同業の外科医から見ても「この先生は手術が上手だなー」と、模範となる外科医から、「この先生には手術されたくないなー」というちょっと残念な外科医までさまざまです。
では、その差はどこからくるのでしょうか?
私の考える要素は以下の通りです。
- 経験数
- 個人の努力
- センス
- 学力(=出身大学)は関係ありません
外科医=職人なので、基本的には経験数がものをいう世界です。
手術の経験数が腕前に影響することは明確です。
これをLearning Curve(ラーニングカーブ)と呼びますが、同じ手術を1件しか経験したことのない外科医と10件経験した外科医では当然10件経験した外科医の方が上手でしょう。
50件くらいまでは手術を経験するごとに順調に技術が向上していきますが、極端な話、900件と1000件ではもはや経験数という要素は技術の優越にはほぼ無関係でしょう。
どこかでその成長曲線が頭打ちになる症例数が存在するのです。
そのときにほかの外科医がしていないような訓練(例えば頭の中での手術のイメージトレーニング、糸結び、手術ビデオの予習復習、自分の休日を利用した手術見学・実習など)に愚直に取り組んだ外科医は、技術を極めた名執刀医として一目を置かれる存在となるのです。
ちなみに我々外科医同士で手術の完成度を評価し合う客観的データとして、以下の項目を比較するという方法が一般的です。
- 施設の手術件数が多い
- 手術時間が短い
- 術中出血量が少ない
- 術後合併症が少ない、術後死亡率が低い
- 手術から退院までの入院期間が短い
- 手術後の生存率が高い(特にがんの手術をしたあとの5年生存率など)
という評価項目を比べることになります。
このような数字(年間の手術件数や手術成績)を病院のホームページなどに掲載している病院は、凄腕外科医揃いである可能性が高いわけです。
話を続けましょう。
センスも重要と言えると思います。
人間の体のつくり(体形や年齢、合併症、病気の進行度など)は一人一人みんな違います。
どんなに経験値の高い外科医でも初めて遭遇する事態は常に存在するものです。
初めての事態というのは誰しも得意ではないし最初は動揺します。
「どうしよう困ったな、初めてのシチュエーションだぞ。うーん、、、じゃあこうしてみようか。」と瞬時に頭を切り変える対応力が求められます。
この対応力も経験値でカバーできる要素はありますが、実際の手術では、教科書にも載っていないことだらけなので「センス」と言わざるを得ない部分が要求されると思います。
そうそう、「頭がいい(有名大学出身の)外科医が腕がいい」と信じているあなた。
それだけは違うと断言しておきます。
ちなみに「大学の教授が一番腕がいい」というのも論外です。
もちろん腕もよくて頭もいい外科医もいるでしょうが、もちろんその例外もたくさんあるのです。
さいごに
正直に申します。外科医こそ千差万別な職業と断言できます。
腕前もそうですが、それ以上に差が出るのが人間性。
この先生には自分も診てもらいたい。
この先生には死んでも診てもらいたくない。
同業者でも日々そう感じています。
そんなこと、決して病院では言えませんけどね。
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