皮膚疾患

目次

皮膚科総論

ステロイド外用薬で治らなければ専門医へ紹介

皮膚科専門用語
  • 鱗屑(scale):
    角質が蓄積して小板状に隔離した状態
    頭に付着したものをいわゆる「ふけ」という
    小さくて細かい鱗屑がある状態を粃糠疹(pityriasis)
  • 落屑(desquamation):
    鱗屑が皮膚表面から脱落したもの
  • 乾癬(psoriasis)
    免疫炎症を伴う代表的な角化亢進疾患
    日本での発症頻度は0.02~0.1%

保湿剤、ヒルドイドその他

保湿剤は「モイスチャライザー」と「エモリエント」の2つに分類

  • モイスチャライザー:
    • 吸水性、吸湿性をもつ成分が配合され、角層に直接水分を与えることで保湿をはかるもの
    • 尿素、ヘパリン類似物質、セラミド、水溶性コラーゲン、ヒアルロン酸、アミノ酸など
    • ヘパリン類似物質はヒアルロン酸やコンドロイチンと同じムコ多糖類で水分子を留める働きがあり、外用することで皮膚に浸透し、保湿効果が得られる
  • エモリエント:
    • 油性成分を配合し、その皮膜を角質表面に作ることによって水分の蒸散をおさえるもの
    • ワセリン、オリーブ油、ツバキ油、スクワランなど

ヒルドイドの使い分けについて

季節によって、部位によって、重症度によって使い分けが重要
添付文書上での使用回数は1日1~数回適量(最低でも2回以上)


夏はべとつかないローションやスプレー
冬はしっかり保湿効果を持続できるクリーム
広範囲にはローションやスプレーなど
傷の部分にはソフト軟膏

サリチル酸ワセリン(チューブ製品なし)

サリチル酸には、皮膚の角質を軟化させる作用や、水虫の菌(白癬菌)をおさえる作用がある。
乾癬や角化症、湿疹、ざ瘡(にきび)、水虫などの治療に用いられている。

  • かかとの肥厚した角質に有効→2回/日

ステロイド外用薬

ステロイドの選択は
①強さ × ②組織の吸収性


Strongが中間→頸部 リンデロン
Very Strong→体幹・四肢に使用する(特に手掌や足底) マイザー
Mediumは顔と頭 ロコイド、頭にはメサデルムローション(→Strong、円形脱毛症にも◎)
Weakは成人には使用しない


※注意事項
①小児は成人より皮膚吸収性が高いので、さらに1段階弱いクラスを選択する
皮膚のただれ(潰瘍)や火傷、凍傷でのステロイド外用薬は使用禁忌
③VS、Strongestは短期間使用にとどめる

アンテドラック(皮膚から吸収されたのちに体内でより弱いステロイドに代謝される薬剤で長期使用に◎)
パンデル(strong)
リドメックス(medium)

医学事始め
巣鴨千石皮膚科HPより

皮膚外用剤の混合処方

広範囲にステロイドを使用したいときに混合処方を利用する
1:1で混合するとステロイド主剤濃度は1/2になるものの、ステロイドの皮膚透過比は約4.5倍および約2.5倍に増加した
専門医の約88.5%が混合処方による混合薬を使用


ステロイド外用剤自身はヒアルロン酸合成阻害をすることにより皮膚を乾燥させる作用がある
→混合製剤では1日1回では十分な保湿が得られず1日2回塗布が推奨される

  • よくある混合処方
    • ステロイド軟膏と保湿剤のクリームを混合する処方
      • アンテベート軟膏とヒルドイドソフト軟膏→激しい体幹のかゆみに広範囲に塗布

創傷

スキン-テア(皮膚裂傷、skin tear)

スキン-テア(皮膚裂傷、skin tear)は、摩擦・ずれによって、皮膚が裂けて生じる真皮深層までの損傷(部分層損傷)
褥瘡回診のときには、テア=介護や医療時の損傷を指す(自然発生した傷は創傷と呼称して区別している)

  • 日本創傷・オストミー・失禁管理学会
  • スキン-テアの全体の有病率は0.77%
  • 年齢層ごとにみると、65歳未満は0.15%、65歳以上74歳未満は0.55%、75 歳以上は1.65%
  • スキン-テアの保有者の平均年齢は79.6(標準偏差:12.5)歳と高齢者に多く、性別では男性62.2%、女性37.8%と男性に多い
  • 上記のスキン-テアの対応の中で真っ先に必要なのは、「2.皮弁を元の位置に戻す」ことです。そのためには、まず止血と創洗浄を行います。必要時、圧迫止血をし、できるだけ温かい生理食塩水を使って創を洗浄します。その後、皮弁を元の位置に戻します。湿らせた綿棒、手袋をした指、または無鉤鑷子を使って、皮弁をゆっくりと元の位置に戻すことが必要です

褥瘡 bedsore(独:decubitus)

日本褥瘡学会が行った2016年の調査
在宅(訪問看護ステーション)での褥瘡有病率は1.93%(2013年2.61%)

褥瘡診療
→DESIGN-R2020でアセスメントして
 褥瘡予防・管理ガイドラインに従って治療


治療の基本
局所療法(外用薬+ドレッシング剤)+ポジショニング(+エクイップメント)+栄養療法

褥瘡ステージの定量化:DESIGN-R2020

→DESIGN-R2020で評価 
褥瘡の重症度を分類するとともに、治癒過 程を数量化することを目的に開発された記載例:DDTI-e0s15i1g0n0p0:16点、D3-E6s6I3CG6n0p0:21点など
https://jspu.org/medical/books/docs/design-r2020_doc.pdf(日本褥瘡学会)

  • やりたい処置でDESIGN-R2020のスコアリングも変わってくる(評価と処置は1:1対応)
  • Depth:
    • 多くはD2~3(特に3は幅広い)、毛穴がみえればD2
    • 骨膜表面まで達するとD4だが少ない
    • 骨が溶解し始めるとD5
    • 発赤(紅斑)が見られたら、これが「持続性の発赤」なのか「一時的な発赤」なのかを見きわめる
      • 「持続性の発赤」は、血管の破綻によって赤血球が漏出したもので、これは褥瘡になる
      • 「一時的な発赤」は、真皮深層の微小血管の拡張による「反応性充血」で、褥瘡ではない
      • 指押し法:
        発赤部分を指で3秒押して離した瞬間に白っぽく変化するかどうかを見る
        白くなる場合は、「可逆性のある」皮膚の状態(反応性充血)であり「褥瘡」ではない
        白く消退しない場合は「持続する発赤」で「褥瘡」と判断する
        ガラス板圧診法では、透明プラスチック板を発赤部に当て、白く消退する場合は反応性充血、消退しない場合は「褥瘡」と判断する
         ガラス板圧診法のほうが、力の加減がしやすく、また皮膚圧迫時の退色についても観察しやすいことから活用されやすいが原理は同じ
  • Exudate:
    • ドレシング交換不要→e0~1

改定DESIGN-R2020スコアリングの注意点

  • 深さ:
    • d1判定のために発赤をアクリル板や指で圧迫して発赤が消えないか観察→圧迫して白くならない発赤はd1
    • スコアリングの合計点に反映しない
  • 大きさ:
    • 目安として、円形の創をイメー ジし、s3は直径2cm未満、s6は4cm未満、s8 は6cm未満、s9は8cm未満、s12は10cm未満、S15は10cm以上と考えると理解しやすい
    • ポケット部は測定せず、肉眼的に外から見える皮膚損傷を測定する
  • 炎症:
    • 壊死組織、圧迫、摩擦などによる機 械的刺激により局所に起こった組織反応で、創 周囲の発赤、腫脹、発熱、疼痛を伴う
file:///C:/Users/fujis/Downloads/part2.pdf
  • 日本褥瘡学会 褥瘡予防・管理ガイドライン 第5版 2022年
  • https://uonuma-medical.jp/koide/cmsdir/wp-content/uploads/2021/02/e2_20180623-2.pdf
  • NPUAP/EPUAP分類→世界的に臨床で最もよく使われている褥瘡分類、ステージI~IVまで
  • 深部組織損傷(deep tissue injury:DTI):
    • 表皮剥離のない褥瘡(stageⅠ)のうち、皮下組織より深部の組織の損傷が疑われる所見がある褥瘡をいう
    • 「褥瘡には皮膚から深部、深部から皮膚という2つの進展様式がある」とし、このうち深部から発生するもの
    • DTIをデブリする場合は、骨が露出しうるという覚悟が必要→デブリ+陰圧吸引療法が必要
    • DTIをエコーで診断するという試みもある
  • 臨界的定着、クリティカルコロナイゼーション(critical colonization):
    • ドレッシング材による湿潤環境がもたらした新しい感染様式
    • 「腫脹」「痛み」「膿」「発熱」などの感染兆候を伴わない創傷治癒遷延
    • 原因の1つがバイオフィルム→バイオフィルム対策が必要
  • 観察すること
    • 腫脹、発赤、浸出液、ポケット、サイズ、受傷機転(褥瘡なのか、スキンテア、IAD)
  • 創傷被覆・保護材と通常の絆創膏に分類される製品がそれぞれあるが、創傷被覆・保護材は総じて高額。1枚1000円くらいするものもある。コスト重視なら絆創膏に分類される被覆材を使用する
  • ユーパスタ、イソジンゲル、ゲーベンクリーム
  • 薄型ハイドロサイト、ハイドロサイトジェントル、エイド、

 創の細菌の存在は、次の4種類に分けられます。

 1. 分裂増殖しない細菌が、創傷にいるだけの状態である「創汚染(ウンドコンタミネーション)」
 2. 増殖能をもつ細菌が創に付着しているが、創(宿主)に害を及ぼさない状態の「コロニー形成(ウンドコロナイゼーション)」
 3. 細菌数が多くなり、創傷治療に障害を及ぼし始める状態の「危機的コロニー形成:危機的定着(クリティカルコロナイゼーション)」
 4. 細菌の勢力が拡大して、創傷の内部・深部に侵入して増殖し、創(宿主)に実害・症状(創傷治癒阻害)を及ぼす状況である「創感染(ウンドインフェクション)」

医療関連機器圧迫創傷(MDRPU:Medical Device Related Pressure Ulcer)

医療関連機器による圧迫で生じる皮膚ないし下床の組織損傷であり、厳密には従来の褥瘡すなわち自重関連褥瘡と区別されるが、ともに圧迫創傷であり広い意味では褥瘡の範疇に属する

MDRPUの重症度や経過評価は、DESIGN-R®2020を用いてもよい

失禁関連皮膚炎(IAD:アイエーディー、incontinence-associated dermatitis)

日本創傷・オストミー・失禁管理学会によるIADの定義:

尿または便(あるいはその両方)が皮膚に接触することにより生じる皮膚炎である。
この場合の皮膚炎とは、皮膚の局所に炎症が存在することを示す広義の概念であり、その中に、いわゆる狭義の湿疹・皮膚炎群(おむつ皮膚炎)やアレルギー性接触皮膚炎、物理化学的皮膚障害、皮膚表在性真菌感染症を包括する。

https://www.almediaweb.jp/expert/feature/1909/index01.html
https://www.almediaweb.jp/expert/feature/1909/index04.html

褥瘡予防

褥瘡の発生要因として考えられるのは、「圧力」「摩擦」「ずれ」

体位変換に関して昨今では、この2時間には明確な根拠がないとされ、最新の『褥瘡予防・管理ガイドライン(第5版)』では、「4時間をめどとすること」が明示

体位交換できる→体圧分散マットレス
体位交換できない→エアマット

  • 摩擦:
    • 皮膚とマットレスやクッションとの間で生じる
  • ずれ:
    • 「皮下組織のゆがみ」のことで、頭側挙上の際などに顕著に見られる
  • 骨周辺組織の方が皮膚表面よりも影響が大きい
  • 数時間で発生する
https://www.almediaweb.jp/pressureulcer/maruwakari/part4/01.html

在宅における褥瘡対策

予防と早期発見(発赤を見つけたら即報告!)が重要

褥瘡発生後は、治療と並行して、原因の追及と療養生活環境の調整が重要
→圧迫・ずれの除去、皮膚の清潔、栄養などの生活環境を整える

ケアマネジャーの役割

  • 褥瘡予防にはケアマネジャーの判断も重要
  • 褥瘡ハイリスクにはケアプランに積極的に褥瘡予防の手立てを組み込んでもらう
  • 褥瘡予防のためには、適切な体圧分散用具の選択と使用が不可欠
  • 在宅で使えるマットレスなどの福祉機器を貸与する制度を利用する
  • 退院当日からケアマネジャーとの綿密な打ち合わせが必要
  • 褥瘡予防・管理を円滑に行う方法→表1(ディアケアHPより)
  • 褥瘡予防の手順→図1(ディアケアHPより)
https://www.almediaweb.jp/pressureulcer/maruwakari/part10/02.html
https://www.almediaweb.jp/pressureulcer/maruwakari/part10/02.html

褥瘡発生後の対策

褥瘡関連の診療報酬

  • 在宅患者訪問褥瘡管理指導料
    • 医師、看護師、管理栄養士からなる在宅褥瘡対策チームが、「重点的な褥瘡管理が必要な在宅療養者」(表1)に対して、褥瘡の改善などを目的に協働して指導管理を行う場合に算定できる
    • 栄養ケア・ステーションや当該医療機関以外の管理栄養士でも算定できるように要件が緩和された

褥瘡治療の基本的考え方

褥瘡治療=wound bed preparationができれば自然に治癒する
治療と同時に重症化予防・再発防止も重要

褥瘡治療 外用薬

やはりいろいろ使えた方がいい
外用薬も重要だが、再発予防も重要

日本在宅医療連合学会より

ヨードホルムガーゼ

軟膏がとどまりにくい、洗浄しにくいポケット形成などの中にヨードホルムガーゼをつめると効果的に殺菌+壊死組織除去できる
ヨウ素アレルギーに注意、自費で購入いただく必要がある

ゲーベン

乳剤で組織に水分を与えやわらかくする→かたい組織をデブリする前はゲーベン!メスで黒色壊死組織に縦横切開を入れると組織自己融解をおこしやすくなる→デブリの際に痛くない?

ブロメライン

ブロメラインの使いかた→マルホHP
浅い真皮までの褥瘡で、薄い壊死組織で覆われているような褥瘡がよい適応(=感染制御後)

ブロメライン塗布前に正常皮膚をワセリンで保護(正常皮膚まで分解される)
→アルギニンとアラニン、アラニンとグルタミンのアミノ酸結合を加水分解することにより蛋白質を分解し、創傷面の壊死組織の分解・除去、清浄化に働く

感染がなく、浸出液の多いやわらかい壊死組織の除去にはブロメライン(感染あり→ヨード製剤)

ヨード製剤

◎ユーパスタ=イソジンシュガーパスタ
 ユーパスタ欠品時にはイソジンゲルで代用していた、ヨードコートは処方可能
△カデックスは亜鉛華軟膏同様、スキンケア時に落としづらい

白糖は浸透圧で水分を吸いだす→大量の浸出液の時にユーパスタ
浸出液が減ってきたらカデックスやヨードコートがいいのでは?

オルセノン

オルセノン軟膏の基材が肉芽に水分を与え、水っぽい不良肉芽となることがある
(不良肉芽は豚肉のようなピンク色、正常な肉芽は牛肉のような赤色)

フィブラストは1プッシュ500円

アクトシン

肉芽で覆われたらアクトシンで上皮化させる!
非常に乾燥させる効果が強い!

使いすぎると乾燥しすぎてひび割れする。

創面の水分調整には単剤では困難ではないか?→ブレンド軟膏を使用する専門医もいる
オルセノン+ユーパスタを使用していた
※リフラップは販売中止

https://www.almediaweb.jp/pressureulcer/maruwakari/part6/02.htmlより抜粋
  • 感染創→ユーパスタ、カデックス、ゲーベンクリーム
  • 壊死物質除去→カデックス
  • 肉芽形成促進→フィブラスト+ポリウレタンフォームやアルギネート・ドレッシングを併用
  • イソジンシュガーパスタを腹部創し開に使用したらたちまち肉芽が盛り上がった

Wound management 創傷被覆材

シリコーンゲルメッシュドレッシング、多孔性シリコーンゲルシート、ポリウレタンフォーム/ソフトシリコーン、皮膚接合用テープ

治療材料の種類(お金の話)

  • 特定保険医療材料
    – 病院での治療に使う治療材料
    – 使用した分は保険償還あり(病名必要)
    – 使用量や使用期間に制限あり
  • 一般向け医療材料(いわゆる絆創膏と同じ)
    – ドラッグストア等で売っているもの
    – 特定医療材料と成分は同じ(=治療効果同じ)
    – 病院で治療に使用しても保険償還なし(=病院持ち出し)
  • それ以外
    – 医療用の用途でないものを治療に応用、ラップ療法など

被覆材の種類

バンドエイド社のキズパワーパッドはデュオアクティブと同一製品

キズパワーパッド™は二層構造。 外側は、バイ菌や水の侵入を防ぐポリウレタンフィルム。 内側は、ハイドロコロイド素材でできています。 ハイドロコロイド素材は、皮膚にぴったりくっつくための粘着剤(疎水性ポリマー)と、水分を吸収・保護するハイドロコロイド粒子(親水性ポリマー)でできています。

ハイドロコロイド包帯という大型商品もある(10×40㎝)

いずれも毎日交換した方がよい(特に夏場はアセモなどができやすい)

プラスモイストと類似商品

安価で在宅で褥瘡に使用しやすい、DIYの褥瘡パッド(→作り方)ならさらに安い!

ドレシング剤の種類と選択

  • ドレシング剤の目的
    • ドレッシング材には適応に応じて以下の6つの役割があります。
    • ①創面保護、②創面閉鎖と湿潤環境、③乾燥した創の湿潤、④滲出液吸収性、⑤感染抑制作用、⑥疼痛緩和
  • ドレシング剤の選択
    • ①創面保護、②創面閉鎖と湿潤環境、③乾燥した創の湿潤、④滲出液吸収性
      →創傷被覆材の材料により使い分けます。
    • ⑤感染抑制作用のためには銀含有創傷被覆材を用います。
    • ⑥疼痛緩和は、湿潤環境を保持することで効果が得られます。
    • さらに、ソフトシリコン粘着剤のドレッシング材は、除去時の疼痛軽減をもたらします。
  • ①創面保護
    • ポリウレタンフィルム
    • 単純な透明フィルムに見えるが、高水蒸気透過性フィルム
    • 透明または半透明のポリウレタンフィルムに耐久性のある粘着剤を塗布したドレッシング材です。
    • 創部からの滲出液によって湿潤環境を保持し、治癒環境を整えます。
    • DTIが考えられる褥瘡で、創面保護の目的で使用できます。
    • 商品名:
      • オプサイト®ウンド、バイオクルーシブ®、キュティフィルム®EX、3M™テガダーム™トランスペアレントドレッシング、パーミエイド®S
  • ➁創面閉鎖と湿潤環境
    • ハイドロコロイド
    • ハイドロコロイドは湿潤環境保持の効果が最も期待できるドレッシング材です。
    • 一般に、「粘着層」と「防水加工された外層」の2重構造になっています。
    • 粘着層は疎水性ポリマーと親水性ポリマーがブレンドされた物体です。疎水性ポリマーは粘着性を、親水性ポリマーは吸水性を有しています。そのため、閉鎖され湿潤した環境をつくることができます。
    • 創周囲の皮膚はハイドロコロイド材の貼付により汚染を予防でき、皮膚を健常に保ちます。滲出液は親水性ポリマーによって吸収され、吸水した部分はゲル化します
    • 過剰な滲出液を吸収する機能はないため、滲出液の多い創には適していません
    • 商品名:
      • デュオアクティブET(コンバテック)
      • 3Mテガダームハイドロコロイドライト
間違いやすいハイドロ○○

ハイドロサイト=商品名
 スミネフが販売しているポリウレタンフォーム製剤シリーズ→ただのスポンジで溶けたりしない

ハイドロコロイド=素材の名前、溶ける性質がある
 デュオアクティブ、キズパワーパッドなど
 

  • ④滲出液吸収性
    • ポリウレタンフォーム=ただのスポンジ、ゲル化はしない、除圧効果◎
    • 親水性ポリマーを含有し滲出液をスピーディに吸収し創周囲の浸軟を防ぎます。
    • 創の湿潤環境を保ちドレッシング材の溶解や残渣物を創面に残しません。
    • 吸い上げた滲出液は後戻りしないような工夫がされています。
    • 分厚いのでクッション効果もある
    • 商品名:
      • 3Mテガダームフォームドレッシング
      • ハイドロサイトAD ジェントル(スミスアンドネフュー)→高級品
      • ハイドロポリマードレッシング「ティエール」→4層構造の高級ドレシング剤
形成外科W先生御用達の創傷被覆材→ハイドロ ジェントルエイド

ハイドロ ジェントルエイド

ハイドロサイトを販売しているスミ&ネフが一般向けに販売している格安品
絆創膏の扱い(なので保険償還がない)なのに性能はほぼ同一という優れもの

  • ⑤感染抑制作用
    • Ag含有製品を用いる
    • 商品名:
      • アクアセルAg
      • アルジサイトAg
      • ハイドロサイトジェントル銀

皮膚疾患各論

巻き爪・陥入爪

日本人の10人に1人は「巻き爪」に悩まされている
巻き爪とは爪が湾曲し、皮膚に食い込んでいる状態のことで、主に足の親指の爪に見られる

巻き爪の原因:足底からの外力不足、爪の切り方(深爪)、爪白癬、爪乾癬、掌蹠膿疱症、外傷、内科的疾患など

  • 巻き爪:
    足の指にある爪の両端の先端部が、大きく内側に湾曲した状態
  • 陥入爪:
    爪が周りの皮膚に食い込む状態
  • 治療:
    • 巻き爪マイスター+リネイルゲル(いずれも自由診療、マルホ)
    • 根治的には爪を爪母まで長方形にカットして爪母をバイポーラで焼灼する→在宅では困難
    • 在宅では爪を三角形に切るしかないだろうと

老人性乾皮症

加齢に伴い皮脂や汗の分泌が減少し、皮膚の角層の水分保持機能が低下することにより、皮膚が乾燥した状態
老人性乾皮症が進行し、皮膚の本来の機能を失わせて本来の防御機能が低下した結果、外的な刺激によって湿疹をきたすと皮脂欠乏性湿疹と呼ばれる

  • 皮膚に浅い亀裂や白いふけのような鱗屑が生じ、掻痒を伴う
  • 掻痒、つまり「かゆみ」は高齢者にとって非常に頻度が高く、つらい訴え
  • かゆみは皮膚の表面に分布している神経が脳に伝わっておこるとされ、少し前まではかゆみと痛みは同じようなものと考えられていたが、最近かゆみを伝える神経は痛みを伝える神経とは異なっていることが判明した
  • かゆみは発疹があるものと、発疹がないのにかゆみがあるものに分類される
  • スキンケア:
    • 入浴は熱すぎるお湯をさけ、あまり長い風呂はさけるようにします。
    • 石鹸は通常使用できますが、あまり皮膚の脂を取り除いてしまうようにゴシゴシと洗うことは避けるようにします。皮脂を取り除く力が強すぎる洗浄剤は避けるようにします。
    • たわしやナイロンタオルなどの物理的な摩擦を避けます。
    • 保湿剤は入浴後の皮膚が少し湿った時に外用すると効果的です。衣類はできるだけチクチクせず、刺激の少ないものを選んだほうがよいでしょう。
  • 外用薬:
    • 痒みは原因に応じた治療が行われる必要がありますが、一般的に痒み止めと呼ばれる抗ヒスタミン剤、抗アレルギー剤の内服薬が処方されることがあります。これらは痒くて病変を掻いてしまって、またその皮膚が悪化するという、悪循環を断ち切るのに必要です。医師の指示を守って服用しましょう。
https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/di/feature/f161201/201612/549306.html

皮脂欠乏性湿疹(ドライスキン)

高齢者のスキンケア方法を確認する必要がある
①石鹸の種類(pHなど) 弱酸性が◎
ボディーソープは、皮脂がとれ過ぎてしまうことと、十分に洗い流しにくいので、固形の石鹸の方がいい
②洗浄方法 手洗いが◎、こすりたい場合は刺激の少ないもの(手ぬぐい程度) ナイロンタオルは×
③よくすすぎ洗浄する、お湯の温度を上げすぎない→温まるとかゆみ強まる
④保湿剤を塗布する
⑤環境因子:部屋の加湿、化学繊維の少ない衣類、爪の手入れ

  • 保湿剤:
    • 「油分が多いタイプ」のほうがべたつき感を感じる一方、肌をコーティングする力は強まります。逆に、化粧水のよなタイプのほうが塗りやすいですが、肌をコーティングする力は弱くなります。
    • 乾燥肌が強い方は、水分が肌から逃げやすい肌質が多く「油分が多いタイプ」のほうがよいかもしれません。一方、夏場だと油分がおおくべたつくと、寝る時などに不快に感じやすくなります。
    • 季節や肌質に合わせて適切な保湿剤を選ぶのが保湿ケアの第一歩
    • 保湿剤はすり込まなくてよい

壊死性筋膜炎(壊死性軟部組織感染症 NSTIs:Necrotizing Soft Tissue Infections)

LRINECスコアとエコーで診断

  • LRINECスコアLaboratory Risk Indicator for Necrotizing Fasciitis score
    • 壊死性筋膜炎の診断予測スコアのひとつ (ライネックスコア)
    • CRP、 WBC、 Hb、 血清Na、 血清Cr、 血糖の6項目をスコア化
      合計6点以上を壊死性筋膜炎とすることが多い
    • LRINEC score 6 以上をカットオフ値とした場合,感度 100%,特異度 85.5%,陽性的中率 40.7%,陰性的中率 100%→6点以下の壊死性筋膜症例があるのも事実でスコアを過信しない
https://www.facebook.com/watch/?v=935955576781388

組織内の高エコーとアコースティックシャドーを認めれば組織内のガスと診断→壊死性筋膜炎

  • 肉眼的な異常所見以上に疼痛・圧通部位が進展していることがある

丹毒

顔面(+下腿)の熱感+紅斑→丹毒

  • 真皮の感染
  • 原因菌はA群β溶連菌が多いが100%ではない
  • 疼痛を伴うこともあるが、比較的少ない
  • 人畜共通の病気でもあり発熱・頭痛など全身症状を伴うこともある
  • 腎炎、リウマチ熱の原因となることがある
  • 習慣性となり、同一部位に繰り返すことがある(習慣性丹毒)ので、しっかり治療する
  • 治療:
    • 溶連菌感染症が多いので、本来AMPCで十分→アモキシシリン250㎎3T分3
    • 重症の場合、蜂窩織炎との鑑別が困難な場合→ファロム200㎎3T分3
Wikipediaより
ファロムについて
  • ペネム系に分類される唯一の抗生物質
  • グラム陽性菌に強い抗菌力を保ちながら、グラム陰性菌、嫌気性菌に対しても効力を強めている
  • 黄色ブドウ球菌はもちろん、ペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP)や緑膿菌にも有効
  • 副作用の少ない安全性の高い抗生物質
  • ショックなどのアレルギー症状もペニシリン系に比べれば少ない
  • 下痢の副作用がやや多い
  • 錠剤のほか、子供向けのシロップ用細粒がある

蜂窩織炎

皮下脂肪織の感染症

抗真菌薬(外用薬)

白癬菌に対してはテルビナフィンorルリコナゾールクリーム
カンジダに対してはケトコナゾールクリーム
びらん性→軟膏基剤(=低刺激)→ルリコナゾール軟膏

爪白癬→ルコナックまたはクレナフィンまたは内服薬
皮膚白癬菌症→ルリコナゾールクリーム、テルビナフィンクリーム
皮膚カンジダ症→ケトコナゾールクリーム
脂漏性皮膚炎→ケトコナゾールローション

  • イミダゾール系(アゾール系のひとつ):
    • 1990年以前:
      白癬にはあまり効かず、カンジダに対して有効
      皮膚への浸透性・貯留性が低く、1日に2-3回外用する必要があった
      • エンペシド(クロトリマゾール):
        1976年に発売が開始された、日本で最も古いイミダゾール系外用抗真菌薬
        白癬にもカンジダにもまずまずの効果があるが、1日2,3回外用しなければならない
      • アデスタン(イソコナゾール)
      • エクセルダーム(スルコナゾール)
      • オキナゾール(オキシコナゾール)
      • △マイコスポール(ビホナゾール)
      • ◎ニゾラール(ケトコナゾール):先発品(クリーム)21.5円/g、後発品14.7円/g
        本邦での発売は1993年だが、海外では1982年から発売(性質は1990年代以前のものと同様)
        イミダゾール系の中でもカンジダに対する効果が特に高い
        用法は1日1回で、剤型はクリーム(→浸軟部に低刺激)とローション(→毛髪部)の2種類
    • 1990年以降:
      白癬とカンジダの両方に効く
      • △アトラント(ネチコナゾール):先発品(軟膏)28円/g
        カンジダに対する効果と同じくらいの強さで白癬にも有効になった薬
      • △アスタット(ラノコナゾール):
        カンジダへの効果よりもさらに強く白癬への効果を有する
      • ルリコン(ルリコナゾール):先発品(クリーム、液)33.8円/g、後発品18.1円/g
        イミダゾール系で最新の皮膚真菌症治療薬
        アスタット同様、カンジダにも有効、白癬にはさらに有効
        5%濃度は爪白癬にも適応あり(皮膚用は1%濃度)
        軟膏・クリーム・外用液
      • ルコナック(ルリコナゾール):先発品765円/g
        爪白癬治療専用の爪外用液として2016年に発売
        爪外用液は爪への浸透力が高く、1日1回の外用で爪白癬を治せる
  • 非イミダゾール系:
    白癬への高い殺菌力を持つが、カンジダにはあまり効かない
    • ベンジルアミン系
      • △メンタックス(ブテナフィン)
      • △ボレー(ブテナフィン)
    • アリルアミン系
      • ラミシール(テルビナフィン)
        内服薬もあるため有名な薬
        白癬に対する非常に高い効果が特徴
        剤型はクリーム・外用液・スプレーの3種類
    • モルホリン系
      • △ペキロン(アモロルフィン)
    • チオカルバメート系
      • △ハイアラージン(トルナフタート)
      • ゼフナート(リラナフタート)
        皮膚への貯留性が高いと言われ、白癬に非常によく効く
        他の抗真菌薬に過敏症がある場合は使えない
    • トリアゾール系(アゾール系だが非イミダゾール系)
      • クレナフィン(エフィナコナゾール)
        非イミダゾール系の中で唯一の爪外用液で、爪白癬にのみ保険適用
アゾール系の抗真菌薬について

窒素原子(N)を1個以上含む5員環構造をアゾール環という。
アゾール系抗真菌薬にはトリアゾール系イミダゾール系に分類される。
窒素原子が2個含まれるものをイミダソール環といい、窒素原子が3個のものをトリアゾール環という。
作用機序は真菌の細胞膜の成分であるエルゴステロール産生を阻害することで作用を発揮する。

トリアゾール系はイミダゾール系に比べて生体内で代謝されにくく、内服や注射薬として用いられる。
イミダゾール系は生体内で代謝されやすいため、主に外用薬として用いられる。

イミダゾール系抗真菌薬:ミコナゾール、クロトリマゾールなど
トリアゾール系抗真菌薬:フルコナゾール、イトラコナゾール、ボリコナゾールなど

脂漏性皮膚炎(脂漏性湿疹)

  • 主に頭皮、髪の生え際や顔、わきの下などの皮脂の分泌が盛んな箇所にできる湿疹
  • マラセチア属真菌と呼ばれる皮膚常在菌(カビ)の増殖によって起こる
  • 生後数ヶ月頃に皮脂が過剰分泌されることによる脂漏性皮膚炎は、乳児脂漏性皮膚炎と呼ばれ一過性
  • 成人においては慢性化しやすく、肌質によって再発を繰り返す方が多い→要治療
  • 最近ではステロイド(毛髪部にはmildのローション)にかわり抗真菌剤外用が用いられることもある
  • 治療:
    • 非薬物療法
      • 清潔:専用シャンプーで洗浄
      • 栄養:脂質制限、VB不足
      • 睡眠:睡眠不足も増悪因子
    • 薬物療法:
      • ステロイド外用薬:
        顔や体には軟膏やクリームを、頭皮にはローションタイプの薬を使用
      • 抗真菌薬:
        • ケトコナゾール
フケの性質の違い

フケは頭皮から出る老廃物、つまり肌から出る垢のようなもの。
人間の皮膚は、約6週間のサイクルで生まれ変わるターンオーバーが備わっており、それは頭皮も同じ。
ターンオーバーのときに古くなった頭皮の角質が皮膚の奥から押し出され、剥がれ落ちたものがフケなのです。通常のターンオーバーで発生するふけは垢のように小さく、通常は洗髪で取り除かれるため、目立つことはない。

ターンオーバーが早まった場合→白く細かい大量の乾性フケ
皮脂の増加→脂性フケ、黄色い、大きな塊となる→マラセチアの感染→脂漏性皮膚炎として治療を要する

https://www.daiichisankyo-hc.co.jp/health/symptom/43_fuke-kayumi/

皮膚糸状菌感染症(白癬菌症)

皮膚糸状菌は常在菌ではなく、KOH法、真菌培養のいずれでも病変部に菌が検出されれば診断できる
※カンジダは皮膚常在菌のため検鏡で病変部にカンジダ特有の胞子と菌糸の増殖を確認して診断できる

  • 感染部位によりネーミングが異なる
    • 股部白癬(いんきんたむし)
      太ももの付け根から会陰部・臀部・下腹部などに見られる皮膚糸状菌症
      症状はしばしば両脚に対称的に出る
      患部は赤いポツポツした発疹が現れて楕円形にぼんやりと広範囲に広がっていき、端の部分が盛り上がって、激しい疼くようなかゆみと、場合によっては痛みも伴うことが特徴
      環状紅斑といい、発疹の縁付近では鱗屑が観察されたり、桃色に変色する
      ※陰嚢には白癬菌の症状はまず出ない→陰嚢のかゆみではいんきんたむしは否定的(→陰嚢湿疹/陰部湿疹が多い)
    • 頭部白癬(しらくも)
    • 体部白癬(ぜにたむし)
      赤く丸い縁取りのようになることから『ぜにたむし』と呼ばれるようになった
    • 足白癬(みずむし)
      • 趾間型
      • 小水疱型
      • 角質増殖型
    • 爪白癬

足白癬

外用薬が基本
→臨床症状がなくても趾間部だけでなく足底全体に塗布する必要がある
 塗布の期間はターンオーバーの期間により決まり、臨床症状消失後1~2か月は継続する
 最低2~6か月以上(趾間型では2か月以上、角化型では6か月以上)
 角化型では内服薬も検討

爪白癬

第一選択は経口ネイリンカプセル(ホスラブコナゾール)12週間→治癒率約60%
次点はラミシール錠(テルビナフィン)24週間

ホスラブコナゾールとテルビナフィンには併用禁忌薬なし
内服困難(→肝障害、血小板減少など)ならルコナック軟膏

  • 足水虫は日本人の5人に1人、爪白癬は10人に1人が罹患している
  • 靴が履きづらい、爪が当たって痛くなるといった問題以外に、肥厚爪と転倒リスクの関連性も指摘されている
  • 爪への感染を放置していると足水虫の再発に繋がる場合がある為、足と爪を同時に治療していく事が重要
  • 爪白癬外用薬→2種類あるが大差はない、ファーストインクラスはクレナフィン(2014年~)
    • 共通項目:
      • いずれも処方に顕鏡または培養検査が必要
      • 作用機序はいずれも同じ、エルゴステロールの生合成を阻害
      • 適応菌種(=皮膚糸状菌)、適応症(=爪白癬)も同じ
      • 用法用量も同じ(=1日1回罹患爪全体に塗布する)
    • 相違点:
      • 費用対効果ではルコナック>>クレナフィン(2倍くらい差が出る!!)
      • MICからみると力価はルコナック>クレナフィン
      • 完全奏効率からみるとクレナフィン(17.8%)>ルコナック(14.6%)と改善はしたものの内服薬(ネイリンの完全治癒率59.4%)には劣る
クレナフィンとルコナックの使い分け

クレナフィンは刷毛状になっていて爪 に塗っていくという、今までにあまりなかったタイプの薬で、比較的使いやすいのが特徴です。 

ルコナックは、押しつけると出てくるタイプのもので、若干液が多く出すぎて、使い慣れるのにコツがいりますが、刷毛のように戻さないので、衛生面ではこちらのほうが少し優れている

真菌とは

真菌とは、俗に言う「カビ」の総称でヒトと同様真核生物(身体を構成する細胞の中に細胞核と呼ばれる細胞小器官を有する生物)である。真菌類には、キノコ類も含まれているが、真菌症を起こす病原真菌の主体は、糸状菌と酵母様真菌である。一般的に我々が目にする病原真菌は、この2種類のうちの何れかの形態であるが、糸状菌と酵母状真菌の両方の性質を持つ真菌(二形性菌という)が少数知られており、重要な病原真菌が含まれている。表在性皮膚真菌症(いわゆる水虫など)を除けば、健常者に感染する真菌は少なく、多くは日和見感染症の病原体である。
糸状菌のうち、皮膚糸状菌(=白癬菌)というカビは、その形態から白癬菌属、小胞子菌属、表皮菌属に分類され、白癬を起こす皮膚糸状菌は世界には40種類以上存在するが、日本ではこのうちの10種類ほどがヒトに白癬を起こす。その中で最も頻度が高いのが、トリコフィトン・ルブルムトリコフィトン・メンタグロフィテスです。人畜共通感染症の代表的なカビは、犬猫に寄生しているミクロスポルム・カニス(イヌ小胞子菌)

https://www.kango-roo.com/word/21254

以下のように、食物や飲料に含まれるような私たちの食生活に関係する真菌の例もある。
・Aspergillus orizae(黄麹、日本酒)
・Aspergillus awamori(黒麹)
・Aspergillus sojae(しょうゆ、みそ)
・Aspergillus repens(鰹節)
・Penicillium roqufortii(ゴルゴンゾーラ、青かび)
・Penicillium camembertii(カマンベールチーズ、白かび)
・Saccharomyces serevisiae(ビール酵母、イースト)

皮膚カンジダ症

  • 病態:
    • 原因菌種はCandida albicansが多く,粘膜の常在菌で特殊の条件が重なると菌の増殖や形態変化を生じて発病するいわゆる日和見感染症
  • 発症・悪化因子:
    • 基礎疾患,治療(薬,放射線),高齢,妊娠などによる全身的防御能の低下,ステロイド剤外用,先行する皮膚病変,糖尿病患者の血糖コントロール不良などによる皮膚の防御能の低下など
  • 局所因子:
    • 発症部位が間擦部,肥満,拘縮,絆創膏貼布などによって密封状態であるなどの物理・解剖学的な問題,夏季,高 温,多湿とそれに基づく多汗などの環境因子
    • 寝たきりや身体的ハンディなどに伴う不適切なスキンケアや不潔などの医療・看護因子
  • 好発部位:
    • 陰股部、臀裂部、腋窩、乳房下など皮膚が重なりこすれあう部分(間擦部)に好発→カンジダ性間擦疹
  • 診断:
    • 皮膚カンジダ症の診断において最も重要な検査は直接鏡検である(糸状菌と胞子の集簇)
    • カンジダは常在菌であるため培養陽性のみでは診断根拠にならない
    • 白癬では菌要素を見つけにくく,採取部位を選択するのにコツがいるが,皮膚カンジダ症は白癬より菌要素を見つけやすい
      →病変中の鱗屑,小水疱蓋,小膿疱蓋などを検査すれば検出できる
  • 治療:
    • 基本はカンジダに抗菌力のある抗真菌薬の外用であるが,爪,口腔,爪囲爪炎などの病型や難治性,再発性,広範囲の皮膚カンジダ症は内服薬の適応になるが、外用薬の方が治療効果が早い
    • 深在性皮膚カンジダ症は内服薬や注射薬が使用される
    • 皮膚カンジダ症はびらん,湿潤局面を呈することが多いので,刺激が少ないクリーム剤ないし軟膏剤が◎
    • イミダゾール系:カンジダ症には第一世代のイミダゾール系で十分!
      • ビホナゾール(マイコスポール®)
      • ネチコナゾール塩酸塩(アトラント®)
      • ケトコナゾール (ニゾラール®)
      • ラノコナゾール(アスタット®)
      • ルリコナゾール(ルリコン®)
    • 非イミダゾール系の薬剤:
      テルビナフィン塩酸塩(ラミシー ル®)とアモロルフィン塩酸塩(ペキロン®)が皮膚カンジダ症に対して保険適応をもつが,リラナフタート(ゼフナート®)とブテナフィン塩酸塩(メンタックス®,ボレー®)はカンジダ症に対する保険適応がない
口腔カンジダ症、食道カンジダ症の治療薬

特殊な内服薬として口腔・食道カンジダ症用で, ほとんど吸収されないミコナゾール(フロリード®)ゲ ル経口用がある.1日1ないし2本を4回に分けて内用するが,口腔カンジダ症では1日数回塗布するのみでも有効である

間擦疹の鑑別疾患

癜風(でんぷう)、なまず

  • 原因:
    癜風菌 Malassezia furfurによる皮膚感染
  • 症状:
    体幹、頸部、腹部、ときには顔面に、淡い黄褐色、褐色、サーモン色、または白色の鱗屑を伴う斑が多数現れます。それらの斑が融合して大きくなることもあります。この斑は日焼けすることがないため、夏に周囲の皮膚が日焼けすると、その部分が目立つ場合があります。元から皮膚の色が濃い人では、色の薄い斑に気づくことがあります。元から皮膚の色の薄いでは、比較的色の濃い皮疹や薄い皮疹が生じることがあります。
  • 治療:
    ケトコナゾール外用薬

悪性黒色腫

ABCDEルール:悪性を疑う所見
→A)非対称性、B)境界不整、C)多彩な色調、D)直径>6㎜、E)症状に変化がある


手掌・足底の黒色病変のルール:皮丘に色素がある→悪性、皮溝のみ色素がある→良性

爪の黒色病変:爪を超えて黒色が広がる場合は悪性

  • 悪性黒色腫の30%は初診時にリンパ節や転移や遠隔転移を有する

有棘細胞癌

高齢者の露光部に好発する
基底細胞癌に次いで2番目に多い

  • 切除術:
    • 水平マージンは低リスク4㎜、高リスク以上は6㎜以上
  • 切除不能:
    • 化学療法、放射線療法

乾癬

アトピー

掌蹠膿疱症

掌蹠膿疱症はウミが溜まった膿疱と呼ばれる皮疹が手掌や足蹠に数多くみられる病気
周期的に良くなったり、悪くなったりを繰り返す
ときに、足と手のほかにスネや膝にも皮疹が出ることがある
皮疹は小さな水疱が生じ、次第に膿疱に変化する
その後、痂皮となり、角層がはげ落ちる
また、鎖骨や胸の中央(胸鎖肋関節症)やその他の関節が痛くなることがある
足の皮疹は水虫によく似ており、診断をはっきりさせるために皮膚表面の角層を一部取り、顕微鏡で調べて白癬菌がいるかどうか調べる必要がある

鶏眼

鶏眼=うおのめ、足にできて痛む

  • 通常大人の足にできる径5mm程の硬い皮膚病変で、歩行時に激しい痛みを伴う。
  • 中心に芯が見えるので俗にウオノメと呼ばれる。
  • 原因:
    一定部位に繰り返し刺激が加わり、角質が厚く芯のようになり、芯が神経を圧迫して痛みを生じます。
  • 子供は一般的に皮膚が柔らかいため、鶏眼ができることが少なく、鶏眼と診断された患者の多くはウイルス感染に伴う疣贅(イボ)であることが多いです。
  • 治療:
    • 食い込んだ芯をしっかり除去することが必要
    • 中心部の芯の部分をメスやニッパー、ハサミなどで切除する
    • 場合によっては鶏眼の大きさに合わせて切ったスピール膏を貼り、角質を軟らかくした後に処置を行う
    • 疼痛軽減や再発予防のために、Pedi PAD(ドーナツ型のクッション)などを用いて圧迫除去を行うこともあります。また、CO2レーザーで角質を焼灼することもあります。
https://oki-hifuka.com/corn/

胼胝

胼胝=たこ、手にもできる、痛みなし

  • 胼胝も同様に、皮膚の一部が慢性の刺激を受けて厚くなりますが、鶏眼と異なり、刺激を受けた部位全体の皮膚が少し黄色味を帯びて盛り上がり、痛みの無いことが多い。胼胝は足底以外にも、生活習慣により、身体の様々な部位に生じます(座りダコ、子供の吸いダコ、ペンダコなど)。
  • 治療:
    • 硬くなった角質を軟膏などで軟らかくしたり、スピール膏やハサミやメスなどを用いて適宜除去する。
    • 鶏眼や胼胝の原因である「同部位への慢性刺激」は、不適切な靴や、生活習慣などが原因で生じます。このような原因をみつけて、可能な限り除去することが最も重要です。生活習慣を改善しないと再発することが多々ありますが、原因がわかっても実際には除去できない場合も多くその場合はケラチナミン軟膏やサリチル酸ワセリンで角質を柔らかくしたり、Pedi PAD(ドーナツ型のクッション)をおいて、局所の刺激を少なくするような工夫も必要です。
    • 胼胝性潰瘍の患者様は糖尿病を併発していることも多く、場合によっては糖尿病内科の受診をすすめます。

熱傷

  • 真皮の厚さは平均2㎜
  • I度:
    日焼け(水疱ができたらII度、疼痛がなければIII度)
    特別な処置は必要なく、局所冷却やステロイド軟膏の塗布が鎮痛によい
  • II度:
    肉眼的にはピンク~赤色で血色が良ければSDB→10日程度で治癒
    白っぽくて血色が悪い状態や、濃赤色で圧迫しても色調が消褪しないものはDDB→3週間程度~
    創の治癒を促すためには乾燥を防ぐことが重要
    表皮が重層化して角質層を形成し丈夫になるためには空気に触れる必要があるため、創から滲出した余分な滲出液は適切に排出される必要がある
    上皮化が完了した部分は乾燥させ、上皮化がまだの部分は湿潤を保つのが理想であり、滲出液の量に応じて適切な被覆材を選択する
    被覆材が滲出液を多量に吸収したまま長時間放置すると、その滲出液の中で細菌が増殖し創感染の原因となるため、滲出液の量に応じて適切な頻度で交換する
    滲出液の少ない創→ハイドロコロイドドレッシング(デュオアクティブ、バイオヘッシブなど)
    少し多めの創→ハイドロファイバー(アクアセルなど)
    さらに多い創→ポリウレタンフォーム(ハイドロサイトなど)、高吸収コットン(デルマエイド、メロリンなど)やガーゼを用いる
    近年、メピレックスボーダーやエスアイエイドなどのシリコンを用いた低固着性の製品が登場しており、ドレッシング交換時の痛みや新生上皮の損傷を軽減できる
    軟膏を用いる場合には、白色ワセリン(プロペト)、アズノール軟膏などを上記の被覆材に塗布して使用します。いずれにしても、これらを組み合わせて次の交換時に乾燥し過ぎておらず、かつ滲出液でびしょびしょにならない状態を保つようにする
    感染がある場合には、抗菌作用のある薬剤(ユーパスタコーワ軟膏、カデックス軟膏、ゲーベンクリームなど)を用いるが、処置時に創面に残った薬剤をしっかりと毎回洗い落とすことが重要
  • III度:
    皮下組織にまで及ぶ熱傷で、皮膚の血流が途絶えるために外観上は蒼白になる
    火災が原因の場合には炭化して黒色となることもある
    原則としてできるだけ早くデブリードマンを行う
ラップ療法について

食品用ラップは医用材料としての承認が下りておらず、安全性が確認されていないこと、水分の透過性がなく滲出液がすべて貯留するため過湿潤となりやすいなど、創処置に用いるのに適切ではありません。ラップで処置をして感染が重篤化した報告もあり、日本熱傷学会では食品用ラップなどの非医療材料を用いた治療は推奨しないという見解を出しています。

うっ滞性皮膚炎

蜂窩織炎

  • エコーで鑑別可能(壊死性筋膜炎の場合、皮下組織と筋肉の間に低エコー域(=液体貯留)を認める)

血管性浮腫(クインケ浮腫)

  • 原因不明の浮腫、蕁麻疹の一種と考えられている(蕁麻疹よりも深部に生じる)
  • 疲れているときに発症しやすいことからストレスや疲れが関係していると言われている。そのため、ストレスやアレルギー対策が再発防止の鍵となる。再発が度々繰り返されるようなら原因となっているストレスやアレルギーを取り除く必要がある。
  • 薬物としては、例えば、解熱消炎鎮痛剤、ペニシリン、抗生物質、アンジオテンシン変換酵素阻害薬やアンジオテンシンII受容体拮抗薬などの高血圧治療薬、総合感冒薬、副腎皮質ホルモン剤、血液製剤、経口避妊薬などがクインケ浮腫を惹き起こす可能性がある

汗疹(かんしん)、あせも

蜂刺傷

  • IASR:病原微生物検出情報
  • わが国では、蜂刺症の対象となる蜂類としては、スズメバチ類16種、アシナガバチ類11種、ミツバチ類2種、マルハナバチ類14種が知られている
  • 年変動があるものの毎年30~40名が蜂刺症が死亡している
  • 針が残る可能性のある蜂:基本的にはミツバチのみ
  • ハチ類の毒成分は大別すると酵素類、ペプチド類、低分子物質の3つが知られている。これらの成分は結合組織破壊、血圧降下、細胞膜透過性亢進、痛み、平滑筋収縮などを起こすことが知られており、蜂刺されによる毒液注入によってこれらの物質が総合的に働いて激しい諸症状が出現する。I型アレルギー患者は過去に同じ種または近縁の種のハチに刺された経験を持つ場合が多い。毒液中の酵素類はハチ類で部分的に共通したアミノ酸配列を持つことから、ある種の毒成分に対してIgE 抗体を持つ人は複数種のハチ毒に対するアナフィラキシーの惹起にも十分注意する必要がある。
  • 蜂刺症の治療には抗ヒスタミン剤を含むステロイド軟膏を刺傷部に塗布し、冷湿布をする。全身症状の強い場合は抗ヒスタミン剤やステロイド剤を内服する。ショック症状が認められた場合は,エピネフリンを0.3~ 1.0mg皮下注射し、気道確保、血管確保、気管支拡張剤とステロイド剤の投与および不整脈対策を行う。なお、一部の医療機関でハチ毒アレルギーの既往歴のある人に減感作療法が行われているが、減感作用に輸入されたアレルゲンはまだ認可されておらず、治験的に行われている。米国ではハチ毒アレルギーの人が全人口の1~3%ほどいると推定されている。近年、わが国の都市部でのスズメバチ類の増加傾向等を考えると適切なハチ毒アレルギーの診断および治療対策を立てる必要がある。
  • 強力レスタミンコーチゾンはレスタミンとコルチゾン、抗生物質を含む軟膏だが虫刺傷に適応なし、妊産婦禁忌

ムカデ咬傷

口内炎

アフタ性口内炎(潰瘍性口内炎)→No1
原因不明だが、ストレスや疲れによる免疫力の低下、睡眠不足、栄養不足(ビタミンB 2・B 6・C欠乏)などが考えられている。
赤く縁取られた2~10mm程度の丸くて白い潰瘍が、ほお・唇の内側・舌・歯ぐきなどに発生する
小さなものが2~3個群がって発生することもある
普通は10日~2週間ほどで自然に消滅してあとは残らない

治療薬:
トラネキサム酸
アズノール含嗽液
ビフロキシン配合錠(ビタミンB2とB6)
シナール(ビタミンC)
ビドキサール(ビタミンB6)
デキサルチン軟膏、アフタッチパッチ
OTCも各種市販されている

  • その他の口内炎
    • カタル性口内炎:
      入れ歯や矯正器具が接触したり、ほおの内側を噛んでしまったりしたときの細菌の繁殖、熱湯や薬品の刺激などが原因で起こる口内炎。口の粘膜が赤く腫れたり水疱ができる。アフタ性とは異なり、境界が不明瞭で、唾液の量が増えて口臭が発生したり、口の中が熱く感じたりする。また、味覚がわかりにくくなることもある。
    • ウイルス性口内炎:
      単純ヘルペスウイルス、梅毒・淋病・クラミジアなど、STDによる口内炎が知られている。カンジダ性口内炎を発症することがある。
    • 栄養欠乏:

ギランバレー症候群

  • 神経に炎症が生じる病気、多くは4週間以内に風邪を引いたりワクチン接種をしたのちに発症する(4-7割)
  • 症状は脱力で、通常は足から始まり腕や手に及ぶこともある。疼痛やしびれを伴うこともある。
  • 重症な場合は呼吸に必要な神経にまでダメージが生じ、呼吸困難を引き起こすことがありますが、多くの場合はそこまで至らず自然に回復していく
  • 予後良好で死亡率は2%未満、自然警戒することが多い
  • 鑑別疾患:頸椎疾患、腰椎ヘルニア、MS、重症筋無力症、脊髄炎、電解質、周期性四肢麻痺など

猫咬傷

猫はパスツレラ症、トキソプラズマ、猫ひっかき病(バルトネラ感染症)など、高病原性!!!

  • パスツレラ症:数時間以内に発症する場合はこれを疑う
    • 犬、猫の口腔内や爪に常在(猫の約100%、犬の約75%)するP.multocida による感染が主体
    • 早ければ数時間で受傷部位が赤く腫れ、痛みや発熱を伴う
    • 治療はセファロスポリン系、ペニシリン系などが有効
    • アモキシシリン/クラブラン酸(オーグメンチン配合錠)が第1選択
    • オーグメンチンなどのペニシリン系の抗菌薬が使えない時には、ドキシサイクリンも有効
MSDマニュアルホームページより

犬咬傷

MSDマニュアルホームページより
創と傷の違いは?

皮膚皮下組織・粘膜などの開放性あるいは表在性損傷のことを一般的に創傷(wound) と呼んでいる
「創」は皮膚の連続性が断たれた状態を、「傷」は連続性が維持された皮下での組織損傷を意味する
例)切創、挫創、擦過傷、熱傷、凍傷など

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