医師がもっとも恐れる病気はなにか?という質問には何通りも答えがあるでしょう。
神経科の先生は、治療法がない神経の難病と答えるかもしれません。
膠原病科の先生は、やはり膠原病の難病とおっしゃるかもしれません。
現代医療には、根本的な治療法が存在しない恐ろしい病気がまだまだたくさんあるのです。
がんを専門とする私が一番怖いと感じる病気、それは「食道がん」です。

病気にかかると、いろいろな健康上の問題が発生します。
例えば、心筋梗塞であれば胸痛が生じ、脳梗塞であれば麻痺が生じ、終末期がんであれば耐え難い痛みが生じるといった典型的症状があります。
では、食道がんではどのような症状が現れるのでしょうか。
多くのがんはゆっくり成長しますので、食道がんの場合も初期にはほとんど症状が現れません。
自覚症状が出始めるのは、すでに大きく成長した進行がんの時期であることがほとんどです。
食道はくちから飲みこんだ食事を胃まで届けるパイプの役割をしています。
大きくなった食道がんは、このパイプをふさいでしまい食事が通らなくなります。
そのため、食事の通りが悪い、突っかかったような感じ、嘔吐などの症状で発症します。
食欲はあるのに食事が通らないため、鼻から栄養チューブを胃まで挿入して栄養補給を行わなければならなくなります。
進行した食道がんの治療は手術が基本ですが、リンパ節転移を伴う場合やとくに進行したがんの場合には手術に先行して抗がん剤や放射線療法を行うことがありますが、その治療期間は約1~2か月間にも及びます。
その間、食事も水分もまったく口にできない過酷な状況のなかで、抗がん剤や放射線による重い副作用に耐えなければなりません。
食道がんは大手術を要するため(進行がんの場合はくび、胸、お腹の3か所の手術が必要)、手術後に死亡する確率も3.4%と消化器手術の中では非常に高く(胃がんや大腸がんの術後死亡率は0.1%)、手術時間も一般的には8~10時間程度を要します。
がんのできた場所によっては喉頭摘出により声を失う場合もあります。
そして、大手術が成功した場合でさえ残念ながら半数の人しか5年生存できません。
さらに、食道がんの患者さんの中には手術までたどり着けずに、残りの余生を過ごすあいだ食事を食べられないまま亡くなっていく方が大勢いらっしゃるのです。
いかがでしたでしょうか、食道がんという病気の怖さがおわかりいただけたでしょうか?
しかし幸いなことに、食道がんの危険因子は「酒」と「たばこ」だということがはっきり証明されていますので、これを控えることで食道がんになる危険を減らすことが可能です。
そういった理由から食道がんは圧倒的に男性に多い病気です(食道がんの約9割が男性)。
度数の強いお酒をロックで飲むことがより危険な飲み方であり、飲酒後に赤ら顔になる人も危険性が高いグループとされます。
お酒やたばこほどではありませんが、熱い飲食物もさまさずに飲むと食道の粘膜が炎症を起こすため、注意が必要です。
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