<連載第1回>肥満について~世界で増え続ける肥満

『脱』内臓脂肪型肥満を目指し年明けから運動に励んでいる管理人たけしです。
今日は最近世界中で増えている「肥満」のおはなしです。私も他人事とは思えません。

まずは、肥満の定義を再確認しましょう。日本の場合、日本肥満学会がBMI(ビーエムアイ:body mass index)が25以上を肥満と定義しているのに対して、WHOでは30以上を肥満(25以上30未満は前肥満または過体重として区分している)と定義しています。

BMIって聞いたことあるけど、どうやって計算するんだったっけ?

BMI=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)で簡単に計算できます
例)身長160㎝、体重58㎏の場合 58÷1.6÷1.6=22.66という具合です
日本ではBMI=18.5~25未満が普通体重、25以上が肥満となります

なぜ、日本だけ肥満の基準が厳しいの?
不公平じゃないかしら?

それは人種間の差です。
アジア人は欧米人と比べて、糖尿病や心疾患になりやすいんです。
事実、日本人の調査で一番病気が少ないBMIは22でした。
そのため、日本は世界基準よりも厳しい診断基準を採用しています。

肥満や過体重は世界中で急速に増えています。世界肥満連合(WOF)によると、1975年からほぼ3倍に増えたそうで2016年の時点で、BMI(体格指数)が25以上30未満の過体重の成人の数は世界で13億700万人、BMIが30以上の肥満の成人の数は6億7,100万人に上り、合計では20億人以上になります。肥満や過体重の原因は、食べ過ぎや運動不足、睡眠不足/質の低下、生活リズムの乱れ、過剰なストレスなど、不健康な生活スタイルが続くことが大きな要因です。とくに糖質の過剰摂取(糖質がもっとも安く手に入る)や運動不足の悪化が大きなウェイトを占めています。最近ではコロナ禍での外出制限や在宅ワークによる座位時間の増加も加わり、運動不足に拍車がかかっていると思われます。


それでは、OECD加盟先進国でもっとも肥満の多い国はどこでしょうか?ご存じのとおり、先進国の中で肥満者の最も多いのはアメリカです。アメリカでは、BMIが25以上の割合は68%、BMIが30%以上の割合は30%を超えています。

さすが肥満大国アメリカね・・・日本はどうなのかしら?

日本でも男性を中心に肥満が非常に増えています。
成人男性の3人に1人が肥満(=BMI25以上)といえます。
とくに40~50代男性は約4割に達しています。

肥満者の割合の年次推移(20歳以上)
国民健康・栄養調査結果(令和元年)

年代別の肥満者の割合(20歳以上)
国民健康・栄養調査結果(令和元年)

こんどは私から質問させてもらいましょう。
肥満になると何が問題でしょうか?

そんな急に言われてもわかりません~

肥満が関係する病気
  • 糖尿病
  • 高血圧
  • 脂質異常症
  • 心筋梗塞
  • 脳卒中
  • 変形性膝関節症などの運動器疾患
  • 睡眠時無呼吸症候群
  • 高尿酸血症・痛風
  • 肝疾患(脂肪肝、肝臓がん)
  • 肥満関連腎臓病
  • 経異常・不妊と妊娠合併症

    ※※※以下は肥満症診療ガイドライン2022年版に追記されたものです
  • 悪性腫瘍(大腸がん・食道がん・子宮体がん・膵がん・腎臓がん・乳がん・肝臓がん)
  • 胆石症
  • 静脈血栓症・肺塞栓症
  • 気管支喘息
  • 皮膚疾患(黒色表皮腫、摩擦疹など)
  • 男性不妊
  • 胃食道逆流症
  • 精神疾患

    さらに肥満は新型コロナウイルス感染の重症化リスクが増加することも明らかとなっています

肥満は、糖尿病、高血圧、脂質異常など非常に多くの病気のリスクが高くなります。妊婦の場合も、肥満(BMIが25以上)になると、妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病、巨大児の発症率、帝王切開率が高くなります。ふだんの生活では、肥満をあまり気にしていないかもしれませんが、「肥満は万病のもと」とはよく言っものですね。

肥満は短命という調査結果もでています

医学会で最も権威のある論文雑誌のひとつ「Lancet」に2016年に掲載された肥満と寿命に関する疫学研究をご紹介します。アジア、欧州、北アメリカ、オーストラリア、ニュージーランドの395万1,455人のデータを13.7年間(中央値)追跡調査した結果、BMI22.5~25の「標準体重」の死亡リスクがもっとも低く、BMIが上がると死亡リスクも上昇し「重度の肥満の人では寿命が約10年短くなり、2人に1人は70歳より前に死亡するおそれがある」ことが判明しました。肥満と判定されない「過体重」の段階から死亡リスクは上昇し、BMI25~27.5で7%、27.5~30で20%、それぞれ上昇を認めました。死亡リスクは、BMI30~35の「肥満(1度)」で45%、35~40の「肥満(2度)」で94%、そして40以上の「肥満(3度)」では3倍近く上昇しました。BMI25以上では、BMI値が5上昇するごとに死亡リスクは31%上昇する計算になります。疾患別にみると、BMIが5上昇するごとに、心血管系疾患の死亡リスクは49%、呼吸器疾患の死亡リスクは38%、がんの死亡リスクは19%、それぞれ上昇しました。日本を含む東アジアではBMIが5上昇するごとに、死亡リスクが31%上昇しました。高齢者より若者、女性より男性のほうが、肥満の死亡リスクへの影響は強い傾向がみられました。

Body-mass index and all-cause mortality: individual-participant-data meta-analysis of 239 prospective studies in four continents
Lancet, VOLUME 388, ISSUE 10046, P776-786, AUGUST 20, 2016

さらに肥満はコロナ重症化リスクというデータもあります

世界肥満連合(WOF)がまとめた「肥満アトラス2021年版:COVID-19と肥満」によれば、BMIが高くなるほど入院や集中治療室での治療および人工呼吸器管理、また死亡のリスクが最高で数倍程度まで高まるというデータが世界中から報告されているといいます。

世界肥満連合(WOF)報告書 COVID-19 and Obesityより抜粋

肥満はやっぱりい怖いんですね・・・

病気にもなるし寿命も縮まることが証明された肥満ですが、残念ながら肥満の割合が減ったという国は、まだどこにもないようです。
それだけ難しい問題だということですね。

まとめ
  • 肥満の定義はBMIで25以上
  • (BMI>25を基準にした場合)アメリカでは6割以上が肥満で、日本は成人男性の3割が肥満
  • 肥満は万病のもと、はやめの改善が大切だが世界中で肥満は増加中(全世界で20億人)

いかがでしたか?
今日は世界中で増え続ける肥満についてお話させていただきました。
以上、長文になりましたがさいごまでお読みいただきありがとうございました。

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この記事を書いた人

たけしのアバター たけし アラフォー外科医

40歳を過ぎ、人生に焦りを感じ始める
自分がすべきことを探求した結果、健康に関する情報発信を始める
妻の経営する弁当屋のホームページも担当

将来の夢は自分のクリニックをひらき元気な高齢者を増やすこと

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