COVID-19対策:今後の日本がとるべき方向性

ドイツの臨戦態勢から学ぶ院内感染の防御策 ドイツ在住日本人内科医からの報告(m3.comより転載)

ドイツではメルケル首相の指揮のもと、文字通り「国を挙げて」COVID-19のパンデミックに迅速に対応しその成果をあげているようです。
ドイツの医療現場の最前線で働く日本人医師による詳細なレポートが日本の医師向け情報サイトm3.comホームページで4/19公開され、非常に有用な内容でしたのでこちらに転載させていただきました。
ドイツでの具体的戦略
・院内の感染管理を統括するタスクフォースの設置
・COVID-19専用受け入れ病棟の配備とゾーニング
・全職員・患者の体温測定
・救急患者と定期通院患者は入口や動線を分ける
・咽頭スワブ検査は病院外のテントで行う
・朝晩のカンファで全員に状況がアップデートされる
・このような準備はドイツ全土で一斉に行われ、ある程度の規模の大病院には、どこもCOVID-19受け入れ専用の病棟が設置された
・当時のドイツ国内の感染者数は5000-6000人、つまり今の日本の患者数と大差ない段階でこの思い切った対応を行った
・国の政策として待機オペを減らし、3月16日より全ての予定手術は延期し、それに対する金銭的サポートを補償する
・ドイツは人口10万人当たりのICU病床数が30床と世界的に見ても圧倒的に豊富な集中医療設備を持っている(比較:イタリア12床、日本5床)それにもかかわらず、ドイツ国内に2万8000床あるICUベッドを4万床まで増やすよう、各病院に増設を要請した(比較:日本は現在6500床)
・感染者数が爆発的に増加し始めた今でも、各医療機関のベッドにはまだ十分に余裕があり、当直回数がやや増えるなどの負荷はあるものの、東京のように残業や泊まり込みなどが起こることもなく、医療崩壊は免れている
・それどころか、豊富な集中医療設備を生かして、イタリアやフランスからの重症患者の受け入れまで行っている

「COVID-19かそうでないかにかかわらず、そもそも病院に来る患者が極限まで減らされており、院内はガラガラ、通常入院の患者も個室または2人部屋までの管理とすることで、患者同士やスタッフとの接触機会を限定し、医療関係者や患者が感染し病院がクラスターとなるリスクを抑え、一気に共倒れしないようリスクマネジメントをしています。また家庭医との連携を強化し、軽症患者を自宅にとどめ、中等症から重症を優先して病院に受け入れるようにしています。こうした早期の措置が功を奏し、ドイツは感染拡大した今でも医療崩壊の状態を免れています。これはひとえに、患者数がまだ少ないうちからできる限りの準備を全ての病院が一丸となって行い、感染拡大前に患者の受け入れ態勢を整えていたことにあると思います。
日本は今重大な局面にあります。少しずつ緊張感は出てきているとはいえ、地方を中心に一般市民の危機感の持ちようはやはり欧米と比較したら圧倒的に足りていないと感じます。医療者の中ですら、地域や専門科によって危機意識に温度差があるように思います。患者は今後必ず増えます。多くの病院が発熱患者は受け入れ拒否としていたら、対応機関はすぐにパンクしますし、非典型症状で紛れ込んできた患者へのリスク対策が不十分となり院内での感染を許すことにつながります。感染症指定病院や帰国者・接触者外来に全てを任せず、感染者がまだ少ない今こそ、日本も「全ての病院」が連携を取り合い、受け入れ態勢を整えることで、院内感染を起こさないための感染対策を急ピッチで整えるべきではないでしょうか。」という内容でした。

→ドイツの驚異的低死亡率の背景には、優れた指導者による迅速な指揮とそれに呼応する現場での対応があったということがわかります。
 海外の成功モデルを参考に日本も国家の威信をかけて迅速に対応する必要があるでしょう。
・各病院での陽性患者、疑い患者の受け入れ態勢の整備
・院内感染対策(感染防止と発生時の対応)のマニュアル作り

医療施設への個人用防護具の供給体制強化
などが早急に望まれます。

COVID-19、靴底から院内感染拡大の危険性(m3.comより転載)

Aerosol and Surface Distribution of Severe Acute Respiratory Syndrome Coronavirus 2 in Hospital Wards, Wuhan, China, 2020.
Guo ZD, et al.Emerg Infect Dis. 2020 Apr 10.

環境消毒の必要性を示した貴重な論文
汚染エリアでは、あらゆるものがPCR陽性となる可能性があると警鐘を鳴らす内容である。
検体の陽性率は、ICUの方が一般病棟(GW)よりもはるかに高かった(ICU43.5% vs. GW7.9%)。
陽性率は床の検体が比較的高く(ICU 70%、GW 15.4%)、医療スタッフの靴底の半数が陽性を示した
陽性率はこのほか、コンピュータのマウス(ICU 75%、GW 20%)、ごみ箱(ICU 60%、GW 0%)、ベッド柵(ICU 42.9%、GW 0%)、ドアノブ(GW 8.3%)など、医療スタッフや患者がよく触れる物の表面で高かった
医療スタッフの白衣等の袖口や手袋からもウイルスが検出された。
医療スタッフが患者との接触後に速やかな手指衛生を実施する必要性が示唆される。
さらに、SARS-CoV-2のエアロゾル感染リスクも評価した。
ICU(1時間当たり空気供給12回、排出16回)の隔離病棟とGW(1時間当たり空気供給8回、排出12回)の空気を採取し、ICU検体の35%、GW検体の12.5%が陽性だった。
排気口の空気検体は、ICUの66.7%、GWの8.3%が陽性だった。
このほか、空気採取場所によって陽性率が異なることが明らかになり、ウイルスを含む空気が主に患者の近くと空気の流れの下流に集中していた。
ウイルスが検出された場所から考えると、SARS-CoV-2エアロゾルの最大伝播距離は4mと推定された

LINEを用いたビッグデータの調査結果が報道されました。
それによると、全国で約2万7000人が、37.5℃以上の発熱が4日間以上続いていたと回答していたことが明らかになりました。
もちろん全ての発熱者がCOVID-19ということはあり得ませんが、低いPCR検査件数により見過ごされてしまった患者の存在を示唆しているデータの一つと考えられます。
NHKの報道の中では、発熱者数の増加とPCR検査陽性者数の増加に相関が見られたことも明らかにされており、発熱者の中に相当数のCOVID-19感染者が潜在していることが推測されています。


以上から医療崩壊を招く院内感染対策について改めて言えることは

・医療資源の在庫を考慮した過不足ない適切な個人防護用具の使用と手指消毒
・換気と環境消毒(次亜塩素酸ナトリウムは0.2%以上の高濃度)
・ゾーニング(レッドゾーンとグリーンゾーンの線引き)や動線の整備
・対面が必要な窓口業務での衝立などによる接触機会の低減
・院内感染が発生した場合は個室隔離や病棟全体のコホーティング
・入院制限、外来制限、手術制限
・スタッフ間の接触機会の減少
・勉強会、研修会
・迅速なPCR検査体制

が重要。

実際に院内感染が発生した病院では
・予約以外の新規入院の受け入れ中止
・新患外来の受け入れ中止
・救急診療の受け入れ中止
・濃厚接触者はPCR 陰性でも最終勤務から14 日間の自宅待機
という対応が必要となってくる(東京慈恵医大病院)
墨東病院でも救命救急センターについて、当分の間、新規患者の受入れを停止した

これ以上、医療崩壊を深刻化させないためにも、日本はいまが踏ん張りどころと言えるでしょう。

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この記事を書いた人

たけしのアバター たけし アラフォー外科医

40歳を過ぎ、人生に焦りを感じ始める
自分がすべきことを探求した結果、健康に関する情報発信を始める
妻の経営する弁当屋のホームページも担当

将来の夢は自分のクリニックをひらき元気な高齢者を増やすこと

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