外からでは見ることのできないからだの内部をわずか数秒で詳細な画像にできるCT検査は、現代医療にとってかかすことのできない画像診断法となりました。
そのCT検査機器の保有率が世界一高い国はどこでしょう?
実はダントツで日本なんです、ご存知でしたでしょうか。
日本のCT保有数は人口100万人あたり100台を超えており、2位のオーストラリアでさえダブルスコアに近い大差をつけています。
言い換えると、日本人はCT検査を受ける(受けさせられる?)機会が格段に多いと言えます。
(これは病院の裏事情ですが、CTなどの高額な検査機器を導入したら当然その投資分を稼がないといけないわけですから、検査オーダーが増えるというのが経営側の本音です)
必要な検査であれば当然受けるべきなのですが、国際比較の結果からは日本だけこんなにCT台数が多いのは不自然と言わざるを得ません。
そんな国際情勢を踏まえてなのか、2004年には医学会における最も権威ある論文の一つ「Lancet」誌に我が国にとってはとても不名誉な論文が掲載されました。
Amy Berrington de Gonzalez and Sarah Darby, Risk of cancer from diagnostic X-rays: estimates for the UK and 14 other countries. Lancet, 363, 345-351, 2004.
イギリスのオックスフォード大学の研究者は、医療機関での放射線被ばくが原因の発がんが多い国ワースト1位はなんと日本で、日本全体のがん発症者の3.2%(調査15カ国の平均は1.2%)を占めるとする研究結果を論文で発表しました。
ただ CT検査には、がんの早期発見などの利点もありますし、発がんには放射線被ばく以外にも多くの要因がかかわっているため、論文のデータをそのまま鵜呑みにはできませんが、それでも「日本の放射線被ばくは多い」という国際的な共通認識があるということは事実なのでしょう。
さらに近年、CT検査を頻繁に施行する日本において、被ばく以外にも大きな問題が発生しています。(→過去ブログで記載しています)
ではなぜこれほどまでに、日本はCT機器の保有台数が異常に多い国になったのでしょうか。
明確な答えはわかりませんが、日本の皆保険制度が影響している可能性はあるでしょう。
「誰でも、どこでも、いつでも、低額で等しい医療」の提供を目指していった結果、世界に類を見ないCT過密国家となったのだと思います。
年1回程度のCT検査であれば心配はないと思われますが、不要なCT検査は受けずに済むに越したことはありません。
ときには担当医に検査の必要性を質問する勇気も必要です。
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