左中大脳動脈由来の脳卒中)でも,対側半球がすでに障害されている場合,または対側半球が圧迫(例,浮腫による)された場合には,意識障害を起こすことがある。
- 通常,RASの機能障害は,中毒や代謝障害のように,びまん性に影響が生じる疾患に起因する(例,低血糖,低酸素症,尿毒症,薬剤の過量投与)。RASの機能障害はまた,局所的虚血(例,一部の上部脳幹梗塞),出血,または直接的な物理的損傷によって生じることもある。
- 頭蓋内圧を上昇させるあらゆる疾患は,脳灌流圧を低下させて,続発性脳虚血を生じる可能性がある。続発性脳虚血はRASまたは両側大脳半球を侵すことで,意識障害を引き起こす可能性がある。
- 脳損傷が広範囲に及ぶと, 脳ヘルニアにより以下の変化が起きるために神経機能が悪化する:
- 脳組織が直接圧迫される
- 脳の各領域への血液供給が遮断される
- 頭蓋内圧が上昇する
- 脳室系の閉塞により水頭症が生じることがある
- 結果として神経および血管細胞の機能障害が起きる
巣症状
- 定義:巣症状(focal sign)とは、大脳半球の一部(局所)が障害されることにより生じる症状のこと、局所症状とも
- 片麻痺(hemiplegia)が最も多く、他には言語障害(speech disturbance)や視野障害(visual field disturbance)などがある
- 低血糖による片麻痺は、血糖値が比較的緩やかに下がってきた場合、血糖値に対する両大脳半球の閾値の違いから優位半球の症状が先に出現するため片麻痺が起こる。日本人の優位半球は大部分が左側であるため、大部分は右片麻痺となる
- 痙攣(てんかん)が原因で起こる片麻痺の代表的なものがJackson型発作によるTodd麻痺である
失神
失神の定義=「一過性の意識消失の結果,姿勢が保持できなくなること」で、共通する病態は「脳全体の一過性低灌流」
高齢になるほど失神は増加する
起立性低血圧、心原性が4%-36%,血管迷走神経性が5%-45%,原因不明が13%-48%
頻度が多いのは
心血管性失神:心疾患、不整脈
神経調節性失神:迷走神経反射、状況失神、頸動脈洞症候群
起立性低血圧:出血、薬剤、糖尿病、パーキンソン病関連疾患
致命的な失神の原因
肺塞栓
くも膜下出血
急性大動脈解離
失神 -総論-
- http://www.jcc.gr.jp/journal/backnumber/bk_jjc/pdf/J021-1.pdf
- 失神は日常診療の場でよく遭遇する病態であり,救急来院例の3%-5%,入院例の1%-3%を占める
- 26年間の観察研究で、男性で3%,女性で3.5%が少なくとも1回の失神を経験したという報告がある
- てんかんは一過性意識消失を伴うが定義上、失神ではない
- 失神には前駆症状(浮動感,悪心,発汗,視力障害など)を伴うこともあれば伴わないこともある
- 脳循環が6-8 秒間中断されれば完全な意識消失に至り,収縮期血圧が60 mmHgまで低下すると失神に至る
- 救急診療ではECGに続いてモニタ心電図装着して不整脈のモニタリングを行う
失神 -各論-
- 起立性調節障害(起立性低血圧)→起立後3分以内の発症
- 高齢者の場合、薬剤性も考える→前立腺治療薬、降圧薬、抗うつ薬など
- 仰臥位や座位から立位へ体位変換した後3分以内に収縮期血圧が20mmHg 以上低下するか、収縮期血圧が90mmHg未満にまで低下、あるいは拡張期血圧が10mmHg以上低下する場合に診断される
- 心拍数は115~120回/分まで上昇する→迷走神経性失神との鑑別に有用
- 通常では仰臥位から立位になると、心臓への循環血液量が低下し血圧が下がるが、直ちに圧受容器反射系が賦活化されて、心拍出量増加、末梢血管抵抗増加などによって血圧が下がることを抑制する。しかし何らかの原因で循環血液量が低下した状態が続くと、高度の血圧低下を来して失神を生じる
- 朝起床時,食後・運動後にしばしば悪化する
- 起立性低血圧の原因は、糖尿病などによる自律神経障害、アルコール・薬剤によるもの、長期臥床・猛暑・脱水など
- 起立時の血圧測定は起立性低血圧の診断の参考になり,失神の鑑別診断には欠かすことはできない
- 神経調節性失神(NMS: neurally mediated syncope、血管迷走神経性失神とも)
- 失神の約30%を占めるとも言われ、心拍と血圧を制御する交感神経と迷走神経の調節障害が背景にある
- 分類:3つに細分類される
脈拍低下を主体とする心抑制型
血圧低下を主体とする血管抑制型
その混合型 - 長時間の立位・座位、急激な起立、痛み刺激、精神的・身体的ストレス、あるいは人混みの中、閉鎖空間のような環境因子を誘因として発症し、通常10秒以上の前駆症状(眼前暗黒感、めまい感、口渇、吐き気、胃部不快感、熱感、動悸、息苦しさなど)を伴う
- 初回失神からの経過が4年以上にわたる場合はこのNMSがまず疑われる
- そのほか、排尿、排便、嚥下、咳嗽など特別な状況において生じる状況失神と呼ばれているものがある
- 頸動脈洞過敏症候群(着替えや運転,荷物の上げ下ろしなどの頸部の回旋や伸展およびネクタイ締めなど頸部の圧迫により失神が誘発される)は心電図および動脈血圧モニター記録下に5-10秒間の頸動脈洞マッサージ(CSM=carotid sinus massage)で病歴と一致した意識消失発作が誘発された場合に診断される
- 心原性失神
- 失神発作で受診してきた症例においては,常に虚血性心疾患の可能性も考慮する(ACSの約5%は胸痛を伴わない失神発作で搬送されている)
- まずは12誘導心電図、モニター心電図装着
→脚ブロックや陳旧性心筋梗塞,左室肥大が認められれば失神との関連を疑うが、不整脈の場合は発作時にしかとらえられないためHolter心電図を考慮する - 胸部レントゲン、エコー
→大動脈解離、心タンポ、AS、MS、左房血栓、粘液腫、HOCM、AMI、肺塞栓 - 心雑音のチェック→AS、MSなどの弁膜症
- https://www.mmc.funabashi.chiba.jp/neurosurgery/uploads/Vert-84.pdf
- 心原性失神の分類
- 不整脈による失神
- 徐脈性不整脈
- 洞不全症候群SSS:さらに3つに分類(Rubenstein分類)
大部分は洞結節細胞もしくは周囲心房筋の加齢に伴う変性,線維化などによる特発性と呼ばれるもの- I群:持続性洞徐脈(心拍数 < 50/分)
- II群:洞停止あるいは洞房ブロック(→鑑別困難なケースもある)
- III群:徐脈頻脈症候群→Ⅰ、Ⅱ群のほかにAFL、Af、PSVTといった頻脈を伴うもので突然、心房細動の後に脈が戻りその後すぐに洞停止になった場合、失神する可能性がある
- 房室ブロック:
- 洞不全症候群SSS:さらに3つに分類(Rubenstein分類)
- 頻脈性不整脈:
頻脈が数秒で停止すればめまいや動悸で終わることがあるし,持続すれば突然死に結びつく
非発作時の心電図では,WPW症候群,Brugada症候群,QT延長症候群が診断され,催不整脈性右室心筋症では,T波の異常やイプシロン波などがみられる- 頻脈発作をHolter心電図でとらえる可能性は高くなく、否定できない場合は電気生理学的検査が必要
- 徐脈性不整脈
- 器質的心疾患に伴う失神
- 虚血性心疾患:
胸痛を伴わず、失神発作で搬送される虚血性心疾患が存在する - HCM:
HCMの失神の頻度は欧米では16%-19% - DCM:
DCMの失神の頻度は欧米では17.6% - 心臓弁膜症:
ASやMSで多い - その他:肺血栓塞栓症や肺高血圧症,大動脈解離,心タンポナーデ
- 虚血性心疾患:
- 不整脈による失神
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てんかん・けいれん
けいれんを目にした場合、まず頸動脈が触知できるかを必ず確認すること!
てんかん(けいれん発作)の鑑別疾患
①けいれん性失神(脳血流低下が15秒以上持続した場合に生じるとされる)
②PNES
③アルコール離脱けいれん
けいれん(convulsion):
不随意に起こる筋肉の収縮
Convulsionには脳由来ではない不随意運動も含まれる
てんかん発作(seizure):
脳由来の異常な電気活動による発作症状
けいれん性発作(convulsive seizure)→けいれんを伴う脳由来の異常な電気活動
非けいれん性発作(non-convulsive seizure)→けいれんを伴わない脳由来の異常な電気活動
てんかん(epilepsy):
seizureを反復する状態を指す→一度のてんかん発作では診断できない
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けいれんがてんかん発作(=脳の異常な電気的興奮)と診断したら、つぎはその原因を考える
①特発性てんかん(脳の機能的障害)
②症候性てんかん(脳の器質的障害)
③それ以外の原因(低血糖、低酸素、ショック、感染症、薬物・代謝、アルコール離脱、過労、ストレス)
けいれん重責時の治療
第1選択薬はBZDです。なかでもジアゼパムとミダゾラムの使用方法を覚えましょう(表)。両薬剤の間で優位性は特になく,末梢静脈ルートが取れているかどうかで使い分けます。ルートがあればジアゼパム静注,ルートがなければミダゾラム筋注を行います。いずれも十分量を単回投与することがポイントです。「呼吸が止まったら困る」と手加減した薬剤投与をしばしば見かけますが,不十分な投与により発作自体を完全に停止できなければ神経障害を起こす可能性が高まります。さらに,てんかん重積状態に発展してしまうと,十分なBZDを使用して発作を停止させた場合と比較して,さらなる呼吸循環系の有害事象を招くことがわかっているため,不十分な投与量での治療は厳に慎むべきです。ロラゼパムも良い薬剤ですが,冷所保存が必要で比較的高価なため筆者は使用していません。
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頭痛 headache、cephalalgia
「一次性頭痛か,二次性頭痛か,またはその両方か」→まずは二次性頭痛を除外する
脳実質には痛覚はなく、頭痛は、骨膜、太い血管、硬膜、頭皮、頭を覆う筋肉、脳神経、上部頸髄神経などで、これらの組織が圧迫されたり、引っ張られたり、炎症を起こしたりした時、それが痛みとなって現れる。
痛みの発生状況や痛みの種類などにより、様々なタイプに分類され日本頭痛学会、国際頭痛学会が存在するほど複雑で専門的、コード表が存在し数百項目に分類されている
国際頭痛学会の頭痛の分類(ICHD-3β版)
第1部;一次性頭痛
1.片頭痛
2.緊張性頭痛
3.三叉神経・自律神経性頭痛(TACs)→群発頭痛など
4.その他の一次性頭痛
第2部;二次性頭痛
5.頭頸部外傷・傷害による頭痛
6.頭頸部血管障害による頭痛
7.非血管性頭蓋内疾患による頭痛
8.物質またはその離脱による頭痛
9.感染症による頭痛
10.ホメオスターシスの障害による頭痛
11.頭蓋骨、頸、眼、耳、鼻、副鼻腔、歯、口あるいはその他の顔面・頸部の構成組織の障害に起因する頭痛あるい は顔面痛
12.精神疾患による頭痛
第3部;有痛性脳神経ニューロパチー、他の顔面痛およびその他の頭痛
13.有痛性脳神経ニューロパチーおよび他の顔面痛
14.その他の頭痛性疾患
頭痛の鑑別
![](https://gekainohonne.com/wp-content/uploads/2023/08/image-31.png)
- 雷鳴頭痛:発症から60秒以内にピークに達する激しい頭痛のこと
- 一次性頭痛:ほかに原因となる疾患がなく頭痛そのものが問題である頭痛性疾患の総称で片頭痛、緊張型頭痛、群発頭痛が代表的
- 二次性頭痛:頭蓋内疾患や全身疾患などさまざまな疾患に伴う頭痛
- 危険な頭痛を疑うレッドフラッグ=SNNOOP10リストでスクリーニング(→S+NN+OO+P10個で全15項目)
- 頭痛の発症様式、発熱、巣症状など
- 問診で問診で注意すべき点
① 発症様式(急速か緩徐か)
② 発症中または発症前の労作の有無
③ 疼痛部位
④ 同様の頭痛の経験の有無
⑤ 局所性神経症状の有無
⑥ 現在受けている治療や薬
⑦ 家族歴
⑧ 既往歴
- ER受診の頭痛患者の原因疾患の割合:
一次性頭痛は38.3%(片頭痛6.6%),二次性頭痛は53.6%
頭痛救急疾患のなかでもとくに問題となるくも膜下出血は8.1%
緊張型頭痛29%、頭部外傷に伴う頭痛21%、血管障害に伴う頭痛15%、頭部以外の感染症に伴う頭痛10%、片頭痛6.6%の順 - 慢性頭痛の有病率は4000万人と推定されている、そのうち840万人が片頭痛とされる
![](https://gekainohonne.com/wp-content/uploads/2023/08/image-27-1024x424.png)
![](https://gekainohonne.com/wp-content/uploads/2023/08/image-25-1024x486.png)
一般的には脳梗塞になっても頭痛は生じないが、ある研究では脳梗塞の15%で頭痛を認め,その特徴はこれまでに経験のない片頭痛様の頭痛や,いつもとは異なる緊張型頭痛が認められることが多かった。
脳梗塞の典型的な症状は突然発症する手足の運動麻痺や感覚障害、言語障害など。
- 原因:脳腫瘍、脳膿瘍、頭蓋内血腫といった頭蓋内占拠性病変や、脳浮腫によって引き起こされる
- 増悪因子:PaCO2上昇による脳血管拡張、静脈還流現象による脊髄圧亢進、脳静脈の閉塞などの頭蓋内血液量の増大
- 症状:頭痛、悪心嘔吐(腹痛などの消化器症状を伴わない)、視力障害(初期は軽微)、意識障害+けいれん発作、占拠部位の巣症状
- 所見:Cushing現象(血圧上昇+徐脈+呼吸数低下)、うっ血乳頭
- 頭蓋内圧亢進が進行すると脳ヘルニアに至る
- 原因:
- 椎骨動脈解離は首に過度な負担が掛かった時に起こりやすい
- 整体やカイロ、美容院でのシャンプー、首を激しく動かすスポーツや首に衝撃がくるスポーツ、交通事故によるもの、首をぶつける等でも起こりえる
- 好発部位(頭蓋外):
- 椎骨動脈はC1−6の横突起を通過し、解剖学的好発部位が存在する
- 遠位部:頭蓋内硬膜内に入る前、頭蓋からC2横突起まで(V3)。(C1がC2の上で回旋する際、VAは進展され、傷つくことあり。)
- 近位部:鎖骨下動脈起始部からC6横突起(V1)まで。
![](https://gekainohonne.com/wp-content/uploads/2023/09/image-103-1024x784.png)
- 症状:
- 30歳代から50歳代の男性に多く、高血圧がある人に多い、千鳥のノブも発症
- 後頭部・後頸部痛は決して整形外科領域だけではなく、脳神経外科領域の可能性がある
- 脳動脈解離は比較的太い脳血管であればどこにでも起きるが椎骨動脈解離(63.4%)が最も多い
- 若年および中年(平均年齢48歳)で、全梗塞の10-25%を占める
- 重度の頸部痛や後頭部痛により発症し、約60%が同時にくも膜下出血を、約30%に延髄外側症候群(Wallenberg症候群)をはじめとする脳虚血を合併する
- 診断:
- BPAS-MRI(Basiparallel anatomic scanning MRI)が最も感度が高い
BPAS-MRI は、椎骨動脈から脳底動脈の血管構造を画像化する MRI の撮像方法の一つ。
非造影 3D MRAとの違いは血流の影響を受けず、血管そのもの(外観)が見えるため椎骨動脈解離や動脈瘤の全体を把握することが出来る。
つまり「MRAで描出なし(≒血流なし)+BPASで描出あり(≒血管自体は存在)」のパターンであれば、解離もしくは血栓形成が起きている
MRA を撮像して、椎骨動脈や脳底動脈の描出が不十分であった場合には、先天的な低形成か病的な狭窄や解離などの鑑別が必要となる→血管の外観が観察できる BPAS-MRI の撮像を追加で行うとを行うと、内部に血流の乱流や血栓が存在している血管や動脈瘤の場合でも、瘤全体の把握が可能。
- CTではくも膜下出血は鑑別可能だが、椎骨動脈解離はMRI(特にMRA)が必要
- ただし、通常の脳MRIでは撮像範囲外のため、椎骨動脈解離を疑い頸部のMRAを行う必要がある
- BPAS-MRI(Basiparallel anatomic scanning MRI)が最も感度が高い
- 経過:
- 解離→脳梗塞、くも膜下出血などを合併することがある
- 脳梗塞は延髄と小脳に脳梗塞ができ、温痛覚が消失、痛みが感じない、ふらつきなどの症状が出ます
- ワレンベルグ症候群(延髄外側症候群):
延髄の外側には前庭神経核,三叉神経,小脳との連絡路,温痛覚を伝える神経路,自律神経等が通る
左延髄外側の脳梗塞→左顔面・右半身の温痛覚障害,眼振,発声困難,左手足の運動失調(小脳症状),交感神経障害(眼瞼下垂・瞳孔縮小)など
※Wallenberg症候群は後下小脳動脈領域の梗塞によって起こることが多く、原因としては血栓症が多いが、若年者では椎骨動脈解離の頻度が高い
- 治療:
- 虚血例は保存的治療
- 出血例では速やかな再出血の予防が必要で、血管内治療を含む観血的治療の適応
- 20-50%で後遺症なし、または軽度。10-56%で大きな後遺症が残り、10-24%で死亡する
- 診断:
- CTではくも膜下出血は鑑別可能だが、椎骨動脈解離はMRI(特にMRA)が必要
- ただし、通常の脳MRIでは撮像範囲外のため、椎骨動脈解離を疑い頸部のMRAを行う必要がある
![](https://gekainohonne.com/wp-content/uploads/2023/09/image-56.png)
片頭痛・・・有病率8.4%(前兆なし 5.8%, 前兆あり 2.6%)
若年者の病気であって、高齢者にはほぼ認めない
https://igakukotohajime.com/2021/08/10/%E7%89%87%E9%A0%AD%E7%97%9B-migrane/
- 症状:
- 頭の片側(または両側)が脈打つようにズキズキと痛む頭痛で、痛みは強く、4~72時間ほど持続し、体を動かしたり入浴したりすると悪化するのが特徴
- 頭痛による日常生活への影響は「いつも寝込む」4%、「時々寝込む」30%、「寝込むほどではないがかなりの支障がある」40%となっており、74%の方が、仕事や家事、勉強などの日常生活に支障をきたす
- 片頭痛患者さんの約75%には、頭痛が始まるきっかけ(要因)がある
- 要因:
ストレス、ストレスからの解放、疲れ、睡眠(寝すぎ・寝不足)、月経周期、天候の変化、温度差、におい、音、光、旅行、空腹、脱水、アルコールなど
- 要因:
![](https://gekainohonne.com/wp-content/uploads/2024/02/image-8.png)
- 好発:
- 女性の30歳代、40歳代に好発し、男性の3倍以上
- 分類:
![](https://gekainohonne.com/wp-content/uploads/2024/02/image-7.png)
- 原因:
- まだはっきりしていませんが、何らかの刺激が三叉神経(脳から直接出ている神経)の刺激につながり、さらに連鎖反応的に血管の拡張や炎症が発生していくためと考えられている
- 増悪因子
- ストレス・精神的緊張(解放されたときに起こりやすい)
- 疲れ
- 空腹
- アルコールの摂取
- 寝不足(寝過ぎ)
- 月経、出産後(妊娠中はエストロゲンの作用で片頭痛が軽快することが多い)
- 人ごみや騒音などの物理的な刺激
- 天候の変化
- 診断基準(国際頭痛分類):
- 前兆とは
- 頭痛の先行症状として閃輝暗点などの視覚性前兆が最も多くみられる(90%以上)
- 通常は5~60分の前兆が続いた後に頭痛が始まる
- チクチク感や感覚が鈍くなる感覚症状,言葉が出にくくなる言語症状など、特殊な前兆として,半身の脱力感や回転性めまいを認める場合もある
- 予兆とは
- 漠然とした頭痛の予感や、眠気、倦怠感、イライラ、気分の変調など
![](https://gekainohonne.com/wp-content/uploads/2023/10/image.png)
- 治療:
- 診断的治療としてトリプタン製剤を使用してみる方法もある
- 急性期治療にはスマトリプタンを始めとするトリプタン(全5種類)、軽症例ではNSAIDSやアセトアミノフェン
→神様はイミグラン点鼻液(1回1個使い切り製剤)を10回分処方し救急外来で1個使用 - トリプタン系は頭痛早期に効果を発揮し、疼痛がピークに達してからは効果に乏しい→発作初期に使用する
- 予防薬としては塩酸ロメリジンやバルプロ酸など
- 難治例に対してジタン系(2022年~)や予防薬としてCGRP関連抗体薬が開発された(2021年~)
- 妊婦における片頭痛急性期発作の治療薬として、完全に安全とされる薬剤はない(カロナールならOK?)。
- トリプタン系の注意事項
- 副作用:
- トリプタン感覚:
- 熱感・チリチリ感・感覚異常・一過的な首や胸の締め付け感などを認める場合があり、これは頸部筋、食道平滑筋のセロトニン受容体の関与が推定されている
- 薬物投与数分以内~30分後に始まり、1時間程度続く場合がある
- 使用しているうちに慣れるため多くは問題なく、事前によく説明しておくことが重要である
- トリプタン感覚:
- 投与禁忌:
- 血管狭窄病変:虚血性心疾患・脳梗塞・一過性脳虚血発作・SAH(1か月以内)・コントロール不良の高血圧
- 他の薬剤併用:SSRI(セロトニン症候群のリスク),MAO-B阻害薬
- 妊婦・授乳婦は原則禁忌
- その他:脳底片頭痛、家族性片麻痺性片頭痛
- 特にRCVSはトリプタン製剤で誘発される場合もあるため注意が必要
- 副作用:
![](https://gekainohonne.com/wp-content/uploads/2024/02/image-9.png)
![](https://gekainohonne.com/wp-content/uploads/2023/08/image-32.png)
![](https://gekainohonne.com/wp-content/uploads/2023/08/image-33.png)
セロトニン5-HT受容体には種類がたくさんある
5HT1系:さらに5-HT1B受容体や5-HT1D受容体、5-HT1F受容体があり、片頭痛治療薬のターゲット
5HT2系:???
5HT3系:制吐剤のターゲット
さらに4,5、6、7もあるようだ・・・
特に脳の動脈に発現する受容体
・5-HT1B受容体→血管収縮作用に関与
・5-HT1D受容体は血管拡張物質の放出抑制に関与
5-HT1B/1D受容体作動型片頭痛治療剤である「トリプタン系」の薬は、頭痛の原因物質放出抑制と同時に血管収縮作用があるため、胸が苦しくなったり倦怠感などを感じることがあった
2022年に発売された新しい5-HT1F受容体作動薬『ジタン』系のファーストインクラスであるレイボー(ラスミジタンコハク酸塩)は血管収縮への影響が少なくトリプタン系不耐例や無効例にも効果が期待されるが、脳以外におけるセロトニン1F受容体の分布や生理機能についてはまだ明らかになっておらず慎重投与が必要
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日本神経学会・日本頭痛学会監修の「慢性頭痛の診療ガイドライン2013」によれば、「頭痛に対しても各種の漢方薬が経験的に使用され、効果を示している」と記載されている。
- 呉茱萸湯(ごしゅゆとう) →片頭痛、緊張型頭痛(特に片頭痛)
- 桂枝人参湯(けいしにんじんとう)→片頭痛と緊張型頭痛
- 釣藤散(ちょうとうさん) →片頭痛と緊張型頭痛(特に緊張型頭痛)
- 葛根湯(かっこんとう) →緊張型頭痛
- 五苓散(ごれいさん) →血液透析に伴う頭痛
緊張型頭痛・・・有病率22%
- 一次性頭痛のなかで最も多い、両側性・非拍動性の頭痛が典型的
- 後頭部、こめかみ、額を中心に頭重感や圧迫感または締めつけられるような痛みがジワジワと発生し、しばらく続く。痛みの強さは軽度~中程度で、日常生活に支障が出ることは少ない。
- 光か音のどちらかに過敏になる人もいるが、片頭痛のように吐き気や嘔吐が発生することはなく、体を動かした際に痛みが悪化することもない
- 原因:頭、首、肩の筋肉の緊張によって血行が悪くなることとされているが、ストレスなどの神経的な緊張が引き金となることもある
- 増悪因子
- ストレス(身体的・精神的)
- 顎関節症(あごの関節の異常)
- 長時間同じ姿勢でいる(うつむき姿勢など)
- 運動不足
- 眼精疲労
- 増悪因子
- 緊張型頭痛のある人が片頭痛を起こす混合型もある
- 治療:
- 発作性緊張型頭痛にはNSAIDsや筋弛緩作用を合わせ持つ抗不安薬(エチゾラム、ジアゼパムなど)
- 慢性緊張型頭痛では予防的に抗不安薬や抗うつ剤、筋弛緩剤(チザニジンなど)の併用が有効な例もある
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三叉神経・自律神経性頭痛(TACs:Trigeminal autonomic cephalalgias)
TACsに分類される頭痛は、片頭痛や緊張型頭痛よりも持続時間が短いものが多く、受診時には頭痛が収まっていることが多い
同じ疾患群であっても、細分類により治療法が大きく異なるため専門医のコンサルトが重要!
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- TACsの特徴:一側性であることと,頭痛と同側に一側性の顕著な頭部副交感神経系の自律神経症状を呈すること
- TACsの分類:
- 群発頭痛
自殺頭痛と称されることもある、目の玉がえぐられるような頭痛
20~40代の男性に多い頭痛ですが、最近は女性にも増えてきたとされる
一度発症すると、1~2ヶ月にわたりほとんど毎日起こる群発期と発作のない寛解期からなる
アルコールを飲むと必ずといっていいほど頭痛発作が起こる
- 発作性片側頭痛
発作持続時間が群発頭痛より短い、女性に好発する - 短時間持続性片側神経痛様頭痛発作(SUNCT、SUNAに細分類される)
- 持続性片側頭痛
- 群発頭痛
- 自律神経症状:
- 鼻水や鼻づまり
- 眼球結膜の充血(赤くなる)
- 涙が出る、まぶたが腫れる・下がる、瞳孔が縮む
- おでこや顔から汗が出る
- 群発頭痛の有病率は10万人あたり56~401人程度と少ない(片頭痛は有病率8%、緊張性頭痛は22%)
- 治療:
- 保険適応の治療法としてスマトリプタンの自己注射(イミグラン注射)のみ→普及していない
- トリプタン製剤の内服薬や点鼻薬は保険適応外
- ベンザ鼻炎スプレー(リドカイン含有)も有効だが保険適応外
脳静脈閉塞症
RCVS
疼痛性障害
国際疼痛学会(IASP)による痛みの定義(2020)
痛みとは「実際に身体の組織損傷もしくは組織損傷が起こりうる状態に付随する、あるいはそれに似た、感覚かつ情動の不快な体験」
国際疼痛学会(IASP)による痛みの分類3つ
「侵害受容性疼痛」、「神経障害性疼痛」、「痛覚変調性疼痛」
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- 痛覚変調性疼痛:
- 痛みの発生に関わる脳の神経回路(ネットワーク)の変化で起き、身体の組織や神経、神経回路に損傷がなく起こる痛み
- 線維筋痛症→有病率1.7%と多い
- 線維筋痛症診療ガイドライン2017
- 症状:
- 身体の広範な部位に慢性の痛みが持続的、あるいは断続的に見られます。
- 痛みは鈍い痛みのこともありますが、しばしば激しい痛みとなり、痛みで仕事や家事ができず、夜も眠れないとか、目を覚ましてしまったりします。
- 患者さんは線維筋痛症の痛みを、身体がナイフで切り裂かれるような痛み、身体の中でガラスが割れ、その破片で傷つけられるような痛み、痛みで全身が締め付けられるなどと訴えられます。
- このような痛みが日によって、あるいは1日のうちでも時間によって変化します。
- また、季節や天候、身体活動、精神的ストレスなどによって、痛みが悪化します。
- さらに、他の病気(多くは膠原病やリウマチ性疾患など)に付随して線維筋痛症が発病した場合は、元の病気の悪化により、痛みが悪化します。
- 痛み以外に、強い疲労感、抑うつ気分、目覚めがすっきりせず熟睡感がないこと、物忘れや集中力が落ちるなどの、さまざま身体、神経や精神症状が出現します
- 原因:
- 線維筋痛症の痛みは、痛みのある部位に原因があるのではなく、痛みを、痛みとして感じる脳のネットワーク(回路)が過敏(中枢性感作)になっているとされる
- 痛み刺激がないのに、腦の痛みの回路が自然発火し、興奮しているために身体のあっちこっちが痛むと感じたり、身体を触られたり、軽く圧迫されただけで強い痛み(アロディニア;異痛症)を感じる
- 疫学:
- 日本の人口の約1.7%(有病率)が線維筋痛症→約200万人の線維筋痛症患者がいる
- 男女比1:4.8と女性に多い
- 好発年齢:40歳後半の年代に多い
- 診断基準:
- 2つの基準がある、どちらの基準も使用されている
- 米国リウマチ学会1990年基準
- 米国リウマチ学会2010年基準
- 薬物療法:
- リリカ
痛みの神経回路の過剰興奮状態を抑えることにより、線維筋痛症の痛みの緩和が期待 - サインバルタ20㎎
成人には1日1回朝食後、デュロキセチンとして60mgを経口投与する
投与は1日20mgより開始し、1週間以上の間隔を空けて1日用量として20mgずつ増量する
線維筋痛症のうつ症状を改善する目的ではなく、抗うつ薬による脳内セロトニン、ノルアドレナリンなどの神経伝達物質を増加させ、下行疼痛抑制系を活性化して痛みのブレーキ作用を強めることにより、痛みの緩和が期待 - 弱オピオイド→依存性のため短期間使用にとどめる
トラマール(トラマドール)、トラムセット(トラマドールとアセトアミノフェン配合剤)、ノルスパンテープ(ブプレノルフィン)
- リリカ
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めまい
「めまい」とは、平衡感覚が障害された状態
小脳梗塞でも末梢性めまいと判定されうる(難聴やVOR消失しうる)→小脳失調はrule outすべき
めまいが生じる解剖部位→3つ(内耳=半規管+前庭+蝸牛)
末梢性
三半規管(BPPV)
めまい持続時間<1分でメニエル病より短い、聴覚症状なし
前庭(前庭神経炎、迷路炎、メニエル病など)
前庭動眼反射(VOR)が消失
眼振は方向定性眼振
前庭性めまいでも疾患によって聴覚症状あり/なしが分かれる
中枢(小脳・脳幹)→巣症状、リスク因子、HINTSで除外
脳卒中による急性めまいの約9%が初期診断において見逃される報告あり
DWI-MRIでも24-48時間以内の急性めまいを生じた脳梗塞は10-20%の見逃しがある
救急外来のめまいの原因
(米国の National hospital ambulatory medical care survey の調査)
32.9%が耳性めまい
危険な疾患と分類された診断は15%(本邦の報告では8.5%)
水/電解質異常(めまい患者の5.6%)
不整脈(3.2%)
一過性脳虚血性発作(1.7%)
貧血(1.6%)
低血糖(1.4%)
狭心症(0.9%)
心筋梗塞(0.8%)
脳梗塞/出血(0.5%)
一酸化炭素中毒(0.2%)
くも膜下出血/頭蓋内脳動脈瘤/頸頭蓋動脈解離(0.1%)
アルコール 禁 断(<0.1%)
大動脈解離/動脈瘤破裂(<0.1%)
持続性めまいの場合は薬剤性も鑑別が必要(下記図参照↓)
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“timing and triggers” によるアプローチ(2015)
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s-EVS:spontaneous episodic vestibular syndrome
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- AVS:
- AVSは突然または急激に発症して数時間から数日続く「めまい」
- AVSの 95%が前庭神経炎(迷路炎)と脳卒中に区分される
- 2~3%の患者は多発性硬化症の初期症状、他にウェルニッケ脳症や薬剤の副作用が挙げられる
- 安静臥位で軽減して頭部を動かすと悪化する「めまい」は、必ずしも末梢性を意味しない
- AVSの厳密な定義には眼振が含まれるが、小脳梗塞などで眼振がみられないケースも存在する
- s-AVSのときに行う検査→HINTS
- s-EVS:
- 誘因のない持続時間(数分から数時間)の異なるめまいを指し、最も頻度が高いのは前庭性片頭痛であるが、重要な鑑別疾患は後方循環系TIAである
- 孤立性のめまいを呈する後方循環系TIAに関する報告は近年増加傾向にある
- 他に不整脈、肺塞栓、パニック発作が挙げられる
- t-EVS:
- 何らかの誘因によって生じる短時間のめまいを指し、BPPVと起立性低血圧が最も多い
- 鑑別すべき疾患として、中心性発作性頭位めまい症(CPPV; 第四脳室の小さい病変(腫瘤、多発性硬化症、腫瘍))が挙げられる
- BPPVを疑ったら下記へ↓↓
めまいの診察手順
めまいの診察手順
①眼球運動所見(頭字語としてSTANDING)
1)自発眼振あるいは頭位眼振の有無(SponTAneous or positional nystagmus)
2)眼振の方向(Nystagmus Direction)が定方向性か注視方向交代性/垂直性か
3)HeadImpulse test(HIT)で前庭眼反射の評価→HINTSのうちHITが最も脳卒中検出感度(93%)が高い(注視方向性眼振20%、skew deviation25%)
4)体平衡の評価(staNdinG)
→失神性を除く急性めまい症例のうち、感度95%,特異度87%で中枢性病変を検出できた
②その他の随伴症状の評価
構音障害,顔面・上下肢の運動麻痺・感覚障害,上下肢の小脳症状、脳神経所見
③体平衡(起立・歩行)の評価
Romberg試験
閉眼足踏み試験
病的にずれた眼位を元に戻そうとする眼の動き=前庭動眼反射の障害
眼振は2つのフェーズから成り立っている
「だらーっ」と1方向へ眼球が動き(緩徐相)、そのあと「きゅっ」と素早く逆方向に眼球が動く(急速相)
眼振の観察ポイント!
①BPPV→頭位変換による眼振の出現と減衰(眼位は正中もしくは眼鏡装着)、眼振方向は向地性
➁中枢性→眼位ごとに眼振方向が異なる(注視で行う検査、注視方向交代性眼振)
③前庭性→眼位で眼振方向が一定(注視で行う検査、注視方向固定性眼振)
眼振(=前庭動眼反射の障害)の原因部位
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障害部位と原因疾患の関係
①三半規管の障害=BPPV
→頭を動かす(=耳石が移動する)ことで眼振が誘発される→頭位変換時の眼振を観察する
②前庭の障害=
→水平固定性眼振
③中枢(小脳・脳幹)障害
→なんでもありうる(垂直方向性眼振、上下方向眼振は特異度が高い)
ただし、すべての眼振の診察では「注視抑制を外す」という作業が重要→眼振検査はフレンツェル眼鏡を装着するのがお作法
※注視抑制とは、ある1点をじっと見ると眼振が抑制されてしまう現象
※注視誘発性眼振は中枢由来のため注視抑制はかからない(すべての末梢性眼振は注視抑制がかかる)
※Head roll testもDix-Hallpike testもフレンツェル眼鏡装着状態で行う
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平衡状態は、①前庭感覚、②固有受容感覚、③視覚からの感覚情報が小脳に入力することによって維持されている
固有受容感覚に問題がある患者でも、前庭機能と視覚で代償することでバランスを保つことができる
※固有受容感覚は、筋肉、靭帯、腱、関節から生じる深部感覚
Romberg試験は人間の直立姿勢制御に対する脊髄後索の機能に問題があるかどうかを確認するために行われる試験で関節の位置など固有受容感覚の異常によって引き起こされる歩行障害、感覚性運動失調を診断するのに適している
中枢性めまい、末梢性めまい、頭部外傷による平衡障害の程度を測定するためにも非常に有効
足踏検査は、平衡障害の有無・程度の把握、患側の推定、経過観察に有用
一定点において閉眼で足踏みを30歩程度行わせて、中枢性または末梢性前庭性不均衡に基づく下肢の筋緊張の左右差による偏倚を検出する。同時に平衡失調(動揺、転倒)も検出する。
Head Impulse–Nystagmus–Test of Skew (HINTS)
=3-step bedside examination
HINTSは末梢性と中枢性の分類に利用すると勘違いしているケースが多い
”HINTS”はあくまでもBPPVを除外した上で「前庭由来のめまい」と「中枢由来のめまい」を区別するための方法であり、「BPPVも含めた末梢性」と「中枢性」を区別するためのものではない
BPPV→”Dix-Hallpike法”などで先に除外してからHINTSを行うのが正しい
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HINTSはすべて中枢性めまいの特異度が非常に高い検査の組み合わせ
一つでもあれば、ほぼ中枢性めまいであると言える(特異度91~98%)
逆に一つもなければ中枢性めまいをほぼ否定できる(感度95~99%)
陽性尤度比10.8
陰性尤度比0.02(=偽陰性/真の陰性)→統計的には見逃しは2/100の割合といえる
※MRIを行っても超急性期脳梗塞は診断できない
※ただしHINTSの元の論文はN=111しかない・・・
さらに以下も合わせて評価する
★めまい患者が歩行できなければ中枢性めまいである可能性が非常に高い(特異度98%)
★Saccadic pursuit(衝動性眼球運動)も中枢性めまいの所見(感度70~88%、特異度80~90%)
- https://www.jstage.jst.go.jp/article/jibi/61/1/61_32/_pdf
- https://www.slideshare.net/masatoshimizu37/1-50200639
- HINTS とは HIT,Nystagmus(眼振),Skew deviation(斜偏位)の3つの所見を組み合わせた検査法
1)HIT が正常パターン
2)注視方向交代性眼振あり→両眼で指を追ってもらうだけ
3)skew deviation あり→正面視で患者の片眼ずつ手で覆うだけ
のうち一つでも陽性なら脳梗塞に対しての感度100%,特異度96%
→3つとも陰性なら脳梗塞はほぼ除外できる点で非常に有用
問診等よりAVS群で脳梗塞の検査前確率が上昇しているためHINTSが診断に有意義なんだろう
※頭部 MRI 拡散強調画像では感度72%,特異度100%でMRIよりも除外診断に優れる - ”HINTS”はあくまでもBPPVを除外した上で「前庭由来のめまい」と「中枢由来のめまい」を区別するための方法であり、「BPPVも含めた末梢性」と「中枢性」を区別するためのものではありません
- HINTSのやり方
- ①HITは下記参照
- ➁Nystagmus(眼振):眼振の種類はいろいろあるが、注視方向性眼振だけを見る検査
- 中枢性めまいの感度は低いが特異度は高い(特異度82~98%)
- 注視眼振検査で注視方向(交代)性眼振の評価を行う(道具は不要)
- 中枢性めまいでは、方向固定性眼振(→前庭性めまいに多い)も生じうるが鑑別の役には立たないため、ここではあえて注視方向性眼振のみを観察するものである
- 注視方向性眼振(=眼位によって眼振方向がバラバラ)が見られたり、定方向性の眼振であっても Alexander’s law(末梢性眼振は眼位が患側=急速相の方向を注視すると増強する性質を持つ)が働いていない場合は「陽性」である
- 急性めまい症患者を対象としているため、救急外来で道具を用いず行う注視眼振検査で確認する
- ③Skew deviation(斜偏位)
- 中枢性めまいの感度は低いが特異度は高い(特異度86~99%)
- 正対する検者の鼻を注視してもらいつつ,左右の目をパッパッと手掌等で交互に隠すと,目が垂直に偏位したら中枢性
- 時計回り(右目が上がり,左目が下がる)に動けば橋部より下の病変,反時計回り(右目が下がり,左目が上がる)なら橋部より上の病変
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head impulse test (HIT)=前庭の障害があるかどうかの検査
動画を撮影しスロー再生して判定すべき
めまい専門家もビデオヘッドインパルステストで動画再生できる
末梢性めまいとHIT陰性(VOR消失)の相関性→陽性尤度比6.7、陰性尤度比0.6
感度34~57%→末梢性めまいでも検査偽陰性はありうる
特異度90~99%→VOR消失になれば、末梢性めまいの可能性が非常に高い
中枢性めまいとHIT正常の相関性→陽性尤度比9.2、陰性尤度比0.2
感度60~93%
特異度91~98%→HIT正常なら中枢性めまいの可能性が高いと言える
- 1988年に発表されたhead impulse test (HIT)はVORを判定するテスト
- 前庭動眼反射(VOR)は頭部が動いている時の目標物への視線の固定に寄与している
→末梢性めまいの場合(前庭神経炎や内耳炎)にはHITが陰性となる - 小脳はVORの反射弓に含まれないため、一般に小脳梗塞ではHITが「陰性」となる
- 前下小脳動脈(AICA)は前庭神経根を含む橋外側を栄養し、AICA由来の迷路動脈は蝸牛、前庭を栄養するため、こうしたAICA領域の脳卒中ではHITが「陽性」となり得る
- HITのやり方:
- 定性的な検査であり、機器を必要としないため、一般外来で施行可能である。
- 被験者の前方に立ち、被験者に定めた1点を注視してもらう。
- 被験者の頭部を保持して水平方向に約 20度急速に回転させた位置で頭位固定、医師が肉眼で被験者の眼球を観察する。
- 正常であれば、回転刺激と同時に VOR を生じるため、注視を保てる
- 外側半規管高度障害があり VOR が障害されている場合には、回転刺激の際に頭位変化とともに注視を保てず、眼球が変位する→注視指示をされているため、catch―up saccade(CUS)が引き続き観察される。CUS が観察されれば、高度の半規管障害が示唆される。
- HITで全6半規管の機能がすべて検査できる
- 被検者の頭部を受動的かつ急速に水平方向に10°~20°回旋させれば左右の外側半規管
- 被検者の頭部を右方向に45°回旋し,上下方向に10°~20°動かせば左前半規管と右後半規管
- 被検者の頭部を左方向に45°回旋し,上下方向に10°~20°動かせば右前半規管と左後半規管の機能評価が可能となる
![](https://gekainohonne.com/wp-content/uploads/2023/10/image-136.png)
![](https://gekainohonne.com/wp-content/uploads/2023/10/image-137.png)
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耳鼻科医の考えるめまい診断
専門医のめまい診断においては、随伴症状により中枢性めまいを除外したのちに、末梢性めまいを眼振によって鑑別していくストラテジー
→眼振所見に弱い総合診療・救急医とは大きく異なる
![](https://gekainohonne.com/wp-content/uploads/2023/11/image-135-1024x500.png)
末梢性めまいの特徴
① 難聴や耳鳴など蝸牛症状を合併する
② BPPVを除く末梢性めまいでは方向固定性眼振が主体であり眼振は固視抑制を受ける
③ 眼振の性状は水平回旋混合性眼振の場合が多く、純回旋性や純垂直性の眼振はまれである
④ 体平衡障害は開眼で改善し(ロンベルグ陽性)、体幹失調は認めない、など
注視眼振検査
定方向性眼振は前庭系の左右非対称性の障害を示唆し、多くは末梢前庭性の障害であるが、中枢性を否定するものではない。
注視方向性眼振は注視した方向に急速相をもつ眼振で、主として脳幹・小脳障害に出現する。
方向交代性眼振は
救急患者の自発眼振、注視検査所見をとる場合に注意すべきことは、患者が座位、立位をとれず臥位のまま眼振所見をとらざる得ないことで、この場合頭位による影響を考慮しなければならない。
中枢性めまい
脳幹の障害(延髄、橋、中脳)→めまい以外に随伴症状を伴う
小脳の障害
小脳半球
→体幹よりは四肢の運動失調が主体で、指鼻試験の異常や拮抗反復機能障害、企図振戦を認める
前下小脳動脈(AICA)の血行障害により起こるが、AICA は内耳動脈を分枝するため AICA 梗塞では難聴や耳鳴、方向固定性の眼振など一見末梢性めまいに類似する症状を呈する場合があるので注意を要する
小脳虫部→
れ脊髄とのつながりの深い小脳である。
そのため小脳半球障害で見られるような四肢の運動失調は目立たず体幹失調のみを呈する場合があるので注意を要す
る。体幹失調は開眼閉眼にかかわらず存在し(ロンベルグ陰性)、起立が不能であることが多い。小脳虫部障害では小
脳による眼球運動制御が脱抑制されることがある。方向交代性背地性眼振は外側半規管型クプラ結石症で見られる場合
がほとんどであるが、小脳虫部障害でも上記脱抑制のメカニズムで見られることがあり、中枢性頭位めまい症と呼ばれ
る。中枢性頭位めまい症では BPPV ではみられない体幹失調(起立不能)を認めることから両者は鑑別可能である
CPPV
●BPPVにはあり得ない所見がある
・頭痛や頸部痛,複視など
・脳神経障害
●頭位変換で眼振のみが出現し,めまいがない
●非典型的な眼振がある
・垂直方向性眼振,下向き眼振など
・潜時のない眼振,90秒以上持続する眼振,増強した後の減衰がない眼振
・検査ごとに眼振の方向が異なる
●耳石置換法への反応性が乏しい
BPPV→三半規管の障害(前庭性めまいとは特徴が異なる)
病歴と身体所見のみで診断する、BPPVには画像診断がない
めまいの15%~53%、生涯罹患率10%
基本的には難聴、耳鳴を伴わない
頭位変換後、数秒の潜時(石が移動→リンパ液の流れが生じる時間)ののちに回転性めまいが生じる
BPPV→方向交代性眼振
前庭性めまい→方向固定性めまいが生じるが、方向固定性めまいは中枢性めまいでも生じうる
- 良性発作性頭位めまい症(BPPV)診療ガイドライン2023
- http://igakukotohajime.com/2019/08/08/%E3%82%81%E3%81%BE%E3%81%84%E3%81%B8%E3%81%AE%E3%82%A2%E3%83%97%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%83%81/
- 後半規管型がダントツ多い
- 三半規管はその名の通り3つあるが、前半規管は考えなくてよく(1-3%)、外側半規管型と後半規管型がほとんど
- BPPVでの眼振は頭位変換に伴う方向交代性眼振となり、安静時には眼振は認めない
- 耳石がリンパの中で動くためには頭位変換が必要であり、具体的には頭が前に倒れる、後ろに倒れる、回旋するといった動作が誘発因子となる
- じっとしていると自然とリンパの流れも止まるため通常は「めまい」症状は1分以内に改善する
- それぞれの三半規管に対して対応する誘発法がある
Dix-Hallpike法→後半規管型のBPPVに対する誘発法で、両側で検査行い眼振が誘発された方が患側
Head roll test(=Supine roll test)→水平半規管型のBPPVに対する誘発法で、両側とも眼振が誘発され方向で患側を決める - Epley法は症状消失についてNNT(number needed to treat)=3と,とても有効性が高いことが知られており,実臨床でもサクッと治せて非常にやりがいのある処置
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![](https://gekainohonne.com/wp-content/uploads/2023/10/image-156-1024x438.png)
眼振
- http://igakukotohajime.com/2019/08/08/%E7%9C%BC%E6%8C%AF-nystagmus/
- 眼振の診察では「注視抑制を外す」という作業が重要→注視抑制とは、ある1点をじっと見ると眼振が抑制されてしまう現象のこと
- 注視誘発性眼振
中枢由来の眼振では注視抑制はかからないため眼振が見られる
末梢性の眼振(BPPVでの頭位変換による方向交代性眼振や、前庭障害での水平方向固定性眼振)では注視抑制が働くため眼振が出づらくなる→フレンツェル眼鏡が必要 - このため末梢性の眼振を見るときは注視抑制を外すために、必ずフレンツェル眼鏡を装着する
- 診察の順序:
- まずフレンツェル眼鏡を付けない状態で自発眼振と注視誘発性眼振があるかどうかを評価
- その後フレンツェル眼鏡を装着した状態で、自発眼振、またBPPVでの誘発法としてDix-Hallpike法やhead roll testを実施する流れになる。
- 自分の中で眼振を診察するときの診療の型を作りスムーズに観察できるように練習を重ねよう。
眼振の記録方法
よくみる図は注視眼振検査
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![](https://gekainohonne.com/wp-content/uploads/2023/10/image-148.png)
- いずれも元気な外来患者さんに行う検査→末梢性めまいの鑑別に用いる、救急外来でめまい急性期にはできない
- 頭位眼振検査:
- 頭位眼振検査は注視眼振検査に比べて格段に眼振検出率が高く,病変により特徴的な眼振が出現 す る
- フレンツェル眼鏡下、赤外線CCDカメラ下または閉眼、遮眼、暗所開眼でのENG記録時、静的な頭位変化による眼振を観察する
- 耳石器刺激による末梢および中枢前庭系の不均衡に基づく眼振を検出する
- 頭位変換眼振検査:
- 急激な頭位変化(頭位変換)により、動的な前庭刺激を与えて生ずる眼振を観察する
- 眼振は耳石器と半規管の刺激で誘発される
- めまい診療では歴史的に,4つのタイプに分類して鑑別診断を進めていく手法(symptom quality approach)が行われていたが、患者の訴えは往々にして再現性に乏しく主訴と分類との整合性が1:1対応ではないなど、現在は用いない→1972年の研究に由来するが、前向き検証がなされないままに一般的となった
- symptom quality approach:
vertigo:前庭系,lightheadedness:心血管系,disequilibrium:神経系,これら以外を精神系の問題として鑑別する方法
- symptom quality approach:
- 日本めまい平衡医学会:https://www.memai.jp/
急性期めまいの診断フローチャート2019:
めまい相談医:めまいの専門知識および基本的な診療技術を備えていると日本めまい平衡医学会が認定した医師 - めまいの生じるメカニズム:
身体の平衡を維持するためには、下図のように「入力系」、「中枢」、「出力系」が必要となる。これらのどこかに障害が生じると、「平衡」が維持できなくなり、「めまい」が生じる。前庭器官とは三半規管と耳石であり、ここでの情報は前庭神経を介して脳幹(延髄・橋)の前庭核に伝えられ、さらに小脳の片葉小節葉に伝えられる。
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- 頭位誘発性めまいの原因には BPPV の他に,中枢障害によるめまい(中枢性頭位めまい症),椎骨脳底動脈循環
不全,頸性めまいなどが挙げられる
めまい治療薬
内耳循環改善薬(抗めまい薬)+制吐剤(プリンペランorナウゼリン)+抗不安薬
めまいに対して強いエビデンスを有する処方薬はない(作用機序もあいまい)
処方例:
①メリスロン6~12㎎、1日3回→禁忌なし
②セファドール→重篤な腎障害では禁忌
(①②は作用機序が異なるため併用可能)
③アデホス
④トラベルミン→閉塞隅角緑内障、尿閉で禁忌
- メリスロン(ベタヒスチンメシル酸塩):
- セファドール(ジフェニドール):
- 禁忌:重篤な腎障害
- 作用機序:
詳細不明だが椎骨動脈を拡げることで、脳の血流を改善し、めまいの症状を抑える。また、前庭神経の働きを良くすることでも、めまいの症状を抑える。そのためセファドールは、メニエール病に限らず耳が原因で起こると考えられためまい全般に使用され、めまいの原因がはっきりしない場合には、メリスロンとセファドールを併用することもある。
- アデホスコーワ顆粒:
- 適応症:メニエール病及び内耳障害に基づくめまい
- 用法用量:1回100mgを 1日3回経口投与する
- 作用機序:詳細の記載なし
筋力低下・下肢脱力
筋力低下,神経学的な症状の鑑別診断の手順
①解剖学的なカテゴリーに分けて考える
→ 「筋肉,神経筋接合部,末梢神経,運動ニューロン,脊髄,脳幹部,脳」
②解剖学的なカテゴリーの中で,どのような病態が起こっているかのプロセスを考える
→VIBDICATEP!!!
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![](https://gekainohonne.com/wp-content/uploads/2023/11/image-67.png)
- https://www.jstage.jst.go.jp/article/generalist/36/4/36_358/_pdf/-char/jaをまとめる
神経学的検査
神経学的検査
①意識
②脳神経系
③運動系→MMTで評価
④反射(深部腱反射、病的反射)
⑤知覚(触、痛、温、冷)
⑥立位、歩行、ふらつき
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ふるえ
本態性振戦
- 本態性振戦は、人口の2.5~10%、65歳以上では5~14%との報告が有り、高齢になると多く見られる
- 家族に本態性振戦の方がいる人は、発症しやすい
- 本態性振戦の方は、パーキンソン病を発症しやすい
- 姿勢時振戦、運動時振戦
→じっとしているときよりも、なにかをしようとするときや、ある特定の姿勢をとったときに現れるのが特徴 - 治療にはおもにβ遮断薬→アロチノロールが唯一保険適応
振戦
- 安静時振戦:
- パーキンソン病に特徴的な振戦
- 企図振戦:
- 小脳に病気があると動作が目標に近づくに連れて振れが大きくなる
- 鼻指鼻試験
感覚障害
手のしびれ
- 原因:手の支配神経がどこかで障害された状態
- 鑑別疾患:頚部の神経根症、脊髄症あるいは非変性性疾患、そして絞扼性末消神経障害、まれに脊髄腫瘍や極小範囲の脳梗塞
- 上肢の末梢神経絞扼障害で最も多い疾患は、手根管症候群→手掌の正中神経領域のしびれ
朝方に強く、起床後に徐々に弱まれば手根管症候群の疑いが濃厚
頚椎症と手根管症候群の鑑別方法は第4指の内側に痛覚低下があるのに、第4指の外側にはない→手根管症候群 - 神経根症ではしびれに先行する頸部痛/肩周囲痛があり、しびれは朝方に改善していて、午後~夕方に強い
- うがい、缶ジュース飲み、目薬さし、美容院での洗髪、歯科治療、といった頸椎の後屈で再現、増強されるものであれば、頸椎由来と診断して良い
頚椎症とは、年齢、または長年の負荷により変形した椎間板、椎体、黄色靭帯などが変形した状態。
脊髄が圧迫されている病気を頚椎症性脊髄症、神経根が圧迫されている病気を頚椎症性神経根症という。
足のしびれ
浮腫
病態
- 浮腫=間質液量の増加により生じる腫脹
- 原因:
①炎症/アレルギーなどによる血管透過性亢進
②心肝腎、甲状腺疾患→足以外にも、手指、眼瞼、口唇もチェック
③局所因子→DVT、リンパ管閉塞(リンパ郭清や癌浸潤など)、蜂窩織炎など
④薬剤性→処方カスケードの”浮腫”を参照
⑤不動性浮腫→足背に好発する、動かないことが原因、麻痺側の手足も不動性浮腫きたす
鑑別
鑑別の手順:①圧痕性の確認→②左右差の確認→③熱感、色調変化、圧痛、発熱の確認→④眼瞼、手背、口唇の確認
低アルブミン血症(Alb<2.5g/dL)による圧痕性浮腫はfast edema(実際には10秒台で戻ると特異度が高くなる)→低アルブミン血症をきたす原因を検索する(肝硬変、ネフローゼ、低栄養、など)
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- fast pitting edema、slow pitting edema、non-pitting edemaに分類される
貧血
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![](https://gekainohonne.com/wp-content/uploads/2023/11/image-34.png)
- 赤血球のステージにおいて必要な栄養素が異なる→生じる貧血の種類も異なる
- DNA合成→ビタミンB12や葉酸、銅が必要→欠乏すると大球性貧血
- ヘモグロビンや膜合成→鉄やビタミンB6が必要→小球性貧血
- 亜鉛は、赤血球の成長全体を通じて必要
- 貧血の鑑別の手順→まずMCVとMCHCで判定する(MCHは不要)
- 判断材料:
- トランスフェリン飽和率(TSAT)%=TSAT%[(血清鉄/TIBC)×100]
鉄欠乏ではTIBC↑↑(>350)となりTSAT低下する
- トランスフェリン飽和率(TSAT)%=TSAT%[(血清鉄/TIBC)×100]
- 鉄欠乏性貧血
- 血清鉄低値と総鉄結合能高値であれば鉄欠乏性貧血と診断して良い
- フェリチンは著減している場合は鉄欠乏性貧血と診断できるが,必要不可欠の検査ではない
→感染や炎症を伴う場合には、貯蔵鉄の状態とは関係なく血清フェリチン値は高値を示す
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- 腎性貧血
- 腎性貧血を疑ったら血中エリスロポエチン+網状赤血球を測定→EPO低値であれば診断確定
- 巨赤芽球性貧血
- VB12と葉酸を確認する
- 悪性貧血(年間発症率は人口 10 万人対 1~5 人)の鑑別のためGS+内因子抗体で胃病変を確認する
- 慢性疾患に伴う貧血(anemia of chronic disease:ACD)
- 感染症,自己免疫性疾患,炎症性腸疾患,悪性腫瘍など様々な炎症が存在する疾患に認められる貧血
- ACDでは, 感染や炎症により血清中のinterleukin-6 などのサイトカインが上昇
→肝臓でのHP産生を促進し,消化管での鉄吸収および網内系からの鉄放出を抑制
→造血に利用できる鉄が減少し貧血を来たす
フェリチン(ferritin)は、鉄の貯蔵および血清鉄濃度の維持を行う蛋白です。
フェリチンは、球状のアポフェリチンの中に鉄を貯蔵する分子量約44万の可溶性タンパクで、組織中の鉄濃度により変化するため、鉄欠乏性貧血などの鉄代謝異常の指標とされます。
血清フェリチン濃度は、貯蔵鉄量とよく相関することが知られており、血清フェリチン1ng/mlが、貯蔵鉄8~10mgに相当するため、生体の鉄の状態を把握するのに有用であると考えられています。
鉄が不足する場合「フェリチンの減少 →血清鉄の減少 →ヘモグロビンの減少」の様に、フェリチンから減少していきます。
このため、フェリチンを検査することで、表向きは貧血でなくても、いずれ貧血になる可能性が ある「かくれ鉄欠乏症(潜在性鉄欠乏)」が分かります。
- 貧血治療
- 鉄剤治療がESA製剤に優先される(コスパと安全面で)
- トランスフェリン飽和度(transferrin saturation:TSAT)30%以下および血清フェリチン値 500 ng/ml以下であれば,まず鉄剤の静注投与を推奨
- ESAの効率的使用を促すためにも鉄剤投与の優先投与が望ましい
- 治療目標:
- 血液透析患者の目標Hb値として 10~11 g/dLを推奨
- 保存期CKDおよび腹膜透析患者では 11.0~13.0 g/dL
- 鉄剤経口鉄剤:
- 投与後数日で網状赤血球が増加し、2週間で最高値に達する
- ヘモグロビンは通常6~8週間で正常化する
- 静注鉄剤:
- 投与後、ヘモグロビンは1日に0.15~0.30 g/dLの割合で増加し、治療が短期間で終了する
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![](https://gekainohonne.com/wp-content/uploads/2023/08/image-12.png)
悪性貧血は自己免疫化生性萎縮性胃炎による壁細胞の減少が病因であり,内因子の分泌減少によるビタ
ミンB12 の吸収障害によって巨赤芽球性貧血が発生する。胃壁細胞および内因子に対する自己抗体が検出され,壁細胞が発現するH-K-ATPaseが抗壁細胞抗体の標的抗原である.ビタミンB12 欠乏による非造血系の障害として末梢神経障害,亜急性連合性脊髄変性症,Hunter舌炎がみられる.自己免疫化生性萎縮性胃炎は胃がんおよび胃カルチノイド腫瘍の高リスクである.悪性貧血の治療はビタミンB12 の非経口投与である.
トランスフェリンはRTPのため、低栄養ではそもそも合成されないのでは?
→TSATも万全の指標とはいいがたい
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![](https://gekainohonne.com/wp-content/uploads/2024/04/image-56.png)
呼吸器症状
急性上気道炎
急性上気道炎の原因が細菌性かウイルス性かを見極める原則は
細菌感染は,1カ所の局所症状が強い
ウイルス感染は鼻,咽頭,喉頭と3カ所に及ぶ症状を呈する
- かぜ症候群の原因の多く(80~90%程度)はウイルス感染
ライノウイルス,コロナウイルス,RS(respiratory syncytial)ウイルス,インフルエンザウイルス,パラインフルエンザウイルス,アデノウイルス,ヒトメタニューモウイルスならびにエンテロウイルス等 - 残る10~20%は細菌感染→抗生剤治療が有効
肺炎マイコプラズマ,百日咳菌,肺炎クラミジア,肺炎球菌,A群溶血性レンサ球菌,インフルエンザ(桿)菌、黄色ブドウ球菌等 - 細菌では,局所で増殖するため,増殖した生体部位での症状が主体になる
→右咽頭・扁桃でA群溶血性レンサ球菌が増殖すれば,右咽頭発赤・扁桃腫大,右側前頸部リンパ節腫大がみられる(この場合,咳嗽はみられない) - ウイルス感染であれば,両側咽頭痛となり,しばしば,鼻汁,くしゃみならびに咳嗽等生体の複数部位の症状を併発している
慢性咳嗽
咳嗽は、呼吸器疾患においてもっとも多い主訴
急性咳嗽の多くは上気道炎に伴うものでありそのほとんどは自然に軽快する
咳は持続時間から
3週間以内の急性咳嗽
3週間以上継続する遷延性咳嗽
8週間以上持続する慢性咳嗽
に分類される
慢性咳嗽の3大原因は
副鼻腔気管支症候群(湿性咳嗽)、咳喘息(乾性咳嗽)、アトピー咳嗽(乾性咳嗽)の順で、胃食道逆流症が増加してきている
![](https://gekainohonne.com/wp-content/uploads/2023/11/image-63.png)
湿性咳嗽
主な原因は、副鼻腔気管支症候群、後鼻漏症候群、慢性気管支炎、限局性気管支拡張症、気管支喘息による気管支漏、非喘息性好酸球性気管支炎、肺がんなど
乾性咳嗽
主な原因は、アトピー咳嗽、咳喘息、ACE阻害剤による咳嗽、胃食道逆流症、喉頭アレルギー、間質性肺炎、心因性、気管支結核など
- 咳喘息
- 咳喘息とは喘鳴や呼吸困難を伴わない長引く咳が唯一の症状
- 長引く咳の原因疾患として最も多く、特に都心部に患者さんが多い
- 肺機能検査ではほぼ正常で気管支が過敏になって、主に気管支拡張剤が良く効くとされている
- 喘息の部分症状(咳だけを症状とする喘息)と考えられている
- 咳は就寝時・深夜・早朝に悪化しやすい
- 症状の季節性がしばしば認められる
- 症状悪化の誘因として、上気道炎・冷気・運動・喫煙や周囲の人のタバコの煙を吸い込む受動喫煙・雨天・湿度の上昇・花粉や黄砂の飛散などが考えられている
感染後咳嗽(かぜ症候群後咳嗽)
定義:
かぜ症候群あるいは気道感染の後から3週以上咳嗽が続き,他の遷延性・慢性咳嗽の原因となる疾患がない場合,感染後咳嗽と診断する
- https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/109/10/109_2109/_pdf
- 感染後咳嗽の頻度は11~25%程度→意外と多い
→地域での感染症(百日咳,肺炎マイコプラズマならびに肺炎クラミジア等)の流行状況によりばらつきあり - 感染後咳嗽は,自然軽快する
- 咳嗽が遷延しており,睡眠障害,胸痛,不安,抑うつならびにQOL(quality of life)低下につながるため,咳嗽を軽減することは大切である
- 治療→咳止めによる対症療法(喘息治療とは異なる)
- ヒスタミンH1受容体拮抗薬
- 麦門冬湯
- 吸入抗コリン薬→吸入抗コリン薬は保険適応外
- 中枢性鎮咳薬
胸痛
危ない胸痛の特徴
突然起こる圧迫されるような漠然とした範囲の痛み
放散痛がある
危なくない胸痛の特徴は、その反対
突然起こったものではない(徐々に起こったものである)
1本か2本の指でさせるほど狭い範囲
体動時、深呼吸時に増強する
圧痛点あり
- 一般外来において筋骨格系の胸痛は24.5~49.8%
- プライマリケアセッティングでの外来において、以下の4つの因子の中で2つ以上認める場合は感度63%/特異度79%で非炎症性筋骨格系胸壁痛の診断に関連する。
1.限局した筋緊張
2.刺すような痛み
3.再現性のある圧痛
4.咳がない - 筋骨格系胸痛の鑑別診断
- 独立した筋骨格系胸痛症候群→8疾患
- リウマチ疾患に伴う筋骨格系の胸壁痛→8疾患
- 非リウマチ性全身性疾患に伴う胸壁痛→4疾患
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心筋梗塞、大動脈解離、肺塞栓、食道破裂、緊張性気胸
以下のような特徴があります。
・数秒から数分程度の短い痛み
・胸の鋭く刺すような痛み
・指で示せるほど範囲が狭い
・頻繁ではないが繰り返す
・10代から20代前後の若い人に多いが、全年齢で見られる
・安静時に発症することが多いが、深呼吸で悪化することが多い
筋肉のけいれんや肋間神経が原因ではないかと言われているが、結構強い痛みでもあり、かつ病院に行って調べても異常がないため原因不明とされる中に、この病気が入っています。
自然に改善しますし、年齢が上がれば痛む回数は減っていきますので特に治療しなくても大丈夫です。
肋間神経痛は一つの疾患名ではなく、症状名で原因によって痛み方は違い、「急に電気が走るような痛み」や「ジクジクとした持続する痛み」などがあり、痛みの起こる場所は背中から脇腹、胸の前面やおへそ辺り、まれには足の付け根まで痛みを感じることがある。
心臓・太い血管や肺などの内臓の疾患が原因で起こる胸の痛みとの違いは、痛む場所や範囲がはっきりしており、肋骨に沿って起こる比較的鋭い痛みということです。特徴的なのは、上半身の右側か左側のみに起こり、特殊な場合を除いて左右両側に起こることはありません。
原因はさまざまで解明されていないものもありますが、明らかに原因がある場合を症候性肋間神経痛、明らかな原因がない場合を特発性肋間神経痛といいます。
症候性肋間神経痛の原因は、変形性脊椎症・胸椎椎間板ヘルニア・脊椎腫瘍など脊椎に原因がある場合、そして肋骨骨折や肋骨の腫瘍が原因となる場合があります。これらが原因の場合は身体を動かした時、特に上半身を前後に曲げたり、左右に曲げたり廻したりすると痛みを強く感じることがあり、時には「息ができないほど痛い」こともあります。
脊椎や肋骨に原因がない場合に起こる症候性肋間神経痛の代表的なものは、帯状疱疹です。帯状疱疹は、帯状疱疹ウイルスが神経の中を通って皮膚に達して皮疹を起こす疾患ですが、胸部に発症すると肋間神経痛を起こします。帯状疱疹による肋間神経痛は、皮疹の有無に関わらず「ヒリヒリ」「ジクジク」とした皮膚表面の持続的な痛みを感じます。
心窩部痛
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![](https://gekainohonne.com/wp-content/uploads/2023/03/image-9.png)
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- いかなる救急疾患(胸痛、腹痛)でも心房細動はつねに除外しておく(SMAOなど)
- いかなるときもエコーを(SMAO、気胸、ACS、肺塞栓・・・)
- 間欠的疼痛→管腔臓器が原因は真だが、逆は必ずしもそうならないことがある(胆嚢炎や虫垂炎、胃潰瘍)
- アニサキスは間欠的疼痛が典型的
5-killer chest pain
- 特発性食道破裂,急性冠症候群,肺塞栓症,大動脈解離,緊張性気胸
嚥下障害
- 嚥下は5期で構成される(先行期、準備期、口腔期、咽頭期、食道期)
- 認知症患者が嚥下障害をきたす割合は13~57%とされる
- アルツハイマー型認知症→食事への興味を失い先行期~口腔期が障害される
- Lewy小体型→咽頭期が障害され不顕性誤嚥が多い
- 血管性認知症→発症初期から嚥下障害をきたしやすい(障害部位にもよるが)
- 胃瘻は1849年に施行されたのが世界初報告、PEGは1980年前後に開発された
- 胃瘻造設患者の4割は覚醒していない状態の患者
- 7割の患者ががADLベッド上
- 患者家族の6割が胃瘻造設が本人にとって幸せなのかわからないと回答
- 2012年には日本老年学会から「胃瘻造設の適応判断は慎重に」との立場表明あり
- 現時点で明確な提言はない、個々の症例ごとに判断
下腹部痛
虫垂炎の身体所見
- 指1本で圧痛点をさがす
- 虫垂の部位で痛みの出方が異なる→前方の腹膜刺激徴候がない場合はPsoasとObturatorを確認
- 前方の腹膜刺激徴候→Mcverney、Lanz、Rovsing(+Rosenstein徴候)
- 盲腸背側→Psoas徴候(立位で背屈でも代用可)、直腸診
- 骨盤内→Obturator徴候(仰臥位で大腿を内旋、下腿は進展外転=いや~んポーズ)
- 憩室炎との鑑別は圧痛の範囲→憩室炎の方が広範囲
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悪心・嘔吐
NAVSEA+心筋梗塞、緑内障、妊娠悪阻
ドンペリドン(ナウゼリン)は妊婦に禁忌!
悪心嘔吐の鑑別疾患
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![](https://gekainohonne.com/wp-content/uploads/2023/06/image-30-1024x568.png)
下痢
大腸癌の症状であることもあるので、慢性下痢の場合はCSを行うべき
慢性下痢で最も多いのはIBS
- 定義:
1日の糞便中の水分量が200ml以上(または、1日の糞便の重量が200g以上) - 1日に9Lもの水分が腸を通りそのうち99%が腸で吸収され、便での排泄はわずか1%(100g)程度
- 腸の働きが正常な場合、食事などで摂取した食べ物は10時間ほどでS状結腸にたどりつき、ここで消化された食べ物から水分が吸収され、適度な固さの便がつくられる
![](https://gekainohonne.com/wp-content/uploads/2023/10/image-106.png)
過敏性腸症候群IBS
- 疫学・症状:
- 慢性の下痢の大半を占める
- 通勤や通学の途中で電車に乗ったときや、人と会う前などに、突然、腹痛がしてトイレに行きたくなる
- 軽症例も含めれば、人口の1割以上の人が罹患しているといわれる
- 20-40歳代に好発し、加齢とともに低下する
- 男性<女性(女性ホルモンの影響)
- 男性は下痢型が多く、女性は便秘型が多い
- IBS薬物療法
- ポリフル・コロネル
安全性も高く、便秘型にも下痢型に対しても基本的な治療薬
- セレキノン
減弱した腸管には蠕動を活発化させ、逆に亢進した蠕動を抑制する効果がある
便秘型、下痢型、交代型にも効果がある - イリボー(セロトニン受容体(5-HT3受容体)拮抗薬)
腸管蠕動運動の活発化や腸管水分輸送異常の改善→下痢を抑制し、便形状や便意切迫感を改善させる
腹痛や腹部不快感など内臓知覚過敏を改善する効果もある - トランコロン(ムスカリン受容体遮断薬)
腸管運動の活発化を抑制し、腹痛が強い症例に向いている
便秘型には不向き
副作用として便秘、排尿障害、視調節障害、眼圧上昇、口渇、眠気、めまい、心悸亢進などが見られ、前立腺肥大や眼圧の高い緑内障の方には禁忌 - ロペミン
ロペミン以外の止痢剤はIBSに対しては勧められていない
旅行やイベント時の際の頓用としては向いている - ガスモチン(5ーHT4受容体刺激薬)
- 便秘型IBSの治療薬
→酸化マグネシウム・モビコール、リンゼス・アミティーザ・グーフィス
リンゼスは便秘型IBSの特効薬として販売され、お腹の張りを強く訴える場合は効く場合がある
- ミヤBM
- ポリフル・コロネル
- IBS非薬物療法
- 低FODMAP療法
Fermentable(発酵性) Oligosaccharides(オリゴ糖)Disaccharides(二糖類)Monosaccharides(単糖類)and Polyols(ポリオール)の略称で、これらの糖類は小腸内で消化・吸収されにくいため、そのまま大腸に流入し、腸内で異常発酵が促進されます。その結果、過剰の水素ガス産生を起こし、お腹の張りや便秘の原因となります。また、浸透圧により腸管内腔への水分貯留が亢進し、小腸が刺激されることで過度な蠕動が起き、下痢の原因となります。低FODMAP食とは、このFODMAPを多く含んだ食品を制限する食事法です。オーストラリアで始まったこの食事法がIBS患者に対しては有用であると欧米では注目されています。
- 低FODMAP療法
![](https://gekainohonne.com/wp-content/uploads/2023/10/image-133.png)
蛋白漏出性胃腸症と吸収不良症候群
吸収不良症候群と蛋白漏出性胃腸症はいずれも症候群で、オーバーラップすることもある。
蛋白漏出性胃腸症とは、消化管内腔へ蛋白が異常に漏出し、低蛋白血症を来す症候群である。
蛋白漏出性胃腸症について、有病率などの疫学情報は明らかにされていない。
蛋白漏出性胃腸症を来す種々の疾患があり、漏出の機序には、リンパ系の異常、毛細血管の透過性亢進、胃腸粘膜上皮の異常などがある。
蛋白漏出性胃腸症を来す代表的疾患に腸リンパ管拡張症やMénétrier病、Cronkhite-Canada症候群がある。
診断には24時間αアンチトリプシンクリアランスを測定する必要がある(24時間の畜便が必要だが、下痢の患者に畜便は非現実的だろう)
高齢者において一番考えやすいのは、診断ついていなくても悪性腫瘍だろう
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- 治療:
- 食事療法としては、低脂肪食
- 副腎皮質ステロイドの投与
- ステロイド抵抗例に対しては,消化液分泌量抑制のためソマトスタチンアナログ製剤や,トラネキサム酸を用いた抗プラスミン療法の有用性が症例報告されているが,エビデンスには乏しい
肝障害
肝逸脱酵素(AST、ALT)の正常値の2倍以上を認める場合は、肝炎などの疾患を検索することが推奨される
肝逸脱酵素の慢性的な軽度上昇は必ずしも重篤な疾患の存在を意味しないため、必ずしも肝生検を行う必要はない
→症状のない肝機能障害患者の多くは、NASHや脂肪肝である
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- 無症状で正常値2倍程度の軽度のAST、ALTの上昇は、ほとんどの場合、アルコール性肝障害か、薬剤性肝障害である。原因となるような薬剤、食事を中止し、脂肪肝の治療である、食事指導(カロリー制限)、節酒、運動指導を行い、1カ月後に値をフォローアップする。改善傾向を認めない場合は、鑑別疾患を考え直す。
- 薬剤性肝障害は頻度の高い原因である。最近、使い始めた薬や、⼀時的に飲んだ薬などを確認する。
- AST、ALTの上昇に伴って全⾝倦怠感を⾃覚する場合もあるが、⾼度の肝機能障害を除いて、どこまで直接の因果関係があるかは不明である。
- 黄疸を伴う場合には、ウイルス性肝炎、閉塞性黄疸、悪性腫瘍、アルコール性肝障害などの除外診断を進める。
- 発熱を伴う場合には、ウイルス性肝炎、伝染性単核球症、急性胆管炎、などを除外する。
- 薬剤性肝障害は頻度の高い原因である。最近、使い始めた薬や、⼀時的に飲んだ薬などを確認する。
- 腹痛を伴う場合には、胆管胆石,胆管癌,膵癌などを除外する。
リンパ節腫脹
鼠径リンパ節腫脹ではSTD、とくに梅毒も鑑別必要
ALLAGESで病歴聴取→SQ(semantic qualifier)の設定
全身性か、局所性かが重要な鑑別点→局所性の場合は部位に応じた疾患に絞り込める
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- 腫脹部位によっても疾患が絞り込める
- 結核は早期に否定しておく→TSPOTを行う
- 腫瘍性もスクリーニング→sIL-2R、CEA、CA19-9など
- 動物による感染症:
- 猫ひっかき病→自然に治る
- トキソプラズマ症→自然に治るが妊婦の場合はTORCH症候群をきたす
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- 結核性リンパ節炎
- 結核性リンパ節炎は結核の既往のある患者,初感染の患者のいずれにおいてもみられ,数カ月〜1 年にわたる慢性的なリンパ節腫脹を認める.
- 頸部に孤在性のリンパ節腫大をきたし圧痛を伴わないことが多い.
- リンパ節の肉眼所見で内部壊死を認めた場合には本疾患を考え結核菌培養およびpolymerase chain reaction(PCR)検査,QuantiFERON(QFT)-2G(結核特異抗原刺激に対する末梢血単核球インターフェロンγ遊離量測定)検査を行う.
- 肺結核を伴わない患者の方が多いため,胸部 X 線で異常がなくても否定はできない.
冷汗=ショックなど交感神経系の過緊張状態
冷汗の鑑別疾患 (出血性、アナフィラキシーなどの)ショック、低血糖、心筋梗塞、大動脈解離
- 冷汗の起きるメカニズム
エクリン腺への交感神経系の伝達物質は例外的に交感神経節後線維からのアセチルコリン(通常はノルアドレナリン)
交感神経系の興奮→アドレナリンが出て末梢血管収縮(冷たくなる=ショックのサイン)→その状態でコリンの作用で汗がでるのでひんやりとした皮膚が汗で濡れる状態となる
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汗腺はエクリン腺(eccrine gland)とアポクリン腺(apocrine gland)の大きく2種類が存在しエクリン腺は全身に分布し、体温調節を主に担う。アポクリン腺は腋窩など比較的限局した部位に存在し、情動に伴う発汗に関与し特有のにおいを放つ。発汗は、「温熱性発汗」「精神性発汗」「味覚性発汗」に分類される。
1:体温調節のための発汗=エクリン腺
人間は体温調節の多くを発汗に依存しています(体温調節に関してはこちらにまとめがありますのでご参照ください)。視床下部が中枢で延髄、脊髄を下降していき、胸髄領域から末梢へと分布します。神経伝達物質はアセチルコリンで、全身に分布するエクリン腺からの発汗を促します。
※通常、交感神経緊張亢進状態では、伝達物質はエピネフリンだが、これが皮膚に作用すると末梢循環が低下して発熱には不適合な状態となる。一方、アセチルコリンは血管拡張に働き、血流が増えるので、放熱に適している、という理由で汗腺へはアセチルコリンが作用することになったと考えられている。
2:情動に伴う発汗=いわゆるわき汗がメイン
緊張した場合に汗をかくことが該当します。下図の通り前部帯状回、扁桃体が中枢で、脊髄を下降し、副腎髄質からアドレナリンを分泌することでアポクリン腺、エクリン腺の両者にはたらきかけて発汗を促します。神経伝達物質が先程のアセチルコリンではなくアドレナリンである点とエクリン腺だけでなくアポクリン腺が関与する点に注意が必要です。
血液生化学検査値の異常
白血球増加
→まずは分画をチェックする
軽度なWBC上昇で頻度が多いのは、喫煙と肥満
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- CMLであれば、5年間も軽度の白血球増加のまま変化しないということは、ほとんどありえない
- 末梢血に本来出現しない幼弱な好中球(骨髄芽球、前骨髄球、骨髄球、後骨髄球)が末梢血に検出されたら明らかに異常
- WBC上昇で頻度が多いのは、喫煙による反応性白血球増加症、肥満も白血球増加症の原因になる
→この場合は成熟好中球(分葉核球、桿状核球)の増加で、禁煙により正常化する - 成熟好中球(分葉核球、桿状核球)以外の白血球増加はすべて異常
→幼若好中球(骨髄芽球、前骨髄球、骨髄球、後骨髄球)出現、リンパ球増加、好酸球増加、白血病細胞出現、リンパ腫細胞出現、単球増加→精査が必要 - 白血球増加症は、心筋梗塞や脳梗塞の独立した危険因子であることが知られているため、白血球増加症を原因不明のまま放置してはいけない
- 聖路加国際病院で人間ドックを受けた約4万人の解析結果
→健康成人の1.7%に白血球増加症を認め、関連因子は喫煙(オッズ比5.39)、次にBMI≧25(オッズ比2.96)
Minor diseases
腹部
前皮神経絞扼症候群ACNES:abdominal cutaneous nerve entrapment syndrome
- 病因:
前皮神経が腹直筋・筋鞘を貫く部位で絞扼(entrap)され、その支配領域で疼痛や知覚異常を起こす疾患 - 疫学:
女性が4倍多い
原因としては外傷や手術、肥満、急激な運動、妊娠などによる腹壁の緊張 - 症状:
狭い範囲の自発痛・圧痛であり、時としてなぜか反跳痛を認めることもある、75%で温痛覚過敏となる - 理学所見:
痛みの範囲を特定するため指1本で診察する
カーネット徴候が特徴的である - 治療:
- ブロック注射
- 皮下脂肪層の浸潤麻酔
- 腹直筋前鞘ブロック
- パルス高周波療法(以後PRF)
- 神経切除
- 保存治療としてはリドカインゼリーの塗布やリドカインパッチ、リリカやNSAIDSなどを使用する
- ブロック注射
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ACNES同様の病態が、その他の肋間神経分枝にも生じうる
側皮神経絞扼症候群 : LACNES
後皮神経絞扼症候群 : POCNES
カーネット徴候では、臥位になり両腕を前胸部でクロスし、首を持ち上げ腹壁に力を入れた状態(=腹筋している状態)で腹部圧痛の変化を調べる。
腹腔内由来の痛みなら腹壁筋肉の緊張のために痛みが減弱
腹壁由来の痛みならば痛みは変化がないか増強する→カーネット徴候陽性
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- 腹壁の片側一側に圧痛点がある(トリガーポイント)
- 圧痛点は腹直筋外縁より内側で小さい範囲(<2㎠)に限局
- Carnettサインが陽性
- 血液・画像検査所見に異常なし
- 局所麻酔薬注入後疼痛が軽快する(80%程度)
slipping rib syndrome
中高年を中心に、年齢を問わずに発症する。肋軟骨先端の過剰運動によって発症する。胸骨に固定されていない第10肋骨に最も多く、次いで第8、第9肋骨に発生する。Foleyらによると、ランニング、ボート漕ぎ、ラクロス、フィールドホッケーなどの活動との関連性が高い。
rib on pelvis症候群
高齢者が脊椎圧迫骨折後に、脊椎が後弯することで、胸郭が骨盤に物理的に衝突していることで起こる痛みが出る。立位・前傾姿勢で痛みが悪化する。理学療法で姿勢に気をつけるなどで改善する。コルセットで腰を伸ばすとよいけど、今度は脇がつかえてイヤという人が多いよねぇ。