「がん検診は受けてはいけない」は信じてはいけない

よく 〇春などの週刊誌に、〇〇を受けてはいけない、食べてはいけない、飲んではいけない、〇〇手術は受けてはいけない・・・などという読者にとってインパクトのある記事を見かけることがありますが、これをそのまま鵜呑みにすることは大変危険です。
こういった現代医療を真っ向から否定する、最たる著名人は医師の「近藤誠」先生でしょう。
近藤先生のお名前は、雑誌や書店で見かけたことがあるのではないでしょうか。
主な著書に『健康診断は受けてはいけない』『 何度でも言う がんとは決して闘うな 』『抗がん剤だけはやめなさい 』(いずれも文春文庫) などがあります。

がん検診を否定する彼らの主張はこうです。
乳がん検診は死亡率が低下せず、廃止した国もあるから受けない方がいい。
前立腺がん検診も勧めるだけの根拠がないから受けない方がいい。
胃カメラや大腸カメラは胃や大腸に穴が開く可能性があるから受けないほうがいい。
などなど・・・
国はこれらのがん検診を推進しているというのに、これはどういう理由なのでしょうか?

まず大前提としてマスコミ全般が読者優先ではなく市場主義であるという点です。
「検診は受けた方がいい」という主張する記事では、当たり前すぎて販売数が伸びません。
ところが、「検診はデメリットばかりで受けないほうがいい」という記事を書くとどうでしょう?
目新しい記事や投稿は読者の目を引きつけ、結果として購買数が伸びます。
これらの記事も、まったく根拠がないわけではないのですが、重要なのはその論文が信じるに足るだけの客観的データなのかということです。
科学的根拠を重視する医学会と言えども、今までの常識を覆すような極端な意見の論文の方が注目されやすい体質であることに変わりなく、医学論文と言えどもすべてのデータをそのまま鵜呑みにしてはいけません。
医学論文にも、その内容の信憑性には当然ピンからキリまであるのです。
過去には名声や利益目的にデータ捏造という反社会的行為も行われたケースさえあります。
そして「すべての検診を受ける必要がない」と誤解しかねない記事の見出しや内容も問題があります。
検診の効果が疑問視されているのは、乳がんや前立腺がんなどの一部の検診についてなのです。
その具体例として「スイスでは乳がん検診(マンモグラフィ検診)の廃止が勧告された」という実例が話題となりましたが、国が違えば事情も異なりスイスの死因トップは「がん」ではなく「心疾患」です。
そのスイスでがん検診を廃止したからと言って、日本も直ちに廃止しろと主張するのは誤りです。
なにしろ日本は世界一の超高齢化社会ですから、これからもがん患者さんは増え続けることが予想されているのですから。

「検診は受けないほうがいい」と主張する医者や記事を書く記者、その出版にかかわる方は、自信の主張を信じて自らががん検診を受けないのは個人の自由です。
しかし、ネットで投稿したり書籍での出版、講演会などで社会に情報発信するのであれば、検診の悪い面ばかりを強調することなく、メリットとデメリットをきちんと説明すべきであると思います。

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この記事を書いた人

たけしのアバター たけし アラフォー外科医

40歳を過ぎ、人生に焦りを感じ始める
自分がすべきことを探求した結果、健康に関する情報発信を始める
妻の経営する弁当屋のホームページも担当

将来の夢は自分のクリニックをひらき元気な高齢者を増やすこと

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