米国がん協会(ACS)は、「米国でのがんの罹患率ならびに死亡率は堅調に下がり続けている」という報告をまとめました。その報告によれば米国全体でのがん死亡率は、25年間で27%(約260万人)減少したといいます。西台クリニック院長の済陽高穂医師はその理由をこう説明しています。
「アメリカでは、がんなどの現代病が増え続けて国家の財政を圧迫していることが1970年代から問題視されていました。それで当時のフォード大統領が、栄養問題特別委員会を設置し、国民の栄養と病気の関係を徹底的に調査させたんです。その結果、現代病は薬では治らない。がんを減らすには食事の内容を変えなくてはいけない、ということがわかった。それを受け、FDA(アメリカ食品医薬品局)や米国国立がん研究所が、健康のための数値目標を設定したり、がん予防に効果があると言われる食べ物の作用の研究を進めるようになりました。その国家プロジェクトの成果が実って、’92年以降、増え続けていたがんの死亡数が減少に転じたのです。」
このようにアメリカでは着実に減少しているがん、では日本のがんは増えているのでしょうか?それとも減っているのでしょうか?
以下のグラフをご覧下さい。
![](https://gekainohonne.com/wp-content/uploads/2020/03/image-14-1024x665.png)
これは、日本の国立がん研究センターが公開している信憑性の高いデータです。
このグラフが示していることは
- 日本のがん罹患率(あらたにがんと診断される人)は増加傾向にある
- 日本のがん死亡率はゆるやかに減少している
という事実です。日本のがん罹患者数とがん死亡者数は年々増加していますが、これにはいろいろな要因が影響しています。
もっとも影響が大きいと言われている要因が「人口の高齢化」です。がんは高齢者に多い病気ですので人口全体が高齢化すればがんになる人も増え、がんで死亡する人も増えます。日本は世界で類を見ないスピードで高齢化が進んでいますので、その影響は甚大です。しかし、上のグラフに関しては年齢調整による統計処理後のデータですので、時代の遷延に伴う人口構成変化の影響は無視できるようになっています。にもかかわらず罹患率が増加しているということは、「日本人のがんは間違いなく増加している」ということにほかなりません。注意点として、罹患率は技術革新や検診受診率の向上などにより早期発見の機会が増えたという本来望ましい変化であっても「罹患率の増加」として捉えられてしまう側面があることは理解しておく必要があります。もともと医療水準の高い日本においては、素直に「がん罹患率が増加している」と捉えるべきだと思います。(この統計の罹患率については全国調査ではなく、山形県、福井県、長崎県の3件のデータを使用しているという制限はつきます。)
一方、がんの死亡率はグラフのとおり緩徐に低下傾向を示しています。
これは、早期発見率の向上や治療成績の改善などが貢献していると考えますがやはり予防にまさる治療はありませんし、国家の財政を圧迫する社会保障費ひいては我々国民の税金負担を軽減させるためにも、日本のがん罹患率を低下させることを目指すべきです。
そのために必要なことは
- 日本の低いがん検診受診率向上
- 食生活を中心とした生活習慣の見直し
- 健康や禁煙についての啓もう活動
- 医療従事者も治療だけに注視するのではなく予防に目を向けるべき
だと考えます。
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