こんなときは健康保険が使えません!

私たちは皆保険制度のおかげで、病院でかかった医療費総額の3割を自己負担し、残りの7割は税金で補填されます(納税者であればまったくタダというわけではありませんが)。
さらに高額医療費支給制度を利用すれば、たとえ月額数百万円の治療費がかかろうとも自己負担限度額(所得に応じて決定)を超えた支払いについては後日払い戻しが可能です。
例えば、がんの手術をした場合には月額200万程度の入院費用がかかるのですが、高額医療費支給制度を利用すれば実際にの自己負担額は一般的に10万円前後です。
このように日本の皆保険制度は世界に誇れるとても親切な医療制度なのですが、一方で健康保険が適応されず、100%全額自費となるケースもあることをご存知でしょうか?
あまり知られていないことですが、

  • 無免許運転や飲酒運転などで起こした「法令違反」による事故当事者本人のケガ
  • 「第三者の行為」によってケガを負わされたケース
  • 自殺未遂や自傷行為(飛び降りなど)
  • 労災の場合(仕事中もしくは通勤途中のケガ・病気等)→健康保険ではなく労災保険が適応
  • 健康診断・人間ドック、予防注射、美容整形手術など

は、保険証が使えず医療費の全額を負担しなければなりません(負担する義務がある人が異なります)。

たとえば、こんなケースです。
20歳男性。飲酒運転をして単独事故を起こし、重症頭部外傷で手術と集中治療を受けた。一命は取り留めたものの、後遺症で寝たきりの生活となった。家族は介護の負担だけでなく、治療費総額500万円を負担しなければならなくなった。このケースでは、残念ですが全額を自分(もしくは家族)が負担することになります。飲酒運転は他人を巻き込む危険性があるだけでなく、自分や家族にも取り返しのつかない不利益を生じる危険な行為ですので、絶対にやめましょう。

では次に、第三者(加害者B)の行為によってケガを負った被害者Aの治療費の場合です。
本来であれば、加害者Bが被害者Aの治療費総額を負担すべきケースですが、すぐに加害者が特定されない場合や加害者Bが医療費支払いを拒否している場合には、被害者Aは自身の医療保険を利用して治療費を支払い(3割負担)、後日加害者B(自動車事故の場合は加害者Bが加入している損保会社)に治療費(ならびに損害賠償)を請求することができます。
結果的に被害者Aの治療にかかった費用の全額(10割)を加害者Bが負担することになります。
その際、被害者Aは「第三者行為による傷病届」を含む書類数点を被害者Aの加入している健保組合へ提出する必要があります。
まとめると「被害者に負担はかからず、加害者が医療費全額を負担する必要がある」ということです。

ではこんなケースはどうでしょう。
50歳男性の加害者B。忘年会で飲酒後、運転して帰宅途中居眠り運転をして対向車線にはみ出し、自動車(被害者A)と正面衝突して加害者Bは重度の後遺症を負った。被害者Aは1か月の集中治療ののち死亡した。この場合、被害者Aは飲酒運転という法令違反であっても被害者救済の観点から加害者Bの保険が適用され、怪我を負った場合の治療費や慰謝料等の人的損害(人損)、被害者の車両の修理費等の物的損害(物損)の賠償を受けることができます。その一方で、加害者B自身が受けた損害(人損、物損問わず)については、仮に加害者Bが自動車保険ならびに健康保険加入者であったとしても一切の保険を利用も給付もすることはできず、さきほど同様医療費全額の自己負担を余儀なくされます。

さらに飲酒運転(酒酔い運転)には、上記の治療費の問題以外に「免許取消し」+「5年以下の懲役または100万円以下の罰金」の罰則がもれなく適応されます。さらに人身事故の場合には、人損の被害に応じた刑事罰(危険運転致死傷罪の場合、懲役最大20年)と損害賠償(年収や年齢に応じて賠償額が数億円に及ぶ場合もあります)も科せられ、職や家族さえ失うことにもなりかねません。

飲酒運転厳罰化で確実に飲酒運転は減り、重症交通外傷も減少傾向にあるとはいえ、救急医療の現場では飲酒運転で救急搬送される患者さんが今も後を絶たないという現実があります。近年では、後期高齢者による危険運転による交通事故も増えています。自分が加害者にならないのは当然ですが、被害者にならないよう注意する必要もあるでしょう。

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この記事を書いた人

たけしのアバター たけし アラフォー外科医

40歳を過ぎ、人生に焦りを感じ始める
自分がすべきことを探求した結果、健康に関する情報発信を始める
妻の経営する弁当屋のホームページも担当

将来の夢は自分のクリニックをひらき元気な高齢者を増やすこと

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