こんなときどうする⑤がん検診は受けるべき?

がん検診と一般的な健康診断の違いは?

一般的な健康診断は、対象の病気を定めず検査項目が正常範囲にあるかどうかを調べる検査です。
対して、がん検診は「胃がん検診」や「乳がん検診」など、特定のがんについて調べる検査になります。
同じ「けんしん」でも漢字が異なることにお気づきでしょうか?
一般的な職場などで行う健康診断(略して健診)は「健診」、がん検診では「検診」を用います。
健康かどうかを診断するのが職場や学校などで行う「健康診断、略して健診」。
がん検診は「がんがあるかどうか検査する」ことが目的ですから「検診」。
と考えると理解しやすいですね。

国民の2人に1人が“がん”になり、3人に1人が“がん”で亡くなる現代日本。
がんになってもすぐに症状に現れるわけではないので、自覚症状が出てから病院を受診するとすでに進行がんとなっている可能性が高いです。
そのため、症状がないうちからがん検診で早期発見を目指す必要がありますが、がん検診の受診率の現状は厚労省の定める受診率の目標値50%を下回っています(多くは30~40%台)。

がん検診は、お住まいの市町村が健康増進法に基づいて実施するものであり、がん検診の費用の多くを公費負担で受けることが出来ます(多くの検査は無料~2000円前後で受けられます)。
逆に言えば、自分が納めた税金で自分の検査を行うわけですから、がん検診を受けないと税金の払い損をしていることになります。
仮に人間ドックでがん検診を受けようとすると検査代が10割自己負担(人間ドックは保険が利用できません)となりますから、それぞれ以下のような金額を払う必要があります。
(健康保険を利用できるのは、病院を受診したい症状がある場合や、すでに病気と診断され治療が必要と判断された場合のみです。健康チェックのための検査には健康保険を利用することができませんのでこの機会に覚えておきましょう。)

  • 胃がん検査(内視鏡検査):約1~2万円前後
  • 胃がん検査(バリウム検査):1万~1.5万円前後
  • 乳がん検査(マンモグラフィー):5千~1万円前後
  • 乳がん検査(超音波):5千~1万円前後
  • 子宮頸がん(細胞診): 3千~1万円前後
  • 肺がん検査(胸部レントゲン): 2千円前後
  • 大腸がん検査(便潜血検査):2千円前後
  • 大腸がん検査(内視鏡検査) :2~3万円前後

思ったより高額ではないでしょうか?
もっとも車の健康のチェックである車検がおよそ10-20万円かかることを考えれば、人間の健康チェックにも本来これくらいお金がかかって当然ですし、からだは車のように壊れたら乗り換えるわけにはいかないのできちんとメンテナンスをしていく必要がありますよね。
こうした健康チェックは、自分で受けるよりがん検診を利用した方がはるかにお得(しかも税金として支払済)と言えます。


日本で急増の前立腺がん

ここでもう一度、市町村で実施しているがん検診の種類をおさらいしましょう。

厚労省ホームページより


では、上記以外のがんについての検診はないのか?というと現状では「ない」のです。
ただし近年増加傾向の前立腺がんについては、現状で80%以上の自治体ががん検診としてPSA検査を実施しているのですが、肝心の厚労省は「PSA検査を推奨するだけの証拠が不十分」とその導入に慎重な態度をとっています(ほんとにお役所仕事って困りますよね・・・)。
PSAは血液検査1本で簡単に調べることが可能ですし検診で実施することに異論はないはずです。

一方で膵がん、胆のうがん、胆道がん、肝臓がん、甲状腺がん、喉頭がん、咽頭がんなどにはがん検診が存在しません。
これらのがんを症状がでないうちに早期発見するためには、残念ながら自費(つまり人間ドック)で検査するしかありません。
がん検診が普及していない理由はさまざまですが、がんに罹患する人数が少なかったり、そもそも優れた検診方法がなかったり、過去の研究で検診をすることが寿命の延長につながらなかった、などが大きな理由です。

さきほど、日本のがん検診受診率は非常に低いというお話をしましたが、たとえば前立腺がんの多いアメリカでは、PSA検診受診率は75%だそうです。
一方の日本におけるPSA検診受診率はわずか10%程度と推測されています。
前立腺がんは近年、日本でも急激に増加しているがんであり(2014年時点で男性のがん罹患率4位)、2020年にはアメリカ同様、日本においても罹患率1位のがんになると予想されています。
我が国でも、住民検診や人間ドックでのPSA検診を早急に普及させる必要があるでしょう。


従来の日本のがん検診は、「検診を受診することによりどういったメリットとデメリットがあるのか」という点に関して十分な情報提供を怠り、住民へのがん検診の案内を郵送で送りつけるだけのやり方を続けてきました。
これでは日本の検診受診率が低率なのも当然ですし、国民1人1人の責任にすることはできません。

毎年届くと同時に捨てたり、保管したまま忘れがちな住民健診の封筒ですが、今年からはぜひご活用されてはいかがでしょうか。
ただし、胃がんのバリウム検査だけはお勧めしません。
胃がん検診は内視鏡検査を行うべきです。
本日は長くなりましたので、その理由は別の機会にまたお話しします。

本日のまとめ

  • がん検診はがんを早期発見するための検査で、公費負担により低額で受診できます。
  • 前立腺がんは男性の罹患率1位のがん(近い将来)。PSAがん検診を受けましょう。
  • 胃がん検診は、バリウムではなく内視鏡検査をお勧めします。

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この記事を書いた人

たけしのアバター たけし アラフォー外科医

40歳を過ぎ、人生に焦りを感じ始める
自分がすべきことを探求した結果、健康に関する情報発信を始める
妻の経営する弁当屋のホームページも担当

将来の夢は自分のクリニックをひらき元気な高齢者を増やすこと

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