昨今、全国的に画像の診断ミスに関するニュースを見聞することが非常に多くなりました。
名古屋大、慈恵医大、千葉大、横浜市大などの大学病院での診断ミスに関する報道はご記憶にも新しいかと思われます。
もちろん、「画像の見落とし」は本来あってはならない人為的ミスであることは自明です。
しかし、そのミスが日常的に起きているのはもはや紛れのない事実です。
では、なぜそんなにも診断ミスが続発してしまうのでしょうか?
まず、肺がん検診や胃がん検診、乳がん検診などの集団検診においては、レントゲンやマンモグラフィー、超音波といった低侵襲(安全性の高い)の検査方法を用います。
しかしこれら検査の問題点は、進行がんの診断は容易なのに対して微小な早期がんを見落としてしまう危険が存在するという点です。
「検診を受けているから絶対に大丈夫」とは言えないのです。
見逃しを減少させるためには、例えば胃がん検診についてはバリウム検査よりも内視鏡検査の方がはるかに見逃しを減らすことができますし、肺がん検診でもCT検査の方が感度が高いと言えるでしょう(CT検査によるがん検診はコストの問題、被ばくの問題から非現実的ですが、最近では人間ドックで1回数万円ほどかかりますが高感度のPETCT検査を行う方もいます)。
病院での診断ミス(=見逃し)が最も起きやすいのはCT検査です。
CT検査は全身の詳細画像を一瞬で撮像することができる現代医療には欠かすことのできない画像診断法で、こと日本においては頻繁に撮影されています(世界一のCT大国)。
CTを撮影すると、からだの内部の情報がすべて画像データとして映し出されます。
1人の患者さんのCT画像データはとても膨大で、300枚程度から多いものだと3000~4000枚の画像データとなります。
CTに映し出された脳、骨、甲状腺、血管、心臓、気管、肺、食道、肝臓、脾臓、膵臓、胃、小腸、大腸、腎臓、副腎、尿管、膀胱、前立腺(女性の場合は子宮、卵巣)、リンパ節、というふうにすべての臓器をくまなく観察していくのですが、この作業は1人につき15~20分は要します。
この時に活躍するCT画像診断の専門家は、 毎日膨大な画像診断をこなしている放射線科の医師ですが、大量のCT画像を放射線科医がすべて読影するのは時間的にも集中力的にも不可能です。
さらに現代医学の画像検査にはCT以外にもMRIやPET、核医学、血管造影、内視鏡などがありますから、それらすべての画像診断を放射線科医頼みにはできません。
(2019年の医療ドラマ「ラジエーションハウス」でも疲弊した放射線科医の姿が描かれました)
私のいた大学病院での実情を例にお話しましょう。
毎日2000人程度が外来通院する大学病院などでは1日で約200件ほどのCT検査が施行されています。
私の大学病院には画像診断を専門とする放射線科医は数名しかいませんでしたので、200件のCT検査のうち、放射線科医が目を通していたのは全体の3分の1以下であったと思います。
残りの3分の2は画像診断の専門家の目を通さず、CT検査を依頼した主治医が1人で読影するということになります。
もちろん、主治医は自分の専門領域にかけてはプロですから病気を見逃すなんてことはないでしょう。
しかし、例えば心臓の専門医(循環器内科や心臓血管外科)が偶然CTにうつっていた肺がんや胃がん、大腸がんを見つけることができるでしょうか?
呼吸器内科医が心臓や血管、肝臓や膵臓の病気を見つけることができるでしょうか?
産婦人科、泌尿器科、消化器科、皮膚科、眼科、形成外科、整形外科・・・このようにそれぞれの専門領域に関してのスペシャリストであっても専門以外の領域については、診断に自信がないか、そもそも自分が関心のあるところ以外は見てすらいないということがほとんどだと思います。
問題はそれだけではありません。
放射線科医の読影レポートにはしっかり病気を指摘してあるのに、肝心の主治医がそのレポートに目を通さずに患者さんに説明してしまうという明らかな人為的ミスも存在するのです。
昨今ほぼ毎月のように報道される医療機関の診断ミス問題は、なにも今に始まったわけではなく昔からあった実態が浮き彫りにされただけなのだと思います。
こうしている間にも新たな診断ミス、人為的ミスが日々生み出されているのです。
では、我々や検査を受ける患者さんはどうしたらいいのでしょうか?
その答えは、難しいです。
一朝一夕には解決できない問題です。
画像診断医を増やせばいい、必要ないCTを撮らなければいい、2人以上の医師が目を通せばいい、主治医が見逃さないように努力する、AIによる画像診断を早期実用化する・・・
残念ながらどれも現実的ではないですね。
この事態を重く受け止めた厚労省もこの問題に取り組み始めていますが、残念ながら改善には至っていないようです。
私自身、正解がわかりませんが、「残念ながら画像診断には見落としがある」ということは認めざるを得ない事実です。
CT診断ミスはなぜ起こるのか?なぜ防げないのか?
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