日本人と高血圧

高血圧についての面白い記事を見つけたのでご紹介します。
著者は都内総合病院腎臓内科の先生のインタビューを記事にしたもののようです。
少し専門的な内容ですので、わかりやすく説明させていただきます。


本日のまとめ

  1. 血圧の二大調節因子は、食塩とレニン・アンジオテンシン(RA系)
  2. 過剰食塩が高血圧の主因、夜間高血圧や早朝高血圧に進展する
  3. 日本人は元来遺伝的に高血圧になりやすい人種
  4. 治療は塩分制限に加え、RA系を抑える薬(ARBやACE阻害薬)を併用する

「いまさら高血圧と言われても何も目新しいことはない・・・」と思うくらい、ありふれた病気となり我々の生活にすっかり溶け込んでしまった高血圧ですが、この記事を読んで漠然と理解したつもりでいた高血圧のメカニズムと対処方法についての理解が深まりました。


血圧の二大調節因子は、食塩とレニン・アンジオテンシン系である

血圧を規定する2大因子は、心臓の拍出力と末梢血管の収縮度です
心拍出力は体内の水・Na量によって決定されます
末梢血管の収縮度は、主にレニン・アンジオテンシン系が規定します
この2大機構はシーソーのように相反的調節がなされおり、血圧はほぼ一定に維持されます

元来、このシステムは原始時代に食塩枯渇の条件下で、体内への水・Na確保の目的のために発達した機能です。
原始時代の人類は体内のNa量は常に枯渇状態で1日1g近傍と推定されています。
現在日本人の平均食塩摂取量は11~12g/日ですから必要量の10倍以上です。
この異常に多いNa負荷が高血圧の主因です。
過剰食塩下にはシーソーの原理で、レニン・アンジオテンシン系は抑制を受けますが、10倍以上の塩分負荷による血圧上昇を抑えることはできず、高血圧を来すことになります。


食塩感受性高血圧では夜間高血圧、早朝高血圧が起こる

健常人での1日の血圧日内変動は、昼間高く夜間低下するいわゆるdipper型(低下すると
いう意味)を呈します。
食塩感受性高血圧では夜間血圧上昇が顕著になりdipper型からnon-dipper型に移行し、最終的には夜間から早朝にかけての高血圧、いわゆる早朝高血圧へと進行していきます。
Non-dipping型高血圧や早朝高血圧は、脳・心・腎合併症の重大なシグナルであるとの臨床成績が多くみられます。
では、non-dippingや早朝高血圧はどのようにすれば発見できるのでしょう。
その答えは早朝の家庭血圧測定にあります。
早朝に測定した血圧はnon-dippingや早朝高血圧の存在を強く示唆するのです。
朝の血圧測定は極めて重要な高血圧診療の情報源なのです。
さて、このようなnon-dippingや早朝高血圧に移行していく原動力が「食塩感受性」で、あることがわかっています。
減塩や利尿薬投与による食塩負荷軽減を図ると、non-dippingや早朝高血圧が改善します。


日本人(アジア人)は食塩感受性が高い国民です

「食塩感受性」とは、「任意の食塩摂取量下における血圧の上がりやすさ」と定義されま
す。
食塩感受性を決定する最も重要な調節臓器は腎臓で、食塩感受性が亢進すると、Naは排泄能力が低下し、体内に水・Na貯留が起こります。
この食塩感受性は遺伝子によって規定されており、日本人の80%は食塩感受性が高い遺伝子を有しています。
つまり日本人は生まれつき塩過剰になると容易に高血圧になりやすい体質と言えます。
ちなみに、白人の食塩感受性が高い人たちは日本人の半分の40%と報告されています。
一般的に、日本人が「塩好き」、外国人が比較的「薄味好み」であると言われている理由は、遺伝子学的にも説明がつきます。


効率のよい高血圧治療とは

以上、塩分制限とRA系を効率よく両者抑制することが重要であるとわかりました。
減塩の方法としては、食事での塩分摂取を制限する方法や利尿剤で排出する方法があります。
RA系の抑制する方法は薬であるARBやACE阻害薬が有効です。
これらの併用療法はわが国の高血圧学会ガイドラインにも明記されています。


まとめ

著者の先生はインタビューを以下の3つにまとめて締めくくっています。
第一は過剰食塩が高血圧の主因であり、病期の進展とともに夜間高血圧早朝高血圧に進展していくこと。
そして、第二は日本人の高血圧は食塩感受性高血圧が多く、この原因としては遺伝的素因や腎臓でのNa調節系の異常が関与すること。
第三には食塩感受性高血圧の治療の基本は減塩ですが、過剰食塩による臓器障害の抑制にはARBやACE阻害薬を併用することが重要であることとなります。

高血圧の原因は過剰な塩分であるという事実を改めて再認識しました。
現代の生活スタイルにどっぷりつかった私たちにとってはなかなか難しい問題です。

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この記事を書いた人

たけしのアバター たけし アラフォー外科医

40歳を過ぎ、人生に焦りを感じ始める
自分がすべきことを探求した結果、健康に関する情報発信を始める
妻の経営する弁当屋のホームページも担当

将来の夢は自分のクリニックをひらき元気な高齢者を増やすこと

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